採集生活

お菓子作り、ジャム作り、料理などについての記録

シャー・ナーメあらすじ:5.マヌチフルの復讐

2022-12-28 | +シャー・ナーメあらすじ(挿絵付き)

前回のイライの事件があって、もう話は読めているかと思いますが、その復讐の戦争です。
これの次から、シャーナーメの英雄編で一番有名で面白いパートに入っていきます。


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5.マヌチフルの復讐
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■登場人物
ファリドゥン:イラン王。在位500年。
サルム:ファリドゥンの長男。西方(トゥランとルーム/ビザンチン(ローマが語源))の王。 Salm
トゥール:ファリドゥンの次男。東方(チン/中国、トゥラン)の王 Tur
イライ:ファリドゥンの三男。イラン王位を継いだが兄達に殺された Iraj
マ・アファリド:イライの後宮の女奴隷。イライの娘を産む。
パシャン:マ・アファリドの娘の夫。マヌチフルの父。
マヌチフル:イライの娘の子。ファリドゥンの曽孫。
カレン、アンディアン、シルイ、シャプール、サーム、ガルシャスプ、クバド:イランおよび同盟国の武将
サルヴ:ヤマン(イエメン)の王。イランの同盟。

■概要
前回イライが兄二人の嫉妬によって殺されてしまいました。その後、孫にあたるマヌチフルによる復讐の戦争です。
あらすじとしては箇条書き1行くらいなのですが、文学としては戦闘シーンが味わいどころなのでしょうか。
日本でも男子中高生は三国志にはまったりするし、こういう戦闘シーンは男性の読み手には受けるのかな。武将の名前が複数出てきますが、短縮する前でも、役職はともかく各キャラの性格の違いはあまり明確ではありませんでした。原文ではいくつか地名が出てきましたが(日本人には)なくても変わりないなのでだいぶ省きました。
司令官が檄を飛ばし、兵士達が恭順の宣言をする部分も多くありましたが、ほとんど省きました。戦闘シーンでも血なまぐさい表現が沢山あって、現実に戦争が起こっている今なので、どうにもつらかった。。。(人類もそろそろ、武器をもって戦うのは、ゲームとか文学の中のことだけにしてほしいです)
挿絵は、50v~60vの11枚。見開きごとに絵が続きます。

■ものがたり

□□マヌチフルの誕生

時が満ちて、マ・アファリドの娘とパシャンの間に男の子が生まれました。
王冠と王座にふさわしい、そして祖父イライにそっくりなその子はマヌチフルと名付けられました。
曾祖父ファリドゥンはマヌチフルをとても大切に育てさせ、世話係の乳母は、地べたを歩かず、足は麝香の上を歩き、絹の日傘をさしていました。
ファリドゥンは、彼に王としての心得を教え、イライの死後うち沈んでいた彼の心は、マヌチフルの成長とともに蘇りました。
マヌチフルが成年に達したとき、ファリドゥンは王室の宝物庫の武器や宝物をマヌチフルに与えるのが適当と考え、この若者を未来の王として讃え、その冠にエメラルドをかけるために、軍の覇者や国の貴族を自分の前に呼び寄せました。盛大な祝宴が開かれ、鍛冶屋カヴェの子孫、カヴィアニ一族のカレン、軍司令官のシルイ、アンディアンらが集まり、マヌチフルに忠誠を誓いました。

f50v
●亡き祖父イライの跡継ぎ、マヌチフル

f50v
●マヌチフルを歓迎する将軍たち

□□サルムとトゥールがマヌチフルのことを知る

サルムとトゥールのもとに、再びイランの帝冠が輝いたという知らせが届きました。この知らせに、彼らは星が自分達に敵対し、暗雲が立ち込めていることを怖れ、話し合いました。

何とかしてこの状況を打開しなければならないとの結論に達し、ファリドゥンに過去の行いを詫びる使者を送るしかありませんでした。そして贈り物も。
ルームの宝物庫を開き、この古来の蔵から黄金の冠を選びました。象に豪華な鎧を着せ、戦車に麝香や琥珀、金銀の銭、絹、毛皮を満載し、全ての準備が整ったところで使者は旅支度を整えて彼らの前に姿を見せました。

f51v
●贈り物の象や宝物

そして兄弟はファリドゥンへのメッセージを語りました。
「この二人の罪人の目は、父の前で恥辱の涙で満たされ、心は後悔で燃え上がり、許しを請います。しかし、かつて起こったことは運命に書かれたことであり、我々の行動は書かれたことを実現させたに過ぎないのです。あのときは邪悪で大胆な悪魔が、私たちの心から神への恐れを消し去り、私たちの心を住処にしたのです。
しかし、私たちは、たとえ罪が大きくとも、王が私たちを赦し復讐を忘れててくれることを望みます。マヌチフル王子がこちらを訪ねて来てくれれば、我々は父上とマヌチフルの前に、奴隷として跪きます。
この憎しみから育った復讐の木を、私達の目の涙で洗い流すことができますように。
誠意の証として宝物を送ります。」


f51v
●贈り物を携えた使節を送り出すサルムとトゥール


□□サルムとトゥールの手紙が父王ファリドゥンの宮廷に届く

韻も理もない言葉を胸に秘め、象と財宝を従えて、使者は麗々しく宮廷にやってきました。
彼は絢爛豪華な玉座のファリドゥン王に近づき、頭を下げて地面に口づけしました。王は彼に微笑んで歓迎し、使者は嘘で真実を偽るサルムとトゥールの伝言を繰り返しました。
使者はまた、マヌチフルのサルムの元への訪問を提案しました。そうすれば兄弟は奴隷として彼を歓迎し、彼らの王冠と王座を彼に譲り、絹と金、王冠、王帯で彼らの父親に対する血の代償を支払うでしょう、と。

□□ファリドゥンの息子たちへの返信

世界の王は、非道な息子たちのメッセージを聞くと、使者に答えて言いました。
「太陽を隠すことができないように、お前たちの邪悪な企みは明らかだ。
イライを殺し、今度はマヌチフルを始末したいのか?
あのとき、我々はイライのために復讐を行わなかった。それは時が熟さなかったためだ。老いた私が二人の息子と戦うのは適わなかっただろう。しかし今、根こそぎにされた木から立派な枝が芽生え、勇敢な獅子マヌチフルとその武将たちが彼の祖父の死に対する復讐を行う。
『かつての行いは天の仕業だから復讐の念を心から洗い流し許すべきだ』などという要求には呆れる。神の前に恥を知らないのか。人の世でも神の世でも、お前達はこの悪のために罰せられるだろう。
象牙の玉座、戦象、トルコ石をちりばめた王冠の贈り物で私が復讐をあきらめると、老いた父親が息子の命で金貨を購うとでも思うのか?
お前達のこの贈り物は私には必要がなく、これ以上話しても意味がない。この父は生きている限り、復讐の念を絶やすことはない!」
そして、使者に向かって言いました。
「これを一文一文、彼らに綴りなさい。さあ、行け!」。

f50v
●返信を語るファリドゥン

この恐ろしい言葉を聞いた使者は、玉座のマヌチフルをちらりと確認しました。彼は恐怖の余り、震えながら立ち上がり、即座に鞍に飛び乗って出発しました。
この使者は、これから起こるであろう運命の全てを心に刻み、天がトゥールとサルムに牙を剥くまでそう時間はかからないと思いました。彼は風のように疾走し、頭の中は王の答えでいっぱいになり、心は不吉な予感でいっぱいになりました。

f52v
●帰路につく使者

西の方角に着くと、平原に絹の天幕が張られていました。

f52v
●兄弟の天幕と水を汲む従者たち

二人の王が彼を待っていて、王冠と帝位、ファリドゥン王とその軍勢、集まった戦士達、国の様子などを使者に問いかけました。宰相は誰なのか、国庫はどうなっているのか、財務官は誰なのか、騎兵は何人集まっているのか、その指導者は誰か、軍司令官は誰なのかなどを知りたがりました。

f53v
●使者の言葉を聞き議論するサルムとトゥール

使者は言いました。
「ファリドゥン王の宮廷は春のような喜びの場所、天国です。世界中の人々が彼の幸運の前に頭を下げています。
宮廷では、月のように輝くファリドゥン王の右側に、糸杉のように背が高く優雅で、心も言葉も王者のようなマヌチフル王子が座っていました。
戦士のカレンは彼の前に立ち、彼の左側にはイエメンの王で宰相のサルヴがいました。無敵のガルシャスプは彼の会計係であり、彼の宝庫にあるような富を見た者は誰もいない程です。
宮殿の壁には二列の戦士が並び、黄金の棍棒を持ち、黄金の兜をつけています。カレン、アンディアン、獅子の破壊者シルイ、そして怒りに燃える戦象のようなシャプールがその指揮官です。もし彼らが我らを攻めれば、我らの山々は平地のように平らになり、平地は山のように塞がれてしまうでしょう。」

f53v
●ファリドゥンのメッセージを伝える使者

彼は、自分が見たこと、ファリドゥンから聞いたことをすべて話した。二人の罪人の心は苦悩し、顔はラピスラズリのように青くなりました。二人は座り込んで、何か解決策はないかと探しましたが、その言葉には頭も尻尾もありませんでした。

やがてトゥールがサルムに言いました。
「もはや平和はあきらめよう。あの仔獅子の牙が太く鋭く育ってもらっては困る。ファリドゥンが師匠なのだから、才能がないわけがない。祖父と孫が共謀すれば、何かとんでもないことが起こるだろう。我々は戦争の準備を急ごうではないか。」
彼らはチンとルームから軍を集め、騎馬隊を率いて出陣しました。世間は噂で持ちきり、人々は彼らの旗に群がりました。彼らの軍隊は無尽蔵でした。

□□サルムとトゥールがファリドゥンに向かって進軍する

ファリドゥンは、彼らの軍がジフン川を渡りペルシャに近づいているという知らせを受け、マヌチフルに軍を平原に出すように命じました。

戦士達は見渡す限り隊を組んで進み、平野や山々はうねり盛り上がる海の波のようでした。砂塵が太陽を覆い隠し、明るい日差しは暗くなり、鬨の声が四方から聞こえ、アラブ馬が嘶き、太鼓が鳴り響きます。
二列に並んだ象の列は陣地から2マイルに渡って伸び、そのうち60頭の象は宝石をちりばめた黄金のハウダ(象駕籠)を背負い、300頭は荷物を満載し、300頭は目だけが見える鉄の鎧に覆われていました。
王の天幕が打たれ、王旗がはためき、勇猛なカレンを先頭に、三十万の鎧騎兵が、それぞれが荒ぶる獅子のように、イライの死の復讐に燃えて、カヴィアニの旗を掲げ、拳の中に鋼鉄の青い剣を光らせていました。

