しばらく前、ダンナサマがインドネシアに行った際におみやげに椰子砂糖を頼みました。
ダンナサマは同行の後輩(インドネシアに結構詳しい方。男性)に買い物を頼んだようで、
「えっへん!」
という感じで持って帰ってきてくれたものがこちら。
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ラベルにはGula Aren とあります。 とても黒っぽい塊。 上から見ると丸いです。 (下がぎざぎざしているのは、囓って味見したため)
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横から見るとこんな風になっています。 まあるいココナツの殻に流し込んで固めるため、こんな形になります。
値段は100gで3910ルピーのようです。
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固そうに見えて、歯で簡単にかじれる柔らかさ。
結晶は細かく、口溶けはいいです。例えるならば、ファッジのような、もしくは、細かく結晶した蜂蜜を、更に固く固形化したような食感です。
で、味は。
なんと、みたらしダンゴのタレの味。
塩は入っていないはずなのですが、醤油のような風味がします。
にゃに?
お菓子に使おうと思っていたのに・・・。
しょうゆ味だなんて・・・・。
頼まれモノをゲットして鼻高々のダンナサマでしたが、頭の中が ??? だったため、褒め忘れてしまいました。
(ダンナサマは褒めて育てないといけないですよね)
そういえば、昔私もインドネシアに行った際に、2種類のヤシ砂糖を見かけたのを思い出しました
(うそ。ほんとはグーグル検索したら自分の写真がヒットして、手の形であれ何か見たことがあるかも?と確かめてみた)。
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一つは色の濃い方。 今回と同じGula Aren。 100g2050ルピー。
味からして、以前おみやげに貰ったインドネシアのチャーハンのもと にもおそらくこれが使われています。
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もうひとつはこちら、薄茶色のGula Merah。 値段はこちらの方が安め。 このお砂糖は、売り場にあるカケラをこっそり味見して、(醤油味はせず)普通に甘くて美味しい味というのを確認済み。
欲しかったのはこちらでした。
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私が用途や種類を指定せずにお願いしたのも迂闊でした。
インドネシアでより一般的な方を選んだのかなあ。
でもきっと、男の人だし、高い方ならば間違いなかろう、と売り場で一番高いものを買ってきてくれたような気がします。
改めて、ダンナサマとS原さんに感謝せねば。
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この、グラ・アレン(焦げ茶醤油味。おそらく料理用)とグラ・メラ(薄茶キャラメル味。お菓子用)、どう違うのか知りたくて調べてみましたが、結局まだよく分かりません。
(ご存知の方、是非教えて下さい)
→(2020/08追記)グラ・アレンはサトウヤシ、グラ・メラはココヤシの、どちらも花序部分から樹液を採取して煮詰めて作るもののようです。
それ以前の問題で、パームシュガーとココナツシュガーという用語ですら、情報が錯綜しています。
あちこち読んで、多分こうだろう、というところをまとめてみました。
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■■椰子砂糖について(Fujikaによるつまみぐい要約)(2020/08/05追記あり)
●椰子砂糖を作るヤシ
・インドネシアでは伝統的に、ヤシ花茎から樹液が採取され、それから黒糖が作られる。
砂糖ヤシ(Arenga pinnata Merr.), パルミラヤシ(オウギヤシ/ウチワヤシ/サトウヤシ)(Borassus flabellifer L.), ニッパヤシ(Nypa fruticans Wurmb.)およびココヤシ(Cocos nucifera L.) (6)。
・(2020/08/05追記)ヤシ砂糖にはグラ・メラ、グラ・アレン、グラ・レンペンがある。それぞれ次の通り(15)。
名前 |
材料 |
色・かたち |
地域性 |
味 |
グラ・メラ/Gula Merah |
ココヤシ |
薄いブラウン。 円筒形。 |
最も定番のヤシ砂糖で、インドネシア、特に中部ジャワの料理には欠かせない。 ジャワの砂糖、グラ・ジャワ/Gula Jawaと呼ばれる場合もある。 |
