採集生活

お菓子作り、ジャム作り、料理などについての記録

台湾2023.4:店舗軒下の石貼り

2023-04-25 | +海外

台南は古いビルが多く、そのデザインが可愛いです。
台湾の可愛い古ビル:当ブログ)


で、ビルの足許というのかな、一階は、2階がせり出しているので、日陰が確保された歩道のようになっています。
歩道ぽいとはいっても、おそらくそのビルの敷地。
飲食店の場合などは、そのエリアに机と椅子を出して、客席にしていることもあります。

日陰なので歩きやすいので、大抵このビルの足許を歩くのですが、そこのフロア施工が興味深いです。

私有地の範囲が、4間くらいなのかな、とても小さくこま切れになっていて、それぞれの店舗(家)ごとに、床も違います。

日本だと合成樹脂のフロアタイルやシートがかなりメジャーですが、高温・多湿・多雨という環境が影響しているのかどうか、あと国民性(好み)もあるのか、台湾は石を多用しています。

おそらく大規模なホテルやマンションの施工(by大手ゼネコン)の際の端材を小さ目の工務店に払い下げたりしているのかなあと想像しています。
石屋さんが、半端な材料で施工したと思われるのですが、それはそれで凝ったデザインになっているのです。


台南の石畳
大きさの違う素材を組み合わせていますが、むしろよほど手間がかかっていますよね。
とても細長かったり小さいパーツもあったりして、施工現場で石をカットしているのですよね、きっと。
モンドリアンの絵のようでは??


台南の石畳
また別の場所。
こちらも、様々なサイズのものを組み合わせています。
上の写真とはちょっと違うテイスト。



台南の石畳
こちらは、白・グレー・黒の石の破片をセメントで塗り込んで、そのあと磨きだしています(多分)。
セメント部分を、濃いグリーンにしているところが素敵。
石材としては一番安い部類の端材だと思いますが、黒い石をなるべく均等に配置したり、余白をなるべく均等にしたり、実は手間がかかっているのではなかろうか。

この場所は、角地のお店で、比較的施工面積が広い場所でした。


こういう石貼りの記事、前に一度記事にしたことがあったかと思っていましたが、探しても見当たりませんでした。アップしてなかったかなあ??
旅行のカテゴリになってなくて、迷子になってしまった??
(見覚えがある方、ご一報下さい)

過去の写真コレクションがまだあるはずなので、折角なので少しずつ放出しようかと思います。(こんなものに興味ある人あんまりいないかもだけど)

コメント (2)
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台湾2023.4:奇美博物館(彫刻)

2023-04-25 | +海外

台南には、奇美博物館という、私立の博物館があります。
奇美財団?という、化学工業系の大企業のオーナーの、プライベートコレクションに基づいたもの。
動物・鳥の剥製、西洋絵画・彫刻(ロダンほか)、楽器、バイオリン(ストラディバリウスが何台も!)、武器という幅広さ。

今回の旅行で、訪れる機会がありました。
私は2度目、ダンナサマは初めて。

私は前に一度行ったので知っているのですが、とにかく広くて見るものが沢山。
(そして椅子が少ない)
どれを丁寧に見て、どれは流す、と予め決めておくのがいいです。

アートの中で、私があまり好きでないのは彫刻。
ナポリの博物館にも、何百もの発掘された彫像があって、体力を消耗しました。
西洋人って、人体が好きよね?(ザツな感想)
ギリシャ神話のキャラは一通り知っているつもりですが、それでも、1キャラにつき1像くらいでおなかいっぱい・・・。人体って、そんなに興味ないかも・・・・。
(それに比べ、西洋美術って花鳥風月はあんまり力入っていないですよね・・・静物画というジャンルはあるけれど・・・)


時間と体力を節約するため、今回は彫刻コーナーはぴゅーっと通り過ぎたのですが、
ふと目に留まったものが。

奇美博物館

近現代の彫刻家の作品だと思うのですが、
顔にヴェールをかけて透けて見えるようすが、透けていないはずの石で、よく表現されています。
何で石なのに透けて見えるのか・・・??
(裏側から彫ったりとか?←ちがう)
絵画や漫画ならば、透ける布の表現というのはよくあるものですが、彫刻でもこんなことができるのか・・・。
仏像など、胴体や脚の表面に薄い布をまとう、というのはよくありますが、あれは、基本、体に沿っている訳で、顔のような立体的なものに布をかぶせた状況とはちょっと違いますよね。
なんかすごい。

しかも、肌や花はしっとりツルツルした感じ、ヴェールはそれとは違うザラリとした布の質感。
石で各種質感を彫り分けていて、不思議・・。


もうひとつ、写真を撮り忘れたのですが、女の人の彫像がクッションに載っているものがありました。
「なるほど、近現代の石像は、異素材を組み合わせたりもするのね」
と勝手に納得したのですが、よくよく見ると、そのクッションも石でした。
人体やその衣服とはまったく違う、ゴブラン織りの質感に、騙されました。


人体(裸体)彫刻の良さはまだよく分かりませんが、素材感、質感の表現はちょっと興味深いと思うようになりました。
自分なりのとっかかりが出来るというのはいいですね。


初訪問のダンナサマは、一点一点、ほぼ手抜きなしでじっくり鑑賞。
久々の文化的な活動、楽しかったようです。
10時半から5時まで、びっちり見学しました。
(めちゃつかれた・・・)



最近、山田五郎氏のYouTube動画を見ているのですが、西洋絵画コーナーは、知っている画家も出てきたりしてとっても助けになりました。

あと、撮影禁止マークがほぼ見当たらなかったです。
動画や写真は基本的にOKのような気がします。太っ腹な美術館です。

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南向醸造のジュース

2023-04-24 | +お菓子(西洋)

しばらく前ですが、わらびさんご夫妻から、スペシャルなジュースを頂きました。
(わらびさん、ふみえさん、ありがとうございます!)

長野県の、南向醸造のジュースです。

南向醸造ミックスジュース

とても詩的なラベル。
長谷川潔のエッチングかと思う画像ですが、写真ですね。

南向醸造ミックスジュース

この写真のものは、ミックスジュース。
桃が原材料のいちばんに来ていて、桃風味満点☆
まさにピーチネクター☆☆
(もう1本はつがる100%のジュースで、むしろ桃ジュースより甘いくらいでした)


一部を使ってゼリーを作ってみました。
(ゼラチンの扱いの練習・・・・・)

南向醸造ミックスジュース

こちらは、冷凍しておいたブルーベリー入り。
酸味が加わっていい感じです。

写真を撮り忘れましたが、MyLoveラズベリー入りも作ってみました。
味としては、桃とラズベリーの組み合わせの方が、花っぽさというか香水っぽさがより複雑化する感じで、あうような気がしました。

今年ラズベリーが採れたら、桃もあわせてお菓子にしてみようかな☆

わらびさん、ふみえさん、スペシャルなジュースをありがとうございました☆。

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シャーナーメ:11. ロスタムとカイ・コバド(下)

2023-04-23 | +シャー・ナーメあらすじ(挿絵付き)

後半です。
カイ・コバドをシャーに頂いたイラン軍がトゥラン軍と戦います。
イランは勝利を治めトゥランは敗走します。
総大将アフラシヤブは父王パシャンに和平を訴え、パシャンから和平条約と贈り物がおくられます。
(パシャンの講和の文言は21世紀の今でも教訓に満ちています。1000年前に亡くなった作者フェルドウスィー氏(934-1025)に、人類はもう戦争から卒業しました、と言えたらよかったのに。終わらない戦争はないし必ず痛みを伴うのだから、始めてはだめですよね・・・)

シャーナーメの三大悪役はザハク、アフラシヤブ、あとだいぶ後で登場するイスファンディル(アレクサンダー)なのだそうです。
でも、これまで見てきたトゥランのイラン侵攻では、2回ともパシャンが行けと命じているし、元凶はパシャンではないかと・・。
特に今回(2回目の侵攻)、パシャンはイグリラスの殺害に腹を立てて長いことアフラシヤブを無視したり、とても傷つくような仕打ちをして(9.イランとトゥランの戦いの始まり(下)の15章)、アフラシヤブは父の許しを得るためにも頑張ってしまったのではなかろうか・・・。

老いたカイ・コバドの言葉「私はまだ、アルボルツ山脈から仲間たちと楽しそうにやってきたあの若者のような気がする」という部分がとても好きです。時空を超えて若かりしある日が蘇ることってありますよね。その日が曇りなく輝いていればなお。

次回からは、名君カイ・コバドの跡を継いだカイ・カヴスに関わるお話です。
カヴスは慢心して軽率なところがあり、そのせいで窮地に陥り、それを助けるためロスタムとラクシュが「7つの冒険(労働)」をすることになります。神話らしさのある面白いお話かなと思いますので、お楽しみに・・・(作業はこれからなのでだいぶ先かも・・)

