採集生活

お菓子作り、ジャム作り、料理などについての記録

砂漠のきのこ

2022-07-08 | ■カフジのこと

これまで書いたかどうか覚えていませんが、子供の頃、サウジアラビアのカフジというところに住んでいました。
まず父が赴任して、そのあと新婚の母が移動、そしてそこで私と弟が生まれたのでした。
学校は、小さいながらも日本人小学校がありました。

日本から遠く離れた僻地で、大人はどうだったのか分かりませんが、子供たちは全く不自由は感じず、楽しく暮らしていました。
最初からものがないところで育つと、そういうもんかな、となりますよね。
(大人たちは、「ないものは作る」ということになり、おはぎ、ケーキは勿論のこと、アル〇ールまで作っていました)

「小学〇年生」や「学研の化学/学習」など日本の文化が時々届いて、ワクワクしながら読んでいましたが、一度も見たことがないものが沢山で、想像がつかないものも多数
(ケーキのモンブランのにょろにょろと、あとクヌギのどんぐりのモシャモシャが謎だった)。
でもまあ、特に何かがなくて困った、ということはなかった気がします。

いろいろな思い出の断片は、心の中の「宝箱」にしまっておいたのですが、さて久々に開けて中身を見てみようか、と思ったら
大事にとっておきすぎて、風化してうまく読み取れない(思い出せない)くらいに。

むむ。
これが老化ということか。


写真があれば思い出せることも (そうでないことも)。
自分でも印象深く、そして読んで下さっている(食いしん坊の)方にちょっと面白そうな写真を実家にてみつけたのでご紹介します。

砂漠のキノコです。

砂漠のキノコ

1978年2月13日 カフジのきのこと、弟(幼稚園生)と私


アラビアでは、ファーガ、だったかな?
丸っこくて地下に出来るので、トリュフと呼ばれるようですが、トリュフはおかずというよりは、薬味みたいなものですよね。
このきのこは、ジャガイモくらいの大きさになって(写真のようにもっと大きいものも!)、外側を綺麗に掃除して(結構砂を噛んでる)、1cmくらいにスライスし、バター炒めでモリモリ食べました。
(他にもレシピがあるようですが、うちではもっぱらバター炒め)

父が、職場でこういうものに詳しい現地人に探し方を聞いたのだそうです。
☆特定の季節(写真に2月13日とあるので、冬か早春でしょうか。
 2月がどんな天気か覚えていないのですが、もちろん日本よりは暖かいもののアラビアなりに季節があったような)
☆ある程度雨が降ったあと
☆ある植物が生えているところの傍に出る
という感じでした。

家族4人で車でぶーん、と砂漠に行って(何も目印がなくて不安だったのを覚えています)、何もなさそうな地面をトボトボ観察していくと、お目当ての植物!そして地面にモッコリひび割れが!

そんなに沢山とれるものではなかったし、年によっては雨の具合か、全然みつからなかったりもしました。
なのでみつかると大喜び。

美味しいので、私も弟も大好きでした。
白と茶色では、微妙に味が違うのです。
交互に食べながら、うーん、白が好きかなあ、うーん、やっぱ茶色かなあ、と決めかねていたのを覚えています。
白の方があっさり目で、茶色は風味が濃かったような気がします。

味はですね。
割と密な感じで、歯切れがよくて、きのこの香りがしっかり。
シイタケのようなツルツル感ではなく、シメジのような繊維感もなく、均質にぽっくりしていたような(記憶朧気)。
似ているものは、マッシュルームのカサの部分、もしくはマコモタケがちょっと近いかな??


思い出の、幻の味だよなーと思って、検索もしないまま、心の中にしまってあったのですが、最近買った中近東料理の本に、記載がありました。
この本。

砂漠のキノコ
砂漠のキノコ

中にきのこの写真がまるまる1ページも!!
お店でも売られているのか!
(シリアでの写真のようです)

この本の、写真の左にあるコラム部分をDeeplで翻訳してみました。


トリュフといえば中東というイメージはあまりありませんが、私たちは地元でチャマと呼ばれるシリアの砂漠トリュフを探し求める使命がありました。ユーフラテス川周辺のメソポタミア遺跡から出土した楔形文字には、王が喜ぶようにと、砂漠トリュフを籠に入れて宮殿に送る様子が描かれているのだそうです。また、中世のアラブ人はチャマを珍味とみなし、初期の料理書にはトリュフを使った調理法が記載されています。
もちろん、フランスやイタリアで特定の種類の木の下で豚が鼻を鳴らして根こそぎ食べてしまうヨーロッパのトリュフとは別物です。シリアのトリュフは砂漠で育ち、オアシスの町パルミラ周辺で最も多く採れます。砂漠でトリュフを探すのは大変な作業に思えるかもしれませんが、ベドウィンは何世紀にもわたってこの作業を続けてきました。近くに生えているある特定の小さな草や、水ぶくれのように砂をかき乱す小さな凹凸など、その兆候をよく知っているのです。

