読売新聞2025年2月5日の読売新聞夕刊(西部版・4版)を見て、びっくりした。一面の見出し。
米、ガザ所有構想/トランプ氏「住民は移住」主張
見出しだけで十分なので、記事は引用しない。ネタニヤフと会談した後の記者会見で言ったという。グリーンランド、パナマ運河につづく、信じられないような暴言である。世界はトランプの所有物ではない。しかし、あまりにもアメリカ的すぎる強欲主義の主張である。
で、ふいに思い浮かんだのが、つぎはきっと「台湾を所有する」と言うだろうということである。
すでに、日本、韓国、フィリピンは、トランプにとって(そして、アメリカにとって)、アメリカの「所有物」なのだろう。(自民党政権は、それを完全に受け入れている。核兵器で多くの市民が虐殺されたにもかかわらず、そのことに異議をとなえないばかりか、アメリカの核の傘に入っている。そして、安全だと信じている。アメリカ大陸のアメリカ人が核があるから安全と思い込んでいるように。)
そして、ここから思うのだが、「台湾有事」について、私は、台湾が独立し、アメリカが基地をつくれば、それは中国にとって、アメリカにおける「キューバ」のような存在になるだろうと書いたことがある。中国が「台湾独立」に反対するのは、何よりも台湾にアメリカ軍の基地ができるからだ。
でも、この私の認識は、ある意味で間違っていた。今回のトランプの発言で、ほんとうにそう思った。
先に書いたように、アメリカはフィリピン、台湾、日本、韓国という「防衛ライン」を「所有」していると思っている。フィリピン、台湾、日本、韓国をアメリカの一部と思っている。だから、台湾がもし中国に統合されてしまえば、それはアメリカの「防衛ライン」を破り、そのなかに侵入してきたことになる。つまり、中国の台湾統一は、アメリカにとっての、第二の「キューバ危機」なのである。もっとわかりやすくいえば、それは「台湾有事」ではなく「アメリカ有事(アメリカの防衛ライン有事)」なのである。
中国人、あるいは台湾に住むひとの立場ではなく、「アメリカ人」になって(トランプになって)考えてみる必要があったのだ。私は、アメリカの政策を批判するだけで、アメリカ人になって考えたことがなかったので、見落としていた。台湾を、まさかアメリカの所有物であり、中国に奪われていると考えているとは思ってもみなかった。アメリカにしてみれば、第二次対戦後の台湾はアメリカの所有物なのに、それを中国に奪われてしまった、取り返さなければならない、ということなのだろう。
フィリピンを例に考えてみればいい。フィリピンは、アメリカが「所有」する前は、スペインが植民地として「所有」していた。その後、日本が侵攻し、その日本をアメリカが追い出した。そして、「再所有」したのだ。
第二次大戦後、アメリカがフィリピンに何をしたか。アメリカの資本がフィリピンをどれだけ食い物にしてきたかをみればいい。フィリピンをバナナをつくり、それを輸出するだけの国にし、工業などの産業を育成しなかった。(ソ連がキューバを砂糖生産の国にしたのと似ている。)真の独立には、「工業化」が必要なのだが、そのための協力などしていない。
そこまで考えて、急に思うのだが、日本とフィリピンの関係も、アメリカの(マッカーサーの)「思想」の延長にあるのではないか。日本とフィリピンをつかって中国(共産党)を封じ込めるという思想とつながっているのではないか。マッカーサーは天皇を利用して、日本を完全に支配したが、少し手を変えて、日本とフィリピンの関係を動かしたのではないのか。フィリピンを利用したのではないか。
日本とフィリピンは、日本がフィリピンに侵攻したにもかかわらず、良好である。(良好に見える。)人事交流は活発だし、一時期、日本の男性と結婚するフィリピン女性も多かった。あれは単に日本の労働力不足解消のひとつの方法だったのではなく、アメリカの戦略だったのではないか、という気がしてくるのである。他の国の女性でも可能性としてあり得たが、アメリカが日本とフィリピンの関係を強化するために「斡旋」をしたのではないか。
それに類似したことだが、外国人「介護士」の採用も、まず、フィリピン人からはじまっていないか。日本・フィリピンの「友好関係」が背景にあるとはいえ、「優先」されている感じがする。それは、どこかでアメリカの戦略と重なっているからではないのか。
日本(北海道)からフィリピンまで、アメリカは「中国封じ込め」の「防衛ライン」がほしかったのだ。そのために、日本とフィリピンの「友好」を演出したのだ。
世界地図を開いて、日本からフィリピンまで線でつないでみればいい。台湾が含まれれば、その線の「途切れ」は非常に小さくなる。中国は太平洋へ進出できない。
ヨーロッパから移動した「アメリカ人(になったヨーロッパ人)」は、アメリカ大陸を東から西の端まで移動し(占領し)、さらに海を超えて、ハワイをアメリカにし、そのあとさらにアジア大陸のすぐそばまでやってきた。アジア大陸を侵略しようとしている。その「拠点」として台湾が必要である。
台湾を「イスラエル化」しようとしているといえるかもしれない。
東から西へは、いま書いたように、太平洋を横断し、すぐ中国のそばまできている。
西から東への侵攻は、ワルシャワ条約機構解体後、つぎつぎにNATOを拡大する形で、ウクライナまで「所有」しつつある。
中東からも同じように、「所有」の範囲を広げることはできないか。イスラエルだけにまかせてはおけない。アメリカそのものが、イスラエルの近くに「領土」を「所有」し、それを基地にしたいということだろう。
それは中東を飛び越し、インドを視野に入れた計画かもしれない。
アジアには、中国、インドというふたつの大国がある。そのふたつの国の存在が、きっとアメリカには気に食わない。アメリカの思うがままに動かない。それを何とかしたい、何とか「アメリカ帝国主義」の配下におさめたいということだろう。
トランプはアメリカの野望そのものである。