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白鳥のブログ - 日々の世界を徒然と

ソードアート・オンライン 第22巻 『キス・アンド・フライ』 感想: ブルーレイの付録短編集と思いきや、実は意外とユナイタル・リング編の序章だったりする?

2019-11-26 17:52:58 | SAO/AW
待ちに待った22巻のハズだったのだけど、蓋を開けてみれば、ブルーレイ特典の短編集だった。
・・・なので、すっかりなめていたのだけど、実際に読んでみると、あれ、これもしかしてユナイタル・リング編のイントロになっている?という気がしてきたから不思議。


とはいえ、まずは、単純に見直すと、基本的には、後付けでSAOの物語を補填する短編4本からなっている。

後付けだから、ちょっと、それなー、という気になって呆れるものと、
後付けというよりも、SAOプログレッシブやアクセル・ワールドの執筆を経て、SAOの世界観が広がった? と思わせるものが混在している感じ。

冒頭の「ザ・デイビフォア」は、まさに前者の方。
えー、今更、そんなキリトとアスナのログハウスにクエストがあった、なんてもっともらしいバックストーリーつけられてもな―、と一瞬、呆然としてしまったw

しかも、オズの魔法使いネタなんてw

うーん、なーんか、ログハウスにまつわるネタなんかないかなー、あ、そうか、ログハウス、飛ばしちゃうのはどう? ほら、オズの魔法使いがそうだったじゃん!、なんて作者か、もしくは編集者さんがネタだし会議で思いついて、ドヤ顔でほくそ笑んでいる姿が目に浮かぶようじゃないw
上手いこと、言えたな―、って。

だって、このエピソードは、ホント、オズの魔法使いネタにおんぶにだっこの展開だからね。

なんで、むしろ、これ、単に、本編のSAOシリーズの中で、ほら、アルゴって姉さんキャラがいたの、思い出して!、彼女、この後、23巻からのユナイタル・リングで、また活躍するからさ!、って言いたいだけだったんじゃないのかなぁ、とw

いや、アルゴ姉さんの再登場は素で嬉しいんだけどね。

とまれ、「ザ・デイ・ビフォア」はそういうふうに、ファンサービスの一環くらいにしか思えなかった。

でも、その一方で、続く「ザ・デイ・アフター」の方は、キリトたちがSAOのデス地獄から抜け出して、ALOで普通にプレイしていたときにアスナを襲った怪現象の解明の話。

で、そのちょっとしたアスナの意識の「離脱感覚」の背後にあったのは、SAO初期のエピソードで、キリト以外全滅した、つまり全員死亡した「月夜の黒猫団」の一人、サチがシステムに残した一種のメッセージだった、というもの。

そして、そのメッセージが、直接には何のつながりもないアスナに届いたのは、SAO時代にキリトとアスナが結婚していたことと、現在キリトがALOで使っているアバターがSAO時代とは異なるものであるのに対してアスナはSAO時代のものをそのまま流用していることから。つまり、サチ→キリト→アスナ、の順でできた経路を通じてアスナにとどいたものだった、というもの。

これは小編ながら、読後、だいぶ唸らされた。

もちろん、こういう亡霊のような形であっても、サチが再び現れたことは喜ばしいことだったのだけど、それ以上にやはり、もはや失われてしまった茅場晶彦が作ったオリジナル・アインクラッドのシステムへの振り返り、というのがとても気になったところだった。

というのも、いってしまえば、ALO以降のSAOって、基本的には、この茅場版元祖アインクラッドのシステムに秘められていた可能性や革新性に、少しずつキリトたちが接近していく、という物語だと思っているから。ついでにいえば、アクセル・ワールドもその一部だと思っているので。

なので、サチの、いわば「残留思念」みたいなものをシステムが保持していた、というのも、SAOのアリシゼーション編を知った後では、もしかして茅場も、フラクトライトを通じて魂を複製する試みを、アインクラッドの頃から試していたんじゃないの?と思ったりするから。

少なくとも、茅場自身は、アリシゼーション以後の随所での登場の示唆を考えると、自殺の際に脳のフルスキャニングをして、マインドアップロードを実現したように思えるから。
なので、ハードウェア的にはフラクトライトのコピーには至らないまでも、それに準じた技術で自分自身のマインドをストアする方法を考案していたのではないかな、と思っていたので。

とすると、実は元祖アインクラッド編において、死を迎えたプレイヤーたちの魂は、何らかのデータの形で、アインクラッドのシステムのどこかにストアされているのでないかと思いたくなる。

