採集生活

お菓子作り、ジャム作り、料理などについての記録

ドライスターフルーツ

2023-02-27 | +お菓子・おやつ

先日台湾で、干したスターフルーツを頂きました(楊桃乾。楊桃がスターフルーツ)。
最近台湾は、プレーン(無糖もしくは微糖)のドライフルーツが一般的になっていて(食品乾燥機が普及してきたのでしょうね)、なんでも美味しいのですが、このスターフルーツは初めて。

ドライスターフルーツ

こんな感じです。

ドライスターフルーツ

中身はこちら。
平べったくて薄いものがたっぷり入っています。


え、ドライフルーツって星形では、と思うかもしれません。
確かに横に切ると星形。

スターフルーツ

(この写真は2008年3月にコンポートを作った時のもの。15年前かよ!)

でも、これは、味よりも見た目に使う際の切り方。
台湾のスターフルーツは、とてもおいしい果物なので、もっと食べやすい切り方をします。

スターフルーツ

(これは断面が見えてしまっていますが)この赤線のように、窪んでいるところに切り目をいれて5本の稜を切り離し、そして種の部分を膜ごと引っ張って抜くのです。

そうやって切り分けたものがこちら。

ドライスターフルーツ

(写真は、2015年2月にブログ友の女子会で台湾に行ったときのホテルピクニック)
縦長の形になります。

表面の皮はごく薄くて食べてしまえて、果肉はプラムの果肉をより美味しくした、みずみずしく甘酸っぱい味。
大変美味しい果物です。
(日本の大石早生プラムより断然上! 大石早生って、果肉はうすぼんやりして、皮は酸っぱくて渋くて、どこがいいのかよく分かりません・・・)


で、このドライスターフルーツなのですが、とてもよく干してあって、固く、味は薄め・・・。
もともとみずみずしくて、濃い味のものじゃないからな・・・。
細かく刻んでヨーグルトに漬けこんでみました。

(台湾のドライマンゴーは、ヨーグルトに2日ほど漬けておくと、水分を吸って、とろりとして甘酸っぱい、ほぼ生マンゴーに戻ります。おすすめ)

ドライスターフルーツは、漬け込んではみましたが、味は薄いまま・・・。
固さは少しましになって、(戻さない状態の)チリ産ジャンボレーズンくらいの歯ごたえです。


多少味をつけて戻してやった方がいいかも。
という訳でオレンジジュースに漬けてみました。

ドライスターフルーツ
ドライスターフルーツ

ひたひたのオレンジジュースに漬けて、少々チンして2日ほどおくと、水分がほぼ吸われて、いい感じに戻ってきます。
こうすると、歯ごたえも味も、チリ産ジャンボレーズンのような感じ。
ヨーグルトに乗せてもいいし、お菓子に焼きこむにしても、この状態にしてからがよさそうです。

 

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手作りソーセージ

2023-02-22 | +肉・魚系保存食

1月下旬、わらび邸にて、手作りソーセージを作ってきました。
私とダンナサマは今回が初めてですが、ほかの3組(わらびさんご夫妻、Duckbillさんご夫妻、miyakoさん)は過去に何回も作ったことがあるベテラン。
慣れなくてオタオタでしたが、いくつかの作業はなんとかこなすことができました。

ソーセージって、ひき肉を腸に詰めるものですが、結構細かい手順が必要です。
今回は、イノシシ肉で3種、豚肉で4種類(各組1種類ずつ)、計7種ものソーセージを作って、かなりの作業量でした。
前日に肉の準備をして、朝から挽肉開始しても、それでも終わったのは夕方。
みんなヘトヘトでした。

手順をまず書いておきます。
そしてそれに続いて写真を。写真は、イノシシや豚のものが混ざっています。
生肉を触る作業が多く、自分の担当部分は写真が撮れなかったりしました。

■手作りソーセージ手順
●挽肉づくり
・大きい肉の場合、筋膜や腱のような固い部分を取り除く(ミンサーが詰まる)
 ミンサーに入る大きさに細長く切る。
 脂身の多い部分と赤身と、二つに分けておく。
・ミンサーの粗目でそれぞれ2回挽く。

●練り混ぜ・調味
・赤身と脂身、それぞれのひき肉に調味料、安定剤と雪氷を加えてよく混ぜる。
 (雪氷は、氷をフードプロセッサーにかけて作る)
 (肉がとても冷たく、この冷たさをキープしたいので、軍手+ゴム手袋がよさそう)
・脂身の方を、フードプロセッサーにかけてエマルジョン化する。
・両方のひき肉をよく混ぜる。ここでいくつかに分割して、それぞれお好みのハーブやスパイスを加える。

●腸詰
・ソーセージ用の羊腸や豚腸をほどいて、外側・内側ともに水洗いして、ノズルにたくしておく(これは詰める直前がよい。前もってやっておくと腸が癒着してとても詰めにくい)
・タコ糸を10cm~15cmの長さに切っておく。
・ソーセージ詰め機に肉を詰め、ノズルをとりつけ、腸に肉を詰めていく。スタート端は腸を結ぶ。腸の終わりの端はタコ糸で結ぶ。大きな空気が入ってしまった場合は、針で穴をあけて空気を抜く。
・長~い腸詰を、まず中央で数回ひねる。そして両側について、ソーセージの長さの部分でひねり、左右を絡めて一回丸結びをするかたちでひねり目を固定する。これを繰り返して、全部についてソーセージにする。
・それぞれのソーセージについて針でつついて、2~3か所穴をあける。

●茹で・冷やし
・大鍋にお湯を沸かし、太さに応じた時間、茹でる。(太さ1mmあたり××分)
・時間がきたら、水洗いして急冷する。だいぶ冷えたら、氷水を作っておいた中に入れて芯まで冷やす。
・水からあげて、水けをきる。
・キッチンペーパーの上でひねった場所をハサミで切ってバラバラにする。
 全てのソーセージをペーパーの上で拭いて乾かして、小分け冷凍する。(これは各家庭にて実施)

どうでしょう、かなり複雑ですよね。

それでは写真を。

手作りソーセージ

今回は、うち以外の3組がクラテッロ・フィオッコを作りました。
なのでモモ原木が3つ。ここからそれぞれ2パーツ切り出します。

手作りソーセージ

クラテッロとフィオッコを切り出した残りについて、肉を骨からこそげていきます。
(クラテッロとフィオッコは、各自計量して塩をまぶして保管)

手作りソーセージ

お肉こそげ中。

手作りソーセージ

さらにこそげて、だいぶ骨になってきました。
真ん中に積んであるのが、ソーセージ用肉。

手作りソーセージ

こそげた肉ですが、そのままではダメで、固い腱や筋膜をこそげる必要があります。
でないとミンサーが詰まってしまって大変なのです。
ペロペロした筋膜をこそげるのは、結構地道な作業です。

手作りソーセージ

分解してしまった状態ですが、これがミンサー。
挽肉を挽く機械です。
(これらプロ用道具はmiyakoさんがはるばる持ってきて下さいました)

手作りソーセージ

すべての肉はそれぞれ粗目で2回挽きます。これは豚肉の脂身の多い部分。

猪は、すでに挽肉になっているものだったので、もういちど挽肉機を通しました。
猪のスジは豚肉より手ごわそうな感じ。


手作りソーセージ

このあと、それぞれのパートに調味料を。
この精密な作業は熟練のmiyakoさんがやって下さいました。

手作りソーセージ

挽肉には、ごく少量ですが安定剤を混ぜ込みます。
うっかり変な具材(レモン果汁とか)を入れると挽肉が分離してしまったりするようですが、安定剤を入れると仕上がりが安定するとか。

手作りソーセージ
手作りソーセージ

これらは、イノシシのひき肉。3種類の味付けにしてみました。
クミンシードとレモンの皮、セロリとショウガ、ケイジャンスパイス。

豚肉は、わらび家はセロリしょうが、miyakoさんは干しネギ?+スパイス、Duckさんはカイエンヌペッパー、私はドライローズマリー。

手作りソーセージ

挽肉の一部(豚肉の場合は脂身の多い部分)は、調味料と雪氷を混ぜて練った後、フードプロセッサーにかけてエマルジョン化させます。こうすることで、なめらかな肉に、ツブツブのひき肉が混ざるようなスタイルのソーセージになります。

あらびき肉+調味料+雪氷の練り物に、このエマルジョンを混ぜて、ソーセージ肉の出来上がり。

手作りソーセージ

この段階で味見です。
これは猪。みんな集まって、じっと集中して、沈黙の味見タイムでした。
この結果、クミンシードはもう少し足すことに。
なお、塩味は、この段階ではかなり強め。このあと茹でることで、多少塩が失われるためです。

ここまできて、ようやく腸詰工程へ。

手作りソーセージ

これが腸詰の機械。
ハンドルを回転させることで、円筒形の容器をプレスできるようになっています。
向こう側に、腸詰するノズルがついています。

手作りソーセージ

ノズルには、ストッキングみたいに腸をたくしておきます。
これは、豚腸。太いタイプのソーセージになります。

手作りソーセージ

こちらは羊腸。細いタイプのソーセージができます。

この段階ではにょろにょろと長い状態ですが、このあとくるくるひねって、ソーセージの長さにしていきます。
下の写真のように、2本ずつ連なっているものが出来上がります。

手作りソーセージ

次は茹で工程。
大きな鍋で、沸騰しないような一定温度を保ちつつ、太さに応じて茹でていきます。
浮いているカスは、ソーセージにあけた針孔から多少漏れ出た肉汁や肉片。
ツブツブしていて、安定剤が入っている様子がわかります。(純粋に肉だったらもうちょっとばらけますよね)

手作りソーセージ

これは、多分miyakoさんのネパールの干しネギ入り豚ソーセージ。
みなさんおっしゃっていましたが、今回はモモ肉の皮下脂肪がたっぷり練り込まれて、「ソーセージが白い!」そうです。

茹で終わったソーセージは、なんと水洗いして急冷し、さらに氷水で芯まで冷やします。


初めての手作りソーセージですが、びっくりするほど美味しい!
塩味が強すぎず、変な調味料の味もなく、すっきりとした味わい。何本でも食べてしまいたい味です。
(相当脂身が入っていたはずなのですが、全然脂っぽくないのです)
こだわりのハム・ソーセージ屋さんのソーセージも美味しいですが、一口目で美味しいと思わせるためかどうか、だいたいどこも、ちょっと味が濃いですよね。
自作のものは、本当にいい味・・。
miyakoさんは、どちらかのお子さんが帰省した際などに一緒に作って、それぞれのおうちに送ってあげるのだそう。それは嬉しいはず。

慣れない肉加工で、最初はこわごわでしたが、とっても楽しかった!
絞り出し袋でいいから、自分でちょっと作ってみられないかなあ。おいしいもんな~。
企画としてあたためてみよう・・・・。

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ラズベリー2023:剪定

2023-02-21 | +ベリー類(ブルーベリー、ラズベリー、ブラックベリー、桑、ぐみ、ユスラウメ)

1月末頃から着手して、ラズベリーの剪定、ほぼ終わりました。
参考にしようとあてにしていた栃木のプロのラズベリー園さんは、春果は採らないとのことで、全て地際でカット、だそうです。
私は、去年の春果が割とよかったので、今年もそれを期待しています。あと昨年は植え替えた年だったので30~40cm程の短めにカットしてありましたが、より長めに枝を残してあります(これが凶と出そうな気もする。短い方がそこに栄養が集中して大きな実になりそう・・・)。

剪定方法
・昨春に実をつけた、完全に刈れた枝は根元から取る(これは除去済み)
・昨秋に実がついていた、枝の先端は落とす
・地面から生えている枝で、鉛筆よりも細いものは地際でカット
・細かい枝は付け根から少し残してカット
・切った枝は、ちょっと離れたところに捨てる
・トゲトゲが痛いので、手袋をして実施

あと、昨年欲しかった場所にヒモを追加してみました。


ラズベリー剪定

手前に、剪定済みの枝が。
高さはお腹くらいにしてあります。
白っぽく見えるのが追加したヒモ。
主枝的な枝を、なるべく中央に揃えたいのです。


ラズベリー剪定

こちらは別の列。
追加したヒモが白く見えています。
高くぴょーんと伸びているのは、竹の支柱。

ラズベリー剪定

ラズベリーって、最初まっすぐしっかり立っているように見えて、途中から腰砕けにぐにゃぐにゃしてくるので、できれば支柱で支えたいかなと・・・。

ていうか、そもそも、この紐を張った範囲内に新芽が出てくるかが大問題です。
去年は植え替えたばかりだったのでそれなりに列におさまっていましたが、この1年で根っこが好きなところに伸びてるはずで、来春はそこらじゅうから芽がでてきそうだ・・・。
新芽の植え替えってありなのかな。
生きている根が傷ついて成長が遅れたり、病気になったりとかで普通はしないはずですが、多少成長が遅れる分には、夏に無駄な花が咲かない分、いいかも・・・。

ラズベリー剪定

このあたりは、オリジナルの株の一部が植わっていたところ。(植え替えていないところ)
昨冬時点では一列っぽく見えましたが、新芽が勝手に列外から出ています(より日当たりのよい側へ)。
今シーズンは、これに似た現象が全域で起こるってことよね・・・。

でもって、ここの枝はえらく太くて立派で、除去するに忍びなく・・・。
この春の新芽は、このエリアの更に右側から出てくるよな、きっと・・・。
ここの枝は、今、植え替えてしまったほうがいいのだろうか・・。



ラズベリー剪定

こちらは一季なりラズベリー。
この枝から新芽が出て、そこに年一回、実がつくようです。
それにしても細い枝・・・。(二季なりの方なら切り捨てている太さ)
生きているのか死んでいるのかもわからないくらいです。
どんな風に育つのか楽しみです。

ラズベリー剪定

このヒトも小さいな・・・。


春果を期待しすぎて、残している枝が多すぎのようにも見えます。
今度もう少し減らすのと、畝外の太い株を掘り上げて、細い株のところに植え替えるのもいいかも。


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眼鏡ホルダー(マグネット式)

2023-02-20 | +食べるもの以外

ダンナサマは老眼で小さい字が読めない割には、外出先で眼鏡をきちんと持ち歩きません。
一応持ってはいても、眼鏡ケースに入ってかばんの中にあって、メニューを読むとか、必要なときにぱっと出てこない状態。
で、私に、「読んで」と。
なんか、もうちょっと自主的に行動してほしいなあ。

眼鏡のツルにひもをつけて首から吊るすものを以前使っていましたが、それが切れてからは、買いなおす気配はありません。
聞き取り調査をしてみると、ぶら下げた眼鏡が胸の上でぶらぶらするのが不便だったとか。
で、一番使いやすいのは、大き目の胸ポケット。
ここに畳んだ眼鏡を入れておくのがいいようなのです。

ワイシャツなど胸ポケットがある服を着ているときはいいのですが、冬は、セーターやチョッキを着ています。
こうなると、眼鏡を入れる場所がありません。

世の中のひとはどうしているのか、と眼鏡ホルダーで検索してみると、
ピンブローチタイプの眼鏡ホルダーというものがあるようです。

ラペルピン眼鏡ホルダー

たとえば、こちらのお店のこれとか。


さらに探していくと、ピンブローチと組み合わせる、輪っかだけ、というものがありました。

ラペルピン眼鏡ホルダー

こちらのお店のもの。

これなら、ピンブローチで好きなものを選んで、組み合わせられるよね☆
ピンブローチって、これまで全く興味のなかったものですが、見始めるといろいろあって、つい検索しまくってしまいます。
特にイタリアのサツルノ社のものが、立体的でエナメルもつややかで、かわいい☆

サツルノ社で画像を眺めまくっていたら、丁度、気に入ったデザインと、輪っかの組み合わせのものを見付けました。

ラペルピン眼鏡ホルダー

帽子に入った猫ちゃんと、輪っかの組み合わせ
これはかわいい。
私がほしいくらいだ。

ちょっと高いですが、ダンナサマにもたまにはアクセサリーもいいかも。
ほぼ買うつもりで、一応確認のため、ダンナサマを振り返ってみたのです。
丁度、手編みニットのチョッキを着ていたました。
が。ふと気づいたことが。
ふわふわニットに、1本針のピンブローチは、安定性の面でどうだろうか?
スーツの襟のようなしっかりした素材ならばいいけれど、柔らかくて伸び縮みするようなニット素材には・・・?

