小金沢ライブラリー

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ミステリ感想-『少女には向かない完全犯罪』方丈貴恵

2025年01月26日 | ミステリ感想
~あらすじ~
法では裁けない悪を完全犯罪で叩き潰す「完全犯罪請負人」の黒羽烏由宇。
だが彼は何者かにビルの屋上から突き落とされ、一命は取り留めたものの肉体を離れた幽霊になる。
そして「完全犯罪請負人」に両親を殺された少女と出会うが、両親が殺された時、烏由宇は既にビルから落とされていた。
真犯人を追い、現世に干渉できない幽霊と、まだ何者でもない少女は手を組む。

2024年このミス4位、文春9位、本ミス7位


~感想~
大きな括りではもちろん本格ミステリだが、SF・バディ・成長譚・タイムリミットサスペンスと山ほどのジャンルが積み上がる。
そのうえミステリとしても名探偵・怪人・見立て・密室とあらゆる要素を網羅するように混ぜ合わせ、しかも真相を追うのは抜群の推理力を持ち幽霊の特性を活かして空を飛び壁をすり抜けられる男と、無力だがめきめきと成長を見せる女子小学生のバディである。
デビュー作にして鮎川哲也賞の「時間旅行者の砂時計」は多ジャンルと多要素を詰め込みすぎて窮屈かつ不釣り合いになってしまい、面白そうなことをやっているが本領発揮は数作後だろうと思っていた作者だが、それから5年経ち、小さくまとまるどころか詰め込みをさらに上乗せする方向に行っていた。いいぞもっとやれ。

当初の目標が片付いたのにまだまだページも謎もたっぷり残り、まるで止まったら死んでしまうかのように推理と伏線で奥へ奥へ底へ底へ掘り進み続け、やりすぎながら楽しい本格ミステリに昇華させて見せた。
幽霊と少女のバディ物という引きが強く、まず間違いなくアニメ化か何かメディア化はすると思うが、一般向けとはかけ離れた通好みの凝りに凝った盛りだくさんの本格ミステリである。


25.1.26
評価:★★★★ 8
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ミステリ感想-『サロメの断頭台』夕木春央

2025年01月17日 | ミステリ感想
~あらすじ~
油絵画家の井口は、元泥棒で友人の蓮野を通訳に、祖父と縁あるオランダの富豪ロデウィック氏を訪ねる。
井口のアトリエで彼の絵を見たロデウィックは「そっくりな作品をアメリカで見た」と気が付く。
未発表の絵を、誰がなぜ、どうやって剽窃したのか? 調査を始めた井口の周りでは「サロメ」を見立てた事件が次々と起こる。

2024年本ミス6位


~感想~
とんでもねえ。
よくできた本格ミステリの論理に紛れ込んだ前代未聞の探偵と犯人とワトスンの構図。そして解決編「後」に訪れるサロメの断頭台。この作品を表すタイトルとしてこれ以上のものはない。「方舟」で年間ベスト級の称賛を受けた作者だが、それに勝るとも劣らない、そして全く別種の衝撃だった。

結末の感想から先に書いてしまったが、本作はデビュー作にしてメフィスト賞の「絞首商會」と短編集「時計泥棒と悪人たち」に連なるシリーズ長編である。
しかし「絞首商會」を読んでるくせに蓮野の「絶対に嘘をつかない」という設定すら忘れていたのに問題なく読めたので、話題作のこれから取り掛かっても大丈夫だろう。
ただでさえてんこもりの謎に、蓮野の「元泥棒で絶世の美男子で絶対に嘘をつかない生粋の人間嫌い」という乗せすぎ盛りすぎのキャラに加えて、大正浪漫や売れない画家たちの画壇事情、サロメを演じる女優、将来に悩むヒロイン的少女、武闘派の嫁と周辺はさらに賑やか。
終盤には三津田信三の如く残された謎を列挙し、解決編では裏に隠されていた見たこともない構図が明かされ、ミステリとしても秀逸な着地を見せる。
しかし本番はカバー帯にも「全ての謎が解けるとき、『サロメの断頭台』が読者を待つ」と書かれた通り、全てが終わった後の結末である。「方舟」もすさまじかったが、それ以上に鬱だが一読忘れ得ないとんでもないものだった。


