熟年の文化徒然雑記帳

徒然なるままに、クラシックや歌舞伎・文楽鑑賞、海外生活と旅、読書、生活随想、経済、経営、政治等々万の随想を書こうと思う。

大学の試練と挑戦(3)・・・東大・朝日連続シンポジウム

2007年11月21日 | 政治・経済・社会
   アメリカにおける海外留学生の動向について語ったのは、UCSBのヤン学長であった。
   東アジアからの留学生は激増しているが、それは主に中国からで、逆に、日本からの留学生は漸減しており、大半は大学レベル、それも語学留学のようで、大学院レベルは少ないと言うことであった。
   日本の学問水準が高いので留学の必要はないと言うことであろうとヤン学長が言ったので、司会の舟橋洋一朝日新聞主筆が、まさかと言うニュアンスで真意を聞いたら、統計上の事実を述べただけだと言うことであった。
   ケンブリッジのリチャード学長も、日本人留学生は少ないし、世界の趨勢に逆行しているとコメントしていた。
   すかさず、丹羽会長が、日本では、留学生、例えば、アメリカ帰りのMBAを、その価値を認めてそれなりの待遇で受け入れる体制になっていないからだと述べた。海外留学のインセンティブが欠けていると言う事である。
   私の場合には、MBAは、ヨーロッパでの仕事では随分役に立ったと思っている。

   日本の現状では、丹羽会長が指摘する点は真実であるが、何れにしろ、大学や企業で職についてから派遣留学される場合、帰ってからそれなりの待遇で遇されるのならそれほど深刻な問題はないが、自費で目的を持って大学院に入学して勉強するには、MBAで2000万円と言う費用の問題をクリア出来ても、相当の覚悟をして不利を承知で留学しなければならないことは事実である。
   私たちの若い頃には、日本自身が伸び盛りであり、官庁も企業も積極的に海外留学生を派遣して勉強させていたが、バブル崩壊後は、企業からの派遣留学が激減してしまったので、このことが日本からの大学院ベースの海外留学生が激減した一因である。
   1970年代だが、ウォートン・スクールの日本人留学生は、毎年10数人づつだったが、それでも、アジアからは勿論、海外組では大集団であった。今では、中国は勿論、韓国等からの留学生が何倍も多く、中国などは政府が大量に送り込んでいるのだと言う。

   日本での外国人留学生の多くは中国からだと言うことだが、欧米でも中国人留学生の数は突出していると言うことである。
   このブログでも、何度か海外留学のことに触れて持論を展開しているが、海外、特に欧米での最高水準の学問や研究分野において、若者達の、トップクラスの欧米の大学院生や学者達と渡り合って激しく切磋琢磨する高等教育での経験が、彼らが活躍するその国の将来にとって如何に貴重かと言うことは歴史の示す所で、2~30年先に、大きく国際競争力と国際外交に響いてくる。
   この意味からも、海外留学外交と知の吸収に狂奔する中国のみならず、韓国と比べても、日本の将来のグローバリゼーションでの位置づけの陰が薄くなることは分かるであろう。

   先日、東大の英語教育について触れたが、日本でいくら英語教育に力を入れても、NOVAが示しているように手段としての英語と言う意識にしか過ぎず、外国に対する理解や異文化交流は、その外国にどっぷりつかって丸ごと経験しない限りつけ刃に終わってしまうと言うことである。
   尤も、IT革命のお陰で、世界中の知識情報は居ながらにしてアクセス可能で、知的交流には不便はないと言う見解もあるが、異文化・文明との遭遇は、やはり、その地の水や空気、暑さ寒さ、歴史や文化などをじかに感じない限り不可能であることも厳粛なる事実である。

   イギリスでも、かって、貴族達は子供たちを、グランド・ツアーとして、ヨーロッパ大陸に送り出して進んだ異文化に触れて勉強させた。
   可愛い子には旅をさせろという古い言葉が日本にはあるが、グローバリゼーション、グローバリゼーションと言うならば、一番適切な対応は、若者達を海外において遊学させることである。
   サムスンが、「地域専門家」教育制度で、何の制限も条件も付けずに社員を毎年何千人単位で1年間海外に送り出している。開発途上国など世界中で、サムスン製品の市場占拠率が抜群に高いということが分かるが、それよりも、会社全体の真のグローバル化への発展が会社の財産となろう。

   イノベーションの源泉である発明や発見、創造性等は、異なった分野の知識の遭遇と組み合わせから生まれると茂木健一郎先生は言っているが、手っ取り早い方法は、やはり、異文化との遭遇によるカルチュア・ショックが一番有効だと思っている。
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