高いのを買う前に、何らかの(安い)ピンブローチで実験してみた方がいいかもしれない・・・。


一旦ピンブローチはやめてみて、他に「眼鏡ホルダー」で検索し続けてみました。
ネックレスに輪っかがついたタイプとか、いろいろある中、ふと目に留まったのが、マグネットタイプ。
マグネットがそれぞれ2個ついている、コの字型の、服の表側用と裏側用のパーツから構成されています。
で、服をその2パーツで挟み込み、表側パーツのコの部分に、眼鏡のツルをひっかける、というもの。
説明するより見せた方が早いです。
要するにこれを買いました。(こちらのお店
3個で1600円くらいと、お手頃です(なくす可能性もあると思って複数買っておきました)。
色は黒とシルバー、選べましたが、黒は見失ったときに見付けづらいので、やや目立つシルバーカラーに。

マグネット式眼鏡ホルダー

これがマグネット式の二つのパーツ。
レビューで、「意外と小さい」と書いている人もいましたが、(それを読んでいたからかもしれませんが)私の印象は「意外と大きいのね」。

マグネット式眼鏡ホルダー

マグネットでかっちりくっつきます。
(写真不鮮明ですみません)
柔らかいニットにつけるにしても、2か所、かつ針(点)でなくマグネット面で固定するのは、安定感があってよさそうです。


よし、装着だ! 
ダンナサマに渡して、つけてみてもらいました。

え、場所、そこなの?

マグネット式眼鏡ホルダー

胸ポケットの場所につけるのかと思っていたら、なんか、みぞおち当たりにつけてました。
こちらの方が便利なのだそうです。
ふーん。そうなんだ。
高いラペルピンを買わなくてよかったかも。
(ラペルピンの形をしていたら、この場所ってちょと変になってしまいそうですよね?)

ひとまず、しばらく使ってみてもらいます。
先日ちょっと外出したときは、ちゃんと眼鏡が使えていたようなので、まあまあかな?

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バターなしフルーツケーキ

2023-02-15 | +お菓子(西洋)

昨シーズンのカット干し柿が、冷凍庫にありました。

カット干し柿

冷凍する前の段階で、しっかり粉を吹いていた状態です。
カチカチではないけれど、噛みしめる感じの固さ。


これを使って、以前から気になっていたケーキを作ってみることにしました。
バターを使わないフルーツケーキなのです。
(何年も前にコピーしたので、もとの本が分からなくなってしまいました)

モリーのケーキ
モリーのケーキ


レシピを転記しておきます。

●材料(900ccのパウンド型1個分)
デーツ 225g
水   275g
様々なドライフルーツ あわせて450g
全粒粉  75g
小麦粉  150g
ベーキングパウダー 小さじ3
スパイス 小さじ1
オレンジ果汁 75cc

●作り方
・鍋に水とデーツを入れて沸騰させる。(おそらくペースト状にする)
・他の材料を入れて混ぜる。
・180度のオーブンで1時間ほど焼く。


バターなしですが、なんか、普通のフルーツケーキっぽい感じですよね。
本当にこんな風になるのでしょうか?
確か「バラブリス」というお菓子もバターなしでこんな感じのフルーツケーキだったような気がします(あまり調べていませんが)。

まずはテストで、少量(小さいパウンド型1本分)、作ってみることにしました。
もとの材料の、5分の2倍。

バターなしフルーツケーキ

カット干し柿から種を取り除き細かく刻み、水で煮たものに、ドライフルーツを混ぜたところ。

ここに粉類を混ぜて行ったのですが、とてもパフパフに粉っぽいため、急遽卵を1個加えました。
焼くというより蒸したくなるような生地の質感だったので、パウンド型には2重のアルミ箔できっちりフタをして焼きました。

バターなしフルーツケーキ

できあがり。
なんかそれっぽくなったかも。

バターなしフルーツケーキ

断面。
本の写真とは違うけれど、割といい感じ。
味も、バターは入れていないけれど、十分お菓子っぽいです。
ドライフルーツがぎっしりで、贅沢な風味。
(特に、即席の紅まどんなピールが、見た目的にも味の点でも効いてる)


これは結構いいかも。
という訳で、今度は残りのカット干し柿を全部使う方向で、量産したのでした。
ところどころちょっと変えつつ

そしたら、なんか、思ってたのと違うのが出来た・・。

バターなしフルーツケーキ
バターなしフルーツケーキ

少々目がつまって、色が濃いめ。
(膨らむかと思ってつけた、哀れな真ん中のくぼみを見て・・・)
前回のものよりも、ベルベデーレぽいというか、クリスマスプディングぽいというか、ずっしり系になりました。

味は、ドライフルーツもたっぷりだしすごいダメということはないのだけど、初回との違いに呆然・・・・。
ダンナサマは、「え、別にいいと思うよ」とフォローしてくれたのですが。
(ちょっと前、一週間ほどブログが書けなかったのは、これで落ち込んでいたせいでした・・・)


この違いの原因はおそらく次の通り。

・初回、とてもパサついた生地だったので、今回つい、水分を多く入れてしまった
 (初回、出来上がりはまあまあだったのに、そちらを無視して、焼く前の生地の質感を変えてしまった。やらなくていいことをした・・・)
・生地の量の割には容器が小さくて、無理に何回も練り混ぜることになってしまった。
・とても湿った生地だったので、焼き時間を長くしたのだが、そのせいでカラメル色になった
・クルミを入れたのもやや生地が重くなった原因かもしれないが、結果的に、このずっしりケーキにはクルミがある方がよかった。

この予想外・ずっしりケーキは、ゆきがかり上、幾人かにお渡ししてしまったのでした・・・。
こういうものだと思って消費して頂けれたのだといいけど・・・・。


いまだに、心の傷がうずく・・・。
何か成功確実のお菓子を作って、気持ちを切り替えようかな!


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タチウオ三昧

2023-02-13 | +ふたりの日

先日、ブログ友から、海釣りの釣果を頂きました。
立派なタチウオ、五匹!
(松太郎ママさん、ありがとうございました!!)

みてみて、この大きさ!
(有難いことに、ワタは既に綺麗にしてあります)
捌くのとお料理、前日からYoutubeで予習しておき、頑張りました。

タチウオづくし

手順は、次のような感じがよさそうです。

■太刀魚処理手順(ワタ抜き済みの場合)
・(前日までに)ペティナイフ、包丁をよく研いでおく。捌くのにはペティナイフを使う。

・保冷箱から取り出し、それぞれ背ビレを切り落とす。
・頭とカマ部分を落とす。
(歯が鋭いので注意。頭は使わない人もいるようで、私も今回はエラのみ使いました)
・肛門までで1カット、それ以降は、冷凍用袋の長さにあわせて新聞紙の上などでカット。
 しっぽの先端は、幅6cmくらいのところで落とす。
・複数匹ある場合は、それぞれのパーツ(おなかパーツ、太胴体、しっぽ)に分けて袋か何かに入れておく。保冷箱には保冷剤を入れ、魚と直接触れないようにする。
・保冷箱から取り出してさっと洗いよく水気を拭き、綺麗なまな板の上で、パーツごとに三枚おろしにする。(詳細は動画を検索)
出来上がったフィレは、パーツごとにキッチンペーパーを2枚挟んでサンドイッチにして冷蔵庫へ。
・アラ、骨はひとまとめにしておく。
 (今回は、骨はアラ汁と骨せんべいにしました。)
・アラ汁にする場合は、少し焼いてから煮出す。
・タチウオは日持ちするし、数日おいたくらいの方が水分が抜けて丁度よくなるので、当日がんばって刺身にする必要はない。(けど今回は頑張ってやりました)
・(当日は元気ないと思うので)翌日以降、すぐ食べない分について、ほどよく水気の抜けたフィレを、昆布に挟んだりラップで挟んだりして冷凍。



タチウオづくし

アラだけでこんなに山盛り。最初アラ汁にするつもりでしたが、あまりに量が多いので揚げて骨せんべいも作ることに。

タチウオづくし

中骨の太いところと、カマ部分を軽く焼きます。
(2回分焼いて、2回目はうっかりきつね色になってしまいました)

タチウオづくし

これから煮出すところ。
脂がのってます。

タチウオづくし

ネギとお豆腐、昆布も入れたアラ汁(塩と薄口しょうゆ)。

タチウオづくし

骨せんべい。すきとった腹骨や、細めの中骨をこちらに。
腹骨のところとしっぽの細いところは片栗粉をはたいてみました。
(粉をはたいた方がいいのか素揚げがいいのかはよく分かりません・・・)
しっぽは、どうなるのかと思いましたが、揚げると中骨まで全部食べられます。
身が薄いしっぽを三枚おろしにするのは大変なので、もうちょっと太いところまでも揚げてしまうのがよさそうです。

この揚げ物、サクサクで味が濃くて、とっても美味!
太刀魚を捌いたら絶対作った方がいいと思いました。

中骨の太いところも揚げれば柔らかくなるとのことで、アラ汁でなく全部揚げてしまうのもいいかもしれません。

タチウオづくし

こちらがフィレ。これは最後におろしたしっぽ部分。
ペーパーで包んでひとまず冷蔵庫へ。

手順的には、三枚おろしが全部終わった後、アラ汁や骨せんべいを作りました。

タチウオづくし

手順としては最後にお刺身。
皮だけに細かい包丁目を入れて、バーナーであぶります。
(今回このためにバーナーを買ってきました)
できれば少し冷やしてから、カット。

タチウオづくし

お刺身(焼き霜づくり)、できあがり~。
カイワレを添えましたが、小葱の方が合うかな?
ポン酢やわさび醤油で頂きました。

この日は、はやめに取り掛かったつもりが、夕食が1時間遅れ。
ヘトヘトでしたが、美味しいタチウオづくしで満腹になりました☆


タチウオづくし

こちらは別の日。
小麦粉をはたいてムニエルにしました。
ソースは、刻んだケイパー、パセリ、レモン汁、オリーブオイル(グリーンオリーブがあればそれを刻んでもよさそう)。
これまた、ふわトロで、絶品でした。
身の薄いお魚ですが、長めに焼いてしまっても(皮をぱりっとさせたくて皮面を最後に追加で焼いたのです)、脂がのっているせいか全くパサつかず、しっとりふんわりです。


写真を撮り忘れましたが、昆布締め(冷凍しておいたもの)も、実家に持って行って美味しくいただきました。

タチウオを捌くのは初めてでしたが、5匹もやって、結構自信ついたかも!

松太郎ママさん、楽しくておいしい体験を、ありがとうございました☆





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シャーナーメあらすじ:7.ザールとルーダーベの話(4/4)

2023-02-10 | +シャー・ナーメあらすじ(挿絵付き)

ようやく4/4になりました。
読んで下さった方、ありがとうございました。興味なかった方、今週はこういうのばっかで失礼しました
このザールとルーダーベの息子が、シャーナーメ中盤の主要な登場人物になります。シャーナーメで一番有名なヒーローかも。
次の章は彼の生誕と幼少時の、短い章です。(まだほとんど準備が出来ていないので、しばらく後になります)

====================
7.ザールとルーダーベの話(4/4)
====================

■登場人物
ザール:シスタン、ザブリスタンの若王(跡継ぎ)。生まれつきの白髪。Zal
ミフラーブ:ザールの支配地域にあるカボルの領主(アラブ系で、かつてイラン王位を簒奪した悪王ザハクの子孫)。Mehrab / メフラーブ
シンドゥクト:ミフラーブの妃 Sindukht
ルーダーベ:ミフラーブの娘 Rudaba / Rudabeh / ルーダーバ
サーム:ザブリスタンの先王。ザールの父で、ザールに後を託してマヌチフルの命令でマザンダランとカルガサールに遠征中。Sam / Saam
マヌチフル:ザブリスタンが臣従する、大イラン帝国の王。シャー。Manuchifl

カボル(地名):ミフラーブの治める地域。カーブル / カブル / カブール / Kabol / Kabul。現在のアフガニスタン北東部。
マザンダラン(地名):マヌチフルの命でサームが遠征に行った土地。Mazandaran
カルガサール(地名):マヌチフルの命でサームが遠征に行った土地(または民族)。ゴルグザランとも。Kargasar / Gorgsārān

■概要
マヌチフルによるカボル攻撃命令は、ミフラーブを再び動揺させます。
彼は妻シンドゥクトに怒りをぶつけますが、シンドゥクトは自身の命と全財産を賭けてサームとの交渉に臨みます。
サームは、その正体を知らないまま、女使節とその家族の安泰を誓い、また正体を知ったのちも、カボルとの友好を約束します。
マヌチフルは捨て身の覚悟でやってきたザールに心をうたれ、彼の望みを叶えてやることにします。
ザールは、賢者たちの問う謎に見事にこたえ、また弓矢や騎馬試合にも勝ち、シャーと王宮の皆に能力を見せつけて、褒美の品とともにサームのもとに戻ります。
サームとザールはともにカボルを訪ね、カボルにて、ザールとルーダーベの結婚式が執り行われます。