軍勢は平原に出ました。マヌチフルは軍の左翼をガルシャスプに与え、右翼には勇敢なサームが偵察隊を率いるクバドと共に戦列を整え、カレンと王子そしてサルヴは中央に位置し、そこから月のように、あるいは高い丘の上の太陽のように輝いていました。

サルムとトゥールの軍勢もまた、この平原に現れました。

偵察隊のクバドが前進してきたところ、トゥールはそれを見て風のように出てきて、彼に言いました。 
 「マヌチフルのところに戻って言え。
『私生児がシャーになったようだな。イライの娘だか知らないが、お前に王冠、王座の資格があるのかね?』」

「言葉通りに伝言を伝えましょう。」クバドは答えました。
「しかしあなたはいずれ、我々の軍勢を見てこの愚かな言葉を後悔することでしょう。」

f54v
●トゥール(左)とクバド(右)の応酬

クバドはマヌチフルのもとに戻りこれを伝えました。
マヌチフルは笑い捨て、開戦前夜の宴の用意を進めさせました。

□□マヌチフルがトゥールの軍を攻撃する

日が暮れると、カレンはイエメン王サルヴと共に軍隊の前に立ち、彼らに向かって檄を飛ばしました。
「王に忠実な貴族と獅子たちよ、これはアーリマンとの戦いであることを知り、心の準備をし、神の守護を確信して生きよ!
夜が明け、時を告げる喇叭の音がしたら自分の棍棒と剣を用意するのだ。隊列を組んで、誰も他の者より先に足を進めることのないようにせよ。」
隊長達は王の前に整列して声を揃えて言いました。
「私達はあなたの奴隷です。王のために、この平原を血のオクサス川としましょう」
そして、各自が自分の天幕に戻り、来たるべき戦いに思いを馳せました。

夜が明けると、王子は鎧、剣、ルームの兜を身にまとい、軍勢の中央に陣取りました。
兵士たちは槍を高く掲げて鬨の声を上げ、全軍は進み始めました。
平原は軍勢で覆われ、海原の波のようにうねっています。
笛や太鼓、喇叭の音が響き渡り、これを耳にしたものは「祭りだ!」と言うかもしれません。

f54v
●軍楽隊のラッパと太鼓54

f55v
●総司令官マヌチフルと戦象54

雄たけびを上げる軍隊は、山が動くようにうねり、ぶつかり合います。
やがて平原は血の海になり、赤いチューリップの群落が一面咲いているようになりました。
巨大な象は珊瑚の柱のように血の中に立っていました。
彼らは夜まで戦い、ミヌチフルが勝利を得ました。

□□マヌチフルがトゥールを殺す

トゥールとサルムは策略を巡らせ、夜闇を待って奇襲をかけることにしました。
しかしイランの斥候はその情報を入手し、ミヌチフルのもとへ駆けつけ、兵を配置するよう伝えました。彼は戦士3万人を率いて、自ら待ち伏せした。
トゥールは夜、十万人の兵を率いて密かに戦いに臨みました。
しかし、マヌチフルの軍は旗を翻して戦闘の準備をしており、トゥールはこの戦いが自分の最後の決戦であることを知りました。
鬨の声は軍勢の中心から上がり、騎兵は土埃を巻き上げて空気を塵に変え、鋼鉄の剣は稲妻のように光りました。ぶつかり合う刃の火花はダイヤモンドの炎となり、塵の雲の中には焦げる匂いが漂いました。

トゥールは自軍の絶望的な叫び声の中、手綱を引いて逃げようとしました。
マヌチフルは急いで彼を追いかけ、間合いを詰めると、彼の背中に槍を突き立て、彼を鞍から持ち上げて地面に投げつけました。
その場で彼の首を切り落とし、その体は獣に食わせるために残しておきました。

f55v
●マヌチフルがトゥールを槍で刺して持ち上げる


f55v
●主を失ったトゥールの馬55

□□マヌチフルからのファリドゥンへの手紙

マヌチフルファリドゥン王へ戦況を知らせる手紙を書きました。
そして最後に、
「トゥールの首を送ります。かつて彼がイライ王子の首を黄金の筐に入れて送ったように。そしてこれから私はサルムに対処します」と。

ファリドゥン王のもとに急ぐ使者は、頬を紅潮させ目に涙を溜めて、この首をどうやってペルシャの王に見せたものかと思いました。例えどんな悪人の息子でも、このような有様を見れば父親の心は揺さぶられるからです。しかし、彼は果敢にも王の前に進み出て、トゥールの首を王の前に下ろしました。
ファリドゥンは、手巾を握りしめ、動揺を押し隠して、マヌチフルへの正義の神の加護を呼びかけました。
廷臣の中にも痛々しさに目を伏せるものもいました。

f56v
●マヌチフルからの手紙を受け取り、トゥールの首を見るファリドゥン56

f56v
●トゥールの首を見せる使者56

f56v
●目を伏せる廷臣

□□カランがアラン族の城を占領する

失敗に終わった夜襲と、月を覆い隠す闇の知らせがサルムに届きました。サルム軍の後方には険阻な地形を利用した難攻不落のアラン族の城があり、彼はそこに撤退して様子を見ることにしました。
もしサルム達がこの城に立てこもれば、この城はあらゆる富を蓄え、花崗岩の城壁は海から突き出て雲まで達し、攻め入ることば難しい場所です。
カレンの計略で、トゥールの印章の指輪を携え、戦士ガルシャスプ、シルイらと共にこの城に向かいました。
軍勢は城の近くで待機し、カレンは前に出て城の司令官にトゥールの印章環を見せました。そしてこのように申し立てました。
「私はトゥール王の使いで来ました。王は私に、昼夜を問わず旅を続け、この地にたどり着き、あなた方と共に城の防衛を引き継げと言ったのです。イラン軍が攻めてきたらここで闘えと。」
この言葉を聞いた城の司令官は、トゥールの印章環を見て、その言葉を信じ、何の策略も思い至らずに城門を大きく開けてしまいました。
夜が明けると、カレンは隠し持っていたイラン王旗を広げ、鬨の声をあげてシルイとその軍勢を呼び寄せました。

f57v
●アランの城に入ったカレン

f57v
●堀を渡ってなだれ込むイラン軍

シルイは城門に向かい、守備隊を攻撃して血の冠を授けました。一方はカレン、他方にはシルイ、上は剣の炎、下は海の水、太陽が天の頂に着く頃には城は騒然となり、司令官の姿は見えなくなっていました。このようにしてアランの城は陥ちたのです。
日が落ちる頃には城は焼け落ちて周りの平野と見分けがつかなくなりました。敵は1万2千人殺され、真っ黒な煙が立ち上りました。海はタールのように真っ黒になり、平野は血の川となりました。

□□ザハクの孫カクイによる攻撃、サルムが逃げ、マヌチフルによって殺される

サルムは、ザハクの子孫カクイと同盟を結び、ともに戦うことにしましたが、総大将カクイは死闘の末マヌチフルに討たれてしまいました。

もはやサルムは復讐の念を捨て、敗走していきます。
マヌチフルの軍勢が追いかけていきますが、死傷した戦士で道がふさがれていて、なかなか前に進めません。白い馬に乗った若い王は怒りに燃えて、馬の鞍を投げ捨ててスピードを上げ、裸馬に乗って退却する軍勢の砂塵の中に馬を追い込みました。

彼は西方の王に迫り、
「弟を殺し、弟の冠を欲しがった不届き者よ、その冠を持ってきてやったぞ」
と叫ぶと、剣で首を打ち据えました。

f58v
●マヌチフルがサルムを斬る

剛力によりサルムの首は切断され、その首は槍に刺し天に突き上げて手下共に示されました。
サルムの軍はその腕力に驚き、羊飼いのいない群れのように散り散りになってしまいました。武将達は恭順の意を示して降伏し、マヌチフルは慈悲を示して命を助け彼らをもてなしました。彼らは武器、鎧、兜、矛、インドの太刀、馬用鎧などをマヌチフルの所に持って行き、山のように彼の前に積み上げました。

□□マヌチフルがファリドゥン王に手紙を書く

マヌチフルはサルムの首を持たせて使者を派遣し、ファリドゥンに事の次第を報告しました。
そして戦士シルイに命じて戦利品を一ヶ所に集めさせ、象に積んで全てファリドゥン王のもとに持って行かせました。

行列が祖父の待ち受ける場所に近づくと、太鼓を叩き喇叭を鳴らし、絢爛たる行列が賑々しく進みました。象にはトルコ石の玉座、中国の錦をまとった黄金の象駕籠、旗、高級品などが積まれ、辺りは緋色、金色、紫色に輝いています。馬を連ねた軍勢は動く黒雲のようで、その鞍、盾、帯は金、鐙(あぶみ)は銀でできていました。

f59v
●楽隊と象

f59
●騎馬の軍勢

ファリドゥンが現れると、マヌチフルは馬から降りて地面に接吻しました。
ファリドゥンは彼を立ち上がらせ、優しく抱擁し、口づけをし、手で彼の顔をなでました。

f59v
●マヌチフルを抱擁するファリドゥン

それから顔を天に向けて言いました。
「神よ!あなたは私の望みをすべてかなえてくださいました。さあ、私をあの世へ、この世よりも良い世界へ連れて行ってください。」

またシルイに戦利品を宮中に運ばせ、全て兵士達に惜しみなく分配するよう命じました。
王宮を訪ねてきていたシスタンの領主サームにマヌチフルの支援を頼み、そして最後に、自らの手で若い王子に冠を授けました。

f60v
●マヌチフルの戴冠

これが行われると、偉大な王の木の葉は枯れてゆきました。
ファリドゥンは王位と玉座を辞し、残りの生涯を喪に服し祈りの日々を過ごしました。
偉大な王は泣きながら言いました。
「私の心の喜びであった息子たちが私の昼を終わりのない夜に変えた。
息子たちはの無残な死は、私の行いがもたらしたのだろうか。」 
そして 悲嘆に暮れ 過去を嘆き悲しみ、ついに死が訪れるまで苦しみの中で生きたのです。

 

 

 

■シャー・タフマスプ本の細密画

 