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11. ロスタムとカイ・コバド(下)
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■登場人物
ザール:ザボレスタンの王。生まれつきの白髪。
ロスタム:ザールの息子。 Rustam
カイ・コバド:イランのシャー。ファリドゥンの末裔。アルボルツ山脈に隠棲していた。Kay Kawad / Kay Qobad
カレン、ケルダド、ケシュバド、バルジン、ガズダホム:イラン武将

アフラシヤブ :パシャンの息子。イラン軍総大将。
パシャン:トゥラン王

 

■概要
カイ・コバドをシャーに頂き、イランとトゥランの戦闘が始まります。
イラン軍戦士たちは奮闘し、優勢となります。初陣のロスタムは敵の大将アフラシヤブの帯を掴んで持ち上げるという快挙をなしとげますが、金具が千切れてアフラシヤブを逃がしてしまいます。
大損害を受けたトゥラン軍は散り散りに敗走し、帰り着いたアフラシヤブは父王に和平を提案します。
パシャンはカイ・コバドに和平の条約と贈り物を贈り、オクサス川を国境として退却します。
カイ・コバドは100年の間、正義と寛容の統治を行い、息子カイ・カヴスを次の王に指名し、世を去ります。


■ものがたり

3□□カイ・コバドの即位とトゥランとの闘い

8日目には象牙の玉座が用意され、その上に王冠が高く掲げられました。カイ・コバドは玉座に座り、宝石で飾られた王冠を頭に乗せました。ザール、カレン、ケルダド、ケシュバド、バルジンなどの指揮官たちが集められ、新しく戴冠した王の上に宝石をばらまきました。

新しいシャーは、アフラシヤブの侵攻についての話を聞き、自らの軍隊を閲兵しました。
翌日、王宮から準備の音が聞こえ、コバドが軍を率いて出てきました。
ロスタムは鎧を身につけ、気迫に満ちたイランの隊列は、埃をもうもうと上げながら進軍しました。
一方の翼はカボルの王ミフラーブ、もう一方はガズダホムが率いていました。カレンは中央で、破壊者ケシュバドと共にいました。

ザールはカイ・コバドと共にその後に続き、まるで彼の片側に火があり、もう片側に風があるかのようでした。軍勢の前にはカビアニの旗がはためき、世界を緋色、黄色、紫色に染め上げ、まるで海上の波間に浮かんだ船のようでした。

平野や山の斜面は盾の塊となり、剣は松明のように光り輝き、世界の端から端までが真っ黒な海のようで、その上を10万本のロウソクが煌々と照らしているようです。喇叭の音と軍隊の騒音で、太陽が道を踏み外すのではないかと思うほどでした。

4□□ロスタムとアフラシヤブの闘い

戦いが始まると、カレンはすべての突撃に参加し、ある時は左へ、ある時は右へ走り、血の雨を降らせました。ロスタムは彼の強烈な戦いぶりを見て、父のもとに行って聞きました。
「アフラシヤブはどこにいるのでしょうか。彼の装束は? 彼の旗は部隊のどこにはためくのでしょう。あの輝く紫色の旗は彼のものでしょうか? 私は今日、奴を捕らえ持ち上げてやりたいのです。」
ザールは答えました、
「よく聞け、息子よ、初陣の今日は自分のことをよく考えろ。アフラシヤブは戦闘時には火を噴く竜であり、災いを降らせる雲だ。その旗は黒く、その鎧も黒く、その腕は鉄に包まれ、その兜は鉄でできている。その鉄の鎧の表面はすべて金で装飾され、その黒い旗は兜にとりつけられはためいている。
気をつけろ、彼は勇敢で運にも恵まれている。」
ロスタムは言いました。
「私のことは心配いりません。創造主は私の味方であり、私の心、剣、腕が私を守ります。」
喇叭が鳴り響くと、ロスタムは鉄の蹄のラクシュを駆って駆けだしました。

アフラシヤブはその姿に目をとめると、この未熟な若者を不思議に思って立ち止まりました。彼は周りの戦士たちに聞きました。
「解き放たれた竜のようなあれは誰だ?初めて見るが。」
部下が答えました。
「あれはザールの息子です。サームのメイスを持っているでしょう。彼は若く、勝ち星を挙げることを熱望しています。」

アフラシヤブは波頭に乗って高く持ち上げられた船のように、軍勢に先駆けて進みました。ロスタムは彼を見ると、太ももでラクシュを強く挟みつけ、重いメイスを肩に担ぎ上げました。アフラシヤブとの距離を縮めると、メイスを王の鞍にぶつけ、さらに手を伸ばしてアフラシヤブの腰帯を掴み、ヒョウ皮の鞍からアフラシヤブを持ち上げて掲げました。

Ryl-Pers-932-f078r
●ロスタムがアフラシヤブの帯を掴んで持ち上げる Ryl-Pers-932-f078r

彼は初陣の戦利品としてアフラシヤブをコバドのもとに持ち帰ろうとしましたが、彼の力とアフラシヤブの重さに耐え切れず、帯の留め金が折れて千切れ、アフラシヤブが頭から地面に落ちてしまい、騎兵がすぐに彼の周りに集まって舞い上がる砂埃に彼を隠してしまいました。

敵の大将をこのように逃してしまったため、ロスタムは激しく悔しがって自分の手の甲を噛みました。
「なぜ、帯を掴むのではなく、自分の腕の中に押さえ込んでおかなかったのか!」

ロスタムがトルコ軍の中央を破り、トゥランの大将の帯を掴んで地面に投げ捨てた、という快挙が伝わると、象の背中から鐘がや太鼓の音が一隊に鳴りわたりました。この快挙に、コバドとイラン軍は勢いづき、軍隊は風に煽られた波のように前へ前へと押し寄せていきました。
あちこちで武器のぶつかり合う音、短剣のきらめき、木と鎧のぶつかり合う衝撃が響きました。
あたりはまるで雲が魔法で朱を降らせ、大地を赤い染料で染め上げたかのようでした。1,160人の勇敢な戦士が殺され、トゥラン人は散り散りにダムハンに退却し、そこからオクサス川に向かいました。
打ちひしがれ、疲れ切って、鎧は砕け、帯は緩み、喇叭や太鼓の先触れもなく、敗走したのです。

5□□アフラシヤブが父パシャンと会う

アフラシヤブは川岸に逃げ込み、7日間そこに留まり、8日目に準備を整え、怒りと悲しみに満ちて父のもとへ戻って報告しました。 
「高貴な王よ、この復讐を始めたのは間違いでした。過去の勇者たちは、その王にこのような不信感を抱くことはありませんでした。しばしの間イランの王座は空位でしたが、イラジの種はこの地から根絶やしにされておらず、この毒に効く解毒剤も見つかってはいません。一人が去れば、また新たな者がその座に就き、今はコバドが出て王冠をかぶり、新しい戦いの道を切り開きました。

そして、サームの種族から一人の騎士が現れ、ザールは彼をロスタムと名付けたのです。彼は剣とメイスであらゆる場所を攻撃し、空気はメイスの打撃音で満たされ、私の魂は彼の力の前では握りこぶしほどの価値もありませんでした。
彼は私たちの軍を粉々にし、私の旗を見つけると、メイスを私のヒョウ革の鞍に打ち付け、私の帯を掴んで、まるで蚊ほどの重さしかないように私を持ち上げました。帯が千切れたので私は彼の手から地面に落ち、部下が私を引きずって連れて帰ったのです。

和平を結ぶという選択肢しかないでしょう。あなたの軍隊は彼の猛攻に耐えられないのですから。
かつてファリドゥンがトゥールに与えた土地が、我々に与えられたものです。その他の土地への古くからの執着と復讐の念を捨て去るべきです。

イランとの戦争は、父上にとっては戯れのように思えたかもしれませんが、父上の軍隊にとっては全く違いました。我々の、黄金の兜と黄金の盾、黄金の手綱をつけたアラブ馬、黄金の鞘をつけたインドの剣、勇敢な戦士たち。どれほどが失われたか考えてみてください。
更に悪いことに、名誉と評判も回復しようがない程に貶められてしまったのです。
どうか過去の恨みを忘れ、カイ・コバドとの和解に努めて下さい。さもないと四方から軍勢が押し寄せてきます。
一方からは、情け容赦のない炎天のようなロスタムが。
もう一方からは、敗北を見たことのないカレンの軍勢が。
そしてアモルを攻め落とした黄金の兜のケシュバド。
最後に、ザールの軍を率いるカボルの領主、4人目のメーラブ。」

 