■ものがたり

□□15.ミフラーブ、シンドゥクトに怒る 

さて、一方カボルでは、マヌチフルの命令でサームが進軍してきたことが伝わるや、ミフラーブは怒り狂いました。
彼はシンドゥクトを呼び出して、怒りを彼女に対してぶつけました。
「私には帝国の君主に立ち向かう力はない。お前とその下劣な娘を公衆の面前で殺して、それで王をなだめるしかない。誰があのサームと闘うというのか。」

f83v
●シンドゥクトに怒りをぶつけるミフラーブ83v

シンドゥクトは彼の前に跪き、考えを巡らせました。ミフラーブは怒りでギラギラと輝くほどです。
「閣下、わたくしがサームのところへ参ります。わたくしは命を賭けて彼に訴えてみますので、あなたは財産を賭けて下さい。私に宝物を預けて頂けますか。」
「よろしい、これが宝物庫の鍵だ。奴隷、馬、王座、王冠、何でも持って行くがいい。いっとき衰えても、国を炎から救えるのならば再び輝かせることができるだろう。」
「我が君、わたくしが出かけている間、ルーダーベを傷つけないことを誓ってください。わたくしは彼女をこの世の何よりも大切に思っています。」
夫が誓うと、彼女は出発する準備をしました。彼女は金襴の錦を身に纏い、真珠と宝石を頭に飾りました。そして数々の贈り物・・・。
30万枚の金貨、黄金の装身具をつけたアラブ馬30頭、銀の馬具をつけたペルシャ馬。黄金の胴着をつけた奴隷60人がそれぞれ、樟脳や麝香、金、トルコ石、あらゆる種類の宝石を詰めたゴブレットを持っています。更に、様々な宝石を縫い付けた金の鎧が40枚、銀や金で細工したインドの太刀が200本―そのうち30本の刃には毒が塗ってあります―、赤毛の雌ラクダ百頭、荷物用ラバ百頭、宝石の冠、腕輪、腕輪、耳輪。
そしてまた、様々な宝石がはめ込まれた夢のように美しい金の玉座―その幅は二十キュビト、高さはりっぱな戦士の身長ほどもあります―、 最後に、4頭の強大なインド象が、衣服や絨毯がぎっしり詰まった梱を運んできました。

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●贈り物の行列84v

このような準備が整うと、彼女はすぐに馬に乗り、サームの野営地に向かいました。

□□15.サーム、シンドゥクトの心を癒す 

彼女は到着すると、自分の名は告げず、衛兵に
「カボルからの使者が、戦士ミフラーブから世界の征服者サームに伝言を持って参りました」
と告げました。
従者が取り次ぐと、シンドゥクトは馬を降りてサームの前で地面に接吻し、サームと将軍たちを称えました。そして、数々の贈り物を一つ一つサームの前に披露し、その列は2マイルにも及びました。

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●サームに挨拶するシンドゥクト84v


サームはその光景に驚き、まるで酔ったかのようにクラクラとしつつも、両腕を組んで考え込みました。
「このように豊かな国から、女性の使節が来るのか? そしてもし私自身がこの女からこれらを受け取れば、私に戦を命じたマヌチフル王は不機嫌になるだろう。もし私がこれらを返せば、ザールはシムルグのように激怒して立ち上がるだろう。」
彼がついに出した結論はこのようなものでした。
「これらの贈り物は、カボルの美しい女使節からとして、ザールの会計係に渡してくれ。」

シンドゥクトは贈り物が受け入れられたことに安堵して言いました。
「閣下のこの度の進軍について、もし非があるとすればそれは領主ミフラーブのみであり、いま彼は血の涙を流しております。カボルの人民には罪はありません。彼らはあなたの足の塵の下にある奴隷であり、町全体があなたのために生きているのです。どうか明星と太陽の創造主を畏れ、流血を避けて下さい。」
サームは言いました。
「私の質問に答えて下さい。あなたはミフラーブの奴隷でしょうか、それとも彼のお妃―ザールが見た姫のお母上ーですか。どうかその娘の背丈、容貌、髪、性格や知恵を教えて下さい。彼女が彼にふさわしいかどうか分かるように。」

シンドゥクトは答えました。
「我が君、最も偉大な君主よ、わたくしには館や財産があり沢山の親族がおります。これらのもの、わたくしやわたくしの愛する者たちを傷つけないと誓ってください。そうすれば質問にお答えいたします。」
サームは彼女の手をとって誓いました。

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●シンドゥクトの手をとって誓うサーム85v

シンドゥクトは地面に接吻し、隠していたことを告げました。
「わたくしは、カボルの領主でありザハクの一族であるミフラーブの妃です。わたくしは、ザール殿が思いを寄せるルーダーベの母親です。我々と我が領民はそもそもシャーと閣下に臣従を誓っておりました。
今、わたくしはあなたの意思を知るために参りました。
もし領主の我々がそこを治めるに値しないのであれば、まずこのわたくしから始めて、殺すに値する者は殺し、投獄すべき者は投獄して下さい。しかしカボルの無実の住民を傷つけないで下さい。」

サームは、相手が明晰で聡明な女性であることを知りました。その顔は春のように美しく、糸杉のようにすらりとして、腰は葦のように細く、雉のように堂々とした足取りでした。
彼は言いました。
「私は、生涯をかけてあなたに誠を尽くし、先程の誓いを守り抜きます。
私はザールがルーダーベ姫を妻に選んだことを認めます。あなたとあなたの大切な人たち、カボルの民が安全に幸せに暮らることを保証します。あなたは我々とは別の民族ですが、王冠と王座にふさわしい方です。
私はマヌチフル王にとりなしの手紙を書き、ザールがそれを彼のもとに持って行きました・・というより飛んでいきました。彼は翼が生えたように素早く出発し、鞍を見ることなく鞍に飛び乗り、馬の蹄は地面を踏んでいないかのようでした。
おそらくシャーは微笑んで寛大に答えて下さることと思います。この鳥の養い子が、心乱れて涙でできた泥の中に立っているのですから。」

シンドゥクトは心から安堵しました。

王座の前から下がったあと、シンドゥクトはミフラーブのもとに使者を送り、良い知らせを伝えました。
「もはや心配はいりません。この手紙の後、わたくしはすぐにカボルに戻ります。」

翌日の朝、シンドゥクトはサームの宮廷に向かい、最高の女王として迎えられました。彼女はサムの前に出て礼をし、カボルに戻る旅のこと、サームを客として迎える準備のことを長い間彼と話していました。
サームは羊毛、絨毯、衣服などの贈り物を授け、シンドゥクトは彼女は幸運の星の下、微笑みをたたえて家路につきました。


□□16.ザール、サームの手紙をマヌチフル王に渡す 
一方で、イラン王宮は。
マヌチフルはザールが近づいていることを知り、宮廷の貴族たちは彼を歓迎するために出迎えに行きました。
宮廷に到着すると、ザールは王の前に出て、地面に顔をつけたまま深く礼をしました。
王は寵愛するザールのその様子に心うたれ、顔の埃を落とし、薔薇水を振りかけるように命じました。
そして長旅をねぎらい、サームの手紙を手に取り、読み上げ、微笑みました。

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●手紙を受け取るマヌチフル王86v

「お前は、異民族によるイラン支配という私の古い畏れを呼び起こした。しかし、お前の老いた父サームからの感動的な手紙のために、私はもうそれを考えないことにした。私はお前の心からの望みを叶えてやりたい。ただし、我々がお前のことを吟味する間、しばらくここにとどまってくれ。」

料理人が金の盆に盛られた料理を運ぶと、マヌチフルはザールと一緒に座り、すべての族長を呼んで、ザールを歓迎する宴を催しました。

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●酒や料理を運ぶ従者たち86v


翌日、王は神官、占星術師、賢者などを玉座の前に呼び寄せ、星を読めと命じました。彼らは3日間、星座盤を手に星を調べ、その秘密を知ろうと努力しました。そして4日目に王の前に出て言いました。

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●星を読む占星術師たち86v

「ザールとルーダーベの息子は永遠に有名な英雄になるでしょう。その命は何世紀にもわたって長らえ、力、名声、恩寵、気力、頭脳、知恵を備え、戦いにおいても宴においても他の追随を許さないでしょう。しかし鷲は彼の兜の上に舞い上がらず、彼は主たる者を見限ったりその権力を奪うことはありません。シャーの僕としての彼は、イラン軍の庇護者となるでしょう。」
王は彼らに言った、
「私に話したことは秘密にしておいてくれ。」
そして、ザールを呼び出して、賢者たちの問う謎に答えさせるようにしました。

□□17.ザールは試される 

賢者たちはザールのそばに座り、彼の知恵を試すために次々に問いかけました。

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●マヌチフル王と賢者たちとザール87v

一人目:「それぞれ三十本の枝を持っている十二本の立派な糸杉がある。」
二人目:「二頭の立派な疾走する馬があり、一頭は漆黒の海のように黒く、もう一頭は澄んだ水晶のように白い。二頭は争っているが、どちらも追い越すことはできない。」
三人目:「三十人の男が王の前に整列し、そなたには29人にしか見えないが、あなたが数えるとその数は完全なものになる。」
四人目:「緑の植物が生い茂り、小川が流れる美しい草原が見える。そこに一人の男が大きな鎌を持ってやってきて、植物が青々していようと枯れかけていようと、決して脇目も振らずに刈り倒し、誰が叫んでも聞き入れない。」 
五人目:「海からそびえる二本の糸杉があり、そこに鳥が巣をつくっている。夜には一本に、昼にはもう一本に巣を作る。一方は常に枯れ、他方は常に新鮮で香り高い。」 
六人目:「山の中に栄えた都を発見したが、人々はそこを離れ、茨の多い荒れ地を好み、そこに月に向かってそびえ立つ家を建てた。彼らは栄えた都を忘れ、それを口にすることもなかった。その時、地震が起こり、彼らの家は消え、彼らは去った都市を恋しがっていた。」
「さあ、これらの言い伝えを説明してください。それができれば、あなたは塵を麝香に変えることになるでしょう。」


□□19.ザールは賢者たちに答える

ザールはしばらく深く考え込んでいましたが、肩を落として深く呼吸をし、賢者たちの質問に答えて言いました。

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●問いに答えるザール87v

「まず、それぞれ三十本の枝がある十二本の木は、一年の十二ヶ月を表します。月は新しい王が玉座に座るように十二回生まれ変わり、各月は三十日で、このように時が流れています。
二つ目。火のように速く走る二頭の馬、白と黒が互いに追い越そうとするのは、天を越えて我々の上を行き交う昼と夜です。
三つ目。三十騎が王子の前を通るが、一人足りず、数えてみるとまた三十人いるのは、月の満ち欠けであり、29日までは満ち欠けを数えることができますが、ある夜、その満ち欠けはみえなくなります。
さて、2本の高い糸杉、鳥と巣によって表現された隠された意味を解き放ちます。
二本の糸杉は天の定める二つの季節で、太陽が牡羊座(春分)から天秤座(秋分)を巡るまでは世界は明るい季節であり、それより後は世界は魚座(次の春分)に入るまで暗い季節となります。季節は、その片方は常に暗く萎れ、もう片方は明るく鮮やかです。鳥は太陽であり、明と暗の世界を巡っています。
山の中の町は永遠の神の世界です。茨の荒野ははかない現世で、ときに愛撫と富を与え、ときに痛みと苦しみを与えるものです。神の定めたところにより、あなたの日を延ばし、あるいは断ち、風が起こり、地は揺れ、世界は叫びと嘆きで満たされます。
鋭利な鎌を持ち、みずみずしい植物も枯れた植物も切り倒し、懇願も聞かないその姿はまさに死神です。人間は刈り倒される芝草であり、祖父も孫も、若さも老いも関わりなく、死神は行く手をすべて切り倒します。これが世の習いであり、人の定めです。
時というもの、私たちはこの扉から到着し、この扉から出発します。これがすべての命を説明するのです。」

ザールが説明を終えると、その場にいた全員がその理解力に驚きました。マヌチフルは喜び、盛んに拍手を送り、満月のような豪華な宴会を催すように命じました。この宴会で、皆は世が暗くなり知恵が衰えるまで酒を飲み続け、廷臣達の叫び声が宮中に響き渡り、二人が帰る時には互いに腕を組んで楽しく酔っ払って帰りました。

□□18.ザールが腕前を見せる 

太陽が山の上に昇り、人々が眠りから覚めると、ザールは勇ましい姿で王の前に現れ、宮廷を出て父と再会する許可を求めました。
王は彼に言いました。
「若き英雄よ、もう一日だけ我らに与えよ。サームに会いたいと? そなたが恋しいのはミフラーブの娘であろう。 」
そして、銅鑼、シンバル、喇叭を広場に鳴らすように命じました。戦士たちは、槍、メイス、矢、弓を携えて、威勢よくそこに集まってきました。広場には、一本の古木がありました。
ザールは弓を握って馬を進め、その木に向かって矢を放つと、その矢は大きな幹の中心を刺し貫きました。
ザールは従者に盾を求め、再び馬を進ませると、弓を投げ捨て、投げ槍を手に取り、積み重ねた3枚の盾に勢いよく投げつけ、盾を貫通させました。
王は尊い戦士達に向かい「お前達の中で誰か彼と一騎打ちをする者はいないか」と言いました。戦士たちは鎧を身につけ、馬の手綱をしならせて、光り輝く槍を手に、広場に乗り込んできました。ザールは馬の蹄から土埃を巻き上げながら突進し、まるで豹のように砂塵の中から抜け出すと一人の戦士に襲いかかり、ベルトを掴み、いとも簡単に鞍から引き落としたので、王と軍勢は驚きの声をあげました。
「このような獅子は見たことがない。どうか彼がいつまでも勇猛であるように」
そして一行は宮殿に戻り、王はザールに栄誉の衣やさまざまな褒美をとらせたのでした。


□□19.マヌチフル、サームの手紙に答える 

マヌチフルは、サームの手紙に返事を書き記しました。
「比類なき勇者よ。そなたの立派な息子が私のもとにやってきて、そなたの願いと彼の切望を知った。私は彼の願いを全て叶える。私は彼を幸せな気持ちでそなたの元へ送り返そう。どうか悪が彼に近づかないように。」

サームは使者からザールの喜ばしい帰還の知らせを受け、歓びで若返るようでした。
そして彼はカボルに使者を派遣して、マヌチフルのザールに対する厚遇と二人の間の幸福をミフラーブに伝え、ザールが帰ったらすぐに一緒にカボルを訪れると告げました。使者は颯爽とカボルに向かい、その知らせを伝えると歓声が空高く上がりました。
カボルの王は、ザボレスタンの支配者と親戚になることを喜び、心は不安から解放され唇にはようやく微笑みが戻ったのでした。

シンドゥクトはルーダーベにも吉報を伝え、それから来客のために宮殿の準備に取り掛かりました。謁見の間を楽園のように飾り、エメラルドや真珠が縫い付けてあって、その一粒一粒が水滴のように輝く絨毯を敷き詰めました。そして豪華な椅子―中国風の模様が描かれ、宝石がちりばめられ、彫刻されたレリーフで縁取られ、その足はルビーで作られている―が置かれました。葡萄酒に麝香と竜涎香を混ぜました。置きました。さらに、

次にルーダーベを楽園のように飾り、肌に呪文を書いて彼女を守りました。そして、ルーダーベを黄金の部屋に閉じ込めて、誰にも近づけないようにしました。

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●黄金の部屋にいるルーダーベ89v

カボルの国中が色彩と香り、そして貴重な品々で美しく飾られました。葡萄酒が運ばれ、象の背にはルームの錦がかぶせられ、その上に黄金の飾り物をつけた楽師たちが座りました。歓迎の宴が催され、奴隷たちが麝香や竜涎香の香る水を撒き、絹や金襴緞子を道々に敷き詰めて進んでいきました。行列には麝香と金貨が撒かれ、地面は薔薇水と葡萄酒でしっとり濡れました。

