熟年の文化徒然雑記帳

徒然なるままに、クラシックや歌舞伎・文楽鑑賞、海外生活と旅、読書、生活随想、経済、経営、政治等々万の随想を書こうと思う。

大型書店のビジネス・ブック推薦書コーナー

2011年01月13日 | 書評(ブックレビュー)・読書
   私は、神保町に良く出かけるので、三省堂本店には必ず立ち寄ることにして3階の経済経営法律関係の本を見に行くのだが、東京駅の近くに行くと、丸善と八重洲ブックセンターにも足を延ばして、どのような本が新しく出ているのか、やはり、ビジネス関係や経済の本のコーナーを訪れる。
   書店によってディスプレイが違っていて、それなりに工夫が凝らされていて興味深いのだが、私自身は、古い本には興味がないので、新刊書を探して買うことが多い。
   竹中平蔵教授に「経済古典は役に立つ」と言う新しい本があり、まだ、手に取っていないので分からないが、恐らく、アダムスミスやマルクス、ケインズなどの古典の話であろうから、こんな話になると別だが、経営学などの本になると、相当、名声の高い古典でも、私には、それ程役に立つとは思えない。
   例えば、組織論にしても、リーダーシップ論にしても、時代の流れによって大きく変わっているし、特に、フィリップ・コトラーのマーケティング論の展開一つをとっても、想像を絶するほど激しく変わってしまっている。
   しかし、マネジメントの歴史的変遷については興味があるので、10年前の本だが、スチュアート・クレイナーの「マネジメントの世紀 1901-2000」を引っ張り出して読み始めている。

   さて、先日、八重洲ブックセンターに出かけたら、二階のビジネス書コーナーで、ブックフェアと銘打って、「ドラッカーと明治の三賢人」と「トレンド オブ ビジネス」と言うスペースが設けられていた。
   前者には、「倒幕後の明治混乱期をリードし、経営の神様ドラッカーに多大な影響を与えた3人の日本人。彼らの生き方・考え方に学ぶ事が、今の日本には必要だと思います。」と説明書きがあり、棚の上部にはドラッカーの本、下段と平積みには、渋沢栄一、岩崎弥太郎、福沢諭吉関連の本がずらりと並べられている。
   渋沢や福沢には著作があるのだが、岩崎にはないので伝記や小説だが、いずれにしろ、3人の偉人に関連する本が、取り混ぜて展示されている。
   私自身、結構、ドラッカーの本は読んだつもりだが、これらの3人が、ドラッカーに多大な影響を与えたなどと言う記述を見たような記憶は全くない。39編もの膨大な著作だから、どこかに引用があったのであろうか。
   このコーナーのディスプレイの場合、ドラッカーのどの著作を選択して展示するのか、かなり、難しいと思うのだが、とにかく、フェアが12月1日から1月8日までだから、年末年始に読んで貰うと言う意図なのであろう。
   多少、襟を正して、心して取り組まないとダメで、お屠蘇気分では御し得ないと思う。

   後者は、ビジネスパーソン御用達と言う名目で、2010年1月~11月までに2階売り場で集計した実績を基にして、売り場担当者が選んでディスプレイしたと言うことのようである。このフェア期間は、12月18日より1月31日。
   「もしドラ」を筆頭にドラッカー、サンデル、スティーブ・ジョブ、ティナ・シーリグ、大前研一、池上彰などの著作、それに、フリー、ビジョナリー・カンパニー3等々、所謂、ビジネス関連のベストセラーに、IFRSなどの実務関連書籍などが並んでいる。
   パンフレットには、売り場担当者のコメントが書かれているのだが、果たして、実際に読んだのであろうか。
   意識してかどうかは分からないが、いつものベストセラー発表とは違って、一応、くだけた感じのビジネス関連書は除いて、まじめな本を選択しているようである。
   尤も、このベストセラー情報を基にして選んだ本だが、他の本より、かなり、先を行くと言うか新しいトレンドを描いた本が多いけれど、トレンド オブ ビジネスと言えるのかどうかは疑問ではある。

   余談だが、このフェアで紹介されている本では、ドラッカーの著作以外で、私が読んだり手を付けた本は、マイケル・サンデルの”これからの「正義」の話をしよう」と「フリー」くらいである。
   私がおかしいのか、トレンドからずれているのかは分からないが、本格的な経営学の勉強をしようと思えば、これでは殆ど参考程度で、もう少し、高度な専門書を読まなければならない筈である。

   専門的な話になるので、今回は避けるが、このフェアのタイトルの「トレンド オブ ビジネス」の意味をどう捉えるかと言うことにもよるが、このフェアで並べられている本は、殆ど、単なるベストセラーと言う読者の好みの選択であって、決して、ビジネスのトレンドを示しているものではないと言うことだけは確かである。
   日本の産業や企業の国際競争力が落ちたとか、日本企業の経営戦略がグローバリゼーションなど新しい潮流に乗れないとか、或いは、失われた20年のデフレ不況から脱却出来ないとか、いろいろ多くの困難な問題に直面しているにも拘わらず、一向にブレイクスルー出来ないのは、書物から得られる世界観や思想哲学などを含めて広い意味でのビジネス関連本でインスパイア―されることが少ないからではないかと言う気がしているのである。
   
コメント (1)
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