ティム・フェールバウム監督「セプテンバー5」(★★★) (2025年02月18日、ユナイテッドシネマキャナルシティ、スクリーン3)
監督 ティム・フェールバウム 出演 ピーター・サースガード、ジョン・マガロ
誰もが「結末」を知っている。そういう「現実」をどう描くか。
この映画と、「ユナイテッド93」は、どこが違うか。
「ユナイテッド93」は飛行機が墜落し、上客全員が死ぬのはわかっている。しかし、私は「がんばれ、がんばれ」と、最後は声を出しそうになった。もしかしたら飛行機の墜落は避けられるではないか、と期待してしまった。映画なんだから、「結末」が現実と違ったっていいじゃないか、と思ってしまった。
ところが、この映画では、そんなことは起きない。
なぜなんだろうなあ。
「報道」に対する葛藤があまりにも淡々としているからかもしれない。登場人物の動きもスムーズすぎる感じがする。唯一おもしろかったのは、クルーの何人かが、同じ部屋でボクシングの試合を見ている。アメリカの選手のパンチがヒットしたのか。彼らが声を上げる。瞬間「君たち!」とボスが叱る。そこだけだなあ。
あとは、内部対立がない。
スポーツ担当と報道(ニュース担当)の対立も一瞬だけだ。あんな簡単に報道部門が引っ込むとは思えないなあ。
いちばんのメーンの「裏取り」も、ひとりが疑問を投げかけるだけ。正式の社員ではない(と思う)ドイツ人女性(通訳)の「証言(伝聞)」だけで、それを「事実」と思い込むのは、ちょっと無理がないか。ここに描かれているのは、ほんとうに「事実」なのか、と思ってしまう。
「誤報」をほかのテレビがすぐにそのまま「追いかけた」というのも、描き方が甘いなあ。ほかのテレビも「裏を取る」作業をするはず。それが全然描かれず、ただ他の局も一斉に「人質が解放された」と報道する(した)というのはなあ。せめて、他の報道機関の動きを組み合わせて描いてほしかった。
「事実」を「事実」と認定する(判断する)には、もっと慎重でなければならないはずだ。50年前は、違ったのだろうか。
それに。
まあ、この映画はテレビマンがどう動いたかがテーマだからそれに絞ったのはそれでいいのかもしれないがし、私は、市民の反応があればよかったと思う。あの中継を、市民はどう見たのか。それが一度も描かれない。
いまは特に、報道をどう受け止めるかが、とても重要な問題となっているのだから、そういう「現代的視点」が必要だと思う。「過去」をそのまま描くのではなく。
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