サムネイル ページ番号 画のタイトル※ タイトル和訳 所蔵館と請求番号 画像リンク先 備考
f050v 50 VERSO  Manuchihr at the court of Faridun  ファリドゥン宮廷でのマヌチフル Tehran Museum of Contemporary Art, Tehran, Iran  
f051v 51 VERSO  Faridun and Manuchihr receive an envoy from Salm and Tur  ファリドゥンとマヌチフルはサルムとトゥールから使者を受け取る  Tehran Museum of Contemporary Art, Tehran, Iran  
f052v 52 VERSO  The envoy returns to Salm and Tur  使者、サルムとトゥールのもとに戻る  Tehran Museum of Contemporary Art, Tehran, Iran /  
f053v 53 VERSO  Salm and Tur receive the reply of Faridun and Manuchihr  サルムとトゥール、ファリドゥンとマヌチフルの返事を受け取る  Aga Khan Museum, AKM495  
f054v 54 VERSO  Tur taunts Qubad / Manuchihr leads his army to fight Salm and Tur トゥール、クバドを挑発する  Tehran Museum of Contemporary Art, Tehran, Iran / /  
f055v 55 VERSO  Manuchihr raises Tur on his lance  マヌチフルはトゥールを槍で突き刺す  Tehran Museum of Contemporary Art, Tehran, Iran  
f056v 56 VERSO  Faridun receives the head of Tur  ファリドゥンはトゥールの首を受け取る  Tehran Museum of Contemporary Art, Tehran, Iran /  
f057v 57 VERSO  Qaran captures the castle of the Alans  カランはアラン族の城を占領する  Tehran Museum of Contemporary Art, Tehran, Iran  
f058v 58 VERSO  Manuchihr kills Salm  マヌチフルはサルムを殺す  Tehran Museum of Contemporary Art, Tehran, Iran  
f059v 59 VERSO  Faridun embraces Manuchihr  ファリドゥンはマヌチフルを抱きしめる  MET, 1970.301.5  
f060v 60 VERSO  Manuchihr enthroned  マヌチフルの即位  Farjam Foundation, Dubai, Dubai, United Arab Emirates  

 

 

■細密画解説(本や所蔵美術館の解説より適宜抜粋)

●50 VERSO  Manuchihr at the court of Faridun  ファリドゥン宮廷でのマヌチフル
〇Fujikaメモ:専門家による解説がないので、私が勝手に感想を書いてしまいます。
マヌチフルがファリドゥン王より一段高いところに座っています。
原文では「冠を授ける」というような表現ですが、戴冠ではなく、(成人の)お披露目みたいなものかなと思いました。
マヌチフルは丸くひげのない顔で、いかにも若い王子のように見えます。
これまで読んできて、権力者の財産とは、所有する軍隊および軍備、武器類のことかとようやく分かってきました。子供の頃ヨーロッパのお城博物館で甲冑や剣など武具が沢山あったのを見て「たかが鉄のこういうものより宝石とか金の方が価値がありそうなのに何故かなあ(つまんないの)」と思っていましたが、武器というのは実用的な財産だったのですね。(中には保管している間に時代遅れになってしまった武具もあったかも・・・? でもちゃんとしたお城なら、管理係が買い換えたり鋳造しなおしたりしてアップデートするのか。21世紀の今もそうだものな・・・)


●51 VERSO  Faridun and Manuchihr receive an envoy from Salm and Tur  ファリドゥンとマヌチフルはサルムとトゥールから使者を受け取る 
〇Fujikaメモ:専門家による解説がないので、私が勝手に感想を書いてしまいます。
平原に野営しているサルムとトゥールがファリドゥンへの贈り物(象その他)を準備しているところのようです。象には黒人の象使いが乗っています。
人物はほぼみな髭を蓄えた大人の男性。みんなの来ている服に金色で細かい装飾が描いてあって綺麗です。

●52 VERSO  The envoy returns to Salm and Tur  使者、サルムとトゥールのもとに戻る
〇Fujikaメモ:専門家による解説がないので、私が勝手に感想を書いてしまいます。
徒歩の小姓?に先導されて、ファリドゥンのところから使者一行がてくてくと帰ってくるところ。
珍しく?砂漠が砂漠らしい薄茶色です。
左奥にはサルムとトゥールの天幕が。天幕は、いつも思うのですが、必ずロープがきちんと描かれています。
天幕の手前に水が流れていて、水を汲む人々がいたり、綺麗な草花が咲いていたりします。

 

●53 VERSO  Salm and Tur receive the reply of Faridun and Manuchihr  サルムとトゥール、ファリドゥンとマヌチフルの返事を受け取る 
使者はサルムの野営地に戻り、ファリダンからの拒絶と戦意のメッセージを伝えてサルムとトゥールの顔を「ラピスラズリのように青く」した。
この絵はアブド・アル・アジズAbd al-'Aziz の作とされる。アブド・アル・アジズは、イライの孫であるマヌチフルが祖父の殺害に復讐する準備をしていることをトゥルと兄のサルムが知った瞬間をとらえています。彼は王子たちに青い肌を与えませんが、左の兄弟の手のジェスチャーと彼らの前にひざまずく特使、そして彼らのテントの最も近くに座っている廷臣によって、彼らの議論の激しさを伝えます。Salm と Tur を囲んでいるテントは少し中心から外れて配置されており、背景にある 2 つの小丘とその背後にあるテントと人物は、2 人の兄弟の陣営がこの会議に参加したという感覚を広げています。このテーマは、左側のグループの女性と男の子が、丘の切り欠きで右側の従者に大皿料理を提供することで表現されています。

アブドゥルアジズは、「カユマールの法廷」やその他の記憶に残る絵画をシャータフマースシャーナーメで作成したスルタン ムハンマドの指揮の下、この絵を制作したと考えられています。スルタン・ムハンマドのスタイルに合わせて、このフォリオには構成に付随する多くの小さな人物が含まれています。また、スルタン・ムハンマドの他のシャーナーメの絵画でおなじみの人物も含まれています。たとえば、ページの端に立っているひげを生やした男で、両手を杖の上に置いている人物や、右上に顎が突き出ており、ヒョウの皮の帽子をかぶっている人物などです。

シャーナメのほとんどのイラストと同様にShah Tahmasp のこのフォリオには、16 世紀のイランの物質文化への洞察を与える多くの詳細が含まれています。メインテントは観客用に設計されており、片側が開いているため、青と金の裏地のパネルが見えます。 現存するサファヴィー朝のテント パネルはベルベットで作られていますが、オスマン帝国では綿、麻、絹が使用されており、サファヴィー朝のテントでもそうであった可能性があります。テントの後ろに建てられた日除けは、テントから直射日光を遮断し、時には王や王子を日陰にするために使用された可能性があります. 中央のシーンの左端には、平らな屋根を持つ小さな長方形のテントがあります。これは便所であり、使用者が使用後に自分を洗って乾かすのを助けるために使用人が立っていた. アーティストは、トゥールによって支配されたトゥーランのテントの種類を区別していませんが、そしてルーム、アナトリア、そしてサルムによって支配された西部のものは、地平線に沿っていくつかのバリエーションが現れます. テントのような実用的な物が無傷で残っていることはめったにないため、この絵はサファヴィー朝の野営地の特徴のいくつかを示す有用な資料です。

〇Fujikaメモ:
テントの柱に、ちょっと太くなっている部分があります。
何かで見たのですがこの部分は金属製で、その上下の木製ポールをつなげる接手部分に相当するようです。金属なので考古遺物として残っているものです。
(確かに、移動の際、ポールは長すぎない方が便利ですよね)

●54 VERSO  Tur taunts Qubad  トゥール、クバドをなじる
〇Fujikaメモ:専門家による解説がないので、私が勝手に感想を書いてしまいます。
鮮明な画像があってうれしいです。
このときトゥールが乗っている馬(黒馬?)の鎧が、この後も出てきますのでご注目。
白地にブチのものは、白豹の毛皮ではないでしょうか。それぞれパネル中央にはめ込まれた丸いものは鏡では? 角度によってピカリと輝いて綺麗なのかも。馬の顔部分には、金色の金属製保護部も見えます。
クバドの後ろ、象の左に見えるひげのない若者がマヌチフルではないかと思いました。
太鼓には二種類あって、小さい太鼓は、先端が細いドラムスティック(しかも象嵌つき?)で叩いていて、大きい太鼓は、先端が大きく丸くふくらんだもので叩いています。

●55 VERSO  Manuchihr raises Tur on his lance  マヌチフルはトゥールを槍で突き刺す 
〇Fujikaメモ:専門家による解説がないので、私が勝手に感想を書いてしまいます。
トゥールがやられるシーンなのですが、構図は込み入っていて、トゥールのすぐ後ろでもイラン武将が敵の誰かの首をすぱんと切り落としています(で、首が真後ろに落ちかかっている)。
トゥールの馬は、さきほどと同じ白地にブチの鎧を着ています。前の絵では見えている部分はみな黒かったですが、今回は、喉元や首前面は黒ですが、おしりと後足は茶色です。

この絵ではマヌチフルの馬も黒字に金模様の総鎧で身を固めています。こちらも鏡?がはめ込まれていますね。

●56 VERSO  Faridun receives the head of Tur  ファリドゥンはトゥールの首を受け取る
〇Fujikaメモ:専門家による解説がないので、私が勝手に感想を書いてしまいます。
これも鮮明な画像があって有り難いです。
ファリドゥンの握りしめる布に、動揺が表現されていると思いました。
背後の庭園と花がいっぱいの木が、とても綺麗。

●57 VERSO  Qaran captures the castle of the Alans  カランはアラン族の城を占領する 
〇Fujikaメモ:専門家による解説がないので、私が勝手に感想を書いてしまいます。
ここで、橋の右側の突入するイラン軍の中に、トゥールのものだった白地にブチの鎧をつけた馬が見えます。今度は馬の見えている部分は全部が薄茶色。トゥールをやっつけたあと、馬ごと、もしくは鎧のみ分捕って、イランのものにしたのかも?
なお、このような、馬全体を覆う鎧は、西アジア特有のもので、ヨーロッパ世界では使われなかったものだそうです。

●58 VERSO  Manuchihr kills Salm  マヌチフルはサルムを殺す 
〇Fujikaメモ:専門家による解説がないので、私が勝手に感想を書いてしまいます。
全体図はとても不鮮明な画像しかなかったため、鮮明な部分と全体図を合成しました。
このシーンは、マヌチフルが馬の鞍を捨てて裸馬にまたがり速度をあげてサルムに迫るという、当時のイランの男性読者には手に汗握る名シーンなのではないかと思いますが、この不鮮明な画像では、鞍があるのかないのかはよく分かりません(あるように見えるかも・・)。

●59 VERSO  Faridun embraces Manuchihr  ファリドゥンはマヌチフルを抱きしめている
戦争が終わった今、マヌチフルの軍隊はルームとトゥランからすべての戦利品を集め、イランに向けて出発する前に象に積み込みます. その間、ファリダンは角笛を吹いたり、太鼓を叩いたり、豊かな個性を持った象を運転したりしている大勢の男性を集め、彼とマヌシフルが出会い、抱きしめる場所に向かいます。

〇Fujikaメモ:
実は文章には、マヌチフルを抱きしめるという表現はなかったです。
地面に接吻して挨拶していた彼を立たせ、鞍にのせ、顔をなでる、という感じでした。
鮮明な画像があるので、華麗な凱旋パレードの様子がわかります。
(トゥールとクバドのシーンと近い構図かも)