6□□パシャンが講和を求める 

トゥランの王は、アフラシヤブの言葉を黙って聞きながらその目に涙を浮かべました。
彼は書記に紙と、麝香から作ったインクを持ってくるように言いました。この男が書いた手紙の書法は、名人にふさわしいほど美しく、様々な色と図像で飾られているのでした。

パシャンは口述しました:
「日月を統べ、我らに讃美の力を与えた御名においてこれを記す。
我々の祖先の縦糸と横糸であるファリドゥンの魂にその祝福がありますように。
かつてトゥールは、王冠と王座に関わる問題で、祝福されたイラジに災難をもたらした。そしてイラジの復讐は、マヌチフルの手によってなされた。
しかしそもそもファリドゥンは正当な配分を企図して最初の取り決めを行ったのである。この分割を承諾し、先例を踏襲するのは私たちにとって良いことであろう。

トランスオクシアナからオクサス川を境界とする土地までが我々の分け前である。そしてイラジとその血族はイランを与えられた。
この協定を破って争いを起こせば、自分たちの生活を苦しくし、自らの剣で自分たちを傷つけ、神の怒りを買うことになり、この世でも来世でも何も受け継ぐことはできない。
ファリドゥンがサルム、トゥール、イラジの間に作った分割を尊重し、今後友人となりましょう。

私たちの頭は雪のように白くなり、地面は我らの戦士たちの血で朱に染まった。
しかし、詰まるところ人は自分が横たわる大地しか所有できない。麻布を衣に、墓を家として5キュビトの長さの土地を所有するだけである。これを超えた野望は、このかりそめの宿に悲しみと苦しみをもたらすだけである。

もしカイ・コバドが我々の条件を受け入れ、彼の賢明な心が正義に傾くならば、我々の誰もオクサス川を渡ることを夢にも思わなくなり、イラン人は挨拶と平和のメッセージを届ける以外はここに来なくなるだろう。こうして我々の二つの国は繁栄し幸せに暮らすことができるであろう。」

王はその手紙を封印して、カイ・コバドに遣わしました。
使者は金色の馬具で飾られたアラビア馬、銀の鞘に入ったインドの剣、宝石、そして最も良い自国の品々とともに手紙を渡しました。

カイ・コバドは答えました、 

「先に攻撃したのは我々ではない。かつてイラジを殺して最初に罪を犯したのはトゥールであり、我々の時代にはアフラシヤブがオクサス川を渡ってイランに攻め込んで来た。
彼がノウザル王に何をしたか、野の獣さえも彼を嘆いたことをあなたは聞いたでしょう。また、賢者アグリラスに対する振る舞いは、名誉ある人物にふさわしくありません。
もしあなた方が悔い改めるのであれば、我々は和平の契約を更新しましょう。しかし、私は復讐をすることもできますし、万が一のために武装しています。
オクサス川の向こう側の土地は、あなた方のものです。アフラシヤブ殿が満足することを期待しています。」

そして、シャーは新しい条約を書き記しました。
使者が豹のような速さで手紙をパシャンに持っていくと、パシャンは荷物をまとめて行進し、砂煙を巻き上げ、風のようにオクサス川を渡って退却しました。

この知らせはカイ・クバドに届き、もはや戦いがないことを歓びました。
しかし、ロスタムは彼に言いました。
「陛下、この和解は真のものでしょうか。これまでずっと、我々は彼らの攻撃から休むことはありませんでした。私のメイスが彼らを一時的に退かせただけではないでしょうか。」
王は答えました。
「わたしは正しさに勝るものを見たことがありません。
パシャンはファリドゥンの孫であり、十分な経験と知恵から争いを避けるでしょう。
叡智ある者は、猜疑の心から離れなくてはいけません。
しかし、ザヴォレスタンとカボルの、両軍の槍を研いでおくように。
王というものがいるところには戦争があるものだ、大地はかくも広いのだが。」

そしてシャーはザールとロスタムの働きに報い、誰も見たことがないような贈り物と広い領地を与えました。
ザールには、金襴の衣と、ルビーとトルコ石をあしらった帯と王冠を。
5頭の象の上には、ナイル川の水よりも華麗に輝くトルコ石をあしらった象駕籠を置き、そこには金襴の布をかけました。そしてこう告げました。 
「もっと立派な贈り物を送りたかった。
もし私が長寿に恵まれれば、そなたの願いをこの地上で満たさないままではいないでしょう。」 

そして、カレン、ケシュバド、バルジン、ケラッド、プラッドに、金貨、銀貨、剣、盾、王冠、ベルトなど、ふさわしい贈り物を配りました。

 

7□□カイ・コバドの治世とその終わり

カイ・コバドは宝物庫があるパースを目指しました。彼はイスタクルの宮殿ーカヤン族の歴代の王が栄華を誇った場所ーに入りました。
叡智と華麗さ、そして慣習に則って統治する彼に、世界中が敬意を表しました。彼は貴族たちに言いました。
「世界は端から端まで世界は私のものである。
もし象が蚊と争う[弱いものいじめ/侵略行為ということか]ならば、これは正義と信仰に反することである。神の怒りは災いをもたらすことになる。
大地と水こそが宝であり、勤勉と公正が平穏をもたらす。

同盟諸王は私の護衛であり、私は市民と軍隊を同等に扱う。
神を拠り所とし、賢く、平和に暮らせ。富を持つ者はそれを楽しみ、分かち合い、そして私がそれを可能にすることを私に感謝するように。
また、飢えている者、労働によって自らを養えない者は、私の宮廷がその牧場になり、私のもとに来る者をすべて迎え入れるだろう。」 

カイ・コバドは過去の名君に倣い、その正義と寛容さで世界を繁栄させました。世界に彼に匹敵する王がいたでしょうか。

彼には4人の賢い息子がいました。1人目はカイ・カヴス、2人目はカイ・アラシュ、3人目はカイ・パシン、4人目はアシュカといいました。

彼が100年統治したとき、彼の力は衰え始め、人生の緑の葉が枯れつつあることを知りました。彼はカヴスを呼び寄せ、正義と寛大さについて説きました。
そして言いました。
「私は最後の旅に出る準備ができた。私の棺を地面に下ろし、お前が王座に就いてくれ。
私はといえば、アルボルツ山脈から仲間たちと楽しそうにやってきたあの若者のような気がするのだが。
運命とはなんというものだろう、何の前触れもなく私たちを置き去りにする!それを崇拝する者たちは知恵がない。
もし、お前が正しく支配するならば、お前は天界への旅に出ることになるだろう。もし、欲と野心に心を奪われるならば、お前はお前に対して使われることになる暗い剣の鞘を解くことになるだろう。」 

彼は話し終えると、宮殿を棺桶に換えて華麗な世界から旅立ちました。

 

 

■シャー・タフマスプ本の細密画

サムネイル ページ番号 画のタイトル※ タイトル和訳 所蔵館と請求番号 画像リンク先 備考
f112v 112 VERSO  Rustam's first encounter with Afrasiyab  ルスタムとアフラシヤブとの最初の出会い  Tehran Museum of Contemporary Art, Tehran, Iran 非公開  

 


■他の写本の細密画

サムネイル ページ番号 画のタイトル※ タイトル和訳 所蔵館と請求番号 画像リンク先 備考
Ryl-Pers-932-f078r 78 Recto  Rustam lifts Afrasiyab by the belt ルスタムがアフラシヤブのベルトを掴んで持ち上げる John Rylands University Library of Manchester Ryl Pers 932 カタログ 

078r
1542年シラーズ
Ryl-Pers-932-f069r 69 Recto  Rustam lifts Afrasiyab from the saddle ルスタムがアフラシヤブのベルトを掴んで持ち上げる John Rylands University Library of Manchester Ryl Pers 910 カタログ 

069r
1498?/1518?/
1570?
Ms-or-fol4251-f198r 198 Recto  Rustam hebt Afrāsiyāb aus dem Sattel ルスタムがアフラシヤブのベルトを掴んで持ち上げる Staatsbibliothek zu Berlin Ms. or. fol. 4251

198r

1605

 

 

■細密画解説(本や所蔵美術館の解説より適宜抜粋)

●112 VERSO  Rustam's first encounter with Afrasiyab  ルスタムとアフラシヤブとの最初の出会い 
●ロスタムがアフラシヤブの帯をつかんで持ち上げる
〇Fujikaメモ:専門家による解説がないので、私が勝手に感想を書いてしまいます。 
アフラシヤブの身なりは、文中では次のようになっています。
・黒い小旗が兜にとりつけられはためいている
・鎧は黒。金で装飾。
・腕は鉄に包まれている(腕の防具)。表面は金で装飾。
・兜は鉄でできている。表面は金で装飾。
・鞍は白豹の毛皮