□□20.ザール、サームの元へ帰る 

その間にザールは、空を飛ぶ鷲のように、あるいは水面を滑る艇のように、全速力で帰途につきました。誰も彼の接近に気づかない程だったので、誰も彼を迎えに出ませんでしたが、突然宮殿からザールが来たという叫び声が上がりました。
サームは嬉しそうに迎えに出て、長い間抱きしめました。ザールは父の抱擁から解き放たれると、地面に口づけをし、見聞きしたことをすべて語り出しました。二人は並んで玉座に座り、シンドゥクトがサームに会いに来たことを笑み交わしながら話しました。サームは言いました。
「シンドゥクトという女性がカボルの使者として来て、 彼女に敵対しないようにと私に約束させたのだ。私は彼女が望んだことをすべて受け入れた。まず、ザブリスタンの将来の君主がカボルの美女を妻とすること、次に、私たちが行って彼女の客となり、すべての傷を癒すことだ。
今、彼女は『すべてのものが準備され、香りと装飾が施されています』と伝えてきた。さて、ミフラーブ殿には何と返答したものだろうかね。」

ザールは頭から足までチューリップのように赤くなり、こう言いました。
「父上、もしあなたが良いと思われるなら、訪問団を派遣してください。そして、私たちも追いかけて参りましょう。いくつか相談することがありますから。」

銅鑼とシンバルの音とともに一行は出発しました。そしてある場所に王室の天幕を張り、ミフラーブに、サームとザール、そして戦士達と象がほどなく到着することを知らせるために先触れを送りました。
知らせを聞くと、ミフラーブは喜びで頬を紅潮させ、そして出迎えの軍勢を送り出しました。太鼓や喇叭、鐘の音楽が鳴り渡り、赤・白・黄・紫の絹で作られた旗がはためき、雄鶏のように着飾った兵隊が並び、鈴をつけた大きな象と吟遊詩人もいて、見渡す限り楽園のようでした。
ミフラーブはこの軍勢とともに進み、サームを見ると馬から降りて歩きました。二人は抱き合い、サームは万事順調か訪ねました。ミフラーブは、サームとザールの両方に丁重な挨拶をすると、新月が山の上に昇るように再び馬に乗りました。そして、ザールの頭に宝石をちりばめた黄金の冠を載せると、一行は昔話に花を咲かせながらカボルに到着しました。

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●カボルに到着したサーム、ザール、ミフラーブ89v

町はインドの鐘、リュート、竪琴、喇叭の音で一杯になり、馬のたてがみは麝香、葡萄酒、サフランに浸され、鼓笛隊やラッパ隊は象に乗り込み、まるで変身したかのように見えました。
そして、300人の着飾った女奴隷が、それぞれ麝香と宝石で満たされた金の杯を持って、シンドゥークトに率いられて近づいてきました。そして、皆がサームを祝福し、宝石を浴びせました。

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●宮殿で出迎えるシンドゥクト89v

サームは微笑みながらシンドクトに言いました。
「いつまでルーダーベを隠しておくつもりですか?」 
同じようにシンドクトも答えました。
「太陽を見たいのなら、私の報酬はどこにありましょうか? 」
サームは答えました。
「貴女が望むもの何でも。私の宝物、王冠、王位、国、すべて貴女のものです。」

二人は黄金の部屋に行き、そこに春の幸福が待っていました。サームはルーダーベを見て驚嘆し、どうすれば彼女を十分に褒めることができるか、どうすれば彼女の輝きに目を奪われずにいられるかわからない程でした。

そして、 サームの願いで、ミフラーブの司祭で、しきたりに従って婚姻が厳粛に執り行われました。ザールとルーダーベは一つの玉座に並んで座り、二人の上には瑪瑙とエメラルドが振りまかれました。ルダベは繊細な金の冠を、ザールは宝石をちりばめた王冠を身に着けていました。
ミフラーブが娘に持たせた持参金の目録が読み上げられると、人の耳はその終わりまで聞くことができないほどでありました。
そこから宴会場へ行き、盃を手に一週間座り続け、宮殿に戻ると、さらに三週間祭りが続きました。

翌月の初め、サームはザール、彼らの象と太鼓、そして同行した軍隊とともにシスタンへの帰路につきました。花嫁ルーダーベはもちろん、ミフラーブとシンドゥクトもです。
ザールはミフラーブの女たちのために象駕籠と担い駕籠を、ルーダーベのために輿を作らせました。
彼らは神の贈り物を讃えながら楽しく旅をし、笑って元気に到着しました。そしてサームはシスタンの主権をザルに与え、瑞旗を広げて再び軍を率いてカルガサールとマザンダランへ向かいました。



■シャー・タフマスプ本の細密画

サムネイル ページ番号 画のタイトル※ タイトル和訳 所蔵館と請求番号 画像リンク先 備考
f083v 83 VERSO  Mihrab vents his anger upon Sindukht  ミフラーブは王妃シンドゥクトに怒りをぶつける MET, 1970.301.11 MET  
f084v 84 VERSO  Sindukht comes to Sam bearing gifts  シンドゥクトが贈り物を持ってサームのところに来る  Aga Khan Museum, AKM496 AgaKhan / flicker  
f085v 85 VERSO  Sam seals his pact with Sindukht  サームはシンドゥクトとの協定を結ぶ  MET, 1970.301.12 MET  
f086v 86 VERSO  The shah's wise men approve of Zal's marriage  国王の賢者はザールの結婚を認める  MET, 1970.301.13 MET  
f087v 87 VERSO  Zal expounds the mysteries of the magi  ザールは賢者の出した謎を解く  MET, 1970.301.14 MET  
f089v 89 VERSO  Sam and Zal welcomed into Kabul / Mihrab’s wife, Sindukht, comes out with slaves carrying gifts to welcome Sam サームとザールはカブールに迎えられる / ミフラーブの妻シンドゥクトはサームを歓迎するために贈り物を持つ奴隷を連れて出迎える The Khalili Collections, MSS 1030, folio 89b Khalili  

※画のタイトルはこの本”A King's Book of Kings: The Shah-nameh of Shah Tahmasp" (Stuart Cary Welch) による

■細密画解説(本や所蔵美術館の解説より適宜抜粋)

●83 VERSO  Mihrab vents his anger upon Sindukht  カブール王ミフラーブは王妃シンドゥークトに怒りをぶつける
カブールのミフラーブは、娘のルーダーベとザールの恋を初めて聞いたとき彼女を殺そうとしたが、彼の妻シンドゥクトは、サームがそれを許可したことを伝え彼を説得した。が、シャー・マヌチフルがサームにカボルへの遠征を命じたことを知ったとき、ミフラーブの怒りは、以前の恐怖を誤って鎮めたためにえ、妻に対して激しくなった。シンドゥクトは、ミフラーブの宝庫から贈り物を持って、サームを訪ねることを提案しました。王国を救おうと必死だったミフラーブは、妻に任務を任せました。彼女の部屋でのシンドゥクトとミフラーブの装飾的な描写は、彼らの交換の激しい感情をほとんど示していない。
〇Fujikaメモ:
常に割と無表情な細密画の人物達ですが、ここでのミフラーブは眉を寄せ、肩をいからせて、(ある程度)怒りを表現しています。
シンドゥクトはややうつむいて、冷静に作戦を練っている様子です。
右上の出窓のような部分、鎧戸が開いていますが、その中は(カーテンも描かれず)真っ白。ここに何か(ルーダーベとか?)を描く予定だったのかも・・?

●84 VERSO  Sindukht comes to Sam bearing gifts  カブール王妃シンドゥークトが贈り物を持ってサムのところに来る 

マヌチフルはサームにカボルへの攻撃を命じたが、この攻撃を回避するため、ミフラーブの妻シンドゥクトは馬、象、絹、金貨、奴隷、宝石を集め、外交使節を装ってサムの宮廷に行った。
この絵は、有名な「カユマールの宮廷」(AKM165 )の画家であるスルタン・ムハンマドの指揮の下、シャー・タフマスプ・シャーナーメに取り組んだギラーンのカディミとカシャーンのアブド・アル・ヴァハブの 2 人の芸術家によるものである 。アブドゥル・アジズによる「f53vサルムとトゥルがファリドゥンとマヌチフルの返事を受け取る」とは異なり 、これはスルタン ムハンマド自身のスタイルの要素を持っていない。代わりに、ギランの 15 世紀後半のトルクメン絵画を思い起こさせる形と形式的な関係を使用しています。人物は人形のようで、大きな頭とやや寸詰まりの体を持っている。さらに、このフォリオの人物は、スルタン・ムハンマドによって考案された場合のように、互いに相互作用しない。隣人の耳元で囁いたり、頭を別の方向に向けたりする人は誰もいない。ウード(リュート)を弾き、左手にダフ(タンバリンの一種)、右手にカスタネットを持った二人の演奏家は、お互いの視線さえ合わず、まるで一緒に演奏していないように見える。

比較的シンプルで保守的なスタイルであるにもかかわらず、この絵には生き生きとしたディテールが含まれている。たとえば、右側の従者の列と絹のロール、金の大皿、貴重な櫃、完全装備の馬、鈴を連ねたの弦で飾られた 3 頭の象などである。玉座への足の役目をする唸り声を上げるドラゴンの頭などの無生物や、いなないたり足を上げたりする灰色の馬や、細かくうねる長い鼻を持つ白い象などの動物は、この画で、人物像では抑えられている躍動感を提供している。王宮の正面図は、タイル張りの表面と雄大な碑文でサファヴィー朝の宮殿を連想させる一方で、シンプルで直接的なトルクメン スタイルを反映している。

〇Fujikaメモ:
ものすごく描き込みが多い、手の込んだ画だと思いました。
このときサームはシンドゥークトを使節だと思っているので、彼が一段高い王座に座り、シンドゥークトは低い位置に座っています。

ところで、このときのサームは、カボルへの遠征途上?。
だとすると野営地にいるような気もしますが、いったん自分の居城(故郷ザブリスタンでないにしても、どこか支配下の居城?)に帰ったのでしょうか。
(野営地でこんな大量の貴重品を貰っても困るので、どこかの居城にいることにしたのかしらん・・)


●85 VERSO  Sam seals his pact with Sindukht  サームはシンドゥークトとの協定を結ぶ 
サムはまだシンドゥクトの正体を知らないため、彼女自身とルダバについて質問をした。シンドゥクトは、サームが彼女と彼女の家族の安全を確保することを約束するまで答えることを拒否し、 彼は彼女の手をとって誓いを封印した。
〇Fujikaメモ:
サムはシンドゥクト自身の正体とルーダーバについて質問しましたが、シンドゥクトは、サームが彼女と彼女の家族の安全を確保することを約束するまで答えることを拒否しました。
で、この場面はその直後、サームが彼女の手をとって誓っているところです。この時点で、サームはシンドゥクトがカボル王妃であることを知りませんでしたが、ここでは二人は同じ平面に座っています。
彼らの前には、金色の飲み物や食べ物の容器が並んでいます。

●86 VERSO  The shah's wise men approve of Zal's marriage  国王の賢者はザールの結婚をに吉兆を読む 
シャー・マヌチフルはサームの願いに応じて、シャーは賢者や占星術師に助言を求めた。幸いなことに、星と賢者は肯定的な評決を下した。「イランの勇者とカボルの王女の結びつきは、最も重要なイランの英雄、ロスタムを産むだろう」と。
これは豪華な王座の場面であり、ペルシャの伝統ではかなり一般的な図像の主題である。芸術家たちはこの機会を利用して、精巧な室内空間を構築した。そのタイル張りの表面と塗装された壁は、おそらく現代の王室の室内によく似ている。また、イランの王室建築の 2 つの重要な要素である噴水と庭園への言及も含まれている。

〇Fujikaメモ:
このときのシャー・マヌチフルは、f80vでサームが訪問したときとは違い、髭のない顔になっています。
マヌチフルはザールが生まれる前に若くして即位して、その後ザールが成人しているので、40歳前後でしょうか。ひげはある方が自然かもしれません。

●87 VERSO  Zal expounds the mysteries of the magi  ザールはマギの謎を説明する 
このシーンの画家はカディミと考えられている。

〇Fujikaメモ:
ザールがマヌチフルの賢者達にいくつかの謎を問われ、それをうまく解き明かず場面です。これによりザールの知恵が証明されました。
場面としては動きのない、静的なシーンですが、タイルや金網、衣服、植物などなど、緻密な書き込みがすごいです。

●89 VERSO  Sam and Zal welcomed into Kabul .  サムとザールはカブールに迎えられる 
(所蔵館によるタイトル:Mihrab’s wife, Sindukht, comes out with slaves carrying gifts to welcome Sam ミブラーブの妻シンドゥークト はサーム を歓迎するために贈り物を運ぶ奴隷を連れて出てくる)
〇Fujikaメモ:
ミフラーブは、迎えの軍勢(象、楽師たち、儀仗兵)と共にサームを出迎えに行き、彼をカボルまで護衛します。騎馬の三人は、手前がサーム、真ん中がザール、奥がミフラーブです。
宮殿の外で彼らを迎えたのはミフラーブの妻シンドゥクトで、300 人の女性奴隷がいて、それぞれが宝石や麝香でいっぱいの金の杯を持っています。
花嫁ルーダーベは美しく装って、鍵のかかった特別な部屋で待機しています。
この画ではルーダーベは窓からザールたちの近づく様子を見ています。
地面が白っぽく描かれているので、人物の色とりどりの衣装や花々の鮮やかさが際立ちます。
このシーンの馬は、目が黒くてくりっと丸くて、割とリアルだし可愛い顔です。
(他の絵での馬の目は、三白眼風に、白目が目立つ描き方の場合もあります)

西アジア~中央アジアの習慣として、客人からの先触れが来たり、もしくは近づく気配が分かり次第、贈り物を持って出迎えるもののようです。(開高健がモンゴルを旅していたTV番組を見たら、遙か遠くから馬にのった人が馬乳酒を持って駆け寄ってきました。おそらく彼の縄張りに取材班が入ったのを察して挨拶に来たのですよね。)
で、客人を出向かえに行き、相互に近づいてきたら、目下の方が馬から降りて歩いてすすむようです。
そして対面したら、目下の方が目上の人の前に跪き、地面に接吻をして敬意を表現します。
その後目上の人が馬に乗るように声をかけたら、目下の人は再度騎馬の状態になります。

サーム一行を迎えに行ったミフラーブが「新月が山の上に昇るように再び馬に乗り」というくだりがあるのですが、どういうニュアンスなのかよく分かりません。すばやく?音もなく?いつのまにか?