●60 VERSO  Manuchihr enthroned  マヌチフルの即位 
〇Fujikaメモ:専門家による解説がないので、私が勝手に感想を書いてしまいます。
・右下角の赤いかぼちゃ?帽子の男性は、金属製の盃を逆さに持っています。
ぐいっと飲み干して、杯をあけたところで、給仕が次のお酒を注ごうとしているところでしょうか。
・王座の前には、楽団がいてその反対側にやはり座っている男性陣がいるのですが、座っている方は、これまで音楽を聴く聴衆的なものかと思いこんでいましたが、もしかすると歌い手(詩人)チームかも?王様の前の低いところには、芸をする人達が座るのかも・・。
・楽団の前にいる給仕は、(珍しく)お酒を注ぐ瞬間です。
・楽団の背後に、三人組が2組、立っています。この人たちはなぜか腕を絡ませて、中央の人を支える?羽交い絞め?にしています。
一体何をしているのか・・? こういうダンスがあるのかな?
・庭への出入り口の庭側に、ヒゲの労務者風の人の全身像が見えます。彼は長い柄つきのものを方にかついでいます。
これは何だろうと思ったのですが、先端は、おそらくもとは銀色の三角形(今は黒くてにじみが生じていますが)。
つまり、スコップかなと。庭師、という意味なのでしょうか。それにしても、何故庭師を書き入れる必要が・・・。(文章には庭師への言及はないです)

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パネトーネ2022:ジャンベルラーノGiamberlano(ピアッティ)

2022-12-27 | +パネットーネ・コロンバ

パネトーネ、今年は国内で買えるものを買い集めています。

一昨年頃から気になっていたイタリア食材店ピアッティジャンベルラーノ
今年も、事前予約は逃したのですが(だって秋のはじまりくらいの時期なのですもの)、当日券的な販売には間に合い、ひとつ購入できました。

ジャンベルラーノパネットーネ
ジャンベルラーノパネットーネ

白と赤のスッキリしたデザインの箱。
種類はスペツィアーレ。

ジャンベルラーノパネットーネ

この部分は外せるようになっています。
違う種類のものに対応するのに、いいアイデアですよね。

ジャンベルラーノパネットーネ

縦長タイプの形状で、表面のアイシングあり。
結び目は上ですが、アイシングがあったりしてドームが固めなのか、潰れはないです。

ジャンベルラーノパネットーネ

留め金はこういうもの。初めてみたかも。
(大抵は針金のネジネジです)

ジャンベルラーノパネットーネ

(さっきも書きましたが)ぷっくり膨らんだ上部が変形していなくてすごいです。
(縦長タイプはドームが丈夫な傾向はあります)

ジャンベルラーノパネットーネ

アイシング(+あられ糖、アーモンド)がかけてありますが、膨張でかかっていない部分も多いです。

ジャンベルラーノパネットーネ

断面。右がこのジャンベルラーノ。
左は後で記事にしますが、ニコリーニ。

ジャンベルラーノパネットーネ

つやつやした生地の感じ。
何というか、もっちりした弾力があります。
あと、レーズンが大きいような!?

ジャンベルラーノパネットーネ

レーズンが気になったのでほじくり出してみました。
やっぱ、すごく大きいレーズン! 
断面から掘り出したのでちょん切れたヒトたちですが、それでもこの大きさ。
私も以前買ったことがあるチリ産レーズンではなかろうか。
(色の違うものがみつかりましたが、個体差なのか、別品種なのか不明)

大きいだけあって、皮も少し硬く、果肉も固めなのですが、噛んだときの風味がすごくいいです。
普通は、「あ、レーズンですね」という感じですが、これは、甘酸っぱくて、ワインのような複雑な風味もあり、しかも(大きくて歯ごたえがあるだけあって)余韻が長く続きます。
この生地が、へにゃへにゃ系ではなく、割とコシのあるしっとりもっちり系なのでこのレーズンが合うのだろうなと思います。

ジャンベルラーノパネットーネ

オレンジ色のドライフルーツも。
これは、材料を見て分かったのですが、おそらくキャンディードアプリコット。
(クラシコにはこれは入らないので、だからスペツィアーレなのか)
これは、酸味はほぼないです(アメリカ産ドライアプリコットとは違う)。食感は柔らかめ。
単体で食べると香りも弱く感じてちょっとインパクトがないのですが、生地と一緒に食べていくと食感では探知できないのに時折いい香りが漂うので、作り手が入れたかったという気持ちが分かるような気がします。

レモンピールも遭遇確率は低めですが入っていました。

アイシングは、たまごぼうろを甘くしたような、シンプルな風味でかなり甘め。
あられ糖は、バターがしみた粒は、ほろっと砕ける感じになっていて面白いですが、そうでない粒は硬いです。
私としては、アイシングはなしで、生地のみ食べる方が好きかな~。
(なので基本剥がして食べています)



原材料はこちら。製造手順の順に書いてあるのか、単に間違いなのか同じ材料が二度出てきたりしてすごく複雑です・・・。

ジャンベルラーノパネットーネ

重複分をある程度省いてみると、次のような材料でしょうか。

原材料:
Speziale 1用生地:「小麦粉タイプ00、バター、水、ショ糖、母酵母(小麦粉00、水)、卵黄?uova di gallina tuorlo
オレンジ皮砂糖漬け、チリジャンボレーズン、バター、果物砂糖漬け(アンズ、ショ糖、グルコースシロップ)、小麦粉タイプ00、卵黄、レモンピールキューブ、パネトーネ香料(オレンジピールペースト)、アカシア蜂蜜、水、全粉乳

アイシング:
ヘーゼルアイシングミックス:「ショ糖、アーモンド粉、トウモロコシ粉?澱粉?、米粉、米のamido、食物繊維」
殺菌卵白、ヒマワリ油、皮つきのスイートアーモンド





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パネトーネ2022:パンサ(三越伊勢丹)

2022-12-26 | +パネットーネ・コロンバ

パネトーネ、今年は国内で買えるものを買い集めています。

12月1日、東京駅近くのパレスホテルホテル東京の次に向かったのは、三越伊勢丹新宿店。
発送してくれないパネトーネがあって、それを買いに、発売日当日に向かいました。

貨物の都合で発売予定日に店頭にない可能性もあり(特に相手国がイタリアだと)、朝から確認のため電話をかけまくったのですが、担当者もつかまらず、全然折り返しもなく。
デパートって意外とちゃんとしていないのね・・・。
結局東京駅で騒音の中また電話して、自宅宛てに折り返してもらい、ダンナサマからメールで連絡を貰ったのでした。
(新宿に行って無駄足だったらイヤなので、入荷していることを確認してから向かいたかった)

久しぶりの新宿は、もはや外国のよう。
まず、駅を出るのに掲示板が頼りだし、運よく駅を出られても、グーグルマップがなければ右も左も分かりません。
(数年前に行ったウィーンの方がまだ慣れているくらいかも・・・)

よそ者の気分を味わいながら、なんとかお目当てのものをゲット。

ジップ袋

アマルフィにあるパスティッチェリア・パンサのパネットーネです。
アマルフィは、長靴の足首あたりの前側。レモンで有名なところでしょうか。
という訳で、このお菓子屋さんの沢山あるパネットーネの中で、日本に輸入されているのはレモン。

(創業1830年の老舗のようで、グーグルマップの投稿写真を見ると、それほど華美ではなく、イタリアらしいお菓子屋さんの雰囲気です)

ジップ袋

変わったあけかたをする箱です。左右にぱかっと。
(ランボルギーニ風?)

ジップ袋

直径が大きくて背が低いタイプのもの。
袋の結び目は、上でなくてきちんと側面になっています。
(ただ、箱の中には余裕があって、クッション材がないので、てっぺんのドームはつぶれ気味)

ジップ袋

十字の切り目がものすごくぱっかり開いてふくらんでいます。

ジップ袋

断面。
レモンピールが散りめられています。
心なしか、生地も薄い感じの黄色。

ジップ袋

気泡の様子はこんな感じ。大き目の気泡が散在しています。
すごく個性的な気泡、という感じではないです。

切ったときからいい香りが漂ってきます。
で、食べてみると、これは幸せな味☆

パネトーネ評で時々聞く、ザバイオーネというのはこれかしら!
デザートに添えられる、液状のゆるいカスタードソースのような、ほんのりした卵風味が明確にあります。そしてそこに、爽やかなレモンの香り。
レモンピールは程よい柔らかさで、甘く微かな苦さといいレモンの香り。
(全体的にどこにもレモンの酸味はないです)

レモンピールのほかにレモンペースト(limoni in pasta)が使われているようなのですが、このレモンが、自社農園(Villa Paradiso)のもののようです。
なので、レモンピールを噛まなくても、全体がいい香り。

生地は、見た目は普通っぽい印象ですが、しっとりして柔らかく、ほどよいコシ。
(昨年食べたTIRIは、雲のような真綿のような感じでしたが、これはもう少ししっかり) 大変上質な生地だという気がします。


パンサのこの1キロサイズで、オリヴィエリの500gと同じ値段なのですが、もしどちらか買う予定の方には、(レモンが嫌いでなければ)こちらをおススメしたいです。(そもそも、やはり1kgサイズの方が美味しい)

はるばる買いに行ってよかったです。


ジップ袋

原材料:小麦粉(タイプ00)、レモンピール(レモンの皮、果糖ブドウ糖液糖)、バター、卵黄、砂糖、母酵母、水、ヴィラパラディソのレモンペースト、トラパニの職人製海塩、蜂蜜、マダガスカルバニラ鞘


ジップ袋

 


追記:
三越伊勢丹には、もう一種、オリヴィエリでもパンサでもないメーカーの、干しイチジク(と〇〇?)入りパネトーネもありました。
干しイチジク入りは、さほど興味をひかれなかったので今回は買いませんでした。

コメント (2)
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中津川の栗菓子

2022-12-22 | +お菓子・おやつ

お友達から、中津川の栗菓子を頂きました。
(カイエさん、ありがとうございます!)
めくるめく栗菓子の宝庫だったのですが、一部をご紹介します。

豪華6店の栗きんとん。

ジップ袋
ジップ袋

①満点星一休(どうだんいっきゅう)
②すや
③亀喜総本店
④緑屋老舗
⑤梅屋

包み方も、形状も個性がありますよね。
色も結構違うのですが、私の撮影技術のせいで、正確な色を反映していない・・・。

どれをとっても美味しいのですが、それぞれ微妙に異なります。
・甘さ・・・・②すやが、甘さが強めの印象でした
・渋皮の風味・・・・③亀喜総本店が、色がも一番薄く(黄色っぽく)、それを反映して渋皮の風味が弱めでした
・焼き栗のような風味・・・・お砂糖を混ぜて鍋で練り上げるときの、わずかなカラメル化によるのでしょうか、かすかに焼き栗のような風味がするものがあります。今回は①満点星一休、④緑屋老舗が、焼き栗風味がするような気がしました。
・ねっとり/ポクポク感・・・・③亀喜総本店が一番ポクポクで、②すやが一番ねっとり、かな?(製造後の乾燥度合にもよると思いますが)


ジップ袋

初めて見たのがこちらの可愛いうさぎさん。
わーい、練り切りだ☆ と単純に喜んで、ダンナサマと半分コするために包丁を準備。

Fujika:「かわいいけど切るよ~。」
ダンナサマ:「ああ~、かわいそう~。」
Fujika:「やっぱ左右? それとも前後?」
ダンナサマ:「ううー、じゃあ、上下!」
Fujika:「じょ、上下!? その手もあったか・・・。」

などとふざけつつ、やっぱり左右に切ったのですが、

ジップ袋

中身は栗!(しかも皮、薄っ)
すごーい。こんな贅沢な練り切りがあったとは。

練り切りで包まれることで、栗きんとんのしっとり感も保たれる感じで、格別の美味しさでした。


他にも、「森の水鏡」という栗のくずまんじゅうなどなど。
スペシャル栗体験の日々でした。

カイエさん、本当にありがとうございました。

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かげあずき

2022-12-21 | +野菜

那須にいくとき、常陸太田の道の駅に何度か寄りました。
最初に行ったときは、小豆の品ぞろえにびっくり!

