池尾和人慶大教授の、小泉民営化に関する面白い講演を聞いた。
経済改革か統治改革かと言う視点からの分析で、結論は、後者であって、経済改革としては不十分であると言う見解である。
ある意味では、極めて本質をついた理論展開であり、興味深い分析なので、これを考えてみたい。
論旨は、以下のとおり。
『内容如何に関わらず、日本において政策が決定されるのは、特定の政策決定フィルターを通過せねばならない。
戦後日本の政策決定過程は、「仕切られた多元主義」、すなわち、中心のない政・官・財の「鉄の三角形」とその中も細分化させた割拠性を持つ利害集団間の利害調整の上に成り立っていて、経済発展を促進する産業政策と各部門や地域間の再分配政策が主体であった。
このような利益分配型政治、「世界で最も成功した社会主義国」的な路線は、国家の基本的かつ戦略的な方針や政策決定には、全く相応しくない。
「仕切られた多元主義」が行き詰ったのは湾岸戦争の時だが、その後、橋本行革、中央省庁再編成を経て小泉内閣になり、内閣の執政機能の強化、中選挙区制と直結していた自民党の政策決定体制からの脱却、党指導部のイニシャチブ確立等、統治改革、すなわち、「日本政府の統治機構の改革」が進んだ。
これが、政策決定と権力構造の変化を促進した。
この梃子とされたのが道路公団の民営化、郵政の民営化と言った「民営化」であるが、経済政策の意義を喧伝するわりには内容が薄く、実際の関心は統治改革(経世会=平成研の権力基礎の切り崩し)に重点があり、小泉首相も内容には関心が薄く総て丸投げである。
経済改革としては、極めて評価が低いが、統治改革と言う意味では別問題で、内容のあまりない政策を掲げて権力闘争を戦うことを好む首相のパーフォーマンスが、小泉民営化の真の姿である。』
国鉄の民営化は、当時相当強かった社会党の支持基盤である国鉄を民営化することによって社会党を潰そうとした政策であることは、中曽根元首相も公言しており、周知の事実である。
今回、小泉首相は、この方法を、自民党最大の抵抗勢力である経世会を潰す為に、郵政と道路を使った訳で、これに、長期不況のどん底に会った日本経済の活性化と言う経済改革をオブラートにして国民の支持を得たと言うことであろうか。
池尾教授は、国鉄の民営化と小泉民営化は政治色が強いが、90年代のNTTや日本専売公社等の民営化は、経済的な要素が強かったと言う。
しかし、郵政も道路公団もその民営化には問題山積であり、官僚体制の残滓である特別会計改革は遅れに遅れている。
サプライサイド経済学者の竹中大臣は、まさか、小泉首相と同じ次元で、経済改革や民営化に対応しているとは思わないが、歯切れの良かった大臣以前の経済学関係の著作と大きく距離が開きすぎ始めたのが気になっている。
アメリカ型の資本主義、市場原理を優先した競争社会を強化した結果なのか、或いは解放型経済政策をとった所為なのか、貧富の差が拡大し始め経済社会がギクシャクし始めた。
経済は、悪ければ良くなり良ければ悪くなる。小泉内閣は、ジャブジャブの金融とゼロ金利政策以外殆ど経済政策はやってこなかったし、むしろ、経済成長の足を引っ張っていたきらいがある。
経済は、誰がやっても良くなるときは良くなるのだと言うことを、忘れないで欲しいと思う。
ところで、野党を弱体化させて、自民党の抵抗勢力も叩き潰したが、まだ、問題の官僚制度を含めた政府の改革は緒にさえついていない。
本当に、本丸を攻撃できるのであろうか。
経済改革か統治改革かと言う視点からの分析で、結論は、後者であって、経済改革としては不十分であると言う見解である。
ある意味では、極めて本質をついた理論展開であり、興味深い分析なので、これを考えてみたい。
論旨は、以下のとおり。
『内容如何に関わらず、日本において政策が決定されるのは、特定の政策決定フィルターを通過せねばならない。
戦後日本の政策決定過程は、「仕切られた多元主義」、すなわち、中心のない政・官・財の「鉄の三角形」とその中も細分化させた割拠性を持つ利害集団間の利害調整の上に成り立っていて、経済発展を促進する産業政策と各部門や地域間の再分配政策が主体であった。
このような利益分配型政治、「世界で最も成功した社会主義国」的な路線は、国家の基本的かつ戦略的な方針や政策決定には、全く相応しくない。
「仕切られた多元主義」が行き詰ったのは湾岸戦争の時だが、その後、橋本行革、中央省庁再編成を経て小泉内閣になり、内閣の執政機能の強化、中選挙区制と直結していた自民党の政策決定体制からの脱却、党指導部のイニシャチブ確立等、統治改革、すなわち、「日本政府の統治機構の改革」が進んだ。
これが、政策決定と権力構造の変化を促進した。
この梃子とされたのが道路公団の民営化、郵政の民営化と言った「民営化」であるが、経済政策の意義を喧伝するわりには内容が薄く、実際の関心は統治改革(経世会=平成研の権力基礎の切り崩し)に重点があり、小泉首相も内容には関心が薄く総て丸投げである。
経済改革としては、極めて評価が低いが、統治改革と言う意味では別問題で、内容のあまりない政策を掲げて権力闘争を戦うことを好む首相のパーフォーマンスが、小泉民営化の真の姿である。』
国鉄の民営化は、当時相当強かった社会党の支持基盤である国鉄を民営化することによって社会党を潰そうとした政策であることは、中曽根元首相も公言しており、周知の事実である。
今回、小泉首相は、この方法を、自民党最大の抵抗勢力である経世会を潰す為に、郵政と道路を使った訳で、これに、長期不況のどん底に会った日本経済の活性化と言う経済改革をオブラートにして国民の支持を得たと言うことであろうか。
池尾教授は、国鉄の民営化と小泉民営化は政治色が強いが、90年代のNTTや日本専売公社等の民営化は、経済的な要素が強かったと言う。
しかし、郵政も道路公団もその民営化には問題山積であり、官僚体制の残滓である特別会計改革は遅れに遅れている。
サプライサイド経済学者の竹中大臣は、まさか、小泉首相と同じ次元で、経済改革や民営化に対応しているとは思わないが、歯切れの良かった大臣以前の経済学関係の著作と大きく距離が開きすぎ始めたのが気になっている。
アメリカ型の資本主義、市場原理を優先した競争社会を強化した結果なのか、或いは解放型経済政策をとった所為なのか、貧富の差が拡大し始め経済社会がギクシャクし始めた。
経済は、悪ければ良くなり良ければ悪くなる。小泉内閣は、ジャブジャブの金融とゼロ金利政策以外殆ど経済政策はやってこなかったし、むしろ、経済成長の足を引っ張っていたきらいがある。
経済は、誰がやっても良くなるときは良くなるのだと言うことを、忘れないで欲しいと思う。
ところで、野党を弱体化させて、自民党の抵抗勢力も叩き潰したが、まだ、問題の官僚制度を含めた政府の改革は緒にさえついていない。
本当に、本丸を攻撃できるのであろうか。