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シャーナーメあらすじ:7.ザールとルーダーベの話(3/4)

2023-02-09 | +シャー・ナーメあらすじ(挿絵付き)

 


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7.ザールとルーダーベの話(3/4)
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■登場人物
ザール:シスタン、ザブリスタンの若王(跡継ぎ)。生まれつきの白髪。Zal
ミフラーブ:ザールの支配地域にあるカボルの領主(アラブ系で悪王ザハクの子孫)。Mehrab / メフラーブ
シンドゥクト:ミフラーブの妃 Sindukht
ルーダーベ:ミフラーブの娘 Rudaba / Rudabeh / ルーダーバ
サーム:ザブリスタンの先王。ザールの父で、ザールに後を託してマヌチフルの命令でマザンダランとカルガサールに遠征中。Sam / Saam
マヌチフル:ザブリスタンが臣従する、大イラン帝国の王。シャー。Manuchifl
カボル(地名):アフガニスタン東部。いまの首都カブール一帯。Kabol / Kabul 。(敢えて現代の通称と違う言葉を選んでいます)

■概要
民族の違うふたり、ザールとルーダーベの恋には様々な困難がありました。
ザールは自分の父親の説得には成功しましたが、さらにその上の、イランのシャー、マヌチフルがこの関係を喜びませんでした。ルーダーベの先祖が、イランの仇敵(かつての簒奪者)、悪王ザハクだったからです。
マヌチフルは忠臣サームの訪問を喜びはしましたが、ザールの件は聞こうともせず、ザハクの子孫、ミフラーブとその土地カボルを殲滅するように命じました。
一端居城に帰ったサームのもとに、開戦命令の情報をきいて絶望したザールが来て、カボルを攻めるならば私を伐ってからにしてください、と頼みます。
サームはシャー・マヌチフルに手紙を書き、自分のこれまでの功績と忠誠を強調し、もはや自分は老いており息子ザールが後継者であること、そして彼の切なる望みを叶えてほしいと訴えました。そしてザールはシャーのお気に入りであるため、直接会えばきっと心を和らげてくれる、と、ザールを宮廷に送り出しました。

■ものがたり

□□11.ザールとミフラーブの娘の婚約を知ったマヌチフル 

ミフラーブとザールの友情、そしてその不釣り合いな恋人たちの知らせがイランの王、マヌチフルに届きました。
この問題は、大賢者たちによって彼の前で議論されました。
王は言いました。
「これは我らに災いをもたらすだろう。かつてファリドゥンが命がけでザハクを倒したのに、その子孫ミフラーブの一族が栄えていいものか。
ザールの愛によって、萎れた植物がその昔の活力を取り戻すようなことがあってはならない。ミフラーブの娘とザールが結ばれるなど、毒と解毒剤を混ぜ合わせるようなものではないか。
もし息子が生まれ、彼が母の側についたなたら、彼の頭は我々に対する悪意で満たされるに違いない。彼は王冠と富を取り戻すために復讐と争いでイランを踏みにじるだろう。お前たちの知恵は何だ?私によく助言してくれ。」
 神官たちは皆、彼の演説を認めて、
「陛下は私たちよりも賢く、必要なことを行うことができます。知恵が求めることを行って下さい。」
と言いました。彼は息子ノウザルとその臣下たちを呼び寄せて、
「サームのところに行って、マザンダランとの闘いの戦況を聞いてこい。そして、帰国する前にここに来るように伝えよ」
と言いました。ノウザル一行は象と太鼓を持って出陣しました。丁度マヌチフルの宮廷に向かっているところだったサームの陣営に到着すると、ノウザルは父からの伝言を伝えました。
サームは
「シャーのご命令の通りに。お会いできるのが待ち遠しいです」
と答えました。

□□12.サーム、マヌチフルのもとへ 

サームは宮廷に近づくと馬を降り歩いて進みました。王座に近づくと、サームは地面に口づけをして前に進み出ました。冠を頂いたマヌチフルは象牙の玉座から立ち上がり、サームを隣に座らせました。そして、カルガサールやマザンダランの悪魔との戦いについて尋ねると、サームは激しい戦闘と敵の撃退について、詳しく報告しました。
マヌチフルはそれを聞いて何度も頷き、大層な喜びようでした。そして敵がこの世からいなくなったことを祝って、酒と宴会を命じました。

夜が明け、サームはまた王に謁見しました。
サームは近づき、恭順の意を表して、ザールのことについて話そうとしましたが、不機嫌なマヌチフルに阻まれました。
「軍勢を率いて行って、ミフラーブの城とカボルを焼き払ってこい。彼は竜の一族の残党であり、大地を混乱に陥れる。奴の一族郎党、残らず頭を打ち落とし、ザハクの末裔から世界を浄化するのだ。」

f80v
●ミフラーブはサームにカボルへの進軍を命令する f80v


サームは絶句して、何も言えないまま王座に接吻し、印章にそっと顔を押し付け、ようやく言葉を絞り出しました。
「仰せの通りに。」
そして彼はひとまず自分の居城に向けて出発しました。


□□13.ザールがサームに会いに行く

カボルにいたミフラーブとザールは、シャーとサームの間に起こったことを知りました。カボルは動揺し、ミフラーブの宮殿から叫び声が上がりました。シンドゥクト、ミフラーブ、ルーダーバの命も財産も救えないかもしれないと思ったとき、ザールは激怒し、肩を落とし、唇を震わせました。
「世界を焼き尽くす竜の息吹がカボルに触れる前に、まず私の頭を切り落とさなければならない。」
こう言ってカボルを後にし、怒りに任せて父の陣営に向かいました。
勇者サームの陣営に、「我らが獅子の子がやってきた」という知らせが届き、軍隊は総立ちでザルを歓迎しました。

サームの元に行ったザールは、父の前で地面に接吻し、栄光と正義に賞賛を捧げましたが、彼の目から涙がこぼれ落ち、バラ色の頬を洗いました。
「私は創造主の思し召しで、子供時代を鳥に育てられて生き延び、そしていま一人の友人を得ました。彼は族長の冠をかぶり、勇敢で賢く、思慮深いカボルの君主です。彼の家は私の家でもあります。
私は父上の命令でカボルに滞在し、あなたの助言とあなたの誓約を心に留めていました。父上はこう書いて下さいました。
『私はお前を悩ますことはなく、お前の望みを叶える』と。
しかし、この軍勢を、マザンダランとカルガサールから、友と私の家を破壊するために率いてきました。これが父上のおっしゃる正義ですか。
私はあなたの前に立ち、あなたの怒りに私の体を差し出します。どうぞ私を切り裂いて下さい。そしてカボルには手を出さないで下さい。カボルへの悪意はすなわち私に向けられたものです。」

サームはザールの言葉に耳を傾け、深く頷いて答えました。
「お前の言うことは真実である。
しかし、ことを急いてはならぬ。私には計画があるのだ。私はシャーに手紙を書き、お前にそれを持たせる。お前はシャーのお気に入りであり、お前の顔を見ればシャーのお考えも変わるかもしれない。」

f80v
●野営地で話し合うザールとサーム81v

 

□□14.サーム、マヌチフル王へ手紙を書く 

サームとザールは、書記官を呼び寄せ、詳細な手紙を書き上げました。
サームは、まず神を賛美し、マヌチフル王に神の祝福を求め、次のように続けました。
「陛下の僕として、私は60歳を迎えました。太陽と月が私の頭に樟脳の粉の冠をかぶせました。私は陛下のためにずっと闘ってきました。世界は私のように馬に乗り、棍棒を振るう者を見たことがありません。
かつてカシャフ川に、その唇から出る泡で大地を満たし住人を恐怖に陥れた龍がいました。その吐く息でハゲタカの羽を焼き、唾液の毒は大地を焦がし、水からも空からも大地からも、鳥や獣、人、あらゆる生き物を追いやったのです。
私は神の力で恐怖を追い払い、象のように立派な馬に乗り、牛頭槌を鞍に乗せ、弓を肩にかけ、盾を構えてただひとり立ち向かいました。近づいてみるとそれは大きな山のようで、毛は地面になびき、舌は炭化した木のように黒く、喉は火を噴き、目は血で満たされた椀のようでした。龍は私を見つけると、咆哮し、激しく前進してきました。私は火の熱さを感じ、大地が震えて海のようにゆらぎ、毒煙は雲まで上がってきました。
私も獅子のように咆哮し、アダマントを矢尻につけた矢を放ってまず舌を顎に釘付けにし、次の矢で口の中を貫きました。三本目の矢が喉元に突き刺さると、血が吹き出ました。
そして神の力を借りて馬を駆り立て、牛頭槌で龍の頭を打ち砕きました。龍は崩れ落ち、その傷口からナイル川のように毒が流れ出しました。カシャフ川は胆汁の流れのように黄色くなり、あたりは静かになりました。
人々は私を「一撃のサム」と呼び、金や宝石を浴びせかけました。
私は汚れた鎧も衣服もすべて脱ぎ捨てて旅立ちましたが、毒で何日も苦しみました。その地では何年も収穫がなく、茨を焼いた灰のほかは何もありませんでした。

●龍と闘うザール82v(画像探索中・・・)

そしてこの何年もの間、鞍はわたしの王座であり、馬はわたしの大地でありました。私の槌は、マザンダランとすべてのカルガサールをあなたの支配下に置きました。
しかし今、私の槌の一撃にはかつての力はなく、私の腰はもはや曲がってしまいました。ここにいる私の息子ザールこそあなたのために戦うにふさわしい勇者です。

実は 彼は秘めた望みを陛下にお願いに上がっています。
彼はカボルで、糸杉のように優雅で薔薇のように美しい女性に出会い恋に落ちたのです。彼は陛下の進軍の命令を知り絶望し苦しんでいます。
畏れながら、わが軍勢は、まだここにいて動いていません。偉大な王の意志を待っています。

陛下は、私がアルボルツ山から息子を連れ帰ったとき『ザールの望みは何も拒まない』と私に約束させました。そして彼は今、あの約束にすがり、傷ついた心でひとつの願いを持って参りました。
山で鳥に養われた追放者が、カブールで輝く月―薔薇冠を頂いたすらりとした糸杉―を見て、狂おしい恋に陥っても不思議ではありません。陛下がどうか彼の苦痛を増すことがありませんように。
私がこの世で悲しみを分かち合い、或いは歓びを与えてくれる存在はザールだけです。私は重い心で彼を陛下の前に送ります。陛下の高き玉座の前に彼が来たとき、偉大なるものと最も一致するものを行って下さい。
ナリマンの子サムから、王の王と諸侯の上に千倍の祝福がありますように。」

ザールはこの手紙を受け取ると、喇叭の鳴り響くなか、馬に乗り込みました。
戦士の一団は彼と一緒に急いで宮廷に向かいました。

 

■シャー・タフマスプ本の細密画

 

サムネイル ページ番号 画のタイトル※ タイトル和訳 所蔵館と請求番号 画像リンク先 備考
非公開 79 VERSO  Sam is visited by Prince Nowzar  サームはイランのノウザル王子の訪問を受ける  Tehran Museum of Contemporary Art, Tehran, Iran 非公開  
f080v 80 VERSO  Manuchihr welcomes Sam but orders war upon Mihrab  マヌチフル王はサームを歓迎するが、ミフラーブに戦争を命じる  MET, 1970.301.9 MET  
f081v 81 VERSO  Zal questions Sam's intentions regarding the house of Mihrab  ザールはミフラーブの家についてサームの意図を問う  MET, 1970.301.10 MET  
非公開 82 VERSO  One Blow Sam recounts how he slew a dragon  サームは一撃でドラゴンを倒したことを語る Tehran Museum of Contemporary Art, Tehran, Iran 非公開  

※画のタイトルはこの本”A King's Book of Kings: The Shah-nameh of Shah Tahmasp" (Stuart Cary Welch) による

■細密画解説(本や所蔵美術館の解説より適宜抜粋)

●79 VERSO  Sam is visited by Prince Nowzar  サームはイランのノウザル王子の訪問を受ける 
(画像みつけられませんでした)

●80 VERSO  Manuchihr welcomes Sam but orders war upon Mihrab  マヌチフル王はサームを歓迎するが、ミフラーブに戦争を命じる 
 スルタン・ムハンマドのアシスタントであるアーティストは、しゃがんだトルクマン型の人物が住む標準的な宮廷シーンを魅力的に描いています。
〇Fujikaメモ:
サームは宮廷に到着し、マヌチフルの前で、マザンダランとカルガサール遠征について報告しました。しかし、サームが息子のザールが最愛のルーダーベと結婚したいという話題を持ち出そうとしたとき、シャーはその話をさせず、代わりに、ルーダーベの父であるミフラーブ王に対する絶滅戦争のためにすぐに立ち去るように命じました。
この部分のストーリーのポイントは、
・マヌチフルが、サーム到着前に、(何らかの方法で)ザールとカボルの姫のことを知っていた(スパイ網?伝書鳩?密使??)
・賢者達は王の怒りを忖度し、いいなりになっていた(「一度占ってみましょう」と誰も言わなかった)
・サームが、ザールについての願いを申し出る前に、マヌチフルはカボルへの遠征を命じた
・サームはシャーに口答えせず、ひとまず従順に従った
というところでしょうか。
あと、本筋とは関わらないのですが、
サームによる遠征報告の部分に、(参考資料ふたつとも)ザハクの子孫カクイをサームが倒したくだりがあります。が、カクイは、以前「マヌチフルの復讐の章」で、マヌチフル自身が倒したとありました(これも両方の資料)。矛盾する内容ですが、原典自体がこうなっているのかもしれません。今回の抄訳では、ここにあったカクイとの闘いの部分を省きました。

●81 VERSO  Zal questions Sam's intentions regarding the house of Mihrab  ザールはミフラーブの家についてサムの意図を問う 
〇Fujikaメモ:
サームがまもなくミフラーブと戦争をするという噂がカボルに広まりました。(これも、使節が派遣されたとかそういう記述はないです。スパイとか伝書鳩とか早馬とか、そういう情報網は当たり前だったのでしょうね)
この場面は、ザールがサームの野営地に行き、カボルのために自分は身を投げ出す、と伝えたところではないかと思います。
(サームは、シャーに命令されたものの、本気で進軍するつもりはなかったのではないかと個人的には思います)
背景には、飲み物や食べ物の器を持った人たちがいます。
最前景左側、小川のほとりで髭のおじさんが隣の若者の肩を抱いて指相撲をしている様子ですが、何しているんでしょう? 指相撲を口実に手を握ってる?(手相をみるのを口実に手を握るみたいな感じで・・・)
このあとの84vのシーンで、サームはテントではなく宮殿(建物)でシンドゥクトを迎えています。
この野営地と宮殿の位置関係がよく分かりません。
・イラン王宮からその宮殿に向かう途中に、ザールが訪ねてきた?
・その宮殿からちょっと進軍して野営しており、ザールと話をしたあとまた宮殿に戻った?
どういうことなんでしょうね。

●82 VERSO  One Blow Sam recounts how he slew a dragon  一撃でサムはドラゴンを倒したことを語る。
(画像みつけられませんでした)
〇Fujikaメモ:
サームからマヌチフルの手紙の中で、サームが自身の過去の龍退治の功績を語っているところ。
シャーナーメでは、何人かの英雄が龍を退治しています。
絵もみつからないし、この部分は省こうかと思ったのですが、「龍を倒したあとに全ての衣服を脱ぎ捨てて旅立ったが、浴びた毒により何日も苦しんだ」という下りが興味深くて残しました。絵がみつからないかなあ・・・。

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シャーナーメあらすじ:7.ザールとルーダーベの話(2/4)

2023-02-08 | +シャー・ナーメあらすじ(挿絵付き)

この章の、4分割のうちの2つめです。
燃え上がるような恋の逢瀬のシーンはもう終わってしまって、その3倍の長さ、波瀾万丈な周辺事情と根回し、交渉,、エトセトラが続きます。
今回の部分では、取り持ち女がシンドゥクトの鋭い質問を言い逃れる様子、そしてシンドゥクトの母としての悩みの部分がなかなか読み応えがあると思いました。