むすめきたか
ムスメキタ
ダニアズキ
かげあずき
白小豆
黒小豆

など、見たことがない品種があったのです。
初回は買いそびれ、その次に行ったときには、大半が売り切れで、ひとつだけ買えました。

そちらがこれ、かげあずき。

かげあずき

濃いグレーで、うっすら斑のような模様があります。

冷凍保存してあったのですが、冷凍庫をあけるべく、炊いてしまうことにしました。
渋切り(ゆでこぼし)を数回すると、ゆで汁は黒く、そして豆は色が薄くなってきました。
薄いグレーベースで濃い色の斑があって、なんというか、砂利のよう。

ほどほどにアクが抜けたところで、ホウロウ鍋に入れてフタをしてオーブンで煮ました。
(こうすれば絶対焦げない)

ほどよい頃合いにフタをあけてチェックしてみたところ、意外や意外、煮えた豆の色は、薄茶色!

かげあずき

小豆っぽくない~。金時豆系の色というか。
小豆と違って紫色の要素がないからかな。

チェック時に、まだ少し皮の固さがあったので追加で加熱したところ、本当に柔らかく煮えました。

味は、小豆とはちょっと違う感じ。
(うまく説明できないけれど)

色が薄いことだし、と薄茶の砂糖とあと黒砂糖を使って色づけ(?)してみたところ、更に茶色系のあんこになってきました。むむ。
薄い色だけに砂糖の色がよく反映するのだわ。

年末お餅に添えたりするために実家に持って行こうかと思ったけれど、定番と違うあんこで、両親の評判はどうだろうか・・・。
でも、豆のときの3倍くらいのカサになって(それをまた一旦冷凍)、冷凍庫を更に圧迫しているので、やっぱ持って行こう。じゃまだし。



■参考情報
常陸太田の小豆6種類
おそらくこの小豆の生産者さんのブログ。

豆の中で一番お気に入りは、平べったいライマビーンです
ライマビーンで白餡を作ったこともありました。
おいらん豆、ぺちゃ豆などと呼ばれることも。
最近長野に行くことがなくて手に入らずに寂しいです。メルカリなどネットを探せば買えるのかな・・・。

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パネトーネ2022:オリヴィエリOlivieri(三越伊勢丹)

2022-12-20 | +パネットーネ・コロンバ

パネトーネ、今年は国内で買えるものを買い集めています。

昨年、試食会に行ったときに美味しかったのがオリヴィエリ。
まさに試食サイズで物足りなかったので、今年は一個買いたいなー、どこで買えるのかしら、と思っていました。
手当たり次第検索していたときにみつけたのが、三越伊勢丹のこのサイト
国内ベーカリーも含め、伊勢丹にて何種類か販売している中にオリヴィエリがありました。
種類は、クラシコ、アプリコット&塩キャラメル、ジャンドゥイアの三種類。
私は、食べる際に電子レンジにかけることが多いので、ジャンドゥイアは溶けてしまうので×。
ガンベロロッソの2018ベストチョコパネトーネコンテストでベスト3だったと今知ったので、これもよかったかなと・・・)
あと、お菓子に塩味がするのも好きではないので、塩キャラメルも×。
ま、オーソドックスにクラシコにしました。
予約しての店頭購入も出来るのですが、送料が思ったより安かったので(500円くらい)、配送を選択。

12月に入るか入らないくらいに、送られてきました。
受け取ってくれたのはダンナサマ。
「伊勢丹から小さい箱が届いたよ~」と。
え、小さい箱?パネトーネならば結構な大きさじゃないかしら?

帰宅して、ご対面☆

ジップ袋

わお、これは小さい。
サイトを見返すと、書いてありました。直径17cm。
これは、500gサイズですね。
お値段が1キロサイズのお値段だったので、てっきり1キロかと思い込んでいました・・・・・。
さすがデパート、マージン分が半端ないです。

ジップ袋

中は綺麗にこんもりしたパネトーネ。
結び目を側面に持ってきて、それを梱包材代わりにぎゅうっとすることで、箱の中であまりゴトゴトしないようになっています。

大半のパネトーネは、袋のあまり分がパネトーネの上面に来て、そして輸送中に揺すぶられる衝撃でやわらかいドーム状の上面がへこんでしまっています。この梱包方法は、オリヴィエリがもともとやっているのか、伊勢丹が輸入するにあたって特別に要求したのかよく分かりませんが、珍しい配慮だと思いました。

ジップ袋

断面。左がバギーズ、右がオリヴィエリ。
見た目的には、オリヴィエリの法が、気泡がやや丸くてつややかな感じでした。

まずはそのままつまんでみると、あれ、パサッとしてる?
500gで小さいので、火がよく通ってほんの少し乾燥気味かもしれません。
霧を吹いて電子レンジで片面20秒、裏返して20秒。
そうすると、しっとりふわふわがよみがえりました。

味は、バギーズに似ていて、少しあっさりしたクリアな風味。
(バギーズが、何故か「濃い」風味なので比較するとそう感じるのです)
何か(バニラとか卵とか)の香りが突出していることはなく、バランスのとれた風味です。
とても美味しい☆

ただ、この値段で500gサイズはちょっとな・・・。
だったら、プラス数千円してでも、1キロがいいかな・・・。
(1キロの方がやはりしっとり感が上だと思う)

オリヴィエリのイタリアサイトを見ると、沢山のフレーバーがあって素敵。
(アマレナ・レモン・ピスタチオとか、美味しそう☆)

伊勢丹でこの値段でこの500gをまた買うことは、ないかなあ、でも今度はジャンドゥイアも食べてみたいかなあ・・・。

ジップ袋

 

ジップ袋

原材料:
小麦粉(タイプ00)、バター、卵黄、レーズン(12%)、オレンジピール(10%)(オレンジ皮40%、砂糖、グルコースシロップ)、砂糖、天然酵母、水、牛乳、オレンジピールペースト(0.8%)、乳化剤、アカシア蜂蜜、マダガスカルブルボンバニラ



■参考情報
ガンベロロッソの2022ベストパネトーネ(クラシコ)

コメント (6)
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シャーナーメあらすじ:4.イライの物語

2022-12-19 | +シャー・ナーメあらすじ(挿絵付き)

年末の掃除とかはうっちゃって、ちまちま書き進めてみました。
楽しんで頂けますかどうか・・・。

====================
3.ファリドゥンと三人の息子達
====================

■登場人物
ファリドゥン:ザハクを倒してイラン王になった。在位500年。
サルム:ファリドゥンの長男。母はイラン王女シャーナーズ。 Salm
トゥール:ファリドゥンの次男。母はイラン王女シャーナーズ。Tur
イライ:ファリドゥンの三男。母はイラン王女アルナヴァズ。 Iraj
マー・アファリド:イライの後宮の女奴隷のひとり。イライの娘を産む。
パシャン:ファリドゥンの兄弟の息子
トゥラン(地名):トルコおよび中央アジアの古称 Turan
ルーム(地名):広義では西方。ビザンチン、もしくは更に西のローマまでを指す。Rum
チン(地名):中国および東方  Chin

■概要
シャーナーメ全体を通じて存在するのが、イランとトゥランの王国間の対立構造(戦争)です。
その因縁の始まりとなったのが、このイライの事件。あらすじにしてしまうと箇条書き4行で終わるのですが、原文はたっぷり長さをとってあり、折角なのでそれに近い感じにしてみました。
(なお、イライの子孫を産むのは、前回ヤマンで貰ってきたお嫁さんではありません。)
この話の中で、何度もメッセージのやりとりが行われますが、手紙を託して本人に渡す(読んでもらう)という場合もありますが、使者が内容を暗記して、相手の前でそれを語る、というのが結構あるようです。そしてメッセージは、冒頭には麗々しい挨拶があり、内容も、今回日本語にしてみた分の2倍くらいの長さで凝った表現が。大仰で「英雄の時代」らしいし、イスラム的文化も感じられるのですが、だいぶ省略しました。(韻文だとくどくどした長い表現もまた耳に快いのかもしれませんが)。
怒りの表現として、日本語だと「頭」に血が上ると言ったりしますが、イランでは「肝臓」を使うようです。日本語の「腸が煮えくり返る」に近いかな。
この部分の挿絵は、見開きごとに1枚ずつあって、7枚。本の冒頭からずっと、ページを繰るごとに挿絵がある形です。(ペルシャ語は横書きですが右から左に進むので、本の構造は日本語の縦書きの本と同じです。そしてこのシャーナーメは、これまでのところ見開きの右側が絵になっています。)


■ものがたり

□□□□

ファリドゥンは息子達の運勢を占い、末息子イライの未来に陰りがあることを知りました。
そのため王国を分割して悲劇を回避しようとしました。

ルームと(ビザンチン)西方一帯は長男サルムのものとしました。
トゥランとチン(中央アジアと東方全体)は次男トゥールに与えられました。
イランとヤマンは末息子イライのものとしました。そして、王冠と剣、印璽と象牙の玉座は、イラン王である彼に与えました。
三人の王子はそれぞれの王座に座り、時は流れました。

