熟年の文化徒然雑記帳

徒然なるままに、クラシックや歌舞伎・文楽鑑賞、海外生活と旅、読書、生活随想、経済、経営、政治等々万の随想を書こうと思う。

新しい年の経済の行方はどうなるのか

2011年01月03日 | 政治・経済・社会
   アメリカでは、経済回復と言われても、その実感はないし、経済成長したと言われても、多くのアメリカ人にとっては、その実生活が、少しも良くなってはいない。依然、失業率は高いし、住宅価格は下落一方で、国家財政は、更なるレイオフ、サービスの低下、増税と問題山積である。
   そんな書き出しで、ニューヨークタイムズの元旦号の論説 The Economy in 2011が始まり、袋小路に嵌り込んだようなアメリカ経済の実態を浮き彫りにしている。
   2011年の疑問は、成長が、大いなる繁栄に変わり得るのかどうかと言うことだと言うのである。

   また、クルーグマンもコラムで、たとえ、経済的な知恵を働かせて努力をしたとしても、依然、経済は、非常に深い穴の底に近づきつつあるにも拘わらず、経済指標の良さを好感してそれに逆らおうとしていると危機意識を表明したDeep Hole Economicsを書いている。
   先日、スティグリッツの公共投資拡大で景気浮揚をと言うニューズウイークの記事を取り上げたが、結局、アメリカ経済の回復力の弱いのは、アメリカ政府の中途半端な経済財政政策にあると言うことなのであろうか。

   このアメリカのどっちつかずの経済状況は、そっくり、日本にも当て嵌まることで、この失われた20年に経済成長があったと言われても、確かに、生活自身はそれなりに維持できてはいるが、少しも良くなっている実感はないし、ある意味では、地方の衰退や格差の拡大、そして福地厚生や性格不安など、むしろ、悪くなって居ると言う感じの方が強い。
   ITと金融のバブルが崩壊して、知識情報等付加価値の高い知的生産やサービスで富を築いて来た先進国経済が疲弊し後退してしまった今日、成長力の旺盛な新興国に経済的な比重が移りつつあり、グローバリゼーションの拡大で、主客転倒と言うか、日本の影が、益々薄くなって行く。
   そして、今や、企業の成長の最大の関心事は、新興国や或いは発展途上国の台頭しつつあるボリュームゾーンや、更に、BOPをターゲットとした拡大新戦略だと言うのであるから、日本市場には殆ど期待しなくなってしまったと言うことであろう。

   しかし、日本での生産物を輸出するのならいざ知らず、現今のような状態で事業の海外展開を進めるだけなら、資本や労働の海外移転であって、むしろ、経済的には多くの意味で脱漏であり、空洞化を促進するだけで、それ程、日本経済を利するとは思えない。
   確かに、斎藤精一郎教授の言うように、海外展開で得た利益を日本に持ち帰って、R&Dや製品開発、デザイン、グローバル経営管理など知的高付加価値事業に特化すべきだと言う経営戦略には傾聴すべきものがあるのだが、果たして、モノ作りを得意とする日本企業に、そのようなプロダクション・シェアリングが器用に出来るのであろうか。

   経済力の大きな先進国が、経済を再生するのなら、アメリカのITや、イギリスの金融などのように、ドラスティックなイノベーションを起こす以外に、殆ど方法はない。
   結局、私企業のイノベーションを喚起して、一大産業革命を興すことしかブレイクスルーはないと言うことである。
   しからば、日本にとっては、どのようなイノベーションがあるのか。
   問題は極めて複雑で困難だが、資源やエネルギー、環境、少子高齢化、健康医療福利厚生、と言った現実に見えている人類の緊急の課題を、もっとも最先端で経験している日本が、トータルシステムとして社会イノベーションを喚起することではないかと思っている。
   日本自身の経済社会問題を解決して、その上に、グローバルベースで、事業展開できるのであるから、一石二鳥ではなかろうか。
   新春の一寸した夢でもある。
コメント
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