菅義偉首相の著作、『政治家の覚悟』の改訂版が10月20日に発売された。
菅義偉は官房長官時代に、2012年に出版した『政治家の覚悟』で、「政府があらゆる記録を克明に残すのは当然で、議事録は最も基本的な資料です。その作成を怠ったことは国民への背信行為」と記していたが、これは誰の著書かご存じかと質問され、「知らない」あなたのですよと明かされ、「記憶にない」と答えて、失笑をかった経緯がある。
本人が自著の内容に関与していない可能性が高いが、立場上それは理由にならない。
所がである。今回の改定でこの公文書管理に関する部分の33ページが削除されているのである。枝葉末節の事ではない。政治家の信念に係わる、極めて大きな問題といえる。自身が政権内にあって、公文書の改ざんや隠匿や破棄を認めてきた経緯がある。政権の擁護のためには主義主張を簡単に変更する。
更には、同著で菅首相は旧民主党政権が東日本大震災時に議事録を残していなかったことを批判し、「政府があらゆる記録を克明に残すのは当然で、議事録は最も基本的な資料です。その作成を怠ったことは国民への背信行為」などと、旧民主党政権を批判していた。同時期の自身のブログでは、「議事録も作成しない『誤った政治主導』」、「東日本大震災に対応するために立ち上げた多くの会議で議事録が作られていないというずさんな実態が、次々と明らかになりました」と記していた。
今回の改定は、安倍政権時代の公文書の破棄などを認める、真逆の姿勢に転じた政治家の根幹を廃棄する行為といえる。それにしても『政治家の覚悟』もなく、やることがセコイ。