25.1.17
評価:★★★★☆ 9
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ミステリ感想-『檜垣澤家の炎上』永嶋恵美

2025年01月08日 | ミステリ感想
~あらすじ~
横浜の華麗なる一族・檜垣澤家。当主の妾だった母を亡くし、高木かな子は家に引き取られる。
当主の妻の大奥様をはじめ女系に支配された一家は、卓越した手腕で明治・大正の荒波を乗り越え繁栄を謳歌するが…。

2024このミス3位、文春4位


~感想~
ミステリとして高評価を受け、桜庭一樹「赤朽葉家の伝説」のような作品かと想像したが全くの別物。
女三代記が最終的に本格ミステリとして着地する「赤朽葉家の伝説」とは異なり、ミステリ要素もあるもののそれはメインではなく高木かな子の波乱の半生を描いた一代記もとい半生記で、ほぼ純文学だった。
幼少期から虎視眈々とお家の乗っ取りを企む少女と、一代の傑物の女当主の陰謀を描いた半生記としては十二分に面白いのだが、ちょっと女性作家特有のドロドロさが激しすぎるところにまず引いてしまう。
たとえばパーティーにいまいちな女歌手とすごい男歌手を招き、聴いた相手に「お前はこの女のように引き立て役に過ぎない」と知らしめようとするのとか、余りにも女作家の発想すぎる。女作家にしか書けないし女作家しかこんなこと考えない。
また戦争の陰が忍び寄る明治~大正を舞台にし、歴史上の人物も顔を出すのだが山田風太郎のようにそれをストーリーに組み込むことにはほとんど興味がなく、あくまで市井の一族の日々を描いていく。それはいいのだが生粋の純文学嫌いとしては、どうしてもこの結末は受け入れられない。
文庫書き下ろしで800ページ付き合わされた結果が、全く何も解決せずただの始まりではないかと思ってしまうのだ。続編を書くつもりがあるのかもしれないし、ランクインしたら読まざるを得ないが、やはり純文学とは肌が合わないとうんざりした次第である。


25.1.8
評価:★★☆ 5
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今週のキン肉マン #477 クロエからの脱皮!!

2025年01月06日 | 今週のキン肉マン
・バレたーーっ! タイトルで確定したーーっ!
・まだ冷静なクロエウォーズマン
・出ると思ったマッハ・パルバライザー
・ウォーズスマイル来た!
・クロエマスクを貫通してウォーズスマイルが出るのおかしいだろ
・マッハ・パルバライザーを撒き餌にしてのスクリュードライバー!
・なんという冷静な判断
・アワワワ~~~ッww
・解説を忘れてただただ驚くザ・マンリキ
・クロエの動きから正体を察するとかではなくただただ驚くw
・自分からクロエを脱ぐとは思わなかった
・ベアークローを構えて着地するのかっこいい
・吐血しながら俺は知っていたぜとかっこつけるネプチューンマン
・久々の地獄の三重刑!
・マスク自分でずらせばいいのになぜかそうしない地獄の三重刑!
・パピヨンマンがマスクマンの可能性出てきてしまった
・あんなに蝶の特性使いまくってるのに
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1月の新刊情報

2025年01月01日 | ミステリ界隈
4日 文春文庫
有栖川有栖 砂男

15日 講談社文庫
五十嵐律人 幻告

15日 講談社タイガ
紺野天龍 神薙虚無最後の事件 名探偵倶楽部の初陣

16日 新潮社
佐々木譲 遥かな夏に

22日 ハヤカワ文庫
飛鳥部勝則 堕天使拷問刑

22日 光文社カッパノベルス
大沢在昌 黒石 新宿鮫12

24日 角川文庫
有栖川有栖 濱地健三郎の呪える事件簿
下村敦史 ロスト・スピーシーズ

29日 角川書店
近藤史恵 風待荘へようこそ

29日 新潮文庫
杉井光 世界でいちばん透きとおった物語2

30日 講談社
奥泉光 虚傳集

30日 東京創元社
倉知淳 世界の望む静謐

30日 創元推理文庫
芦辺拓 大鞠家殺人事件
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