□□□□

やがて偉大なファリドゥンは年をとってきました。父が衰えるにつれ、息子達の威勢は増していきます。
サルムは次第に傲慢になり、父から与えられた分与と、輝かしいイランの王座が末弟に与えられたことに不満を募らせるようになりました。
彼は怒りにゆがんだ顔で、拳を震わせて言伝を語り、弟であるチンの王トゥールのもとへ特使を急がせました。
メッセージは、彼の長寿と幸福を祈り、こう続きます。
「我々は受け入れがたい不当な扱いを受けた。
私たちは3人の兄弟で、みな王位にふさわしい者ばかりだったが、その中で何故か一番若い者が幸運に恵まれた。
私が一番知恵にすぐれ、年も上なのだから、その資格は私にあるべきだ。
王冠、王座、王権がもし私から離れたとしても、それは次男であるあなたのものであるべきではないだろうか? 父王は英雄の国ペルシャとヤマンをイライに、西域を私に、そしてトゥランとチンをあなたに与えた。一番若いものがイランを統べるなんて、父は頭がおかしかったにちがいない。私たち二人は、父の決断を悲しむべきなのだ。」

使者から兄の言葉を聞いた勇ましいトゥランは、怒れる獅子のように躍り上がって言いました。
「お前の主君にこう伝えよ。
『正義の主君よ、父は息子たちが若かったのをいいことに我々を欺いたのだ。これは彼の手で植えられた木であり、果実は血で、葉はコロシント(瓜。苦い薬)だ。我々は会ってこのことについて話し合い、行動方針を決め、兵を挙げようではないか。ぐずぐずしている場合ではない!」

使者はこのメッセージを持ち帰りました。
かくして蜜に毒が混ぜられ、東方と西方の2人の兄弟は一緒に会い、どう行動すべきかを議論しました。

□□□□

彼らは、聡明で洞察力があり機転のきく神官を選び出し、使節にしました。
そして父ファリドゥンへのメッセージを覚えさせました。

「聖なる神は父上に世界を授けました。しかし父上は神の命令に耳を貸さず、気まぐれな行動を選び、正義の代わりに軽蔑と詐欺で息子たちに報いたのです。
父上には、かつて賢く、勇敢で、若い三人の息子がいました。どの一人にも他の者がひれ伏すほどの卓越性は見られなかったのに、上の二人を粗末に扱い、末息子に冠を授けました。彼は今、父上の寝椅子に寄り添いますが、彼と同じ程度の生まれである我らは王位に値しないとされたのです。
この世界の公正な裁判官と君主よ。
このような正義が決して祝福されることがありませんように。 
もし、彼の無価値な頭から冠を下ろし、世界が彼の支配から救われ、あなたが彼に、我々が苦悩と忘却の中に座っているような世界の一角を与えるのでなければ、我々はトルクマンの騎兵とルームやチンの勇敢な戦士、メイスの使い手の軍隊を、イランとイライへの復讐のために連れてくるでしょう」。 

この厳しいメッセージを聞いた神官は、地面に口づけをすると、風に乗って火のように素早く出発した。

フェリドゥンの城に近づいてみると、それは山のようにそびえ立ち、頂きは雲間に隠れるほどでした。
門の前には廷臣が座り、幕の向こうには最高位の者、一方にはライオンやヒョウがつながれ、他方には猛々しい戦象がいました。立派な戦士の一団から上がる声は獅子の咆哮のようで、使者は、「ここはまるで宮廷ではなく天国に違いない」と思いました。「周囲の軍隊は妖精の軍勢だ!」


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●ファリドゥンの宮廷のライオンと豹

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●ファリドゥンの宮廷の戦象

 

馬を降りて宮廷に入り、ファリドゥンの顔を見た使者は、シャーに魅了され、ひれ伏して地面に口づけしました。
身体はすらりとして糸杉のよう、その顔は太陽のよう、その白髪は樟脳のよう、その頬はバラ色、その微笑んだ唇、慎ましい表情、そして王家の口は、優雅な言葉を口にします。

王は彼に、立ち上がって彼にふさわしい名誉ある席に座るよう命じ、まず高貴な二人の兄について尋ねました。
「彼らは健康と幸福を楽しんでいますか?」
そして次に使者自身について。
「丘や平地の長旅で疲れたのではないでしょうか?」

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●ファリドゥン


使者は答えました。
「陛下!私は奴隷に過ぎず、この身の主人ではありません。
私が携えた陛下への伝言は、怒りに満ち苛烈なものですが、これは私の落ち度ではありません。もし、陛下が命じるなら、私は2人の無分別な若者が送った伝言をお伝えいたします。」
王は彼に話すように命じ、使節が一語一語伝えるのを聞きました。

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●サームとトゥールからの使節

ファリドゥンは怒りに燃えて言いました。
「 二人の愚か者にこう告げよ。
 『お前達の本性をこうして明らかに知ることができてよかった。そしてそういうお前達にふさわしい挨拶を送ろう。
息子たちよ、お前達は私が与えた忠告を忘れ、知恵の痕跡も残っていないようだ。かつて私の髪は漆黒のごとく、背筋は糸杉のごとく、顔は満月のごとく輝いていた。しかし、空は回り、私の背中を曲げた。時はお前達の背中も曲げるだろうし、またその時すらも永遠ではないのだ。

私は神の名において、大地、太陽、月、王冠、王座に誓う、私がおまえ達にしたことは正当であった。私は、星々を知り空を理解する賢者達を会議に召喚し、長い年月をかけてあなたの価値を測り、地球の国々を割り当てた。公平であり悪意などなかった。なのにアーリマンがお前の心と頭を満たしている。
今、自らに問うてみよ。 神はお前達が立てた計画を受け入れてくれるだろうか?
覚えておきなさい、お前達はいずれ自分がまいた種を刈り取ることになる。このはかない世界は、私たちが永遠に住むように運命づけられている世界ではないのだ。
妄執や野心から解放された心にとっては王の財宝も塵のようなものだ。お前達のように、価値のない塵のために兄弟を売る者はどうなるか分からないのか。
世界はおまえ達のような人を沢山見てきたし、これからも見るだろうが、誰一人報いを免れたものはない。お前達にできるのはただ神に立ち返ることだ。』」

使者はその言葉を聞くと、地面に接吻して背を向け、風のように素早くファリドゥンの宮廷を後にしました。そして帰国し、サルムとトゥールにその言葉を伝えました。

f44v f44v
●戻ってきた使者の話を聞くサルムとトゥール

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●ファリドゥンからの伝言を伝える使者


サルムの使者が去った後、ファリドゥンはイライを呼び寄せ、何が起こったかを告げました。
「地の果てより、我が二人の息子は戦争を宣言した。もし戦う用意があるならば、宝物庫を開き、兵を備えよ。」

イライは、父を見つめながら言いました。
「報復は王の道ではなく、何があろうと私は悪を行いません。 王冠と王座が私にとって何の意味をもちましょうか? 武器を持たずに行って兄達に挨拶し、恨みを忘れるように言いましょう。 穏やかな対話は、怒りや敵意に満ちた報復に勝るでしょうから。」

ファリドゥンは答えた。
「私の賢い息子よ、私は、月が月光を放つことに驚いてはいけないという言葉を思い出す。お前の答えは高潔で心は愛で満たされている。
しかし、わかっていながら竜の口の中に頭を入れる者はどうなるだろうか。きっと毒が彼を滅ぼすだろう。それが龍の性質なのだから。我が子よ、これがあなたの決断なら、覚悟を決めて、あなたの軍隊から数人の仲間を選んで同行させなさい。哀しみの中で私はお前の兄たちに手紙を書こう。お前が安全に帰還し私の目を喜ばせることが出来るように。 」

□□□□

王はルームの王とチンの王に手紙を書きました。彼は、永遠の神への賛美で始まり、こう続けました。
「この手紙は、天を照らす二つの太陽、二つの戦の主、王の中の二つの宝石に助言するもので、世界を経験し、その秘密を解明し、夜を昼に変え、メイスと剣を振り回し、あらゆる困難を克服した者からのものである。
私はもう王冠をかぶることも、財宝を集めることも、王座を占めることも望んでいない。私はもう十分に苦しんだし、ただ3人の息子の幸せだけを願っている。
あなた方の弟は、あなた方への敬意と愛のために王権を辞し、今、玉座ではなく鞍に座って、末の弟として兄たちのもとに駆けつけている。
どうか彼を大切に扱い、数日一緒に過ごしたら、無事に私のもとに返してくれ。」

その手紙に王の印が押されるや、イライは宮殿を飛び出していきました。必要最小限の仲間を連れての旅でした。
イライたちが到着すると、サルムとトゥールの軍勢が出迎え、兄王たちのところに案内しました。
見つめ合った三人のうち、二人の顔は憎しみ満ち、一人の顔は慈愛に満ちていました。
三人は司令官用の天幕へと向かいました。

軍勢の目はイライに注がれ、彼が王位と王冠にふさわしい人物であることを隊員たちは見抜きました。若い皇子の気高い姿に心を動かされた彼らは、「イライ殿こそ皇帝にふさわしい、彼以外が治めてはいけないと」、互いに噂し、賛美し合っていました。

f46v
●(イライを賛美して噂する)サームとトゥールの兵士達

それを盗み見ていたサルムは、兵士たちの反応に腸が煮えくり返る思いでした。憤怒に満ちて馬に乗り、肝臓には血が上り、眉間には深いしわがありました。
彼は自分の天幕にトゥールを呼び、相談しました。
「我ら両軍の兵は、帰ってきたとき、イライを迎えに行ったときとは違って、ずっと奴を見つめている。彼らは今後、イライ以外を王と呼ぶことはないだろう。
今、この成り上がりを根絶やしにしなければ、 イライは私とあなたを王座から引きずり下ろすだろう。」
二人は決心し、夜通しその方法について話し合いました。

□□□□

ベールが太陽から取り除かれ、夜が明けて眠りが過ぎ去ったとき、二人の心は決まっていました。
そして、自分たちの天幕からイライの天幕に向かって大股で歩いて行きました。イライは二人が近づいてくるのを見て、優しさに包まれ、駆け寄って二人を出迎えました。三兄弟はイライの天幕に入り、会話を交わしました。

トゥールは言いました。
「お前は私たちより若いのに、なぜ一番重要な王冠を与えられたのか?お前はイランとその富、王国の王位と王冠を手に入れたのに、私はトゥラン人を支配して苦労し、兄上は西方で苦難を強いられているのだ。」