文中に掲載したRyl Pers 932は、ロスタムが童顔なこと、アフラシヤブが金模様の黒い鎧(服?ちょっと柔らかそうなのよね)を着ていることで選びました。ズボンの表現方法のせいかどうか、アフラシヤブが丸みを帯びていて、悪役ならではの格好良さには欠ける気がします。

表にのみ掲載したRyl Pers 910は、黒い兜に黒い小旗がついていたり、弓や刀の鞘が黒でコーディネイトされているところは文章にあっていていいな、と思いましたが、ロスタムがひげを生やした成年男性なのがちがうような・・。これが初陣で、若いはずと思うのです。

Ms. or. fol. 4251も、ロスタムは髭がない凜々しい若者で、アフラシヤブは黒い服。
こちらのアフラシヤブの方が格好いいかも。
(ちょっと絵のタッチが好みと違うのですが)のちほどこちらに入れ替えるかもしれません。

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シャーナーメ:11. ロスタムとカイ・コバド(上)

2023-04-22 | +シャー・ナーメあらすじ(挿絵付き)

前回、ロスタムが愛馬ラクシュと出会いました。
そして今回から、ロスタムとラクシュの活躍が始まります。これ以降のロスタムは、ほぼどの絵にも共通して白豹の頭の兜、茶色の虎皮の上着を身につけています(こういう、キャラ独特の衣装があるのはロスタムくらいです)。
この章は、隠棲していたカイ・クバドが見いだされ帝位につき、イラン・トゥランが闘って、和平を結ぶという内容ですが、ちょっと長いので上下2編に分けました。

====================
11. ロスタムとカイ・コバド(上)
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■登場人物
ザール:ザボレスタンの王。生まれつきの白髪。
ロスタム:ザールの息子。 Rustam
カイ・クバド:イラン王ファリドゥンの末裔。アルボルツ山脈に隠棲している。Kay Kawad / Kay Qobad

アフラシヤブ :パシャンの息子。イラン軍総大将。
パシャン:トゥラン王
クルン:トゥランの戦士。Qulun

 

■概要
イランのシャー・ガルシャスプ(治世9年)の死後、帝国の王座が空位になったのを好機とみて、トゥラン王パシャンが再び息子アフラシヤブをイランに侵攻させます。
迎え撃つザールは、準備万端戦力を整え、戦場で位置につきますが、部隊の要となるシャーがやはり必要だと考えます。
そこで息子ロスタムら騎兵をアルボルツ山脈に送り、予言者の示したカイ・コバドを探させます。
ロスタムは道中出会ったトゥラン兵を難なく蹴散らして進み、アルボルツ山麓の水と緑に恵まれた場所に、楽しげに暮らすカイ・コバドとその朋輩をみつけ、ザールのもとに連れ戻ります。
帰途、トゥラン戦士クルンの率いる軍勢と出会い、ロスタムはクルンを槍で刺して持ち上げるという見事な勝利を収めます。
カイ・コバドは、イラン貴族、諸侯たちの合議で認められ、シャーに即位します。
そしてただちにトゥランとの戦いの準備にとりかかります。

■ものがたり

1□□ザールの出陣

ザールが象の背中から、ザボレスタンの平原の何キロも先まで聞こえるような鬨の声をあげました。太鼓や喇叭、インドの銅鑼、象の嘶きが鳴り響き、まるで大地が死者に「起きろ」と叫ぶ審判の日がやってきたようでした。
ロスタムが先陣を切り、熟練した戦士たちが続きました。彼らが出発したのは春で、世界は花々で満たされていました。

アフラシヤブは、宴と休息の日々から目覚め、小川と葦の間の草原に沿ってレイのカールを目指して進軍しました。

イラン軍は砂漠を出て戦場に向かい、両軍の間は2里だけとなりました。ザールは老練な指揮官たちの会議を招集し、彼らに言いました。
「知恵あるもの達よ、練達の戦士達よ。我々はここに十分な軍勢を配し、有利な条件を備えている。しかし、王座にシャーがいないため、私たちは以前のように心を一つにすることができない。王位につき、権威の帯を締める王家の血筋の者が必要だ。
ある司祭が、そのような王について教えてくれた。ファリドゥンの子孫であるカイ・コバドだ。彼は優雅で気高く、正統な権利を兼ね備えている、と。」

そして、ザールはロスタムに向かい、こう言いました。
「今すぐメイスを持ち、仲間を選び、アルボルツ山脈へ急行せよ。
カイ・コバドを探し、丁重に挨拶し『全軍があなたを求めており、王位を用意しています』と言いなさい。そしてなるべく早く戻るのだ。」

2□□ロスタムがアルボルツ山からカイ・クバドを連れてくる

ロスタムはひれ伏してまつ毛で地面を掃き、ラクシュの背に乗り、仲間とともにカイ・クバドを探しに勇んで駆け出しました。

トゥラン人の前衛部隊が道を堅く守っていましたが、ロスタムは勇敢な部隊を率いて立ち向かいました。
ロスタムは雄叫びを上げて牛頭のメイスを振るい、多くのトゥラン兵を打ちのめしました。
彼らは怯えて逃げだし、アフラシヤブのもとに戻り涙ながらに事の次第を報告しました。

アフラシヤブはこの件を憂い、手練れの戦士クルンを呼び、彼に言いました。
「精鋭の騎兵を選び、その軍勢を阻め。ただし慎重に見張って進むのだ。あの鬼畜のイラン人は不意打ちをかけてくる。」
クルンは手強い敵の行く手を塞ぐため、戦士達と力強い象を従えてトゥランの本陣から出発しました。

ロスタムは新しい王を探しに進みました。そしてアルブルズ山から1マイルほどのところに、水と豊かな樹木がある素晴らしい住処を見つけました。若衆たちのための家です。
川辺には、薔薇水と純粋な麝香で飾られた玉座が置かれていました。
月のような若者が日陰の玉座に座り、色とりどりの衣服を着て腰に帯を巻いた多くの貴人が楽しげで優雅な雰囲気を醸しだし、楽園のような宮廷を形成していました。

f110v
●玉座に座る若者

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●花が咲き乱れる川辺で楽を奏で楽しむ貴人たち 110v

ロスタムが近づいてくるのを見て、彼らはにこやかに挨拶に来て言いました。
「誉れ高い戦士よ、通り過ぎてはいけません。我々はもてなし役であり、貴方は我々の客人です。
下馬して、我らと愉快に歓談しましょう。高名な戦士であるあなたに葡萄酒で乾杯させて下さい。」
しかし、ロスタムは答えました。
「畏れながら申し上げます。私はアルブルズに人を探しに参ったのです。
イランには敵が迫り、民の嘆きは避けられません。急がねばならないのです。私は王座が空白である間は楽しむことはできません。」
彼らは言った。
「もし、あなたがアルブルズへ向かうのなら、誰を捜しているのか教えて下さい。私たちは、その地から来た騎兵であり、貴方を案内できるかもしれません。」

ロスタムは答えました。
「我らがシャーがそこにいるのです。その名はカイ・コバド。ファリドゥンの種から生まれた、正義と繁栄の男です。もし知っているのなら、私を彼のところに案内してください。」

月の若者が言いました。
「私はカイ・コバドのことを知っています。もし、あなたが私たちの宴席に加わって下さるならば、私はあなたをその人のもとに案内しましょう。」

これを聞いたロスタムは風のように馬を降り、水辺に急ぎ、人々が日陰に座っているところに向かいました。若者は金の玉座に座り、ロスタムの手を握ってゴブレットを満たし、「自由に乾杯!」と言いながら飲み干しました。そして杯をロスタムに渡し、こう言いました。
「誉れ高き戦士よ、先程あなたは私に尋ねましたが、コバドについて、その名をどこで知ったのですか?」
ロスタムは答えました。
「イランのパラディンたちが、カイ・コバドを国王に指名したのです。
もしあなたが何か知っているならば教えて下さい。彼を急いで連れて行かなくては。」

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●カイ・コバドについて訊くロスタムと玉座の若者 110v

王座の青年は微笑みながら答えました。
「私がカイ・コバドです。ファリドゥンから続く父祖の名前を、皆言うことができます。」

ロスタムはこれを聞くや、座っていた椅子から立ち上がり、ひれ伏して公式の口上を述べました。
「全ての統治者を統べる者よ。勇者の庇護と長者の滞在よ、イランの王座が貴方の意思を待ち、大象と軍隊が貴方の命を待っています。
汝の右の座は王の中の王の座であり、恩寵と栄光が汝のものでありますように!
領主であり勇敢なパラディンであるザールから、地上の王への挨拶を持ってきました。
もし今、国王がこの奴隷ロスタムに話すよう命じるならば、私はザールのメッセージから解放されます。」

