日々の暮らしから

「街中の案山子」「庭にいます。」から更にタイトル変更します。

映画「コーラス」を観る

2005-04-22 12:46:39 | 本・映画・テレビドラマ・絵・音楽
映画「コーラス」を観た。フランスで2004年もっとも観客動員数が多かったらしい。
日本では今月封切。

映画評どおり、ボーイソプラノの響きに引き込まれてしまう。
第二次大戦後1949年のフランス。寄宿舎生活の26人の少年達。素行が悪かったり、親に育てられない事情があったりで、校長の強権発動、体罰横行の荒れた学校に不遇な音楽教師(マチュー)が舎監として赴任するところから物語りは始まる。
悪質ないたずらと体罰が繰り返される寄宿舎学校の少年たちがマチューの熱意で合唱隊に育つうちに、荒れる心が和らいでいくという話。
悪の代表格だったモランジュのボーイソプラノのソロもコーラスも見事。最後は、音楽教師は不審火による火事の責任をとらされ解雇。学校を去っていくところで映画は終わる。

マチューが赴任のため寄宿舎に行くと門扉にしがみつくように外を眺めている幼い少年ペピノ。
「親が面会に来るのを待っている」という。
両親は戦争の犠牲者となり、すでに会いに来ることはないと伝えても、ペピノは決してそれを受け容れようとはしない。「土曜日に来る」と信じてペピノは門扉にしがみついている。
寄宿学校生活の暴力が吹き荒れる中にあって、安らぎは門の外からやってくると信じて待つことが唯一つの心の支えだったのだろう。
マチューが解雇され、子供達との別れの挨拶も禁じられ学校を去るとき、窓から紙飛行機が舞う。マチューが拾った紙飛行機には別れのメッセージ。飛行機の数はどんどん増え、見上げると窓から子供達の振る手がたくさん見える。(マチューは紙飛行機5,6枚拾ったけど、私だったら一枚残さず拾うだろうなー、そうすると絵にならないだろうけど)
手はたくさん見えるけれども、窓が高いから姿は見ることは出来ない。手だけがいつまでも別れの挨拶を送っている。
バスに乗ろうとした時、「僕も連れて行って」と幼い少年ペピノは叫ぶ。一度は「学校へ帰りなさい」とは言うものの、いつまでも去らないペピノに、動き出したバスは止まる。
マチューはペピノを抱えるようにバスに乗せ物語は終わる。
その日は土曜日。やっぱりペピノが待っていたものは土曜日にやって来たと。
ひとり学校を飛び出して追いかけた幼いペピノはしっかりと選択している、自分を守ってくれると人は誰かと。

持ち物は小さなカバンの楽譜だけという不遇のマチュー。やったらやり返すという殺伐とした思考しか育つことのない寄宿学校の荒れた少年達。
双方の出会いによって、少年達は素晴らしい歌と歌ったという体験を持つことができ、マチューにとっても宝物となったに違いない。
時代遅れのくたびれた衣装で飛び回る少年達の画面を国境を越えて多くの人が感動するのだから、映画ってすごいし、人っていいものですね。









コメント
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