熟年の文化徒然雑記帳

徒然なるままに、クラシックや歌舞伎・文楽鑑賞、海外生活と旅、読書、生活随想、経済、経営、政治等々万の随想を書こうと思う。

ブッシュ大統領「一般教書演説」・・・石油問題の帰趨

2006年02月02日 | 政治・経済・社会
   ブッシュ大統領の一般教書演説のCNNの実況放送を見られなかったので、BBCのホーム・ページからビデオ番組を引き出して聞いた。
   始めて、全演説を聴いたのだが、約一時間の長丁場で、結構面白かったが、お祭り騒ぎと言うべきか、どうでも良いような所で、聴衆が立ち上がって長い間拍手を続けるのには、違和感を感じた。
   今回は、画面が小さいので分からなかったが、大統領の演説に賛成でない場合や反対派の反応は、全くしらけきっていているのを知っているので気にはならなかったが、知らない人は、アメリカ人の熱狂的な反応だけが強調されることになる。

   ところで、何時ものマスコミの報道だが、やはり、日本の報道は、バイアスがかかり過ぎている。
   まず、日経のタイトル「米、競争力維持に危機感」「中印台頭 80年代の対日と共通」等とぶち上げて、あたかもアメリカが、自国の経済競争力が落ちて中印の経済台頭に脅威を感じているような書き方だが、ブッシュの演説には、そんな危機意識は殆ど感じられない。

   演説の後半を殆ど割いて、アメリカ経済の競争力の維持(Keeping America competitive)に関する政策等に傾注して、the American Competitive Initiative(アメリカ経済競争主導構想と言うべきか)を高らかに歌い上げている。
   その中で、中国とインドに言及しているのは一箇所だけ。
   「米国経済は、抜群、しかし、悦に入っては居られない。ダイナミックな世界経済においては、中国やインドのような新しい競争相手が出てきている。
そして、これが、不安定要因を引き起こしていて、人々に恐怖感を一層与え安くしている。」と言及しているが、自国での保護貿易主義の台頭を警告しているのである。

   ブッシュ大統領が、米国経済の競争力強化構想で言及しているのは、経済成長の持続、自由貿易主義、財政の健全化、移民政策、ヘルスケア、エネルギー、基礎・先端技術開発、イノベーション強化政策、数学・科学教育の強化等々である。
   アメリカが競争相手だと思っているのは、現在は存在しないが、あるとすればそれはあくまで日本とヨーロッパで、中国やインドは、発展途上のヒンターランドとしか思っていないはずである。

   さて、問題点の一つは、「石油中毒」アメリカに、ブッシュ大統領が提言した石油削減・代替エネルギー源確保等のエネルギー政策である。
   英国のインディペンデント紙は、石油資源の保護や京都議定書に言及せずに、米国のエネルギー問題と世界的な地球温暖化に対する解決策を、一人当たりのエネルギー消費量の削減ではなく、代替エネルギーへの技術開発で賄おうと主張するなど、全く、グリーン政策から程遠いと批判している。
   豊かなアメリカ、それに、石油業界との癒着を絶えず噂され、大企業優遇政策を遂行するブッシュ政権には、化石燃料消費削減により環境破壊から地球を守るなどと言う選択肢はもとよりないと言いたげである。
   また、中東からの石油の輸入を75%削減と言っているが、現実には、ベネズエラ、カナダ、ナイジェリア等からの輸入が多くて、中東からの輸入はたったの5分の1であり、その75%など僅かで意味がないと言っている。

   面白いのは、サンパウロ特派員からのタイムズ紙の「自動車がサトウキビで走っているのにガソリンが何故必要なのか」と言う記事で、ブッシュ大統領が勉強したければブラジルを見たらと揶揄している。
   経済成長の端緒につきかけたブラジルが、石油危機に煽られて大変な経済危機に陥ったのはもう何十年も前のことであるが、苦境を克服する為に、1970年代から、アルコールで走る自動車を開発してきた。
私が20年近く前に行った時には、アルコール燃料のタクシーが走っていた。

   サトウキビから精製するエタノールが、ガソリンの代替品、そのアルコールであるが、いくらでも再生産可能であり、第一にクリーンで、スモッグは出さないし、エンジンに優しく、メインテナンスも要らない、それに、石油より安いときていて良いところばかりである。
   現在は、10台の内7台の車は、ガソリンとエタノールを両方使用できるflex-fuel カー、謂わばハイブリッド・カーの模様であり、車に内蔵のコンピューターが最適制御をしている。スタンドで売られているレギュラーは、ガソール(gasohol)で、エタノール25%までの混合物だと言う。
   最近、需要が逼迫してきてコストが上がってきているようだが、トウモロコシ、甜菜、木屑、草、オーガニック廃棄物等から生産する等、2013年には生産量を倍増する。
   どうせ、ハイブリッドカーで日本の自動車会社に先を越されたのであるから、エタノールの開発については、ブッシュ大統領もブラジルから技術導入したらどうであろうか。

   ところで、今日のニューヨークタイムズの電子版では、ブッシュ大統領の「石油中毒」演説に、内外から不協和音が起こっていると伝えている。
   サウジアラビアが、どうしてくれる!と噛み付いた。国内では、そんなこと不可能だとの反論、お祭り騒ぎの打ち上げ騒ぎが、波紋を広げていて面白い。

  
   
コメント
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