というか、部分的にそうして人格再生を試みようとした話が、劇場版SAOのオーディナル・スケールのユナを巡る話だったはずなので。

だから、サチの残留思念についても、そういうシステムの発動結果なのだろうな、と思ったんだよね。

もちろん、作者的にも、こうした茅場アインクラッドが実は宝の山だった、というのは、後になって気づいたことで、だから、手を変え品を変え、「全ては茅場の頭から始まった!」ってサーガにしようとしているのだと思うけど。

すっかり中断しているSAOプログレッシブなんて、まさに金鉱床としての茅場アインクラッドは舐め尽くすために、アナザーストーリーを最初から書いてみよう、といういかにもゲームなんだからいいよね?という開き直りで始まっていたものだったのだろうし。

プログレッシブにおけるNPC女戦士キズメルなんてまさにそれだよね。

・・・って思ってたら、まさに続く「虹の橋」のエピソード冒頭でキズメルの名前が出てきて笑ってしまったのだった。

作者の中では、プログレッシブは、あくまでもアインクラッド編の正史に含まれたものとして扱っているようで。ということは、キリトとアスナがキズメルとやり取りした経験は、その後のSAO正編の中でも、二人にとっての現実として振り返られるエピソードになっているということになる。

もっとはっきりいえば、ユナイタル・リング編で、アインクラッド編の初期を描いたプログレッシブ編も組み込まれてくる可能性は高い、ということ。

というか、そのための、アルゴ姉さんの本編復活なんだろうな。

なにしろ、アルゴ姉もまた、サチと同様に、アインクラッド編初期のエピソードキャラの一人でしかなかったはずだから。
しかも、「情報屋」の彼女は、今回の「ザ・デイ・ビフォア」にもあるように、アインクラッドの中で生じた異変については、基本的に自ら調査に乗り出さないで入られない性分だったわけだから、SAOサバイバーの中では、最もあの茅場アインクラッドの詳細について詳しい存在だったと思うんだよね、アルゴは。

その彼女のユナイタル・リング編での再登場は、この新章が、アンダーワールドを含めた茅場アインクラッドの革新性に迫る話になるからなんだろうな、と思ってきた。アルゴがいれば、在りし日のアインクラッドのシステムの詳細との齟齬や類似性にも気がつくことになるから。加えて、アンダーワールド生まれのアリスもユナイタル・リングには登場しているから、アンダーワールドとユナイタル・リングとの差異も指摘されるのだろうし。

あ、そうすると、21巻の最後で登場した神邑樒についても、もしかしたらカムラ製のオーグマーの開発過程でフラクトライトとは別手段の「魂の複製」を可能とする技術が存在していたことをおいおい示していくために登場したのかもね。ナーブギアとは異なる設計思想のインターフェイスで茅場システムであるアインクラッドにアクセスすることで、茅場が隠蔽していたシステムの部分にもアクセス可能になる、・・・とか。


・・・ってすっかり脱線してしまったけど、実はこの22巻、単にブルーレイの付録の短編集というだけでなく、細部に目を配ると、ユナイタル・リング編以後の展開を促すためのエピソードとして書かれていた、ということになりそうな気がしている。

もっとも、そう思ったのは、最初の2つの短編(「ザ・デイ・ビフォア」と「ザ・デイ・アフター」)の部分で、残りの「虹の橋」と「Sisters’ Prayer」はそれぞれ、ALOのクエストの補填とユウキ編の前日譚だったので、この限りではないのだけど。

やはり、アインクラッドのシステムに関わるような話でないとユナイタル・リングとの接点は見つからないみたいだけど。。。

とはいえ、「虹の橋」は、カーディナル・システムによるクエストの自動生成の話と関わるから、ゆくゆくはユナイタル・リング内のクエストとも関係してくるといえばしてくるのだろうけどね。

ということで、前半の2編については、というか、そう感じさせたのは「ザ・デイ・アフター」のサチの再登場?が大きいのだけど、茅場アインクラッドの秘密はこれからのSAOユニバースの物語を進めていく上で、常に立ち返るべき対象になるのだな、というのを強く実感させられたのだった。

あとは、素直にユナイタル・リングの続編を待つばかり。

と言ってる間に、来月には、23巻が出るのか。
さてさて、アルゴ姉さんとカムラは、どう絡んでくるのだろう。
ようやく、本格的に新章の起動、ということかな。

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