熟年の文化徒然雑記帳

徒然なるままに、クラシックや歌舞伎・文楽鑑賞、海外生活と旅、読書、生活随想、経済、経営、政治等々万の随想を書こうと思う。

好き好き開国論・・・堺屋太一

2011年01月26日 | 政治・経済・社会
   堺屋太一氏が、上海万博の日本産業館記念シンポジウム「ポスト万博」のクロージングレマークスで、短いスピーチを行い、「好き好き開国論」を説いた。
   外国人嫌いの日本人が、成長が止まってしまったにも拘らず、まだ、知価社会に脱皮できなくて逡巡しているのだが、未来に向かって明るく雄々しく驀進中の中国の活力を説きながら、日本人も、自信を持って、新しい技術や美意識を追及して活路を開くために、総ての外国を恐れず外国人を好きになって、好き好き開国を目指すべきであると言うのである。
   
   幕末時代の日本人は、外国人は恐ろしいと考えていたので、外国人を鼻の大きな天狗や悪魔のように描いた絵しか残っていないのだが、あの当時のような「嫌々開国」ではなく、日本国をオープンにして外国人を迎え入れることである。
   外国人が沢山入れば、治安が悪くなるとか、外資が入れば、経済が危険に晒されるとかと言う批判があるが、そんな極端なことは起こり得ず、むしろ、日本が豊かになる。

   日本人は、今尚、物財を豊かに生み出すべく規格大量生産を誇った近代工業社会から脱しきれずに、例えば、農業政策など、いまだに、エネルギー量をターゲットにしている。
   量や価格ではアジアに負け、高度知価製品位には欧米に負け、アジアも欧米も両方とも怖いと言うのが今の日本の実情だが、知価社会となった今、アジアの中でも最も最先端を行く日本は、規模や量で争う他のアジア諸国と同じようなことをしていてはダメで、今こそ、新しい技術と美意識を磨きぬいて、綺麗、可愛い、気持ち良い、と3拍子揃った付加価値の高い値打ちのある財やサービスに特化して、活路を切り開くべきであると言うのである。
   そのためには、外国人を受け入れて、彼らの新しいアイデアや知的刺激や英知にインスパイアーされて、日本人の発想なり経済社会に活を入れて活性化すべきだと言うのである。

   飛鳥天平時代には、シルクロードが奈良まで達していて、碧眼のペルシャ人など多くの外人が日本を訪れて居たようだし、織豊時代にもポルトガル人が来訪するなど国際化の兆しが見えていたのだが、やはり、徳川300年の鎖国時代が災いしたのか、或いは、単一人種単一民族の日本の特殊性がそうさせるのか分からないが、おかしな舶来趣味はあるけれど、日本人は、相対的に、外人嫌い、外資嫌いで、外国に対する拒否反応が強くて、今や、若者までもが、外国留学や海外赴任を嫌がる傾向にあると言う。
   
   私自身は、極めて日本人意識が強くて、国粋的ではないが日本に対する誇りと自慢意識は人後に落ちないと思っており、ズットそんな生き方を貫いてきたが、海外生活が結構長かったので、外国人と交わって、その中で生活することには、全く違和感も苦痛意識さえもない。
   特に、人種や民族の坩堝と言われるくらい雑多な人々の混合したアメリカやブラジルに住んだり、オランダとイギリスに長かったので、今でも、鞄一つ持って、世界のどこを歩いていても(と言っても45か国くらいしか知らないが)、苦痛なく暮らして行けると思っている。
   したがって、次元が違う話であり、同じ次元では語れないかも知れないが、堺屋さんが言うように、好き好き開国をして、外国人や外資に門戸を開放して受け入れても、然るべきルールなり、システムさえしっかりしておれば、殆ど、心配する必要はないと思う。

   面白いのは、「国家債務危機」の中で、ジャック・アタリが、「人口が減少している国が、移民労働力を受け入れることは、公的債務の返済にとってはプラスになる。なぜならば、移民を受け入れる国は、彼らが成長するまでの費用や教育費など初期コストを負担せずに、債務返済だけを追わせることが出来るからである。」と言っていることである。
   日本の場合には、現在失業者が多くて、現実味が薄くなっているが、今後、少子高齢化で労働人口が、どんどん減って行くし、現実にも、介護医療など労働不足であるなど、摩擦失業状態でもあり、労働移民の積極的導入を大いに考えるべきである。
   特に、教育訓練コストの高い高度な学術芸術に秀でた優秀な人材を、アメリカのように、グローバルベースで導入できればベターである。
   私は、学歴の高い優秀なフィリピンやインドネシアから来日して、日本語の試験がパスしないので資格が取れないと言って看護師を帰国させると言う馬鹿なことをしているが、国際語の英語の試験を受けさせてパスすれば十分だと思っている。(日本人医師や看護師こそ、国際標準の英語で試験をすべきである。)

   ところで、イギリスは、失業者が慢性的に多いので、在住権の資格取得は難しいが、ウインブルドン現象と揶揄されるほど、外資導入には寛容で、金融のシティなど、英国資本の金融機関などは消えてしまって極めて少なく、殆ど外資の支配下になり、他の製造業やサービス業でも、似たり寄ったりである。
   ユニオンジャックの旗の元に世界を支配したはずのイギリスの多くの企業が、外資の軍門に下るなど、誇り高いイギリス人が甘受できる筈がないと思いきや、サッチャーが情け容赦なく叩き売っても、自国に事業主体があり、イギリス人を雇用して税金を払っていさえすれば、外国企業であろうと何であろうと、彼らは、一切気にしないのである。
   私には、それ程、寛容にはなれないので、外資支配には多少抵抗があるのだが、今の状態ではダメで、もっともっと積極的に外資導入を図るべきだと思っている。
   堺屋さんの提言、クリエイティブ時代に対応した付加価値の高い産業構造への飛躍的脱皮は勿論、好き好き開国には大いに賛成であり、今日、オバマ大統領が、世界的な競争を目指してスプートニク・モーメントを呼びかけ所得税減税を発表するなど積極的姿勢を示し始めたので、日本も、これ以上世界の潮流に逆らって惰眠を貪っている訳には行かないであろうと思う。
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