熟年の文化徒然雑記帳

徒然なるままに、クラシックや歌舞伎・文楽鑑賞、海外生活と旅、読書、生活随想、経済、経営、政治等々万の随想を書こうと思う。

国立演芸場・・・「第400回記念 国立名人会」

2016年09月25日 | 落語・講談等演芸
   今日の国立演芸場は、「第400回記念 国立名人会」
   プログラムは、次の通り。

   落語「鈴ヶ森」 春風亭 一之輔
   漫才 青空球児・好児            
   講談 赤穂義士伝より
   「二度目の清書」 一龍斎 貞水
   ―仲入り―
   落語「三十石」  柳亭 市馬
   奇術    アサダ二世
   落語「品川心中」 三遊亭 金馬

   毎月実施される国立名人会は、出演者次第で出かけたり出かけなかったりなのだが、今回は、聴きたい噺家に加えて、 一龍斎貞水の講談が聴けるので、文句なく出かけた。


   トリの金馬は「品川心中」で、遊女の噺なので、まくらには、昨日の歌丸と同じようなことを語っていた。
   キツネやタヌキは尻尾で人を化かすが、吉原の遊女は、口で騙すので、尾はいらない、だから、おいらん(花魁)と言うのだと笑わせていたが、それでは、島原の傾城は、どうして、けいせいと言うのか。
   金馬等は、赤線の受益者であったようで、その話をしていたが、歌丸の語った紺屋高尾は、初回10両と随分高いようだが、宿場町の品川などの遊女は、最高でも吉原の6分の1とかで、客は、安い方に流れるのだと語っていた。

   今回の噺は、この品川の女郎屋白木屋の話で、板頭(筆頭女郎)を張ってきたお染だが、寄る年波には勝てず、人気が落ちて稼ぎが少なくなり、目前に迫る紋日に金を用立ててくれるパトロンもなく、勝気な女なので、恥をかくくらいなら死んでしまおうと決心して、心中の相棒を探す。と言う話である。
   なじみの客から、貸本屋の金蔵を選んで口説いて、心中を承知させる。
   いざ心中となったのだが、カミソリで首を斬るのを嫌がるので、外の桟橋から身投げをすることにして、まず、嫌がる金蔵をお染が突き落とすのだが、自分も飛び込もうとした寸前、店の若い衆が「金が出来た」と行ってきたので、お染は死ぬのを止める。

   ここで、金馬は話を終えたが、これでも、正味40分。
   この後、海が浅瀬なので、金蔵は助かり、異様な格好で親方のところへ駆け込み、事情を説明し、お染に仕返しをする話が、「下」で展開される。
   お染を金蔵の通夜に来させて、蒲団に金蔵の位牌が入っていて、親方は金蔵が化けて出たと、祟るので髪を剃れと言ってお染の髪を剃ってしまう。そこに金蔵が現れたので、悔しがるお染に「お前が客を釣るから、魚篭に(比丘尼)されたんだ」。とオチになると言う話である。

   
   金馬は、最近、めっきり女郎ものを語る噺家が少なくなったと言っていたが、時代が違うのだから、仕方がない。
   これまでに、一度だけ、三笑亭夢太朗の「品川心中」を聴いている。

   市場は、「三十石」を語った。
   旅は憂いもの辛いものと語り出したが、リニアモーターなどになると、旅の風情がなくなって、話にならない。
   今からロンドンへ行って、夕飯はパリで食べるから・・・と言った調子で、話し難い。と、まくらは、早々に切り上げて、「三十石」を、名調子の船頭の舟歌をたっぷりと聞かせて、三十分、みっちりと語った。
   この噺は、元々上方落語で、伊勢参りの帰途の江戸からの客喜六と清八以外の登場人物は、皆関西人なのだが、市場は落語協会の会長で、江戸落語のトップにも拘らず、大阪弁や京都弁が上手いのは、やはり、九州出身である所為であろう。

   さて、明治の初め頃まで、連絡船とも言うべきこの「三十石」船が、京都の伏見と大阪八軒家を行き来していたのだが、この話は、伏見の船宿から船に乗り込んで大坂へ向かう二人の船旅の模様を描いた興味深い話である。
   まず、乗船名簿を書く番頭に、客が弁慶や牛若丸など口から出まかせの名前と住所を言った困らせる話から、船が出るのに十分時間があるのに宿と船頭が結託して船が出ると叫ばせて、飯を食べる量を抑える魂胆など船宿模様から語り始めて、京乙女の土産売りとの頓珍漢な受け答え、混雑した船に若い女が乗ると思い込んだ男の助べえ妄想、中書島の橋のたもとから船頭に大阪での買い物を頼む女等々、旅の道中に出会ういろいろなものに触れての軽妙な会話、船頭の舟歌など、NHKのドキュメンタリードラマを見ているような面白さ。
   身を大きく乗り出して威勢よく力いっぱい櫓を漕ぎながら、下座音楽の掛け声に乗って、市場が、朗々と素晴らしい船頭の舟歌をたっぷり聞かせてくれると言う大サービス。

   春風亭一之輔は、頓馬な泥棒の話「鈴ヶ森」を語った。
   四年前、16人抜きだとか大変な話題で真打になった春風亭一之輔を、真打昇進披露公演で、「竃幽霊」を聴いて、その後、「粗忽の釘」を聴いていて、これで、3度目だが、リズム感と言い、スピード感と言い、語り口の巧みさは秀逸で。実に上手い。
   若くて溌剌とした舞台で、昨日、昇太も言っていたが楽屋は加齢臭でむんむん、・・・一之輔も、介護施設のよう、と、噺家の高齢化が進んでいるのであろう。
   金馬が、芸歴76年、年齢88歳、しかし、歳を取るのは、明日何が起こるか分からないので、楽しいと言っていた。

  人間国宝の一龍斎貞水の講談は、「赤穂義士伝より 二度目の清書」。
  討ち入りの後、大石の命を受けて生き長らえた赤穂義士の一人、足軽の寺坂吉右衛門が、但馬国豊岡藩京極家の元家老石束毎公の元に返されていた大石の妻りくを訪ねて、討入の有様を物語ると言う話。
  一龍斎貞水は、6月に素晴らしい「四谷怪談」を聴いたばかりで、今回も、感激しきり。
  講談は、この演芸場や国立能楽堂で、最近聞き始めたところなのだが、文楽や落語、浪曲などとともに、日本の古典芸能の語りや読み芸能の奥深さに、少しずつ嵌まり込み始めている。
   一龍斎貞水の講談は、幸い、YouTubeで楽しめるので、もう一度、復習しようと思っている。
   
   
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