ダマスカスの殉教者広場の近くにある野菜の屋台で、黒いゴムの籠に山盛りになった奇妙なきのこを発見した。朝届いたばかりで、まだ砂漠の砂にまみれている。屋台のおじさんが、愛おしそうにかごから1つ取って、私たちに渡してくれました。栗と小さな丸い芋を掛け合わせたような形だ。桶の中の水に浸かっているのを、若い人が一つずつ丁寧に取り出して、硬いブラシでこすってきれいにしていました。
ヨーロッパ産のトリュフと同じように、砂漠のトリュフにも黒と白の2種類があることを、老人は教えてくれた。白トリュフと黒トリュフがあり、黒トリュフが優れているとされているが、白トリュフも黒トリュフもヨーロッパ産に比べると辛味が少なく、マイルドである。チャマは串に刺して炭火で焼くのが一般的な調理法だが、実は前夜のエリサールでも同じような料理を楽しんだ。トリュフはキノコのような繊細な風味を持ち、ヒシの実と缶詰のマッシュルームの中間のような、面白い食感だった。屋台のおじさんは、トリュフをスライスしてニンニクと一緒にバターで炒めたものがお気に入りだと言っていた。ヨーロッパ産のトリュフほどではないが、チャマは高価なため、なかなか食べられないのが残念だ。シーズンの始めには、白トリュフが2ポンド(1キロ)あたり約16ドル、黒トリュフが20ドルで、ほとんどのシリア人にとって家計の大きな部分を占めているのだ。

TRUFFLES ARE NOT THE SORT OF THING YOU NORMALLY ASSOCIATE WITH THE MIDDLE EAST, but we were on a mission to track down Syrian desert truffles, known locally as chama. This variety has been considered a great delicacy since the early days of civilisation, cuneiform tablets excavated from Mesopotamian sites around the Euphrates River depict baskets of desert truffles being sent to the palace for the pleasure of the king. Chama were also considered a delicacy by medieval Arabs, and early culinary manuals contain references for preparing and cooking with truffles. Of course, this is a different kind of truffle from the European ones that are rooted out by snuffling pigs underneath certain kinds of trees in France and Italy: Syrian truffles grow in the desert, and most prolifically around the oasis town of Palmyra. Hunting for truffles in the desert might seem a thankless task, but the Bedouins have been doing it for centuries. They know the signs: the particular little weed that grows nearby and the tiny bumps that disturb the sand like little blisters. At a vegetable stall near Martyrs' Square in Damascus we spotted then a strange kind of funghi piled high in black rubber baskets. They had been delivered that morning and were still encrusted with desert sand. The old stallholder lovingly plucked one from a basket and handed it to us to inspect. It looked like a cross between a chestnut and a small round potato. A pile of them were soaking in a tub of water and a young man was carefully lifting them out, one at time, and scrubbing them clean with a stiff brush. The old man showed us that as with European truffles, there are two varieties of desert truffles: black and white. Similarly, the black ones are considered superior, but both are milder and less pungent than their European cousins. The most popular way of cooking chama is to skewer them and grill them over charcoal, and in fact we had enjoyed a very similar dish at Elissar the previous night. The truffles had a delicate mushroomy flavor and an interesting texture, something between water chestnuts and tinned mushrooms. The stallholder told us that his favorite way of eating them was sliced and fried with garlic in carified butter. Sadly, this was not a treat he could often enjoy as, while not quite in the same league as European truffles, chama are expensive. At the start of the season one could pay around US$16 per 2 lbs (1 kilo) for white truffles and US$20 for the black variety-a heft slice of the housekeeping budget for most Syrians.

 

Youtubeにも、キノコ掘りの動画がありました。
これを見ると雰囲気がよく分かるので、是非、部分だけでもご覧ください。
サウジアラビアの方の動画です。アラビア人の年齢は見ただけではよくわかりませんが、若い男性グループがわちゃわちゃと、とっても楽しそうで、見ているだけで微笑ましいです。
イスラム圏らしく、男性のみでの採集・屋外調理遊びのようです。
(男性のみなんだけど、調理や食卓の準備、コーヒーのセッティングなどなど、みんな手慣れてます)
私の記憶ではこんなにぽこぽこ見つかるものではなく、雨の具合なのか全く出ない年もあるし、出る年でもうんと探してボウル一杯程度だった気がします。
こんなにとれるところ行ってみたい・・・。


日本同様、地面に座る文化ですが、キャンプのときも、すてきなじゅうたん!
そして折り畳み座椅子と脇息みたいなものも、便利そうです。


こちらの動画の最後に、生まれたて?の子ラクダが出てきます。
で、その次のシーンで、ボウルに入った泡立ったものを飲んでいる人が。
おそらくラクダを飼っているベドウィンに頼んでラクダのミルクを分けてもらったのではないかと。
あちらでは、飲むミルクとしてはラクダ乳が一番格上とされるようです。
(でもってラクダ乳は基本的にチーズやバターなどへの加工はしない。近年ではラクダミルクチョコもありますが)



Desert Trufflesで検索すると、沢山の記事や写真が出てきます。例えばこのあたり。(ブラウザの翻訳機能を使うと大体意味が分かります)
https://www.arabnews.com/node/1807331/saudi-arabia
https://www.atlasobscura.com/articles/what-are-desert-truffles



中近東方面に旅行する機会はまずなさそうですが、あちら出身の人にもし出会うことがあれば、「砂漠のトリュフって知ってる?」って聞いてみたい気がします。

コメント (2)
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