カイ・コバドはロスタムが語る間、席を立ちその言葉に集中しました。
若い王子は胸を躍らせながら「杯を持て」と命じ、ロスタムの健康を祈り、ロスタムも君主の命を祈って葡萄酒を飲み干しました。

楽器が奏でられ、赤葡萄酒が回って、若々しいシャーは頬を上気させてロスタムに言いました。
「かつて私は夢の中で2羽の白い鷹がイランから近づいてきて、太陽のように明るい王冠を持ってくるのを見たのです。彼らは優しく羽ばたいて私のところにきて、頭にその冠をかぶせました。
私はその明るい王冠と白い鷹のおかげで希望に満ちて目覚め、この川辺に王が持つような宮廷を作ったのです。
そして今日、その白い鷹のように、比類なきロスタムが私が戦士の冠をかぶるという知らせを携えてやってきました。」
ロスタムはそれを聞いて言いました。
「その夢は予言だったのでしょう。さあ、立ち上がってイランと指揮官たちのところへ旅立ちましょう。」
カイ・クバドは火のように素早く立ち上がり馬に乗りました。ロスタムもまた風のように武具を身につけて、一行は誇らしげに旅立ちました。

昼も夜も彼らは進み、トゥラン人の前線基地まで来て対決することになりました。

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●トゥランの軍勢 111v

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●イランの軍勢 111v

戦士クルンが彼らの来訪を知り、戦おうと進んできました。
カイ・コバドは戦いの態勢を整えようとしましたが、ロスタムが彼に言いました。
「シャーよ!これはあなたのための戦いではありません。この赤銅のラクシュに跨がってメイスを持った私に、誰が立ち向かえるでしょう?」

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●カイ・コバドを制して進むロスタム 111v


そしてロスタムは拍車をかけ、メイスの一撃で敵のひとりを馬上から突き落としました。
その強靱な手は次から次にメイスを振るい、落馬した敵は頭や首や背中を砕かれ、ひとりは脳みそが鼻孔から流れるほどでした。

メイスを手にし、鞍に投げ縄をつけ、解き放たれたディヴのように駆けるロスタムを見て、クルンは風のように彼に突進し、槍で彼の帷子の留め金を突き破りました。しかしロスタムは、クルンが油断した隙にその槍を掴んでもぎ取り、彼に槍を突き立てました。
そして雷鳴のようなうなり声をあげ、その槍を持ち上げて彼を鞍から宙に持ち上げ、槍の尻を地面に突き立てました。
クルンはまるで串に刺された鳥のように見えました。

f111v
●ロスタムがクルンを串刺しにする 111v

勝利者はラクシュに乗り、彼を踏みつけて死に至らしめました。
トゥランの騎馬隊はクルンを戦場に残し、逃げ出していきました。

ロスタムらは前哨基地を通り過ぎ、丘に向かって急ぎました。
ロスタムは草と水のある場所に降り立ち、夜が明けるまでに、王者にふさわしい衣服、馬、冠を用意し、そうしてからザールにカイ・コバドを紹介しました。

一週間の間、ザールと神官や指導者達は会議をしました。そして「コバドの右に出る者はいない」というのが全員の一致した意見でした。7日間、彼らはコバドと共に喜び宴を楽しみました。

 

■シャー・タフマスプ本の細密画

サムネイル ページ番号 画のタイトル※ タイトル和訳 所蔵館と請求番号 画像リンク先 備考
f110v 110 VERSO  Rustam finds Kay Qubad  ロスタムは(ファリドゥンの子孫)カイ・コバドを見つける  個人蔵 Hollis 本のp145
f111v 111 VERSO  Rustam spits Qalun on his own spear  ロスタム、トゥラン戦士クルンに自分の槍を突き刺す Tehran Museum of Contemporary Art, Tehran, Iran Hollis  

 

 

■細密画解説(本や所蔵美術館の解説より適宜抜粋)
●110 VERSO  Rustam finds Kay Qubad  ルスタムは(ファリドゥンの子孫)ケイ・クバドを見つける 
 この鮮やかな彩色の細密画は、アカ・ミラクの作と推定される。アカ・ミラクは、10年ほど後に、1539-43年の大英博物館のカムセーに、同様のデザインと彩色の絵を制作している。この作品では、スルタン・ムハンマドによるこのプロジェクトのためのスケッチに匹敵する、やや単純化されたスタイルで描かれています。音楽家が演奏する中(左)、歓迎されるルスタム。虎皮の衣の肩には陽と陰のマークが描かれていますが、このモチーフは大英博物館のカムセ(ニザミ)にも描かれており、シャー・タフマスプの廷臣に扮したケイ・クバードの従者(上)が、野外で人生を楽しんでいる様子が描かれています。

〇Fujikaメモ:
清らかな水が流れ、草花が咲き乱れそこここに木陰がある場所で、気の合う若い男性だけで酒を飲み音楽を奏で語らって楽しく暮らす、というのは、イラン的に理想郷のようなものだと思われます(日本でもかな?)。
この絵はそんな理想郷の雰囲気がよく出ている気がします。(ほぼ全員がひげのない若者です)
(カイ・コバドは、晩年、この仲間たちと都に入ったときのことを懐かしみます。)

玉座に座っているのがカイ・コバドで、ロスタムは、そのそばに立つ人物。この絵で初めて、ロスタムのトレードマーク、白豹の頭の兜、茶色の虎皮の上着を身につけています(こういう、キャラ独特の衣装があるのはロスタムくらいです)。

カイ・コバドが名乗った後は、もっとひれ伏している気がするので、その直前、「カイ・コバドを探しているのですが」と言う場面かな、と思いますが、違うかな。
この場面でのロスタムは、本来はまだ初陣前の若い(ひげのない)状態だと思うのですが、この絵ではヒゲをもった成年に描かれています。(次の絵ではヒゲがなくなる)
描かれている食べものは、小姓が掲げているザクロ(コバドの左手側に座る貴人達の前にも)、そして画面右下で焼いている、鶏?の丸焼き、でしょうか。鶏丸焼きのそばでは、配膳係?が青花模様の磁気の皿とフタを持って控えています。
玉座の足許付近の地面、ザクロをかかげている青年の前方に、大きなお盆があって、白い三角形の山盛りのものが3つ?ありますが、これは何でしょうね。

f110v

●111 VERSO  Rustam spits Qalun on his own spear  ルスタム、イラン戦士クルンに自分の槍を突き刺す
〇Fujikaメモ:専門家による解説がないので、私が勝手に感想を書いてしまいます。 
前景には銀(いまは黒)の小川と密に生えた草花、その後ろは砂色の地面に、ぽつぽつと花。
これを背景に、白豹の兜、虎皮の鎧に身を包んだロスタムがクルンを槍に刺して持ち上げています。
(ここでのロスタムは童顔)
その後ろにはイラン、トゥランの両軍。
どちらがどちらかよく分かりません・・・。一応、右側のロスタムの後ろ(赤い旗)がイラン、左側のクルンの後ろ(黒い旗)がトゥランとしましたが、逆かも・・。

ところで、右側の軍勢の中に変わった風貌の人が。

f111v
この絵の中央左。顔色が薄紫色1? 顔の形もゴツゴツして他のひととは違ってるし(妙にエラが張ってる?)、画像が悪いせいかもしれませんが目もよく分かりません。
この人だけ、ある民族の人をリアルに描いたのかもしれませんが、それにしても顔色が紫・・。

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台湾2023.4:機内食のローソルトミール

2023-04-20 | +海外

国際線の機内食は、可能な場合は事前にスペシャルミールを頼んでいます。
(エコノミークラスでも、様々な種類から選べるようになっています)
例えば、シーフード、ベジタリアン、ヴィーガン、低糖質、ローフード、乳製品オフ、イスラム教対応食、ユダヤ教対応食、ジャイナ教対応食、などなど。
その宗教の人でなくても頼めますし(最初にヒンドゥーミールを頼んだときは。ヒンドゥー教の方ですか、と証明を求められたらどうしようかとちょっとドキドキしました)、往路ベジタリアン、復路ノンベジタリアンと、変節漢のように変えることも可能です。


私はヒンディーミール(ノンベジ)がお気に入り。
日本発は、だいたい、ほどよくマイルドなチキンのカレーと豆のカレーが2種入っています。
台湾発は、日本発よりもパンチが強め。カレーも本格派だし、つけあわせのチャツネも辛くて、インド方面からの輸入品と思われます。
ダンナサマはシーフードミールがお気に入り。日台どちら発でも洋風の味付けで、メインディッシュにも、前菜にもシーフードが使われています。(台湾発の方が少し盛りがいい感じ)

