熟年の文化徒然雑記帳

徒然なるままに、クラシックや歌舞伎・文楽鑑賞、海外生活と旅、読書、生活随想、経済、経営、政治等々万の随想を書こうと思う。

2019年に中国が世界一の経済大国に~The Economist

2011年01月06日 | 政治・経済・社会
   エコノミストの電子版を開いていて、The world's biggest economy と言う記事を見つけた。
   エコノミストのビジネス・リサーチ グループが、クリスマスの余興に、中国が、いつ、アメリカ経済を追い抜くのか推測を試みたと言うのだが、購買力平価でみれば、2012年だが、この数字には疑問があり、諸般の条件を勘案して、最も有り得る推計は、今後の10年の経済予測を行い、中国とアメリカの経済成長率を、夫々年率7.75%と2.5%、インフレ率を、4%と1.5%、そして、元の切り上げ率を3%とすると、2019年に、達成すると言うのである。(口絵のグラフ参照 同誌より借用)
   少し中国の経済成長率を下げて5%にすると、2022年になるのだが、しかし、これは、両国の総GDPが並ぶだけであって、アメリカの方が一人あたりの国民所得は中国の4倍であり、まだまだ、豊かだと言うことになる。

   日本が、昨年、中国に抜かれて、世界経済第2位の地位から滑り落ちて第3位になったと、やや、自嘲気味に報道されていたが、一人あたりの国民所得から見れば、まだ、日本の方が10倍も豊かだと言うことである。
   尤も、物価が中国の方が安いので、購買力平価でみると、この貧富の差は大分縮まるのだが、国総体としての経済力や市場の大きさが問題となる場合には、やはり、総GDPが、意味を持つので侮れない。

   私は、この推計には、やや、疑問を持っている。
   まず、アメリカ経済の推計値には、それ程、疑問を持っていないのだが、中国の推計値、特に、経済成長が、これまでのように一本調子で、今後10年間も、7.75%と言った高率で推移するとは思えない。
   確かに、中国共産党としては、何が何でも、経済成長率を8%以上に維持しない限り、膨大な労働人口を稼働し得ないと言う国是があり、この成長率は死守すべき目標ではあろうが、経済社会構造が、漸く踊り場に差し掛かった段階に至っているので、今後は、多くのコンストレインやボトルネックに遭遇せざるを得ないので、これまでのような高度成長は、殆ど達成不可能となろうと言う気がしている。
   経済的な問題以外にも、現在、宇宙船地球号が直面している地球規模の、資源やエネルギーの枯渇、公害と環境破壊、一人っ子政策による急速な少子高齢化などの問題は、中国では最も深刻な課題であり、先進国と最貧国が同居する複雑かつ深刻な格差問題、人権や民主主義制度の未熟、政治的腐敗と熾烈な民族問題等々、克服しなければならない問題があまりにも多くて、これらの要因が悪化して、いつ、中国の経済社会を危機的な状態に直面させるかも知れない。
   
   日本の場合も、1980年代には、Japan as No.1と世界中から注目されて、実際、アメリカ社会においても、真剣に、日本の快進撃とその脅威を話題にしたと言うくらいの勢いで、経済成長を続けて、いつ、アメリカ経済を凌駕するのか話題になったことがあるのだが、とどのつまりは、バブル崩壊で失速してしまって、現在の経済社会状態となっている。
   この現実を見ただけでも、キャッチアップ経済の成長力が、どこまで持続できるのか、最先端を行く経済社会を越えて、その上を行くのは至難の業である筈である。
   尤も、質的に、アメリカ経済の4分の1程度の域までには達する可能性はかなりあると思えるのだが、しかし、中国そのものが、瓦解や分裂することなしに、現在の国を持続できるかどうかも未知数であろう。
   したがって、いずれにしろ、現在の人口大国を維持できて、尚且つ、かなりの経済成長を持続出来たとしても、アメリカ経済を追い抜いて世界一の経済大国になるには、もっともっと、時間がかかるであろうと思っている。
コメント
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