ところで、このシャーナーメになると、「いいね」のクリック数がいつもの半分くらい・・・。
あまり面白くないという人も多いかもしれませんが、すみません・・・・。

====================
7.ザールとルーダーベの話(2/4)
====================

■登場人物
ザール:シスタン、ザブリスタンの若王(跡継ぎ)。生まれつきの白髪。Zal
ミフラーブ:ザールの支配地域にあるカボルの領主(アラブ系でザハクの子孫)。Mehrab / メフラーブ
シンドゥクト:ミフラーブの妃 Sindukht
ルーダーベ:ミフラーブの娘 Rudaba / Rudabeh / ルーダーバ
サーム:ザブリスタンの先王。ザールの父で、ザールに後を託してマヌチフルの命令でマザンダランとカルガサールに遠征中。Sam / Saam
マヌチフル:ザブリスタンが臣従する、大イラン帝国の王。シャー。Manuchifl
カボル(地名):アフガニスタン東部。いまの首都カブール一帯。Kabol / Kabul 。(敢えて現代の通称と違うカボルを使っています)

■概要
恋の当事者、ザールとルーダーベは愛し愛される関係でしたが、双方の民族は異なり過去の両民族間の禍根もあり、前途は多難です。
ザールはまず自分の父に手紙を書き、以前の「お前の望みはなんでも叶える」という約束を持ち出して、結婚の許可を願い出ます。
父サームは、その約束を違えたくはなく、また占星術師の予言も吉兆だったので、許可の手紙をだしました。
ルーダーベの両親は、大切に閉じ込めておいた娘が勝手に恋をしたことを知り驚愕し激怒しますが、サームからの婚約承諾の手紙を知り、それに望みをつなぎます。


■ものがたり

□□6.ザール、ルーダーベについて神官と相談する 

太陽が山の峰から昇ると、ザールは使いを遣って賢者や神官を自分の天幕に呼び寄せました。彼は訳もなく幸せな気持ちでいっぱいで、微笑みがこぼれるのでした。
彼は賢者たちに向かって言いました。
「偉大なる神に幸いあれ。被造物は神のちからによってのみ生きることができます。そして全ての生き物は神の恵みにより伴侶を得ることで、季節が繰り返し巡るのです。
私について伝えたいことがあります。
私の心は、ミフラーブの娘に奪われています。あなた方はこれにどう答えるでしょうか。父上は同意するだろうか。マヌチフル王は? 若気の至りだと思うだろうか、それとも罪だと思うだろうか?」

f73v
●賢者たちに相談するザール f73v

賢者たちは何も言わず、唇を閉ざしたままでした。ミフラーブの祖父は悪王ザハクだったからです。マヌチフル王はザハクとその一族を憎んでおり、これを解く解毒剤は思いつかなかったのです。

ザールは彼らの沈黙に怒り、別の戦術を試みました。
「あなた方が私の選択を非難するのは当然ですし、私はその責任を引き受けます。それでも、もしあなた方がこの困難な結び目を解く方法を考えてくれたら、私はあなた方に篤く報います。」

賢者たちはようやく答えました。
「私たちは皆、あなたの忠実な臣下です。私たちを黙らせたのは、私たちの驚きです。ミフラーブ殿は貴族であり、戦士であり、立派な人物です。彼は悪王ザハクの子孫ですが、もとはアラブ王家の血筋であり、恥ずべきものではありません。
サーム殿に手紙を書いては如何でしょうか。彼は私たちよりも多くの知恵、思慮深さ、機知を持っています。彼はシャーに自分の見解を説明する手紙を書くかもしれません。」

□□7.ザール、父サームに手紙を書く 

ザールは筆記者を呼び、心の中を書き取らせました。
彼はまず、神への賛辞と父への敬意を美しい韻文で綴りました。そして前半生の苦労、山に捨てられシムルグの巣で育てられたことを書き起こし、そして続けました。
「私はいま、カボルの王ミフラーブの娘への愛の炎に焼かれています。私の心は海のように荒れ狂って、悲しみに我を忘れています。あなたは世界の英雄です。この心の痛みから私を解放してください。私たちの儀式と習慣に従って、ミフラーブの娘と結婚させてください。アルボルズ山脈から私を連れてきたとき、あなたはシャーと廷臣たちの前で『私の望みに決して逆らわない』と誓いました。私には望むことなど何もないと思っていましたが、いま、これこそが私の心の唯一の願いです。」

使者は3頭の替え馬を連れ、カボルを火のように素早く出発した。使者がカルガサールに近づくと、狩りをしていたサームが遠くからその姿に目をとめました。
「カボルの男がザブリスタンの白馬に乗ってやってきた。ザールからの使者に違いない。彼の話を聞いて、ザールや彼の旅先のできごとを聞いてみようではないか。」

使者は手に手紙を握りしめながらサームに近づき、馬を降りて地面に接吻して平伏し、サームに手紙を渡してザールからの挨拶を口上しました。
サームは山を下りながら、のんびりと手紙を開いてザールのメッセージを読みはじめましたが、その途端、驚いてその場に立ちすくんでしまいました。それは予想していたような旅の報告ではなく、切なる要求でした。
もし自分が息子に反対すれば、安易に約束をしてそれを破った者として知られることになるだろうし、もし許可を与えたら、あの野蛮な鳥の養い子と悪王の子孫からどんな子孫が生まれるのか、と彼の心は乱れました。


□□8.サーム、占星術師たちに相談する 

サームは目を覚ますと、神官や賢者たちを呼び寄せて相談しました。彼はまず占星術師に質問し、火と水のように異なる二人が結びついた結果どうなるか、きっとザハクとファリドゥンの戦いのような災いが起こるのではないか、と尋ねました。
占星術師たちは何日もかけて空を見上げ、再び彼の前に現れたとき、彼らは微笑んでこう言いました。
「ザールとミフラーブの娘が結ばれる運命だという良い知らせをお届けします。二人は繁栄し、この二人から偉大な英雄が生まれるでしょう。象の体躯を持つ男で、剣で世界を征服し、重いメイスで地上から悪の種族を排除し、世界を浄化します。彼は苦しむ者の慰めとなり、戦いの門と悪への道を閉じます。帝国のシャーは彼を信頼し、彼の生涯を通じて帝国は繁栄することでしょう。」
サームはこの占星術師の言葉に安堵して微笑み、ザールの使者を呼んで言いました。
「ザールには『約束は約束であり、断る方法を探すのは不当である』と言ってやってくれ。そして私はイランのシャーに伺いを立てるため夜明けとともに宮廷に向かう。」
使者はザールに幸運の知らせを伝え、ザールはその幸福を神に感謝し、貧しい人々に金貨や銀貨を配り、友人たちにも同様に気前よく振る舞いました。

□□9.ルーダーベの行動を知るシンドゥクト 

ザールとルーダーベの仲立ちをするのは、とあるおしゃべりな中年女でした。

f76v
●仲立ちをする中年女 76v

ザールは彼女を呼び出して、サームからの手紙を託しました。
「よい兆しが見えてきました。父は私たちの結婚に同意してくれました」
と。
女は急いでルーダーベのところへ行き、これを伝えました。ルダベはうれしさのあまり、彼女に金貨を浴びせ、金細工の椅子に座らせました。そしてルーダーベはザールへの伝言と、贈り物として、横糸と縦糸が分からないほど精巧に織られたモスリンのターバン―ルーダーベ自身で刺繍を施したもの―と、木星のように輝く貴重な指輪を託して彼女を送り返しました。

この女がルーダーベの居室から宮殿の大広間へ出てきた時、シンドゥクトはその姿を目にとめ、きつい声で呼び止めました。
女は青ざめて女王の前に跪き地面に口づけをしました。
シンドクトは彼女を詰問しました。
「お前はわたくしの目を避けて、しょっちゅうルーダーベの居室に出入りしています。一体何をしているのですか。」
「私は日々の糧を得るために精一杯の貧しい女です。ときに宝飾品の売り買いを仲介することがございます。ルーダーベ様が宝石を買いたいというので、金の髪飾りと宝石をはめた立派な指輪を持って参りました。」
「ではそれらを見せなさい。」
「ルーダーベ様にお渡ししたのですが、他に欲しいものがあるとのことでまた取りに戻るのです。」
「では彼女が払ったお金を見せなさい。」
「ルーダーベ様は明日払うとおっしゃいました。まだ受け取っていないのでお見せできません。」

シンドゥクトはこの女が嘘をついていることを知り、かっとしてこの女の衣服を探りました。そしてルーダーベ自身が刺繍した男物のターバンを見つけると激怒して、娘を自分の前に連れてくるよう命じました。
シンドゥクトは動転して言いました。
「お前は名家の娘にもかかわらず、何の気まぐれで、はしたない下層の女のような振る舞いをしているのでしょう。罪人のようにこそこそして。さあ、あなたが隠している秘密をこの母に話しなさい。なぜこの女があなたのところに出入りしているのですか?このターバンと指輪は誰のためのものですか。
ああ、このような地位と名声のある家にあなたのような娘を産んだ母親がいたでしょうか。」
ルーダーベはじっと下を見つめ、ぽろぽろと涙をこぼしてその美しい頬を濡らしました。彼女は母に言いました。
「生まれてこなければよかった。そうすれば悪い娘にならなくて済んだのに。
愛が私の心を餌食にしてしまいました。私は夜も昼もザボレスタンの王ザールを思い、彼なしでは生きる気力もありません。彼は私のところに来て、私たちは隣に座り手を取り合って、お互いの愛が永遠に続くことを誓い合ったのです。
ザール殿は結婚の許可を得るために使者を父君サームのところへ送り、返事が届きました。サーム殿は承諾して下さったのです。あの女がその手紙を見せてくれました。」

f76v
●母シンドゥクトに告白するルーダーベ f76v

シンドゥクトはその言葉に驚愕し、最初は何も言えませんでした。
実際のところザールは婿にふさわしいとは思いましたが、問題もあります。彼女は言いました。

「確かにザール殿に匹敵するような高貴な戦士はいません。彼は偉大な人物で、英雄の息子で、立派な名声を持ち、知性と明晰な頭脳の持ち主です。
しかしイランの王はこれに怒り、わがカボルの上に戦いのほこりを上げるでしょう。シャーは我が一族の者が統治者の血筋に連なることを望んでいないのです。この結婚は無理です。」

シンドゥクトは使いの女を解放し、今まで隠されていたことを知ったと伝え、そしてこの秘密についてかたく口を閉ざすように念を押しました。
そして、娘の決意が誰からの忠告も聞かないほどのものであるのを考え、涙と悔しさの中で眠りにつきました。

□□10.ミフラーブ、娘の恋を知る 

ザールの野営地から戻ってきたミフラーブは、ザールのもてなしに満足し、上機嫌でした。
彼はシンドゥクトが長椅子の上で青ざめて悩んでいるのを見ました。
「どうした? お前の薔薇色の唇はなぜ色褪せているのか?」
彼女は言いました。
「この世のむなしさについて考えていたのです。今、この宮殿は美しく豊かで家臣は忠実で、欠けるところはありません。しかしいずれ敵が我々のものを受け継ぎ、狭い棺が我々の住処となります。
その果実が我々の癒やしともなり悩みの種ともなる木――私たちが植え、水をやり苦労して育て、その枝に王冠や宝物を掛けた木――は成長し枝を伸ばして木陰を広げますが、遂には切り倒されることになるでしょう。安らぎはどこにあるのでしょう。」


f77v
●長椅子で嘆くシンドゥクトと慰めるミフラーブ f77v

ミフラーブはシンドゥクトをなだめて言いました。
「おまえの苦しみは新しいものではない。かりそめのこの世は常に儚く、天の定めには逆らえないのだ。」

シンドゥクトはうつむいて、頬を涙で濡らしつつ思い切って言いました。
「そうなのです。天の定めはいつも私たちの思い通りになるとは限りません。
実は、サームの息子ザールがルーダーベの心を奪ってしまったのです。彼女はいま心乱れて苦しんでいます。」
ミフラーブはこれを聞くと、飛び上がって剣の柄を握り、体が震え、顔は青ざめ、心臓に血がたぎり、
「今すぐルーダーベの血の川を作ってやる!」
と叫びました。シンドクトは立ち上がり、彼を押しとどめて言いました。
「どうかまずあなたの妻の言うことを聞いて下さい。そしてあなたの魂が理性の助言に従いますように。」
しかし彼は彼女の手を振りほどき、怒った象のように咆哮しながら彼女を突き飛ばして叫びました。 
「あの娘が生まれた時に首を切り落とすべきだった! 私はそうしなかった、祖父ザハクならしたであろうことをしなかった。そして今、彼女は私を滅ぼすためにこの愚行をおかしたのだ。私の名誉は貶められ、そして命までも危ういのだ。サームとマヌチフルが私たちに進軍すれば、カボルは踏みにじられ町も私たちの畑も作物も生き残れない。」 
「落ち着いて下さい。そんなに恐れないで。サーム殿はこのことをもう知っていて、それを伝えるためにカルガサールの地からマヌチフルの宮廷に旅しているのです。」
「それは本当なのか。うまくいくのだろうか。アフバズからカンダハルまで、ザールを婿にしてサームと同盟を結びたくない者はいないのだから。」
「この結婚の見通しはそれほど心配することではありません。土、空気、水だけでは世界は輝かず、火も必要です。元素が混在していなければならないのです。別の種族が家族に加わると、あなたを恨んでいた人たちは落胆します、それがあなたを強くするのですから。」
そして彼女はサームからザールへの返信の一部を読み上げました。
『喜べ!汝の望みは叶った。よそ者と汝が結ばれるとき、汝の敵は青ざめるであろう』

ミフラーブはシンドゥクトの話に耳を傾けましたが、まだ怒り、混乱していました。そして彼女に言いました。
「ルーダーベをここに連れてきなさい。」
シンドゥクトは、彼が怒りにまかせて彼女を傷つけることを恐れ、
「まず、彼女を無事に私のもとに返すと誓ってください。いずれ彼女はカブリスタンのものになるのですから。今のように美しいままでなくてはなりません。」
ミフラーブは娘を傷つけるようなことはしないと誓いましたが、
「マヌチフル王がどんなに激怒することか。王が挙兵した暁には、この国も母も父もルダベも残っていないだろう」
と付け加えました。

シンドゥクトは下がって娘のもとへ向かい、言いました。
「お父様にすべてお話致しました。今度はあなたが行ってしおらしくしていなさい。美しく装って行くのです」
ミフラーブの前に出たルーダーベは春の朝日のように美しく、父親は密かにため息をつき、そして怒鳴りつけました。
「無分別で恥知らずの娘よ!お前のような妖精がどうしてあのアーリマンと結婚できるんだ !」
父親の怒鳴り声に、彼女は青ざめ、目は涙でいっぱいになり息をすることもできませんでした。娘は傷心して部屋に戻ると、母とともに神にものごとがうまく運ぶように祈りました。

 

■シャー・タフマスプ本の細密画

 