今回は初めてローソルトミール(減塩食)というのを頼んでみました。
これが、日本発と台湾発で全然違ったので、ご紹介したいと思います。


こちらが日本発、減塩食。

日本発ローソルトミール

メイン(洋風):チキンソテー、青梗菜炒め、飴色タマネギ、つぶつぶ穀類(麦・枝豆・コーンなど)
サラダ右:スナップえんどう、薄切り酢れんこん、プチトマト
サラダ左:カリフラワー、アスパラ、クレソン、トマトジェリー(控えめにおいしく味付けされてる)
デザート:紅茶ゼリー+ママレードソース

盛り付けは違いますが、ちょっといい感じのカフェめしのような感じでした。
特に、つぶつぶ穀類が好み☆ コーンをこういう使い方してもいいのだわ~。
どれも減塩なのが全然気にならないくらいでした。
通常の機内食って、減圧状態での味覚変化を考慮してやや味濃いめらしいですよね(なんとなく浮腫むしそれが戻りにくい気がします)。
(減塩の代わりにしっかり酸味をつけるのかと想像していましたが、野菜などはほぼ無調味)
サラダの下の赤いものは、単なるトマトソースかと思いきや、ほんのり甘酸っぱく味つけしてゼリー状にしてあるトマトジェリー。「え、なんか美味しい!?」と驚きました。

このメニューでの唯一の残念ポイントは、デザート。
紅茶ゼリーに、うっすらママレードソースがかかっているのですが、私的には、味がしない・・・(減圧状態だからか!?)。減塩だけど、減甘じゃなくていいのに~。
水みたいなゼリーで全然デザート気分にならないものでしたが、なぜかダンナサマには、割と好評。
なんとか味をつけようと、パンに添えられていたりんごジャムを絞り出して乗せたのですが、むしろそれがない方がよかったようです。


こちらは台湾発、減塩食。
なんとこちらは、オリエンタルスタイル?(どことなく中華ぽい)

台湾発ローソルトミール

メイン:鶏唐揚げ、野菜炒め、玄米、トッピングの揚げた葉っぱは正体不明(香りなし)
サラダ左:切っただけのきゅうり
サラダ右:蒸し鶏、蒸し?ズッキーニ、細アスパラ、プチトマト
デザート:パイナップル、メロン、すいか

台湾発の方が減塩度合いが強いような気がしました。
台湾で普段より味が濃いものを食べ慣れていたからかもしれませんが、どのお料理も、ほぼ無塩のように感じました。
とはいえ、それぞれ滋味深いというか、ほんのりとした素材の味で、美味しいです。
玄米の炊き方が丁度いい感じで、もちもち・プチプチとして特に印象深かったです。
とてもヘルシーな食後感のお料理でした。


どちらについても、My調味料としてポッカレモンミニがあると少し変化がつけられてよりいいかもしれません。
あと、My甘物がちょびっとあるといいかな。(いや、おなかは十分いっぱいになるので、やっぱ食べちゃだめだな)

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台湾2023.4:果樹など

2023-04-19 | +海外

花より断然興奮するのは果樹。
住宅地レベルで見られる果樹が、日本とは全然違います。


マンゴー

この細長い葉っぱは、マンゴー。
お友達のお友達の別荘(台南市内)ですが、広いお庭をマンゴー園にしています。
よくよく見ると葉っぱの形が違うものがあり、いくつかの品種を植えているようです。

マンゴー

こちらがマンゴーの花房。
花は沢山、総状につく模様ですが、自然落果してどんどん減ります。
でもって、美味しく大きく育てるため、更に実を減らして、軸ひとつに実1~2個にまでするそうです。

マンゴー

こちらが自然落下したもの。
落ちたもののうち大きなものは、スライスして塩もみして、お漬物的なものを作ったりするようです。

樹葡萄

幹に直接花がついているこれは、ご存じでしょうか。
台湾では比較的新顔のフルーツで、ジャボチカバ。あちらでは樹葡萄と呼ばれています。
数年前から苗木が買えるようになったとかで、庭先に植えられていました。これは4-5年経過したもの。
(そろそろ本格的に実をつける時期)

樹葡萄

これは別の方のジャボチカバ。緑色の実が見えますよね。
ものすごく鳥に狙われるようで、ネットやヒラヒラで対策してあります。
この固そうな緑色の実は、たったの4-5日で熟すのだそうです。

樹葡萄

我々が滞在中に熟してきたとのことで、貴重な収穫を頂いてしまいました。
左が、鳥除けのヒラヒラをつけていた方のもの。とても丁寧に、肥料などもしっかりやって育てたとのころで、大粒です!
何より違うのが、皮の味。
この大粒の方は、皮を噛みしめても渋くなくて、ほんのり酸味があって、果肉と一緒に食べてしまえます。
右側の方は、皮を噛むと渋さがあるので、最終的には口から吐き出す感じになります。
2018年に台南で売っているものを食べたことがありますが、皮はやはり渋かった)

中には白くてやわらかい果肉があって、果肉が繊維状にくっついているタネが1-2個。
白い果肉は甘酸っぱくて美味しいです。


蓮霧

お友達の右側のとても大きな木は、果樹です。
緑地帯のようなところの、野良。

蓮霧

薄い赤い実が見えるでしょうか。
あとその手前に、小さな薄緑の実と、左端には花も。

蓮霧

これは蓮霧(レンブ)の木。
一個だけ落っこちている実をみつけましたが、とても小さいです。
フルーツとして売られているものは、もっと大きいです。やはり栽培ものはそれ相応の手間をかけているのですね。(あと、小さく仕立てる工夫もしてあるはず。この大木では収穫が大変すぎる)
ちなみに、この落ちてる実に少し歯を立ててみましたが(お友達ご夫妻には「あああっ、ダメダメっ」とたしなめられましたが)、渋さなどはなく、割と食べられそう。
台湾で採集生活をするならば、この木の下をパトロールするな、きっと。

バナナ

バナナ。
バナナは、まず最初に球根のようなものを植え、一株が大きくなって実をつけたら、○段の実を残して先端はカット(数字を聞いたのですが忘れてしまいました)。
で、青いうちに収穫し、段ボールなどに入れて半密封状態で追熟させます。
収穫後の株は伐採(カッターナイフで切れるほどの柔らかさだとか。草本ですものね)。
そしてその根からまた芽が出るのだそうです(数本芽が出た場合は1本に絞り込む)。

台南には、野良っぽいバナナが結構あちこちにあります。
最初は誰かが1株植えたようなものが、管理不行き届き(のような感じ)でもっさりした群落になっています。
管理されていない(ように見える)野良バナナは、誰かが収穫しているのかしら。
すごく気になる・・・。
やっぱり味が劣るのかもしれないけれど、食べられない程ではないよね・・??

東南アジアではバナナの花も食べるようですが、野良バナナからそれを採集しちゃってる人はいないのかなあ。実は味がイマイチだとしても、花ならば野良でもそこそこでは・・・。
(最近、台湾にも東南アジアからの労働者や花嫁さんが増えているようなので、もしかしたら彼らも気になって見ているかも)


乳香

最後のこれは、果樹ではないのですが、とても香りのいい木。
奇数羽状複葉のこれは、「乳香」の一種だということです。
(Wikiで見てみましたが、オマーン、イエメン(アラビア半島南部)のいわゆる乳香とは同じではなさそうですが)

葉っぱを千切ると、瞬間的にいい香りが漂います。

乳香

そして、木の幹から分泌されるネバネバしたこの白い樹液が、とてもいい香り(この香りは持続性)。
人工的に傷つけてそれなりの分量を採集し、蒸留してフレグランスウォーターを作ったら面白そうです。
(乾くと固くなるとは思いますが、今回はそういうカケラはみあたりませんでした)

この木は鳥が殖やすようで、あちこちから勝手に生えているのだそうです。
中近東の乳香の木は「栽培して増やすことが困難」だそうですが、台湾版乳香は育ちやすいようです。

鳥が好きという実は、どんな実なのでしょうね・・・。
(香りはどんな・・・)


■参考情報
台湾ニ生育スベキ熱帯林木調査 薬木,香木類ノ2 東京帝国大学農学部附属演習林 編(1927/昭和2)
カタログ情報 web閲覧

台湾が日本領だったとき、熱帯農林業の発展のために調査した報告書かなと思います。
(当時)台湾に生えているもの、ではなく、台湾で育てられそうな香木、ということになります。
乳香の項目はあるのですが、数品種あって、今回見つけたものがどれかに該当するのかは分かりませんでした。
気候が似ているインド原産のものがそうかな?と思いましたが、インドでも乾燥地に生息している模様。アラビアのものも乾燥地ですし、どれも乾燥地に育つもののようです。

それにしても、香木には詳しくないけど少しくらい知っている木はあるかな、と思いましたが、34種掲載されているうち、聞いたことがあるのは7-8種類くらいで(白檀、沈香、乳香、没薬、丁字、八角、杏仁)、全く聞いたこともない樹種がどっさりです(しわう、すちっくらっく、きりんけつ、かすからさぐらだ、などなど)。今度時間があるときに読み直そう・・。