トゥールの言葉を聞いたイライは、曇りない口調で答えました。
「栄光ある兄上、あなたの心に平安が戻りますように。
私はイランも、ルームも、チンも、世界のどこの国の権威も欲していません。
どのような栄華を極めた人も最後には、煉瓦を枕にすることになるのですから。
私はイランの王位にありましたが、もはや王冠にも王座にも畏れを抱いており、この両方を兄上達に譲ります。どうか私を憎まないで下さい。私は兄上の臣下であること以外には何も望みません。」

f46v
●語り合うトゥールとイライ

トゥールはこの言葉を聞きましたがほとんど気にかけませんでした。
そして叫びながら立ち上がり、突然前進して自分が座っていた金の椅子を掴み、イライの頭上に打ち落としたのです。

f47v
●椅子をふりあげるトゥールとそれを見るサルム


イライは必死で命乞いをしました。
「兄上、あなたは神を恐れず、父上をも敬わないのでしょうか。どうか私を殺さないでください。自分を人殺しにしないでください。私はもう二度と兄上にお会いしませんし、世界の片隅でひっそり暮らしていきます。
弟の血を流し、父上の心を苦しめるような罪を犯してまで、あなたは世界を手に入れたいのでしょうか? 既に全てを持っているのに。これは神に逆らう行いです。」


f48v
●凶事が行われている天幕のそばで咲き乱れる花


トゥールはその言葉を聞きましたが、何も答えません。 彼は隠し持っていた短剣を抜き、イライの頸を切りつけ、その体は血の衣に包まれました。鋭い刃は胸を貫き、すらりとした糸杉は倒れ、花蘇芳の顔に血が流れ、こうして若い王子は死んだのです。

f48v
●トゥールに斬られるイライ

f44v
●驚く家来たち

トゥールは短剣でぐったりした王子の頭を切り落とし、樟脳と麝香を詰めた筺におさめ、老いた父にこのようなメッセージを添えて送りました。

「あんたの愛する者の首を見ろ。先祖の王冠を受け継ぐ者。王冠も王座もお望みのままに。」

そして二人の不義の兄弟は、一人はチンに、一人は西方に、怒りを胸に抱いたままそれぞれの国へ帰っていきました。

□□□□

ファリドゥンは道を見張り、軍隊は彼と一緒に若い王の帰還を待ち望んでいました。父はトルコ石の玉座と宝石をちりばめた王冠を用意し、酒と楽人を用意し、太鼓を象に乗せ、町中を飾り立てて歓迎の用意をしていました。
ファリドゥンたちがその準備に追われていると、道の上に土煙が上がり、その中から一頭のラクダが現れ、そのラクダには嘆き悲しむ使者が乗っていて、その脇には筺が括りつけられていました。この男は、ため息をつきながら、泣きながら、そして灰にまみれた顔でファリドゥンの前に現れました。

f49v
●イライについて報告する従者たち


その言葉と態度に愕然とした王は、筺の蓋を開けて中の絹の布を引き寄せると、そこには切断されたイライの首が現れました。ファリドゥンは砂塵に倒れ、兵士たちは悲しみのあまり服を引き裂きました。このような形で帰って来た皇子のために歓迎の宴は乱れ、旗は破れ、太鼓は逆さになり、貴人達の顔は黒檀の色に変わりました。
象や太鼓には黒い布がかけられ、アラブの馬には深い青が塗られました。 王は悲しみのあまり泣き崩れ、後宮の女たちも自分の髪を引きちぎり悲痛な叫び声をあげました。

f49v
●嘆く後宮の女たち

ファリドゥンは、幼い息子の頭を胸に抱いて、泣きながら庭に入りました。王座、そして二度と王冠を被らない息子の頭、澄んだ水が溢れる庭の池、花咲く木々、そよぐ柳、花梨の木を眺めながら、彼はこの祝宴の場を見ました。
彼は涙にくれて、薔薇の花壇を破壊し、庭に火を放ちました。

f44v
●燃える庭

ファリドゥンは天を仰いで言いました。
「正義の主よ、この屠られた罪なき者、短刀に首を切られ、獅子に胴を食われた者を見よ。
彼の二人の不正な兄弟の心を焼き、彼らの人生には悲しみしかありませんように。内臓を焼き、野獣が哀れむほどの苦しみを味わわせよ。
神よ、私の願いはただ一つ、あと少しの時間だけです。私がイライの種から、復讐のために帯を締める子供を見るまで。それを見ることが出来れば、私は地面にあけた私の身長と同じ長さの穴に横たわりましょう」。



f49v
●嘆くファリドゥン

彼はあまりに長く泣いたので、草は彼の胸まで伸び、地べたは彼の寝床、埃は彼の枕となり、彼の前に明るい世界は薄暗くなりました。

□□□□


時は流れ、ファリドゥンは、イライの後宮でイライがこよなく愛したマー・アファリドという女が身ごもったのを知りました。ファリドゥンは、その子が息子の死に対する復讐の手段になることを願い、喜びました。そして時は満ち彼女は一人の女の子を産み落としました。
その子は皆から大切に育てられました。 成長するにつれ、チューリップの頬をしたその可愛らしい女の子を見た誰もが「頭から足先までイライそのものです」と言うほどでした。

彼女が大人になると、髪は漆黒のようにつややかで、明星のように美しい娘となりました。
祖父は自分の兄弟の息子、パシャンを彼女の配偶者に選びました。パシャンはもちろん偉大なるジャムシードの家系、高貴な血筋の若者でした。
結婚した二人は幸せな時間を過ごしました。




■翻訳の参考資料
(2)をベースに、(1)も見比べつつ、時に混ぜ合わせてなるべく簡潔に短縮しています。
短縮するために原文にない言葉を補う時もあります。また絵と文章が矛盾するときは絵にあわせています。
これらはどうも底本が違うようで、細かい表現で結構違いがあります。

(1)ワーナー&ワーナー ペルシャ語からの全訳 全九巻
Arthur George WARNER and Edmond WARNER. ロンドン、1905
ペルシャ語韻文からの英語韻文への全訳。
Internet Archiveで全巻閲覧できます。
第1巻 第2巻 第3巻 第4巻 第5巻 第6巻 第7巻 第8巻 第9巻
こちらのサイトに前半の一部が転載されていて、htmlになっているのでブラウザ翻訳機能も使えます(改行が多いので翻訳がやや変)。

(2)デイヴィス 全3巻 ペルシャ語からの翻訳で基本散文、部分的に韻文。カラー挿絵多数
Dick Davis. The Lion and the Throne/Fathers and Sons/Sunset of Empire: Stories from the Shahnameh of Ferdowsi. 1998
第1巻:獅子と玉座  The Lion and the Throne  Amazon
第2巻:父と息子たち Fathers and Sons   Amazon
第3巻:帝国の落日  Sunset of Empire   Amazon





■シャー・タフマスプ本の細密画

サムネイル ページ番号 画のタイトル※ タイトル和訳 所蔵館と請求番号 画像リンク先 備考
非公開 43 VERSO  Faridun divides his kingdom  ファリドゥン、王国を分割する  Tehran Museum of Contemporary Art, Tehran, Iran 非公開  
f044v 44 VERSO  Faridun receives a message from Salm and Tur  長男サームと二男トゥールからのメッセージを受け取る父王ファリドゥン  Tehran Museum of Contemporary Art, Tehran, Iran  
f045v 45 VERSO  Faridun replies to the threat of Salm and Tur  ファリドゥンがサームとトゥールへ返信する  個人蔵  
f046v 46 VERSO  Iraj offers to visit his brothers  末弟イライ、兄達を訪ねる  Tehran Museum of Contemporary Art, Tehran, Iran  
f047v 47 VERSO  Iraj begs Tur for mercy  次兄トゥールに慈悲を乞う末弟イライ Tehran Museum of Contemporary Art, Tehran, Iran  
f048v 48 VERSO  Tur decapitates Iraj  トゥール、イライの首を切る  Cincinnati Art Museum, Cincinnati (Hamilton county, Ohio, United States) (inhabited place) 1985.87 / 『私の名は紅』(藤原書店)p482, p542
f049v 49 VERSO  The lamentation of Faridun  ファリドゥン王の嘆き  Tehran Museum of Contemporary Art, Tehran, Iran  


■細密画解説(本や所蔵美術館の解説より適宜抜粋)
●43 VERSO  Faridun divides his kingdom  ファリドゥン、王国を分割する 
〇Fujikaメモ:
これはweb上で見られるようなものがみつかりませんでした。
テヘラン(イラン)の現代美術館に所蔵されているようです。
なぜ古い写本が「現代」美術館に、と思いますよね。この写本のめぼしい絵は所有者ホートン氏が税金対策のためオークションで売りさばいたのですが、彼の死後、文章だけのページや118点の絵など残り部分は一式、行き場を失っていたようです。イスラム圏の富豪に売ろうとしたけれども売れなかったり。
で、1994年、ある画商が、テヘラン近代美術館所蔵の西洋現代絵画(ウィレム・デ・クーニングの絵画「女 III」)とこの写本を交換する交渉をし、話がまとまって、近代美術館に所蔵されたとのこと。 クーニングの絵は現代美術コレクターでもあるイラン皇后が1970年代後半に買ったものですが、1979年のイラン革命後、共和政府の検閲で展示できなかったものだとか。
(クーニングのこの絵は直近(2006年)の取引で1億3750万ドルの値がついたお高い品物らしいですが、私の個人的な見解ですが、こんなゴミ作品よりイランにあるべきは『シャー・ナーメ』だと思います)


●44 VERSO  Faridun receives a message from Salm and Tur  長男サームと二男トゥールからのメッセージを受け取る父王ファリドゥン 
〇Fujikaメモ:専門家による解説がないので、私が勝手に感想を書いてしまいます。 
ファリドゥンの宮廷の様子。使者が感嘆した豪華さが表現されています。ライオンや豹、象もいて、多数の戦士達もいて盛りだくさん。ファリドゥンの玉座は金色の装飾で飾られて、豪華。鷹匠も描かれています。

●45 VERSO  Faridun replies to the threat of Salm and Tur  サームとトゥールの脅しに答えるファリドゥン 
〇Fujikaメモ:専門家による解説がないので、私が勝手に感想を書いてしまいます。
今度は、サルムの側の宮廷の様子。こちらも人物が沢山盛り込まれています。ページ上部も余白に柳のような優雅な枝振りで細い葉の木が描かれていて、木に登っている若者がふたり。物語には関係ない気がしますが、ページ全体の美しさの要素になっていると思います。
食べ物としては、山盛りのザクロが二皿。草地はぺったりした緑色に、花ではなく黄色い葉っぱの草が生えています。

●46 VERSO  Iraj offers to visit his brothers  末弟イライ、兄弟を訪ねる 
〇Fujikaメモ:専門家による解説がないので、私が勝手に感想を書いてしまいます。
これもやはりサルムの陣地で、イライが兄のもとを訪ねてきた場面です。
メインの天幕の後ろには、座っている兵士達、立ち並んだ兵士達が。
45vとは少なくとも地面を描いた画家が違うようで、こちらは草地にいろいろな花が咲いています。
イライと兄が話しているすぐ右側では、髭の兵士が若者にちょっかいを出して手を握ったりしているような・・・。この後に起こることを知らなければ色とりどりでのどかな絵です。