3つの中で一番明るい甘さ。爽やかで酸味と塩気に近い旨味も若干感じる |
グラ・アレン/Gula Aren |
サトウヤシ(アレン)
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こげ茶色。 アレンの木の葉で包まれていて、円筒形 |
西ジャワでよく見かける。 アレンの木は、ある程度標高が高く湿度が高い土地の森の中に生えている |
ずっと重さのある甘み。そして、製造工程を反映してか、煙の風味がとても強い |
グラ・レンペン(ロンタル)/Gula Lempeng |
パルミラヤシ(オウギヤシ) |
こげ茶色。 ロンタルの葉で作った輪っか状の型にはめて作るため、平たい円盤型 |
インドネシアでは東ヌサトゥンガラ及び南スラウェシに多く、乾燥が強い土地でよく育つため、石灰質の島にも沢山植えられている。 ロテ島やサブ島でロンタル椰子はよく利活用されている。 固形の砂糖のほか、液糖状態のものや、樹液のまま発酵させたお酒、酢もある。 インドネシア語のロンタルは、ジャワ語のRon(葉)+Tal(パルミラヤシ)から来ている。ジャワからバリにかけてはシワラン/Siwalanとも呼ばれる。 |
一番日本の黒糖の味に近い |
・バリ島ではPUNYAN NYUHから砂糖をつくる。 酒を取る木(PUNYAN JAKA)とは違う種類 (1)。
・インドネシア サブ島 ではロンタール椰子 lontar (パルミラヤシ/オウギヤシ)というものから樹液を採取する。(8)
・ヤシには雌雄異株のものと雌雄同株のものがある。
雌雄同株・・ヤシ科ココヤシ ヤシ科ニッパヤシ
雌雄異株・・ヤシ科シュロ ヤシ科ナツメヤシ ヤシ科パルミラヤシ(オウギヤシ/ウチワヤシ/サトウヤシ)
・雌雄同種のヤシの花の構造は、同一花茎の根元付近に雄花の花序(座敷箒のようにもさもさ)がつき、先端に雌花の花序がつく。
(ココヤシの雌花は割とつけ根の方にある(10) )
なお開花は雄花が先に咲いて散るので、同一花序内で受粉が起こることは少ないらしい。
・スリランカでは、孔雀椰子(キトゥル)から椰子蜜(キトゥル・パニ)や椰子砂糖(キトゥル・ハクル)を作る。
クジャクヤシの木は、遠目に見ると竹のように、割と葉っぱが細かい。近くで見ると、葉の形状は魚の尾のようなかたち。(16)
●製法 (1)(ロンタルヤシ砂糖作り方:15)
・木に登り、ヤシの雄花の花序を包む皮を剥がし、ひもで束ねておく。その先端をカットし、1,2日日に当てる。
その後、1日2回、先端をカットする作業を、2,3日間ほど続ける。(この時はまだ樹液はとらない)
・地域によって違うが、ココナツ製の壺または葉っぱ製のバケツ、竹筒などを準備する。
・最初に皮をはいでから4、5日目くらいから、花茎の切り口を壺にすっぽりはまるようにセットする。
この壺は1日2回交換する。一人あたり、1日につき10~15本の木に登るそうです。
樹液採取は男性の仕事だとか。
・毎回、先端を少しずつ短くしていき、一つの花から約1ヶ月間樹液を採取する。
・木の上から持ち帰った水のような液体は、放っておくと自然発酵してしまうため、なるべく早く鍋に移し、4時間程度加熱する。
・煮詰まってきたら、かなり力を入れて攪拌する。(2)
(口溶けのよいファッジも練りが大事というし、椰子砂糖のきめ細かい口溶けも、練ることからきているのかも)
・出来上がった椰子砂糖は、ヤシの殻、竹筒などに入れて固める。
・もしくは鍋の中でお玉をこすりつけながらほぐし、粒~粉状にする。
これをふるいで振るって、粗い粒は更に細かくし、粉状の椰子砂糖にする。
※砂糖として使うには粉末状が便利だと思いますが、固形椰子砂糖を囓って、きめ細かい結晶がするっと溶ける、ファッジのような美味しさを一度味わってみるのも強くおすすめします。
●各地の椰子砂糖
・インドネシア サブ島 Gula Sabu (8 動画)
ここではロンタール椰子 lontar というものから樹液を採取する。
・インドネシア バリ島 Gula Bali
・マレーシアのマラッカのグラ・マラッカ
インドネシア製ヤシ砂糖、白砂糖、ココナツミルクを混ぜて煮詰め、竹筒製の型に入れて固めたもの。ヤシ由来100%ではない。(7)
●栄養
・椰子砂糖は血糖値の上昇がゆるやかであり、GI値が低い(資料3)
ブドウ糖はGI100 であるが、椰子砂糖はGI35 。
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■椰子砂糖についての異説
(おそらくwiki英語版(だいぶ怪しい)をソースにしてあちこちに同じようなことが書いてあります。本当なんでしょうか?)