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台湾2023.4:花など

2023-04-18 | +海外

4月上旬は、台湾に行ってきました。
今年1月にも行ったのですが、その時はセレモニー参加がメインで、とてもせわしなかったので今回はのんびりしたいのと、あと、花粉からの避難も。

久しぶりにフリータイムたっぷりの台南で、予想していたよりずっと楽しかった!
もう何度も言った台南ですが、ここ数年行っていなかったので忘れているし、あと、変化していることもありました。
ホテルを出るとすぐに繁華街、というのが一番楽しいポイントかな。
自宅周辺は、あー、スーパーマーケットとかあるけど、(コロナでそこしか行く場所なかったから)ちょっと飽きちゃったのよね・・・。
(そういう意味では国内の中規模都市に泊りに行く、というのもいいのかも)


「ぬおお、なんだこれは」と思ったものほど写真を撮り忘れていますが、なんとか撮れているものを使って記事にしていきます。

まずは花。
私は花には疎いのですが、4月上旬に行くのは珍しく、3月とはまた違う花が咲いていた気がします。
(1月に行ったときは、気温は木綿の長袖でちょうどいいくらいで、全然冬という気がしなかったのですが、台湾の植物的には休養の時期のようで、花は少な目でした)

紫の花

灌木にの花で、大きなガクと花が二重になった面白い構造。
色が綺麗。

紫の花ドライ

このガクの部分はドライフラワーにしても、きれいな青色が保たれます。


極楽鳥花

極楽鳥花。
花屋さんやアレンジメントでは見たことがありますが、生えているのを見るのはあんまりありません。

極楽鳥花

植物体はこんな感じ。
最初葉っぱだけ見て、芋系?と思いましたが花でした。

ブーゲンビリア

ブーゲンビリア・
奥にあるような濃い色合いのものは知っていましたが、こんなほんのりしたぼかしピンクのものは初めてみました。

蘇芯花?

これは、手が届かないくらい大きくなる木の花です。
落ちていたものを拾いました。
4月上旬はほぼ花シーズンは終わりですが、3月にはピンクの花が花盛りだったようです。
おそらく「蘇芯花」というものの一種ではないかと思います。(葉っぱの形から別名羊蹄木とも)
黄色いおしべ数本に囲まれて、えんじ色の「し」みたいな形の長い雌しべが。
この雌しべから予想がつくかもしれませんが、マメ科です。

この豆が割と予想外。

蘇芯花?

40cmほどもある細長い豆が一本の木から数え切れないくらい、ぶらぶらぶら下がっているのですが、豆の収納形式が、枝豆や空豆とは全然違っています。
枝豆のように整然と豆粒が並ぶのではなく、膜質の羽がついた薄べったい種子(豆には見えない)が、鞘の中にランダムにぎっしり詰まっています。
このヒト、(チャンスがあれば)この実を全部殖やすつもりなんだろうか。生産性高すぎのような・・・。
(そういう意味でいえば例えばドングリも無駄に実の数が多いです。でもあれはリスとかに食べられてしまう分も考慮してるだろうけれど、このペナペナのおいしくなさそうな種子は、何かの動物が食べるのだろうか??)


黄色い蘭

通りがかったお宅に植えてあった、真っ黄色の蘭。
蘭って、わりと立体感のある花だと思っていましたが(絵に描くのが難しい系)、この蘭は、あまりに鮮やかな単色の色合いで目がチカチカして、立体感がつかめません。

台湾はとても暖かいので、蘭は特に苦労しなくても育つようです。
日本だと小さなおうちの軒先の鉢植えに小菊を植えてあるような感じで、蘭が割と無造作に育っています。




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ラズベリー2023:新芽

2023-04-17 | +ベリー類(ブルーベリー、ラズベリー、ブラックベリー、桑、ぐみ、ユスラウメ)

旅行から帰ってすぐ、Myラズベリーを見に行ってみました。
行く前はまだ枯れ枝状態でした。

特に、昨年植えたばかりの、一季なりラズベリー(グレンアンプル、グレンモイ)がどうなっているか。
ツタのように細くひょろ長くて、自立しないタイプの植物なのです。
トゲがないのはいいけれど、あまりに華奢で、冬を越せているのか・・・。

一季なりラズベリー

一季なりラズベリー、このヒトはツルの先端まで生きてました!

一季なりラズベリー

こちらは、長い枝の方はどうやら枯れてしまったようですが、株の付け根あたりから新芽が出ています。
一応生きてはいたということですね。


さて、二季なり(大半がおそらく一番一般的なインディアンサマー)。

二季なりラズベリー

このヒトたちは、いちおう自立して生えているところが安心できます。
それにしても、少し枝を残しすぎたかな・・。

二季なりラズベリー

葉っぱが芽吹いてきたけど、それより目立つのが地面の雑草。
なんとかせねば・・・。


昨年は、植え替え直後で、枝は短く切り詰めたものの、夏果は割と採れてうれしかったのでした。
その記憶があって、今年は枝を残しすぎ。
しかも、あまり切り詰めていなくて、長いです。栄養が分散して、小さい実になるかも・・・。

多めに残したのは、新梢の成長が少し抑え気味になるかと試してみたくて。
ぐんぐん育つ新枝は、真夏に花を咲かせて、で、それはちゃんとした実にはならないのです。
できれば秋になって花が咲くようにしたいのだけれど、どうしたものか。
(初夏の剪定でコントロールするのかなあ・・・)

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シャーナーメ:10.ロスタムとその馬、ラクシュ

2023-04-02 | +シャー・ナーメあらすじ(挿絵付き)

シャーナーメの英雄、ロスタムがパートナーとなる馬ラクシュをみつけるお話です。
戦士とその馬、というのは、バットマンとバットモービル、関羽と赤兎馬、ラインハルトとグリュンヒルデ(銀英伝)、(乗り物じゃないけど)ルパン三世とワルサーP38、のように、一心同体の間柄のようです。
通常の馬の寿命はともかく、このラクシュは、英雄ロスタムの神話的に長い生涯をずっとともにします。
ロスタムが投げ縄でラクシュをつかまえるこの場面はとても有名なシーンで、いくつかの写本でも挿絵が描かれています。
ラクシュの模様、「サフランの地に薔薇を散らしたような」というのは、金茶に赤、のような色合いでしょうか。(花びら?葉? 葉っぱだったら、薔薇でなくてもいいような・・?それくらいの大きさということ?)
ラクシュの体格描写を見ると、騎馬民族(といっていいのかな)が何をもっていい馬としていたのかがうっすら分かるような気がします。日本でTVとかで目にできるのはサラブレッドくらいですが、闘うための馬はまた違う特徴があるのでしょうね。(農耕馬(?)のペルシュロンとか、蹄あたりがフサフサでが大きい馬はまた、かわいいんだよなあ)
ラクシュを手に入れて、試乗してみて心が昂ぶり、そして大事な大事な愛馬を守るために香草を焚いて守ろうとするところは、現代人が新しいバイクや車にを手に入れ、乗り回してワクワクしたり、ひまさえあれば眺めたり磨いたりするのに通じているかもしれません。

(来週はお出かけするため更新お休みです。ネタが集まるとよいのですが・・)

====================
10.ロスタムとその馬、ラクシュ
====================

■登場人物
ザール:ザボレスタン領主。生まれつきの白髪。ロスタムの父。Zal
ロスタム:ザールの息子。生まれたときから大きかった。Rustam / ルスタム 
ラクシュ:ロスタムの馬。Rakhsh

アフラシヤブ:敵方トゥランの指揮官。王子。

■概要
イランのシャー、ガルシャスプの没後、空位となったのを好機とみて、再びトゥランが侵攻しようとしていました。防衛戦の要となるザボレスタンの領主ザールは、高齢のために息子ロスタムに後を継がせようと考え、彼の考えを聞きます。
そしてまた彼に必要な馬を、ザボレスタン中から集めてきて探すことにします。
ロスタムはあまりに大きく力も強いので、通常の馬では不足ですが、ようやく、赤茶の色に斑模様のラクシュという飛び抜けて立派な子馬をみつけます。
そしてこの馬は、特別な神の加護により、ロスタムの今後の長い一生をずっと共にします。

■ものがたり

□□ザールの後継者ロスタム

ザールはロスタムに言いました。 
「お前はとても背が高くなり、糸杉のような体は、我々から頭一つ、抜きん出ている。しかしお前はまだ少年で、戦うには十分な年齢ではない。お前の心はまだ遊びと楽しみを求めており、唇にはまだ乳の匂いがする。獅子や強者との戦いにお前を送り込んでもいいものだろうか。どう思うかね。」
ロスタムはザールに答えました。 
「父上、覚えておいででしょうか、私が獰猛な象を倒し、またシパンド山でも蛮族を退治したことを。
今、アフラシヤブに怖じ気づくようでは、私は名声を失うでしょう。」