●47 VERSO  Iraj begs Tur for mercy  次兄トゥールに慈悲を乞う末弟イライ
〇Fujikaメモ:専門家による解説がないので、私が勝手に感想を書いてしまいます。
イライの滞在している天幕にて、次兄トゥールが椅子をふりかざしたその瞬間の絵。
空は金色(昼)、地面は(45v、46vとも違って)白(砂もしくは岩)。濃い青の天幕内部に自然に視線が集まるようになっています。
人物の顔や体は44vに近いかな?
44v、45vよりもやや素朴な感じですが、「まさか、何故!」と混乱するイライの表情が印象的です。 

●48 VERSO  Tur decapitates Iraj  トゥール、イライの首を切る 
〇Fujikaメモ:専門家による解説がないので、私が勝手に感想を書いてしまいます。 
遂にクライマックスシーン。イライが次兄トゥールに切られてしまいます。文章では、ブーツからナイフを抜いたとあったのですが、絵をみるとトゥールは裸足!? (この前の椅子をふりかざすシーン47vでは短靴?を履いているみたいだけど) で、この文章では長靴というのを省きました。
背景は薄紫で植物なしの岩山、テントは白が基調で、殺人シーンに視線が集まるようになっています。背景があっさりな分、前景の小川と花の描写がとても緻密で綺麗。

●49 VERSO  The lamentation of Faridun  ファリドゥン王の嘆き 
〇Fujikaメモ:専門家による解説がないので、私が勝手に感想を書いてしまいます。 
ファリドゥン王が、衝撃のあまり冠も落としてイライの首を抱き、天に向かって嘆いているところ。ファリドゥンはもはや玉座にはいなくて、その前の地面に座り込んでいます。手前の、黒い布を方にかけた数人がイライのお供達で、喪服で彼を連れ帰ったのだと思います。右に並ぶひとたちは、本来ならば歓迎の祝いをするはずだった貴人達。
現代のマンガやイラストならば、ファリドゥンの玉座は44vと同じにして現実的に一貫性をはかるのではないかと思いますが、この時代の挿絵は、ページごとに目を楽しませるようにわざと違えているのかもしれません。

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青大豆

2022-12-15 | +その他

今年の春先、ひたし豆用に買ってあった青大豆を、ふと思いついて半畝分ほど蒔いてみたのでした。

青大豆

青々しておいしい青大豆。枝豆で食べてもきっと美味しいのでは☆と。


ほかの枝豆専用品種同様、高さ60cmくらいのトンネル内に植え、白いネットをかけておきました。
肥料などはほかと同様、足りな気味傾向。
(トンネルしてあると、追肥とかしにくくってさ・・・)

他の枝豆は、トンネル内でほぼ間に合う感じの背丈で、豆がぽちぽちついてきます。
ところがこのヒト、全然違う。

・まず背丈がぐんぐん伸び、トンネル内につかえてうねって、トンネルが枝葉でパンパンに! (これはちょっと気の毒、とある時点でネットを外しました)
・葉っぱや茎の緑色がとても濃く、ごわごわの毛もいっぱい生えてる!
・実が、なかなかつかない

なんか、枝豆用大豆と違って猛々しい外見なのです。
(枝豆用は、早生、矮性なんだなーと実感)

あまりに猛々しくて、写真をとりそびれました。
秋の中盤頃だったか、豆もちらほらついている様子でしたが、枝豆という気分でもなく、ラズベリー摘みにいそしんで、そのまま放置したのでした。


そして11月末、晩秋になって、全体的にすっかり枯れてきました。
豆は、なんかそこそこついているみたいな感じ。

どちらにしろ抜かないといけないし、折角ついた豆も勿体ないので、ダンナサマに手伝ってもらって豆もぎをしてもらいました。

青大豆

葉っぱかしら?と思ったらはじけたサヤだったり。

青大豆

はじけてるけど、豆が一個おちずに残っていたり。

青大豆

ギリセーフのとか、落ちちゃったやつとか。
いろいろなサヤの状態があって、
ダンナサマ:「ねえねえ、大豆、すごいよー」
Fujika:(ラズベリー摘みながら)「あー、うん。その後、畝間の草刈もねー」

という感じで、10本くらいの株からダンナサマが丁寧にむしってくれたサヤは、イチゴの箱一杯分。


青大豆


大豆の収穫後の処理方法など、調べたこともありませんでした。
きっとサヤごと叩いて割って中を出すのだろうけれど、カビてる豆や虫食い豆が非常に多く、まぜこぜにしたくない気もします。

という訳で、ひとサヤひとサヤ割って豆を取り出してみました。

青大豆

三分の一くらい割って、味噌濾しザルに軽く一杯。
かなり辛気臭い作業です。
家の片隅においておいても、なかなかやる気にならず、放置・・・。

あるとき長めに車に乗る日があり、強制的に作業をすることにしました。
運転していない人が、豆割り。
私は運転を買って出ました。

最後、私もちょっと割って、長時間ドライブのおかげ(ていうかダンナサマのおかげ?)で、ひとまず全部割ることができました。

青大豆

このザル3杯分くらいかな?

青大豆

蒔いた豆は、全体が一様な緑色でしたが、採れたものは黒い模様があるものがあります。
あと、蒔いたのより、ちょっと小さい。

サヤを割る際にある程度選別したつもりですが、迷ったり見逃したものが結構ありそうです。これから選別だな。


「まんが日本むかし話」とかに、一粒の豆が転がって、「ああ大変!」と追いかけていくようなエピソードがいくつもあったりしますが、いやいや、ほんと、こんな大変な思いをして収穫した豆は、相当貴重品です。
お正月のひたし豆とか、豆餅に使えるかな?
(手間暇はかけたけど、味にはあんま自信ないけど・・・)

 

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フェイジョア2022

2022-12-14 | +ジャム・ピール(果物系保存食)

父方の叔父の家の庭にフェイジョアがあり、毎年ぽたぽたと実を落とすそうなので、是非にといつも送って頂いています。

確か昨年はかなりの豊作。いっぱいくりぬいて冷凍した記憶があります。
で、今年も連絡頂いたのですが、今年は極端な不作、とのこと。


届いたものを見て見ると、確かに量が少な目で、全体に小粒傾向でした。

フェイジョア

丁度実家に行く用事があり、男性二人(父と夫)を酷使して、くりぬき作業。
作業中はいい香り! 
フェイジョアって食べるとそうでもないけれど、丸ごとの状態だとすごく香ります。どこからこんないい香りがしてくるんでしょうね・・・・。

フェイジョア

とても小さいものは、横切りだとスプーンが入らないくらいの小ささで、縦にカットしました。
やってもやっても果肉が溜まっていかない、と男性陣には不評でしたが、断固とした態度で継続。

母が出来上がるそばから加熱していき、なんとか一晩でジャムの前段階にまでなりました。



今年のフェイジョアが届く前、そろそろフェイジョアシーズンなので、冷凍庫のフェイジョアを一掃しました。

フェイジョアとりんごジャム

フェイジョア、りんご、ドライマンゴーのジャム。
こちらはりんごもドライマンゴーも甘めで酸味あまりなしのため、甘めのジャム。

フェイジョアとゆずジャム

こちらは、フェイジョア、ゆず(母作の花ゆずジャム大瓶使用)、ドライマンゴーのジャム。
花柚子ジャムがとても酸味強めのため、酸味ありのジャムです。


冷凍庫から旧フェイジョアがなくなって、スタンバイOKでしたが、今年はフェイジョアが不作でしかも実家で作業したため、うちにはなし。
(柿で忙しいでしょ?と、第二弾も実家に送ることになった)

冷凍しておいて、夏、アイス代わりに齧るのも美味しかったのだけど。
ま、今年不作の分、来年に期待しましょう☆
(よそのおうちのフェイジョアなのに勝手に期待してます・・・)

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パネトーネ2022:Baghi’s(バギーズ)

2022-12-13 | +パネットーネ・コロンバ

パネットーネ、今年は日本で買えるものを重点的に買いました。
注文した時はまだ気温もあたたかくて、全然パネトーネっていう気分ではなかったのですが、とにかく早めに注文しないとなくなってしまうので、注文時点で食べたいかどうか、はあまり考えず、みつけたら買う、というような方針で。

このバギーズのものは、確か昨年ネットで見かけて、「よし来年買おう」と思っていたものでした。(shopはこちら


12月に入る前に、早々に届きました。
(繁忙期前にベーカリーに発注、そしてイタリアから発送、という作戦と思われます。
時期が遅くなると、ベーカリーも立て込んでくるし、イタリアの郵便システムは日本とは比べ物にならないいい加減さだというし・・。)

バギーズ

えらく大きな箱で届きました。
送料込みだからいいけど、でもキッチリサイズにしたらあと数百円は安くできそうなんだけどな・・・・。


バギーズ
バギーズ

白黒に、赤のアクセントの素敵な箱。
(オレンジピールとチョコとか、洋梨とチョコ、全粒粉など別のタイプのパネトーネもあって、それらは赤ではなくまた別の色)
比較的若い男性二人によるお店のようですが、共同経営者の一人の方がパッケージデザインをされているようです。


バギーズ

形状は、縦長タイプのパネトーネです。
Baghi'sのホームページによると、
原材料はイタリア産小麦の石臼挽き粉(タイプ 1 )、遠心分離のベルギー産バター、地元の農場で放し飼いにされた鶏の新鮮な殻付き卵、砂糖、砂糖漬けのオレンジ皮(フランスの製法でイタリア産オレンジの新鮮な皮から直接製造されたもの)、オーストラリア産レーズン、塩とバニラ。
だそうです。
(いまどき、製菓用卵黄パックを使うところも多いと思いますが、ほんとの卵を割っているのですね。パネトーネ、コロンバのシーズン、さぞかし鬼のように卵白がたまっていくことでしょう・・・。)

バギーズ

マスカルポーネソースを添えてどうぞ、とチラシにありました。

バギーズ

断面。左側の背の高い方がバギーズのもの。(右はオリヴィエリの500g)

味は、とてもオーソドックスな、美味しいパネトーネ。
オリヴィエリと食べ比べたのですが、よく似た感じの風味なのですが、バギーズはどこか濃い?コクがある?ように思いました。甘い、という意味ではなくて、力強い風味というか。
香りはバランスがとれている感じで、バニラ、バター、オレンジ、卵、酸味などどれかが突出している訳ではないです。
生地は、シナシナすぎず、ほどよい固さ。しっとり感と、縦に裂けるような感じもあります。
(カットしたものを電子レンジで片面500w20秒、裏返して同様に軽く温めてから頂いています)
表面に余計な甘いものが載っていないのもいいです。
とても美味しい☆


バギーズ

原材料:小麦粉、干しブドウ、砂糖漬けオレンジ、天然酵母、バター、卵黄(卵を含む)、甘蔗糖、食塩、バニラ

コメント (2)
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