サムネイル ページ番号 画のタイトル※ タイトル和訳 所蔵館と請求番号 画像リンク先 備考
f073v 73 VERSO  Zal consults the magi  ザールはマギに相談する  MET, 1970.301.8 MET p133
f074v 74 VERSO  Zal dictates a letter to Sam about Rudabeh  ザールはルーダーベについての手紙をサームに口述筆記する  Tehran Museum of Contemporary Art, Tehran, Iran 詳細画像非公開  
f076v 76 VERSO  Rudabeh confesses to Sindukht  ルーダーベは母シンドゥクトに告白する  Tehran Museum of Contemporary Art, Tehran, Iran io  
f077v 77 VERSO  Mihrab hears of Rudabeh's folly  ルーダーベの愚行を聞いた父ミフラーブ  The Museum of Fine Arts, Houston, Texas, United States(Hossein Afshar Collectionからの貸与) MFAHollis  
f077v 78 VERSO  Rudabeh before Mihrab  ミフラーブの前にいるルーダーベ Tehran Museum of Contemporary Art, Tehran, Iran 詳細画像非公開  


■細密画解説(本や所蔵美術館の解説より適宜抜粋)

●73 VERSO  Zal consults the magi  ザールはマギに相談する 
ここでは、悩めるザールが賢者に助言を求める姿が描かれている(ザールは、ザハクの子孫と結婚することを父やマヌチフルに反対されることを恐れていた)。
賢者たちは、ザルに父への手紙を書くことを提案する。「父上は我々より優れた知恵をお持ちですから」と彼らは助言する。おそらく彼は国王にとりなしてくれるだろう」と。
この細密画は、スルタン・ムハンマドと彼の助手である画家Dとの幸福な共同作業の結果である。スルタン・ムハンマドは、この絵のいくつかの部分、特に前景の人物と王座の左側の若者をデザインし、描いたようである。それ以外の部分は、ほぼDの作品である。
ザールの上にかかる天蓋の不死鳥のような鳥の模様は、幼いザルを育てたシムルグを指している可能性がある。曲がりくねった花木は、タブリーズのトルクメン絵画によく登場する。

〇Fujikaメモ:
ルーダーベと逢った翌日のことで、文章では、ザールは思わず笑みがこぼれる状態だったようです(当然ですね)。絵でも心なしか微笑んでいるように見えます。
賢者たちのターバンは、中心に棒があるのではなく、丸いお椀を伏せたようなものになっています。

●74 VERSO  Zal dictates a letter to Sam about Rudabeh  ザールはルーダーベについての手紙をサムに口述筆記する 
(画像みつけられませんでした)
〇Fujikaメモ:
文章では割と素っ気なく、父親への手紙に「私の願いを全てかなえるという、あのときの約束を守って下さい」と書いているのですが、そのままではあまりに無礼に思えてしまいました。なので「願うことなどないと思っていましたが」というニュアンスを付け足しました。

●76 VERSO  Rudabeh confesses to Sindukht  ルーダーベは母シンドクトに告白する 
〇Fujikaメモ:専門家による解説がないので、私が勝手に感想を書いてしまいます。
シンドゥクトが取り持ち女を問い詰めて、ルーダーベの秘密が露見し、呼び出された彼女がぽろぽろと涙をこぼして「生まれてこなければよかったのに」と母に告白するシーンだと思います。
画面左下に小さく描かれている横顔の中年女性が、件の取り持ち女でしょうか。
建物の左側には、外側が白っぽく中心が濃いピンクの丸い花弁(梅のような五弁)のアーモンドの花(割とよく見ますよね)。建物の右側の木には、白い五弁でやや角張った(ギザギザした)花びらの花。こちらはちょっと珍しいかも。低い位置にはムクゲのような花もあります。

●77 VERSO  Mihrab hears of Rudabeh's folly  ルーダーベの愚行をシンドゥクトから聞く父ミフラーブ 
〇Fujikaメモ:専門家による解説がないので、私が勝手に感想を書いてしまいます。
不鮮明な画像とはいえ、ミフラーブが落ち着いた様子なので、タイトルはこうなっていますが、シンドゥクトが長椅子で憂鬱そうにしているのをミフラーブが慰めたシーンではないかと思います。この直後、シンドゥクトから事情を聞いてミフラーブが激怒することになります。
二階には沢山の女性が描かれています。
中央でうつむき加減で嘆いているのがルーダーベで、その向かいにいるのが取り持ち女でしょうか。
文中には出てこないしストーリーとは関係ないと思うのですが、右奥にはスコップで作業する庭師が描かれています。

●78 VERSO  Rudabeh before Mihrab  ミフラーブの前にいるルーダーベ 
(画像みつけられませんでした)
父ミフラーブにルーダーベが激しく怒られているところ。どんな絵なのでしょう・・・。

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シャー・ナーメあらすじ:7.ザールとルーダーベの話(1/4)

2023-02-07 | +シャー・ナーメあらすじ(挿絵付き)

おもいのほか時間がかかっていたこの第七章、ようやくめどがついてきました。霊鳥シムルグに育てられたザールの、後日譚です。
この章は21節もあってとても長いので、4分割してみました。
ここまできてようやく、名前のついた女の子の登場人物が出てきますよ!そして燃える恋も☆

場面があちこちに飛び、各地で皆、そのキャラクターが際立つ個性的な行動をとります。
1回目は、一番スイートな部分。Boy meets girl の初々しい恋です。
憧れる相手に、手さえも触れる前、という恋のはじまりって、心震えるみずみずしさがあっていいよねー、と楽しみに訳していたのですが、あれ、なんか、昔みたいに共感できないような。私の心はもうパッサパサ? 年取ったってことかしら!? いや、文章を自分で書きながら共感するのはむずかしいからだな、うん。

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7.ザールとルーダーベの話(1/4)
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■登場人物
ザール:シスタン、ザブリスタンの若王(跡継ぎ)。生まれつきの白髪。Zal
ミフラーブ:ザールの支配地域にあるカボルの領主(アラブ系でザハクの子孫)。Mehrab / メフラーブ
シンドゥクト:ミフラーブの妃 Sindukht
ルーダーベ:ミフラーブの娘 Rudaba / Rudabeh / ルーダーバ
サーム:ザブリスタンの先王。ザールの父で、ザールに後を託してマヌチフルの命令でマザンダランとカルガサールに遠征中。Sam / Saam
マヌチフル:ザブリスタンが臣従する、大イラン帝国の王。シャー。Manuchifl
カボル(地名):アフガニスタン東部。いまの首都カブール一帯。Kabol / Kabul 。(敢えて現代の通称と違う言葉を選んでいます)

■概要
ザブリスタンの跡継ぎザールが、自分を知らしめ、見分を広めるため領内を旅していきます。
そしてアラブ系民族のカボルという国で領主ミフラーブと親交を深め、その娘を、見る前に深く恋します。
娘ルーダーベも、父親から彼の話を聞いて、逢う前から恋してしまいます。
侍女たちが恋の仲立ちをして、ふたりはある夜、こっそり逢うことができたのでした。

■ものがたり

□□1.ザール、カボルのミフラーブを訪れる 

ある日、ザールは王国を旅することを決意し、仲間を従えて旅に出ました。ヒンド、ダンバー、モルグ、マイと旅を続けました。行く先々で彼は王座を設けて豪華な祝宴をひらき、酒や楽人を呼んでもてなし、気前よく散財しました。絢爛豪華な旅をして、笑いながら、幸せな気持ちでカボルに着きました。

そこの領主はミフラーブという人で、申し分のない富豪でした。彼は糸杉のように背が高く優雅で、顔は春のように爽やかで、足取りは堂々として雉のようでありました。その心は賢く、その心は思慮深く、その肩は戦士のようであり、その心は神官のようでした。ミフラーブはザハクの子孫でしたが、ザールと争うつもりはなく属国として従っていました。

ザールの接近を知った彼は、宝物や琥珀などの様々な贈り物を持って夜明けと共にカボルを発ちました。ザールは、豪華な歓迎団が自分を迎えに来たと聞いて、前に出て彼らを迎え、あらゆる敬意を払って挨拶しました。

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●ザールの天幕を訪ね歓迎の意を表するミフラーブ f67v

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●ミフラーブからの贈り物の行列 f67v

ミフラーブをトルコ石を敷き詰めた玉座に座らせると、二人の王の前には素晴らしいご馳走が並べられました。侍従が葡萄酒を注いでいる間、ミフラーブは主君ザールを見定め、満足しました。

ザールへの祝福を述べるためミフラーブが玉座から立ち上がったとき、ザールはその姿と肢体を見定め、長老たちに言いました。
「なんと優雅な装いで美しい身のこなしの人物だろうか。かくも見事な体格であれば戦いにかけては右に出る者はいないでしょう。」

ある貴人がザールに言いました。
「高い壁に囲まれたカボルの彼の館には、その顔が太陽よりも美しく、頭から足まで象牙のようで、頬は楽園のようで、背丈はチークのように高くほっそりとした娘がいます。
麝香のように黒い髪の輪が銀色の首を覆って二筋に分かれて落ち、その先端は足首の輪飾りになります。彼女の頬はザクロの花のようで、唇は桜ん坊。彼女の銀色の胸は2つのザクロの粒を持っています。彼女の目は庭の双子の水仙です。月を求めるなら彼女の顔、麝香を求めるなら彼女の髪がその隠し場所でしょう。」

これはザールの心に動揺を引き起こし、休息と理性は失われました。
彼は考えました。この父君の娘であれば、その乙女の美しさはどれほどのことか!

夜になっても、ザールは見たこともないこの娘への強いあこがれで、眠れず、食べられず、また民族の違いを考えると猶更困り果てて思案に暮れました。


□□2.ルーダーベと侍女の娘たち

ある日の明け方、ミフラーブが女部屋に行くと、二つの太陽がありました。一人は妻のシンドゥクト、もう一人は愛娘のルーダーベです。彼らの部屋は、春の庭のように色とりどりに飾られ、甘い香りと気品に満ちていました。シンドゥクトはナツメの唇から真珠の歯を覗かせて微笑み、夫に尋ねました。
「サームの息子、この老人のような髪をした訪問者はどんな人物なのか教えてください。彼は玉座にふさわしいのでしょうか、それとも彼が育った荒野のあの巣に戻るべきでしょうか?」
ミフラーブは答えました。
「銀の胸を持つ我が麗しの糸杉よ。彼のような手綱さばきをする見事な騎手は見たことがない。
彼の心は獅子、力は象、手はナイル川のようだ。彼は王座につくと金貨を散らし、戦いになると首を散らす。彼の頬は花蘇芳のように赤く、聡明で、戦いの中では獰猛な鰐のよう、馬上では鋭い爪のある竜のようである。
どのような難癖屋でもたったひとつの欠点しかみつけられない。彼の髪は白いのだ。
しかし、この白髪が彼を際立たせている。『彼は何と魅力的なのか』と誰もが言うだろう。」

f68v
●ミフラーブがシンドゥクトとルーダーベにザールについて説明する68v


これを聞いたルーダーベは頬をザクロの花のように赤く染め、ザールへのあこがれに心を燃やしました。彼女は食べることも休むこともできず、性格も態度も変わってしまい、情熱が知恵の座を奪ってしまったのです。

ルーダーベには5人のトルクメン人の侍女がいました。みなルーダーベに忠実で思慮深い娘たちでした。彼女はこの少女たちに言いました。
「私の秘密を聞いて。私は恋をしています。私の心はザールを思う気持ちでいっぱいで、寝ても覚めても彼のことが頭から離れないのです。私の魂をこの苦しみから解放するために、何か方法を考えて欲しいの。」

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●侍女たちに打ち明けるルーダーベ f69v

ルーダーベのような身分の者がこのような行動をとることに、侍女たちは驚きました。彼女たちは立ち上がり、率直に彼女に答えました。
「愚かな姫様! あなたは世界中の女性の王冠であり、父君の家の宝石です。肖像画はヒンドからチン、西方まで賞賛され、あなたの背丈を持つ糸杉はなく、神々に嫁いだプレアデスの姉妹たちだって姫様ほど美しくありません。
なのに、老人のように生まれ、父親に疎まれ、山の中で鳥に育てられた者を恋するなんて。
珊瑚の唇、麝香の髪の若い娘が、どうして老人と結婚しようと思うのでしょう。」

この言葉を聞いたルーダーベは、風に煽られた火のように体を震わせ、眉を弓のように曲げて怒鳴りつけました。
「チンの皇帝も西方の王もイランの王子さえもいらない! 獅子のような強さと体格を持つザールこそ、私にふさわしいのです。人が彼を老人といおうが若いといおうが、私にはとっては彼が魂と心の平和を与えてくれる人なのです。」

侍女たちは彼女の返答に驚き、声を揃えて言った。
「私たちはあなたの忠実な召使です。姫様のためになんでもしましょう。魔法を学び、鳥と飛び、鹿と走り、呪文で目を封じてでも、この王子をあなたの側に連れて参りましょう。 」

□□3.ルダベの侍女たちがザールに会いに行く 

侍女たちはどうにかしてルーダーベを助けようと考えました。彼女たちはルームの錦を身にまとい、髪には花飾りをつけて川岸に降りていきました。春も盛りのその日、彼女たちは川辺で薔薇を摘みました。
摘んだ薔薇は膝を満たしていきましたが、それでも彼女たちはあちこちを歩き回って摘み続けます。

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●薔薇を摘み集める侍女たち f70v

ザールの野営地は川の向こう側にありました。侍女たちがザールの天幕のちょうど対岸に来たとき、ザールは彼の高い玉座からそれらを見つけ、尋ねました。
「あの花摘み娘たちは誰だろうか。」
廷臣の一人が言いました。
「ミフラーブ殿の宮殿から来た侍女たちで、人々がカボルの月と呼ぶ彼の娘が、薔薇を集めに行かせたのでしょう。」
ザールの心は高鳴りました。そしてザールは小姓の少年とともにさりげなく川岸を歩き、小姓から弓を受け取ると、一羽の鴨が水面から翼をひろげ飛び立つのを見計らって、矢を放ちました。

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●矢を射たザール f70v

矢は水鳥を仕留め、丁度娘たちのそばの水際に落ちました。ザールは小姓にそれを取りにやらせました。小舟で川を渡ってきた少年に、侍女のひとりが声をかけました。

「あなたのご主人、あの獅子のような体格の射手は誰なの?彼より立派な騎士も、弓の上手な射手も見たことがないわ。」
かわいい少年ははにかんで言いました。
「ぼくのご主人はザブリスタンの王で、サームの息子、名前はザールです。地上でいちばん、美しく逞しい騎士です。」

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●侍女たちと話をする小姓70v

少女たちはその少年をからかうように笑いかけて答えました。
「いいえ、ミフラーブ公の宮殿に、あなたの王よりずっと素敵なお姫様がいます。
その目は物思いにふけり、その眉は弧を描き、その鼻筋は銀の葦のよう、その頬はチューリップのような色で、その髪の先は足首の輪飾りのように巻きついています。彼女は無比の月なのです。
じつは私たちは、ザール殿の唇に姫様の紅玉の唇を触れさせたいのです。」
それを聞いた少年の顔は真っ赤になりました。
「確かに、太陽は月と結ばれるべきです。」
と少年は答えました。

