そりゃおかしいぜ第三章

北海道根室台地、乳牛の獣医師として、この国の食料の在り方、自然保護、日本の政治、世界政治を問う

イランとサウジアラビアの対立から学ぶもの

2016-01-06 | イスラム
サウジアラビアがシーア派の高僧であるニムル師を処刑した。シーア派の大国イランは死刑判決が出た時から、執行をやめるよう要請していた。これにイランは激怒し両国は断絶状態になった。と、報じられている。
NHKなどの偏向報道は正確ではない。サウジは24人の政治犯を処刑した。サウジの処刑は衆目の中で断首するのであるが、24名のほとんどがスンニー派の過激グループのアルカイダ系である。イランの反応はローハニを出し抜いた外務省の先走りである。民衆はサウジの大使館に火炎瓶を投げた。処刑されたシーア派はニムル師を含めて、3名でしかない。
専制君主国で世界最大の産油国のサウジでは、この2年の原油価格の暴落で経済的に行き詰っている。公共料金や電気水道代も無料であったが、それも検討している現状である。アブドラ国王が亡くなった後の新体制の手探り外交が生んだ失態であろう。
報道のようにシーア派とスンニー派との対立は簡単ではない。イランとサウジアラビアが、それぞれを国教に明記している。しかしスンニー派のサウジの南東には、国内20%といわれるシーア派の地域があり、最大の産油地域でもある。報道はサウジはシリアの反政府勢力を支援しているとしているが、初期の段階では明らかにISIS(イスラム国)を支援していた。反政府勢力との区別がつかなかったのか意図的なのかは詳細は解らない。
サウジの最大の支援国、友好国のアメリカがイランに接近したことも彼らを動かしたものと思われる。生涯に一度は巡礼するイスラム聖地メッカは、サウジの真ん中にある。サウジはスンニー派の巡礼は断ってはいない。
血統を重んじたスンニー派と教義を重んじたシーア派は、全く同一の経典を用いているし、同じ寺院で祈ることも少なからずある。何よりも彼らの共通の敵になるイスラエルがある。アメリカに石油を買ってもらっている手前、サウジはイスラエルのに悪い顔してはいないだけである。イスラム内の宗派対立はそもそも深刻なものではなかった。
今回のイランとサウジの対立を一番喜んでいるのは、ISISである。敵の敵は味方にもなるし味方の敵も味方になることもある。膠着状態のほうが収まりがいい時もある。その例外が、きょう核実験をどうやら初めて成功したらしい、世界情勢を読めない北朝鮮である。
中東の国々は英仏によって割譲され、民族以下のレベルで収まっていた豪族たちが分断されてしまった。そこに石油というとてつもなく金になる資源が沸いて出たのである。フセインやカダフィが支配していた時代は良くも悪くも平和であった。シリアでアサドがめげない理由もそこにある。ISISを空爆で絶滅できると思うのは妄想に近い。仮に組織がなくなっても、新たな過激派が生まれることになるだけである。
これまで収まっていたスンニー派とシーア派の対立こそ、アメリカが火をつけた。国境を引いた英仏、強引なイスラエルの建国を承認した国連も同罪といえる。クリスマスプレゼントを贈ったり、赤十字でイスラム圏を支援する愚行は無知である。民族や宗教を特定の方角からだけ評価し、経済的指標だけで支援し友好関係を装ってきた過程こそ、ISの台頭を許してきたのである。

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