ザールは更に言いました。 
「勇敢な若者よ。白象とシパンド山のことは勿論素晴らしかった。しかしその戦いに簡単に勝ったので、私はむしろ恐れているのだ。アフラシヤブとその企みが私の眠りを奪っている。しかし彼のように勇猛な者と闘うためにお前を送ることができるだろうか。お前はまだ遊び盛りであり、今は宴を開き琴を鳴らし、酒を飲み、武勇伝を楽しむ時ではないだろうか。」

ロスタムは答えました。
「歓楽とワイン、饗宴と休息は、私には関係ありません。戦争や戦場での苦難も、神が私を助けてくれるなら、決して屈しません。今こそ戦うべき時であり、逃げるべき時ではありません。
ペルシャの地を守るトゥランに対抗するには、私にふさわしい、山のような大きさと重さを持つ馬が必要です。そして山のかけらのような巨大なメイスも。そのメイスで彼らの頭を砕くならば、誰も私に立ち向かう勇気がないでしょう。」

ザールは息子の言葉に感動し、天にものぼる心地でした。
そして父サームがマザンダランでの闘いで使った形見のメイスをロスタムに与えました。

 

□□ロスタム、ラクシュを選ぶ

ザールは自分の馬の群れをザヴォレスタン中から集め、またカボルからも集めました。
牧人は、それぞれの馬の烙印を呼ばわりながら、馬たちをロスタムの前に走らせました。
ロスタムは時折よさそうな馬を投げ縄でつかまえ、背を押さえてみましたが、どの馬も、ロスタムのあまりの強い力に、馬の腹が地面についてしまうのでした。

やがて、斑模様の馬の群れが通りかかり、その中に、足は短く俊足の灰色の雌馬がいました。獅子のような胸と鋭い短剣のような耳を持ち、肩が豊かで胴体が立派でした。
彼女の後ろには、彼女と同じくらい体高が高く、尻と胸も同じくらい広く、切れ長の黒い瞳、鹿毛の粕毛、漆黒の睾丸、鋼鉄のように固い蹄の子馬が来ました。 
その体型は美しく、斑模様はサフランの地に薔薇の花びらを散らしたようであり、目を見張るほどです。
彼は、夜、2里も先の黒い布の上の蟻の足を見分けることができる鋭い視力を持っていました。駱駝の体格で象のような強さを持ち、獅子のような気概を持っていました。

ロスタムは雌馬が通り過ぎるのを見届けると、象のようなこの子馬を見て、投げ縄を巻き、
「その子馬を群れから遠ざけよ」
と言いました。馬を運んできた老牧夫は、「閣下、他人の馬を奪ってはいけません」と止めました。
ロスタムは、その馬の尻に焼き印の跡がないことから、その馬の持ち主を尋ねました。
牧夫は言いました。 
「焼き印はないのです。でもこの馬にはたくさんの云われがあり、”ロスタムのラクシュ(雷)”と呼ばれているのです。3年前から鞍を付けて、多くの貴族が彼を選ぼうとしましたが、彼の母馬は騎手の投げ縄を見るたびに、獅子のように襲いかかったのです。」

f109r
●ロスタムに説明する老牧夫 109r

 

ロスタムは王家の投げ縄を振りかざし、素早く馬の頭をその縄で捕らえました。

f109r
●ロスタム、ラクシュに投げ縄をかける 109r

 

母馬は怒れる獅子のように前に出てきて、まるで彼の頭を噛み切ろうとするかのようでした。しかし、ロスタムは野獣のように咆哮し、その声が雌馬の足を止めました。
そして、その肩の部分に一発の衝撃を与えて、彼女を地面に叩きつけました。
彼女はよろめき、またよじ登り、向きを変えて、他の群れに合流するために駆け出しました。
ロスタムは縄を締めて子馬を自分の方に引き寄せ、英雄の力を込めて子馬の背中を押してみましたが、背中はびくともせず、まるで子馬がロスタムの手に気づかないかのようでした。
ロスタムは自分に言い聞かせるように言いました。
「この馬が私の馬だ。これで仕事を始めることができる。鎧、兜、棍棒の重さと、私の巨体に耐えられるだろう。」
彼は風のように素早く馬に乗り、赤毛の馬は彼と共に疾走しました。

彼は牧夫に尋ねました。
「この暴れん坊の値段を知っている者はいるか。」
牧夫は答えました。 
「あなたがロスタムなら、この馬は閣下のものです。この馬の値段はイランの平原全てに値します。この背に乗ってイランを救って下さい。」
ロスタムは珊瑚の唇で微笑み、「神の行いに幸いあれ」と感謝しました。

彼はラクシュに鞍を乗せ、武具・武器も全てつけて試乗してみました。馬の強さと速さに彼の闘志も燃え上がり、目が眩むほどでした。
ロスタムは、この大切な馬のため、毎晩、魔除けのために野のヘンルーダを彼の周囲で燃やしました。
どこから見ても、ラクシュは魔法の生き物のように見え、戦いでは機敏で、口が柔らかく、泡が飛び散り、腰はたくましく大きく、利口で、歩調が整っていました。 

ラクシュとその立派な乗り手は、ザールの心を蘇らせ、春の喜びをもたらしました。
ザールは宝物庫の扉を開き、今日も明日も気にせず、金貨を配りました。

 

 

■シャー・タフマスプ本の細密画

サムネイル ページ番号 画のタイトル※ タイトル和訳 所蔵館と請求番号 画像リンク先 備考
f109r 109 RECTO  Rustam lassos Rakhsh  ロスタム、ラクシュを投げ縄で捕らえる  The Museum of Fine Arts, Houston, Texas, United States, LTS1995.2.47 flickr / 1


■他の写本の細密画

サムネイル ページ番号 画のタイトル タイトル和訳 所蔵館と請求番号 画像リンク先 備考
f025v 85 RECTO  Rustam catching Rakhsh ロスタム、ラクシュを捕まえる Add MS 18188 (Oriental Manuscripts, British Library) f85r Copied in 891/1486

(あとで追加・年代順に表にする予定)
・プリンストンシャーナーメRustam Chooses His Horse, Rakhsh, folio 54a from the Peck Shahnama, 1589-1590
・Persian MS 910(マンチェスター)ノウザル処刑シーンもあり
https://www.digitalcollections.manchester.ac.uk/view/MS-PERSIAN-00910/139
・ニューヨーク州立https://digitalcollections.nypl.org/items/5e66b3e8-b63f-d471-e040-e00a180654d7
・Diez A fol. 1(ベルリン州立図書館)(カタログ・挿絵リスト(リンク付き)
https://digital.staatsbibliothek-berlin.de/werkansicht/?PPN=PPN671782010&PHYSID=PHYS_0183

■細密画解説(本や所蔵美術館の解説より適宜抜粋)
●109 RECTO  Rustam lassos Rakhsh  ロスタム、ラクシュを投げ縄で捕らえる 
〇Fujikaメモ:専門家による解説がないので、私が勝手に感想を書いてしまいます。 
ロスタムが自分の馬を探して捕まえる、という短いシーンですが、この馬とは一生のパートナーになります。
この絵でのロスタムは、羽つきの冠(兜)で、頬はすべすべとして丸く若い雰囲気が出ています。
父ザールの結婚がマヌチフル時代。ノウザル即位直前または直後に生まれたとすると、治世がそれぞれ。ノウザル7年、ザヴ5年、ガルシャスプ9年なので、21歳プラスマイナス、くらい。
ん、唇に乳の匂いが、という程は若くないですね。(14~16歳くらいかと勝手に思ってました)


■参考情報
●馬の毛色について
bay roan horse (栗粕毛)の画像
bay:鹿毛。明るめ~ダークな栗色、尻尾やたてがみ、足先は黒くなる。
roan:粕毛。いわゆるこまかいブチ。
piebald:ホルスタイン牛のような大柄の黒白二色(茶白の場合はSkewbald。両方を総称してcoloured(米語だとまたちょっと違う))

馬の各部の名称

●ヘンルーダについて
The Wild Rue
by Bess Allen Donaldson(1938)
イランでの邪視よけとヘンルーダについての本
全文英語で閲覧可。(IMDB)
ヘンルーダは、古代ギリシアプリニウス以来、視力の回復と保持等に効果があるとされる苦い薬草。
シェイクスピアの戯曲にも出てきます。
(視力に関連しているのかどうか)イランでは邪視除けのためいろいろな場面でその種子を焚いたりする模様です。

コメント
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