とても恐ろしい本である。毎日食べる食品が、このように利潤を単純に求める会社
が、その種子を支配するとどうなるかと問いかけている。「遺伝子組み換え食品の真実」白水社刊、アンディ・リーズ著白井和宏訳という本である。本の帯にはTPPの参加の前に知らないと危ないとある。価格が2400円は少々高価である。
巻頭に著者は「遺伝子組み換え技術は、人間の健康を害し、(中略)一握りの企業が、私たちの食料となる種子に特許料で貪欲に利益を上げ、世界の食料の生産と流通を支配することになる」と述べている。そして、「それ以外は、枝葉末節の問題である」。と断じている。
遺伝子組み換え植物は、高生産で害虫に強いとされ、夢の植物で人類の食糧危機を救うと喧伝されてきた。然し、少し長く作ることによって、謳い文句であった、高生産は在来種以下になり、害虫が復活して以前のような薬も効かない種が現れているというのである。そうした事例が世界各地で起きている。
たんぱく含量が多いとされた遺伝子組み換え作物(GM)がすでに、在来種以下のたんぱく含量になっていたり、害虫抵抗作物は新たな耐性菌生み出していることは、遺伝子組み換え作物の80%を生産している、モンサント社でさえ渋々認めている。
多くの問題が起きたことによって撤退をしようとしても、遺伝子組み換え作物が、在来種と交雑することで新たな問題が起きている。新たな害虫や細菌の抵抗性がおきたり、在来種以下の品質になったものが回復できないなどの事例が枚挙にいとまがない。
遺伝子組み換え技術が、最先端の技術とされているが、極めて雑な成り行きも解らない、出たとこ勝負の単純技術なのである。
微小なタングステンなどのピンの先に乗せて遺伝子を塗布する、”遺伝子銃”と呼ばれる方法と、それに細菌を使って遺伝子を組み込む方法である。いずれも、遺伝子がうまく乗っかったり換わったときに、”新品種”ができるのである。
新品種がどのようなものになるかは、栽培してみないと解らない。出たとこ勝負の技術である。そもそも、遺伝子が単独で作用することはほとんど考えられない。仮にその遺伝子の作用が思い通りであったとしても、DNAを損傷された作物が、正常な機能を持つこと自体考えにくいことなのである。
遺伝子組み換え作物に特許を与えることで、多国籍企業が膨大な利潤を生むことになる。その種子を交配した農家や偶発的な交配も含め、モンサントは毎年何十例もの特許侵害訴訟を起こして、農民から種子の選択すら奪っている。
TPPによって、制度や関税の壁が取り払われるのを待っているGM企業は、モンサント社・シンジェンタ社・バイエル社・デュポン社・アドヴァンタ社・ダウ、ケミカル社など枚挙にいとまがない。