林芳正農相は5月29日の衆院農林水産委員会で、政府が掲げる農業・農村の所得を10年間で倍増させるとの目標について「農家個人ではない」と回答した。元々新自由主義者でTPP参入に積極的だった林を、農水大臣に据えたのは安倍の思いがある。
更に、林大臣は「農業・農村全体の所得を増大させる観点で多様な地域の状況を踏まえながら検討を行っていく」と述べた。言葉尻ではなく正確に読み解くとこれ
は、農家の収入を上げるとも言っていないのである。農村に何らかの、例えばバラマキ公共事業である、国土強靭化事業をするともいえるものでもやるのでしょうか。
新たな自民党の農業周辺産業の奨励事業がすでに始まっている。私の診療している酪農家のことである。自分の出来る範囲で、あまり大きくないボロの牛舎で乳を搾っている。
そこの息子さんがトラクターを買いたいと、農協に相談した。現在70馬力ほどのトラクターである。大きくすれば国の補助があって半額で済むというのである。自民党の農政は、意欲ある農家とは大きくすることと決めつけているため、大きくすれば補助の対象になるというのである。100馬力以上のトラクターを買えというのである。
100馬力もいらない、第一そんな大きなトラクターは牛舎に入れない。ということで補助の対象にならず諦めた。関係者でない方は、それは可哀想だと思われるでしょう。確かにそうした側面はあります。しかし、実際の金の話になるとそれほど、可哀想でもないのです。
補助には定価が対象になります。この場合多分、1000万円ほどになると思います。農家負担は、500万円ほどになります。ところがこれを補助なし農機具屋と交渉すると、700万円ほどまで下がります。現金で払うとなれば、600万円ほどにもなるでしょうか。
実力のある農家は現金払いあるいは即決払いをするために、融通の利かない補助など使わないのです。もっと我慢強い農家は、中古品を自分で探します。たぶん400万円ほどで手に入ります。何しろ最近離農者が多いので、あるいは補助金で買った農家が手放すために、まだまだ使える中古品が手に入ります。
この農家の場合には、同レベルの70馬力ほどの中古のトラクターを買うことになるでしょう。たぶん200万円程度でないでしょうか。(数字は推測ですが、大きく外れてはいません)
ここまでくればお分かりと思いますが、農家の補助のように見える政策は、農機具会社の補助に他ならないのです。補助金は農協を経由するために、農協もご推奨になります。
農機具会社の政治献金のレベルは把握していませんし、農協の政治圧力もかなりあるとおもいます。農業政策は農家に対してより、周辺産業に意味があることの方が圧倒的に多いのです。
然しTPPに参入すれば、これらのことも吹っ飛んでしまうでしょう。昨日又々安倍首相は、10年で所得を150万円増やすと言い放った。根拠があるわけではない。
アベノミックスは虚構のシナリオのほころびが、次々と露わになってきている。虚構は、手を変え品を変えて崩壊するまで、言い続けなければならない。