~あらすじ~
油絵画家の井口は、元泥棒で友人の蓮野を通訳に、祖父と縁あるオランダの富豪ロデウィック氏を訪ねる。
井口のアトリエで彼の絵を見たロデウィックは「そっくりな作品をアメリカで見た」と気が付く。
未発表の絵を、誰がなぜ、どうやって剽窃したのか? 調査を始めた井口の周りでは「サロメ」を見立てた事件が次々と起こる。
2024年本ミス6位
~感想~
とんでもねえ。
よくできた本格ミステリの論理に紛れ込んだ前代未聞の探偵と犯人とワトスンの構図。そして解決編「後」に訪れるサロメの断頭台。この作品を表すタイトルとしてこれ以上のものはない。「方舟」で年間ベスト級の称賛を受けた作者だが、それに勝るとも劣らない、そして全く別種の衝撃だった。
結末の感想から先に書いてしまったが、本作はデビュー作にしてメフィスト賞の「絞首商會」と短編集「時計泥棒と悪人たち」に連なるシリーズ長編である。
しかし「絞首商會」を読んでるくせに蓮野の「絶対に嘘をつかない」という設定すら忘れていたのに問題なく読めたので、話題作のこれから取り掛かっても大丈夫だろう。
ただでさえてんこもりの謎に、蓮野の「元泥棒で絶世の美男子で絶対に嘘をつかない生粋の人間嫌い」という乗せすぎ盛りすぎのキャラに加えて、大正浪漫や売れない画家たちの画壇事情、サロメを演じる女優、将来に悩むヒロイン的少女、武闘派の嫁と周辺はさらに賑やか。
終盤には三津田信三の如く残された謎を列挙し、解決編では裏に隠されていた見たこともない構図が明かされ、ミステリとしても秀逸な着地を見せる。
しかし本番はカバー帯にも「全ての謎が解けるとき、『サロメの断頭台』が読者を待つ」と書かれた通り、全てが終わった後の結末である。「方舟」もすさまじかったが、それ以上に鬱だが一読忘れ得ないとんでもないものだった。
25.1.17
評価:★★★★☆ 9
油絵画家の井口は、元泥棒で友人の蓮野を通訳に、祖父と縁あるオランダの富豪ロデウィック氏を訪ねる。
井口のアトリエで彼の絵を見たロデウィックは「そっくりな作品をアメリカで見た」と気が付く。
未発表の絵を、誰がなぜ、どうやって剽窃したのか? 調査を始めた井口の周りでは「サロメ」を見立てた事件が次々と起こる。
2024年本ミス6位
~感想~
とんでもねえ。
よくできた本格ミステリの論理に紛れ込んだ前代未聞の探偵と犯人とワトスンの構図。そして解決編「後」に訪れるサロメの断頭台。この作品を表すタイトルとしてこれ以上のものはない。「方舟」で年間ベスト級の称賛を受けた作者だが、それに勝るとも劣らない、そして全く別種の衝撃だった。
結末の感想から先に書いてしまったが、本作はデビュー作にしてメフィスト賞の「絞首商會」と短編集「時計泥棒と悪人たち」に連なるシリーズ長編である。
しかし「絞首商會」を読んでるくせに蓮野の「絶対に嘘をつかない」という設定すら忘れていたのに問題なく読めたので、話題作のこれから取り掛かっても大丈夫だろう。
ただでさえてんこもりの謎に、蓮野の「元泥棒で絶世の美男子で絶対に嘘をつかない生粋の人間嫌い」という乗せすぎ盛りすぎのキャラに加えて、大正浪漫や売れない画家たちの画壇事情、サロメを演じる女優、将来に悩むヒロイン的少女、武闘派の嫁と周辺はさらに賑やか。
終盤には三津田信三の如く残された謎を列挙し、解決編では裏に隠されていた見たこともない構図が明かされ、ミステリとしても秀逸な着地を見せる。
しかし本番はカバー帯にも「全ての謎が解けるとき、『サロメの断頭台』が読者を待つ」と書かれた通り、全てが終わった後の結末である。「方舟」もすさまじかったが、それ以上に鬱だが一読忘れ得ないとんでもないものだった。
25.1.17
評価:★★★★☆ 9
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