熟年の文化徒然雑記帳

徒然なるままに、クラシックや歌舞伎・文楽鑑賞、海外生活と旅、読書、生活随想、経済、経営、政治等々万の随想を書こうと思う。

インフレーションと中東の反政府運動

2011年01月27日 | 政治・経済・社会
   IHSグローバルインサイトのエコノミスト・ナリマン・ベールヴィッシュによると、ダボスの3大懸案事項は、中国の不動産バブル、ユーロ圏の債務危機、米国の失業率だと言うことらしい。
   最も深刻なのは、中国のバブルの問題だと言う。確かに、大前研一氏のコラムに、年収200万円の中国人が、1億円の住宅を買っていると書いてあったと思うのだが、どう言う根拠でファイナンスが可能なのか、サブプライム・ローンの比ではない。
   
   一方、WSJ紙によると、ダボス会議では、インフレも議題になると言う。
   食品、エネルギーその他商品相場の上昇を受けた世界の貧困層の可処分所得減少は、北アフリカで抗議活動を引き起こし、世界の政策担当者に難しい問題を投げかけているからである。
   失業問題などに抗議する青年の焼身自殺をきっかけに、ベンアリ前大統領の強権支配を覆す市民デモが起きたチュニジアに続こうと、中東や北アフリカで市民による反政府デモが相次いでおり、今日は、エジプトでの激しい暴動がNHK海外メディアのTVで放映されていた。
   圧政に対する国民の民主化運動とインフレによる貧困層市民生活への圧迫が結合して、平穏を保っていたイスラム圏の国々を、革命の嵐の中に巻き込んでおり、中東、ひいては、貧しいアフリカやアジア、中南米へも飛び火する可能性もある大変な勢いである。
   政権へのネガティブ情報が、ICT革命によるインターネットによって、FacebookやTwitter、或いは、Youtubeを通じて世界中を瞬時に駆け巡り、膨大な群衆を巻き込んだデモと抗議集会を勃発させて革命騒ぎを起こしているのだが、ベルリンの壁の崩壊が、ラジオや無線、テレビなどがビークルとなって引き起こされたことを考えてみると、正に、今昔の感である。
   某隣国へは、亡命者たちが作成したDVDが持ち込まれて流布していると言うのだが、情報をストップするなど至難の業であろう。

   この今回のインフレーションは、地球環境の激変による気候悪化による農産物の不作などが引き金となって、更に、アメリカなどの先進国の金融緩和によって膨張した資金や投機資金が加わって、食料を筆頭にコモディティ商品やエネルギー価格を、再び暴騰させて引き起こされているのだが、中東や北アフリカ市民よりももっと深刻な打撃を受けるのは、アフリカやアジアなどの最貧国の国民達であろう。
   アメリカも、EUも、日本も、経済は火の車であるから真っ当に援助さえ出来ないので、正に、中国の出番であり、悪名高きワシントン・コンセンサスに代わって、チャイナ・コンセンサスが、新世界で、グローバル・スタンダードとなるのかも知れない。

   そして、更に深刻なのは、イギリスなどでは、インフレでありながら、GDP成長率がマイナスになると言う異常な状態で、スタグフレーションへの突入が大いに懸念されていることである。
   スタグフレーションが、他のヨーロッパやアメリカなどを巻き込むと、世界経済を更なる苦境に立たせることになる。
   デフレに苦しんでいる日本などは、インフレ歓迎であろうが、まだまだ安い財やサービスが、中国やアジアの新興国などから入って来てユニクロ現象が継続するであろうし、日本の工業製品はまだまだどんどん安くなるのであるから、インフレなど望み薄で、スタグネーションだけが残って、経済復興の夢が遠のくばかりである。

   とうとう、S&Pが、日本の国債の格付けをAA⁻に引き下げてしまった。
   地獄への一里塚を、また、一つ越えてしまったのである。
   ダボスで議題になると言うインフレーションが、日本では、デフレの解決の目途さえ付かないと言うこの現実をどう見るのか、末梢的でお粗末限りない争点ばかりにうつつを抜かして、政争ばかりに明け暮れて、窮地に立っている日本国を救うために、予算一つさえ協力して通せない政治家の体たらくは情けない限りである。
   小沢問題で身動きの取れない民主党が無能だと言うのなら、55年体制以降政治の実権を握って日本国をここまで堕落させた責任政党である自民党が、何故、悔悛して、現政府をサポートして、窮地に立つ日本と国民生活を良くしようと思わないのであろうか。
   私は、インターネットでオバマ大統領の年頭教書スピーチをテキストを追いながら聞いていたが、あの格調の高さと、決然と前方を直視して自信に満ちた使命感に燃えて滔々と未来を語る姿と、殆ど原稿から目を離さない(いや、読まなければ演説できない)日本の政治家とのあまりにも大きな落差は、どこから来るのであろうか、と考えざるを得なかった。

   

コメント
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