少年はザールのもとに戻ってきました。
ザールは小姓に、少女たちが何を言ってそんなに笑ったのか、なぜ顔を火照らせているのか尋ねました。少年は聞いたことをザルに話すと、ザールの心は喜びに浮き立ちました。
彼は小姓に、侍女たちへの伝言ー薔薇の茂みの中に隠れているように―と姫君への贈り物を持たせ、再度川を渡らせました。

f69v
●川を渡った小舟70v

ザール自身も川を渡り、侍女たちのいる薔薇の茂みに行きました。
そして彼女達に、姫君の背丈や美しさ、話し方や知恵などを質問しました。侍女たちはザールに跪いて挨拶し、ルーダーベの美しさを雄弁に説明しました。

王子は心急いて、しかし平静を装って侍女たちに語りかけました。
「何とか姫君にお逢いするすべはあるでしょうか。私の心と魂は姫君への愛で満たされており、彼女の顔を一目見たいと切望しています。」
侍女たちは答えました。
「お許しを頂ければ、私たちは城に戻ります。そして、閣下の英明、美貌、誠実さ、そして熱い情熱について、姫君にすべてをお伝えします。どうぞ今晩、投げ縄を持って城壁に来て下さい。」

□□4.ルーダーベのもとに帰る侍女たち 

ザールは夜を待ちましたが、まるで一年が過ぎゆくように感じました。
少女達が城に到着したとき、それぞれ花束を2つ持っていました。城壁を守る門衛は眉をひそめて叱りつけました。
「こんなときに、随分と遠出してきたもんだな!」
彼女たちは心に秘密を抱え、むしろはしゃいだ様子で答えました。
「別にいつもと同じよ。だって春なのですもの。ルーダーベ様のために、薔薇とヒヤシンスを摘んできたの。」
「今日はそんなことをしている場合ではない。ザボレスタンの王ザール殿が近くまで来ているのだ。ミフラーブ殿が毎日通っているのを知っているだろう? もしザール殿が花を摘んでいるお前たちに出くわしたら、何をされるかわからないぞ。」

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●守衛に叱られる侍女たち71v

少女たちは館に入り、姫のところへ行き、座って秘密を打ち明けました。ザールからの錦や宝石を見せると、ルーダーベは彼について詳しく知りたがりました。
5人の少女は一斉に話し始め、誰が王女に自分の見たことを伝えるべきかを競い合いました。
「ザール殿は美しい糸杉のようで、身につける衣装の色、香水、すべてが優雅で、王族の栄光を放っています。背丈はすらりとして、腰は細く、胸は高く、肩や腿は隆々として獅子のようです。
目は二輪の黒い水仙のよう、唇は珊瑚のようであり、彼の頬は銀の鎖帷子をまとった花蘇芳のように、薔薇色の肌に銀の産毛があります。
学識があり賢者の思慮深さがあり、威厳があります。髪は真っ白ですが、これによって魅力を欠くものではないのです。」
「ザールは鳥に育てられ、老人の頭をした枯れた若者だという人もいますが、やはり違ったのですね。」
ルーダーベはそう言うと、頬をザクロの花のような色に赤らめて微笑みました。
侍女たちは言いました。
「私たちはザール殿に、姫様に会えると伝えました。彼は希望に満ちた心で自分の野営地に帰っていきました。さあ、お客様をお迎えする準備をしましょう。そしてすべてがうまくいくように祈るのです。」

ルーダーベは自分の館を持っていたため、彼女の親族は何も疑いませんでした。
ルーダーベの部屋は陽気な春のように、偉大な男たちの肖像画で飾られました。
侍女たちは部屋をチンの錦で飾り、瑪瑙やエメラルドを盛った金の盆を置きました。葡萄酒には麝香と龍涎香で香りをつけ、部屋中を水仙、菫、花蘇芳、薔薇、ジャスミンの花で飾りました。
ゴブレットは金とトルコ石でできており、透明な薔薇水に浸されたお菓子もあります。
このようにして、月のかんばせの姫君の部屋から薔薇の香りが立ち上り、太陽の君を待ち受けたのです。

□□5.ザールがルーダーベのもとを訪れる 

日が暮れると、姫の館には外から鍵がかけられましたが、侍女のひとりがザールのもとに忍んで行き、言いました。
「準備が整いましたので、お越しください。」 
ザールは心急いて城に向かいました。
ルーダーベは館の屋上ー城壁の上ーに出てザールを待ちました。その様子は、満月を頂く糸杉のようでした。そしてザールが現れると、彼に声をかけました。
「よく来てくれました、高貴な生まれのお方。あなたは私の侍女たちの説明した通りですね。高貴なあなたを、ここまで騎馬ではなく歩かせてしまってごめんなさい。」
彼はその声を聞き、城壁の上のルーダーベを見ました。その美しさは宝石のようにあたりを輝かせました。
彼は答えたました。
「おお、月のかんばせの姫よ。あなたの顔を見ることができるようにと、幾夜神に願ったことか。今、あなたはその声、その優しい言葉と優しさで私を幸せにしてくれます。
しかしいま、貴女は高い城壁の上にいてわたしは地上にいて、もどかしい思いです。」

ザールの言葉を聞いたルーダーベは緋色の頭巾を脱ぎ、そして、そのすらりとした糸杉の頂きから比類ない麝香の投げ縄ー美しい黒髪ーを解き放ちました。彼女の髪は城壁の上からまっすぐ垂れて地面に達しました。
「勇敢な戦士よ、どうぞこの髪を掴んでください。」

f72v
●胸壁から黒髪を垂らすルーダーベ f72v


ザールは驚いて彼女の髪と顔を交互に見つめました。
彼女は彼がその麝香の投げ縄にしばしば口づけするのを聞きました。
彼は言いました。
「それはいけません。美しい麝香を傷つけたくありませんから。」
そして従者から投げ縄を受け取り、息もつかせぬ早さで軽々と投げつけました。
投げ縄はうまく胸壁に引っかかり、彼は60キュビトの高さを軽々と登ってきました。
ルーダーベは駆け寄って、思わず彼の手をとり、そして愛に酔いしれた二人は手を握り合ったまま、屋根の上からルーダーベの黄金の間へと降りていきました。

二人は並んで座りました。
ルーダーベの姿は、宝石が縫い取られた錦の衣装、金と宝石の腕輪、首飾り、耳飾りに飾られ、花が咲き乱れる春の庭のようです。でも、きらめく宝石よりももっと美しいのは、ジャスミンに囲まれた赤いチューリップのような頬、麝香のような髪の巻き毛、愛らしさと気品のある彼女の表情でした。ザールは感嘆し、魅入られ、見つめ続けました。

ルーダーベは恥じらいに目を伏せながらも、ザールをちらちらと盗み見るように見ました。すらりとしたその体、剣帯をつけた厚い胸、その優雅な首、槌の一振りで岩を砕くその盛り上がった肩、そして心が震えるほど美しいその頬を、見るほどに彼女の心は燃え上がり、彼らは口づけして、愛に酔いしれました。

ザールは月の顔をした乙女に言いました。
「麝香の香りのする銀色の糸杉よ!マヌチフル大王は決して同意しないだろうし、父は声を荒げて反対するかもしれません。しかし神に誓って、私は決してあなたへの忠誠を断ち切ることはなありません。 」
ルーダーベは答えました。
「私も信仰と正義の神に誓って、あなた以外は私の主でないと誓います。」
二人の愛は夜が更けるにつれてますます深まり、知恵は愛の炎の前に逃げ去りました。
空の色が変わり夜明けを告げる太鼓の音が鳴り響いたとき、二人は涙を流し、昇る太陽に願いました。
「世界を照らす太陽よ!どうかもう少しだけ!そんなに早く昇らないで!」

ザールはルーダーベに別れを告げ、最後に、縦糸と横糸が絡み合うように強く彼女を抱きしめました。
そして、ザルは胸壁から投げ縄を落とし、まっすぐ下降して、自分の野営地に帰っていきました。

 

■シャー・タフマスプ本の細密画

サムネイル ページ番号 画のタイトル※ タイトル和訳 所蔵館と請求番号 画像リンク先 備考
f067v 67 VERSO  Zal receives Mihrab's homage at Kabul  ザールはカブールで王ミフラーブの表敬訪問を受ける  個人蔵 Hollis 本※のp129
f068v 68 VERSO  Mihrab describes Zal to Sindukht and Rudabeh  ミフラーブは王妃シンドゥクトと王女ルーダーベにザールを説明する  Tehran Museum of Contemporary Art, Tehran, Iran Hollis  
f069v 69 VERSO  Rudabeh confides in her maids  ルーダーベ、メイドに打ち明ける  Tehran Museum of Contemporary Art, Tehran, Iran Hollis  
f070v 70 VERSO  Rudabeh's maids meet Zal's page at the river  ルーダーベの侍女たちは川でザールの手下と出会う  Tehran Museum of Contemporary Art, Tehran, Iran ioHollis  
f071v 71 VERSO  Rudabeh's maids return to the palace  ルーダーベの侍女が宮殿に戻る  MET, 1970.301.6 MET  
f072v 72 VERSO  Rudabeh makes a ladder of her tresses  ルーダーベは自分の髪で梯子を作る。 MET, 1970.301.7 MET  

■細密画解説(本や所蔵美術館の解説より適宜抜粋)

●67 VERSO  Zal receives Mihrab s homage at Kabul  ザールはカブールで王ミフラーブの謁見を受ける 
この陽光降り注ぐ接待シーンは、まるで園遊会のような雰囲気で、ミール・ムサヴヴィールが、いつものようにハンサムで愛想のよい従者たちを登場させたといえる。
ザールの近くに立っているミール・ムサヴヴィールの小人は、その整った体型で目を楽しませてくれる。ミフラーブ(Mihrab)は、贈り物の行列が通り過ぎるとき、謙虚さを簡単に身にまとっている。右上の丸々とした廷臣は、カルプス・スルタンの別の肖像と思われる。

〇Fujikaメモ:
ものすごく多い人物を描いていて、とても手が込んでいる絵ですよね。
解説にもありますが、ミフラーブは肩をすくめたようにしゃちほこばって、かしこまった様子で描いてあります。
ザールの前のお盆に積み上げられた赤いものはザクロでしょうか。

●68 VERSO  Mihrab describes Zal to Sindukht and Rudabeh  ミフラーブ王は王妃シンドゥクトと王女ルダベにザールを説明する 
〇Fujikaメモ:専門家による解説がないので、私が勝手に感想を書いてしまいます。 
客人ザールの様子を、ミフラーブが妻と娘に説明しています。
この不鮮明な画像でも、娘ルーダーベが物思いにふけって、あらぬ方を見やっている様子が伺えます。
画面手前には、5人の侍女がザクロや花籠を運んで行き来しています。

●69 VERSO  Rudabeh confides in her maids  ルーダーベ、侍女達に打ち明ける 
〇Fujikaメモ:専門家による解説がないので、私が勝手に感想を書いてしまいます。 
画面の右三分の一がハレムの外で、左側が女たちの世界、という構図です。
ここではルーダーベが侍女よりえらく大きく描かれています。重要人物ということと、あと実際背が高い、ということを表現しているのでしょうか。
三か所の窓からは綺麗な庭の花や木が見えています。

●70 VERSO  Rudabeh's maids meet Zal's page at the river  ルーダーベの侍女は川でザールの手下と出会う 
〇Fujikaメモ:専門家による解説がないので、私が勝手に感想を書いてしまいます。 
これは、鮮明な画像のおかげかもしれませんが、とっても綺麗な絵!
このシリーズで(画像がみつかったものの中で)唯一、完全な屋外シーンです。
画面を横切る川。最初はもっと明るい色(青と銀?)だったのかもしれません。
川の向こうには、咲き乱れる花と、カラフルな服を着た侍女5人と、ザールの小姓の少年。
侍女のうち一人は肌が褐色です。
小姓はザールによって射られた水鳥と矢を持っています。
(ザールが水鳥を射たのは、勿論侍女たちに近づくためで、あと未婚女性に近づけるのは少年だけなので小姓が行かされたわけです)
川の中には小舟。
川の手前はザールの野営地側で、ひときわ目立つように弓を射たザールを描いてあって、ほかにも男性が数人います。
川の手前側にも川を背景にして植物がくっきり描かれています。
よく見ると川には波模様や魚も描いてあります。
この章の中でこの絵が一番好きです。

●71 VERSO  Rudabeh's maids return to the palace  ルーダーベの女中が宮殿に戻る 
ルーダーベのメイドは急いで彼女の宮殿に戻りますが、警備員から遅くまで外出していると叱られる。彼女たちは花を摘んでいたと答え、ルーダーベをザールの話で喜ばせる。
〇Fujikaメモ:
侍女たちが門番に叱られるシーンの文章は、私の拙い英語力、そして翻訳ツールで訳された変な日本語にもかかわらず、とてもリアルです。
若い女の子が5人集まって、とある秘密を共有してしまったら、それはもう、クスクス笑ったりはしゃいだり、そのうわずった様子が浮かぶようです。
絵は、割と端正で静的な構図です(ヘラート派?)。
長時間出かけていた割には持ち帰った花が、ちょっと足りないような気もします。

●72 VERSO  Rudabeh makes a ladder of her tresses  ルーダーベは自分の髪で梯子を作る。
ルーダーベの侍女の一人がザールを宮殿から王女のパビリオンに忍び込ませる。ルーダーベは壁を登るために髪の毛を下ろすが、ザールは投げ縄を投げて屋根の銃眼をキャッチし、それから彼の最愛の人に会うために登っていく。
〇Fujikaメモ:
これは、シャーナーメの中でも有名なシーンのひとつ。このシーンの挿絵はおそらく沢山あると思います。
シャータフマスプ本のこの挿絵は、ちょっとさみしい(物足りない)ような気もしますが、夜だし、こんなもんかな?
(METも、ホートン氏と交渉したときこの有名なシーンの絵を希望したのでしょうね)
翻訳の参考にしている本(Ferdowsi, Abolqasem. The Lion and the Throne: Stories from the Shahnameh of Ferdowsi, Volume 1 (p.108). Mage Publishers. Kindle 版. )では、別の絵を採用しています。で、どちらも、髪は(文章の表現とは異なり)地面にまでは達していないです。さすがに何メートルもの長さの髪は描きにくかったのかな。
ザールがのぼった城壁と、ルーダーベの館(部屋)の位置関係が不明です。
門番がいたので、カボルの宮殿を囲む城壁はあるのだと思うのですが、
・ザールが登ったのはAカボルの宮殿を囲む城壁? Bルーダーベの館の壁?
・Aだとすると、ルーダーベの館には、いったん城郭内の地面を歩いて彼女の館まで移動しなくてはいけない?
・Bだとすると、カボルの城壁のどこかをこっそり抜けて城内に入ったということになります。
・今回は、よくわからないながらも、今回は、A城壁を登った、というように解釈し、しかも彼女の館はその壁に接している(階下にある)という設定にしてみました。女達の住む館は、本当は城内の奥深い場所にありそうで、城壁に近いところにあるとは考えにくい気もしますが・・・
お分かりの方、コメント欄で教えて下さい。




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