・パームシュガーはアブラ椰子が原料。 ココナッツシュガーは ナツメヤシ、ココヤシ、サゴヤシからとれるお砂糖。(資料3)
・ココナッツシューガーの原料は花もしくは花蕾から採集した花蜜。それに対してパームシュガーは木の幹にキズをつけて採集する樹液。
当然、樹液の方が容易に大量の採集が出来ますので価格はかなり安くなりますがココナッツシューガーのような細かな粉末にしにくいことや味の点で格下に見られている(4)。
・ココナッツシューガーの原料はミンダナオ島のみに育つドワーフ種のヤシの樹からしか採取出来ない。パームシュガーはナツメヤシ、ココヤシ、サゴヤシ、オオギヤシなどからいろいろな樹から採集される(4)
・ココナツヤシとは、ココナツヤシの花芽の樹液から作られる砂糖である。
主にタイでは、ココナツシュガーとパームシュガーは入り交じって使われる。しかしながら、これらふたつは味や質感、製法が異なる。パームシュガーはパルミラヤシ、デーツヤシ(date palm)、シュガーデーツヤシ、サゴヤシ、砂糖ヤシ(sugar palm)の幹の樹液から作られる。 (5 wiki英語版 ココナツシュガー)
※椰子砂糖についていろいろ検索してみましたが、ヤシの幹から樹液をとりそれを砂糖にするというのはウラがとれませんでした。
詳しいことご存知の方、ご教授下さい。
■参考情報
(1)椰子砂糖の製造工程
バリグッズの輸入代行をしている会社.椰子砂糖は50kgから輸入代行してくれるそうです.
テンペ菌は小分け販売しています.
(2)煮詰まった椰子砂糖を練り上げている様子
(3)粉末椰子砂糖販売サイト
(4)ココナツシュガーについてのサイト
(5)英語版Wikipedia coconut sugar
2013年時点ではなんだか怪しいことが沢山書いてありました。
2020年、再度読んでみると、比較的妥当な内容に書き換えられています。
(6)インドネシアのヤシ樹液とそれから作られる黒糖の成分分析 (論文抄録)
(7)マレーシアのグラ・マラッカについて
(ヤシ砂糖100%ではない)
(8)インドネシア サブ島のグラ・サブ 製造工程動画
(9)ココナツシュガー専門店ハニココ屋
ホームページ(ココナツシュガー製造工程)
ショッピングページ
フェイスブック
製法についても詳しく解説してあります。
現地とふかく繋がって製品の製造支援・販売をしていらっしゃるようで、応援したいです。
ただ、こちらでは椰子砂糖のことを ハニココ という名前で呼んでおり、全く一般的ではない名称はあまり効果的ではないように思ってしまいます。
(10)ココヤシの花の写真
(11)gula merah 画像検索結果
やや色薄めか。
お菓子の写真も沢山ヒットするので、こちらがお菓子の材料だと思われます。
(12)gula aren 画像検索結果
やや色濃いめか。
(13)やしの花蜜糖
パルミラ椰子からつくられた椰子砂糖の製法と購入先など
(14)スワヒリ農村ボンデイ社会におけるココヤシ文化(PDFをダウンロード)
アフリカ東岸のタンザニア(赤道のちょっと南、マダガスカル島の対岸よりちょっと北)でのココヤシの葉、実、樹液利用についてまとめてあります。
樹液利用は砂糖にやしないようで、もっぱら酒ですが、樹液採取方法は砂糖の場合でも同様かと思います。
花序からの樹液採集方法・手順が詳しく書いてあります。
葉を編んでかごや紡錘型の綺麗なシートにしたりなど興味深いです。
一点、序論p6の図で、ナツメヤシが結実性一回(生涯一回だけ実をつける)というのは解せないかなあ。
(この著者の見解ではなく、別資料からの引用のようですが)
樹齢100年のナツメヤシがあるとか、wikiで読んだ気がするのですが(wikiの内容も必ずしもですが)。
中近東のような乾燥地帯で、しょっちゅうナツメヤシを植えているとは考えにくい・・。
(15)ブログ ヌサンタラ・キッチン
インドネシア在住の方(研究者?)のブログ。食材や地方の郷土料理など大変詳しいです。
ヤシ砂糖については、こちら(ブンブ/各種調味料)と、こちら(ロンタル)の記事に。
(16)スリランカカレー店のブログ カラピンチャ
スリランカの孔雀椰子(キトゥル)から作る椰子蜜(キトゥル・パニ)と椰子砂糖(キトゥル・ハクル)の製造過程。
孔雀椰子の葉っぱは、細かく分かれた複葉で、竹の葉っぱっぽく見えます。