熟年の文化徒然雑記帳

徒然なるままに、クラシックや歌舞伎・文楽鑑賞、海外生活と旅、読書、生活随想、経済、経営、政治等々万の随想を書こうと思う。

異邦人たちのパリ・・・国立新美術館

2007年02月21日 | 展覧会・展示会
   良い天気だったので陽気に誘われて六本木の新名所国立新美術館に、「異邦人たちのパリ」展を見に出かけた。
   都知事選挙に出馬を表明した黒川記章氏の設計で、正面ガラス張りのファサードの曲線が美しく、中に入ると、全階吹き抜けの広々としたオープンなロビー空間が開放的で素晴らしい。
   黒川氏とは、ロンドンの同氏の作品展で会ったことがあるが、その時は勿論奥さんの若尾文子さんとばかり話をしていた。

   開幕を飾ったのは、パリのポンピドーセンターからの作品で構成した「異邦人たちのパリ 1900-2005」で、近現在の絵画と彫刻と写真が展示されている。
   英国人リチャード・ロジャース設計のの近代的な巨大な博物館であるポンピドーセンターには一度出かけて半日過ごして絵画などを鑑賞したのだが、兎に角膨大な量の美術品が展示されていて、それに、近現在の作品ばかりで、あまり趣味でもなかったので、殆ど記憶は残っていない。
   右翼のイスラム人排斥で揺れるフランスだが、本来はオープンな国際都市パリに世界各地から多くの異邦人達が集まって来て豊かなフランス文化を育んで来たのであり、その成果が今回の展覧会である。

   会場に入ると真っ先に目に付くのは、ジゼル・フロイントの8枚の文人達の肖像写真で、1938年の作品だが退色はしているが綺麗なカラー写真で、アンドレ・ジード、アンドレ・マルロー、ジェイムス・ジョイス、ジャン=ポール・サルトルなどの表情が実に良い。
   反対側に、マン・レイの女性写真で、まず最初は「黒と白」で妻キキが黒いアフリカの仮面を持った写真で、隣は小さなヌード作品だが、実にエロチックで、ゾクッとするほど美しくて、凄い写真家であった事が分かる。
   他に写真はブラッソンのパリ風景が素晴らしい。
   ウィリー・マイワルドのクリスチャン・ディオールやヴォーグの為に撮った女性達の写真が素晴らしく、パリの街角で歴史的な建物や自動車などを背景に配して撮った写真が中々洒落ていて面白い。
   

   絵画で一番最初に出てくるのは、藤田嗣治の「カフェにて」ほか4点で、自画像を描いた「画家の肖像」が面白い。
   おかっぱ頭で丸い大きなめがねをかけてイヤリングをしたちょび髭の惚けた調子の男が寅猫を抱いて喉をつま先で撫でている。恍惚境の猫の表情が秀逸である。

   アメデオ・モディリアーニが2点、黒いドレスを着て手を組んで横座りの若い乙女を描いた「テディーの肖像」が面白く、長い優雅な首をやや傾げて曲線を描いた華奢で何処か儚い女の特徴が良く出ている。
   それに、パブロ・ピカソの大作が数点、4次元の世界と動きを表現したグラマーな女性のヌードの絵「トルコ帽の裸婦」が私にとって一番ピカソらしかった。目や手があっちこっち向いている絵である。

   私が最も素晴らしいと思ったのは、マルク・シャガールの「エッフェル塔の新郎新婦」。1938-39年の作品だから第二次世界大戦が勃発した頃である。
   藍色のエッフェル塔をバックに、鶏冠の真っ赤な鮮やかな白色鶏に寄りかかるように白いヴェールの新婦と青紫色のスーツの新郎が寄り添っている綺麗な絵で、この3者が右寄りに傾いて絵の中を大きく対角線状に中空を舞うように描かれている。
   右下には、故郷ベラルーシのヴィテブスクの田舎風景が、そして、左端中央には、ユダヤの結婚式の新郎新婦が小さく描かれている。
   中空には、天使や山羊やヴァイオリンなどが舞っていて、明るい太陽が輝いて二人の前途を祝福している。
   右端の下から上まで大きく描かれた椿のような木は故郷の田舎の木であろうか。
   ロバはないが、鶏や山羊や楽器などが中空を舞うのは何時ものシャガールのモチーフであり、同じ美しい鮮やかな色彩だが、この絵は、しっかりと描かれている。
   この絵を見ながら、「屋根の上のヴァイオリン弾き」の映画を思い出していた。

   シャガールは、随分あっちこっちで見てきたが、やはり、印象深いのは、パリ・オペラ座の天井画とニューヨーク・メトロポリタン歌劇場正面の赤と青の大きな素晴らしい壁画である。
   最初、パリ・オペラ座の絵を見た時は、何とファンタースティックな絵かと思ったが、壮大な色彩の美しさにビックリして、それから、シャガールの鶏やロバや人間が空を泳ぐ不思議な絵にも異質感を感じなくなった。

   最近までの現在の絵画や彫刻など面白い作品が沢山展示されていたが、私の理解力は、カンジンスキー辺りまでで、無題やコンポジションと言った何を描いたのか分からないような世界に入るとついて行けなくなる。
   私は、いつでもそうだが、芸術は何でも究極は美しくなければならないと思っているのだが、チンパンジーが描いても同じ様に見える絵にはあまり興味がなく理解出来ないのは修行が足らない所為だとも思っているがどうしようもない。
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