
進歩発展、成長のためにイノベイティブな”ありえないと思えることを考える(impossible thinking)” には、どうすれば良いのか。
これを指南するのが、この本だが、その前に、理解しなければならないのは、我々の思考や行動などあらゆる生活や生き様を律しているメンタルモデルとは何かを十分に理解することが大切で、この既存のメンタルモデルを変革しない限り不可能であると言うことで、まず、この本では最初に、最新の脳科学を駆使して、あらゆる側面から、メンタルモデル(言い換えれば、マインドセット、固定観念、思い込みに近い概念)について詳細に述べている。
現実の状況は何も変わっていないのに、自分の気付きによって世界が一変する様子を、最初は若い女性に見え、次には老婆に見える例の「ゲシュタルトの絵」を使って例証している。
最新の脳科学では、ビジネス上の動きにしろ、個人の決断にしろ、人間は大抵、自分の目で見たことや五感で感じたことを信じるが、実際には、外の世界から取り入れられる感覚的な情報は、殆ど活用されることなく捨てられてしまって、「見えているもの」と思っているものは、実際に目に見えているものではなく、頭の中にあるのだと言う。
脳は、「モデルをつくる装置」であり、人間は、世界について、「仮想現実のシュミレーション」を行い、それに基づいて行動しているのだと言うのである。
この本で、著者たちは、メンタルモデルの変革によって、企業が再生した例として、IBMの経営について語っている。
毎年赤字を計上していた時に、IBMの研究部門が、基礎研究や中間層の技術開発を最も重視しており、この部門を突き動かしていた技術万能と言うメンタルモデルが障害になって、製品だけに関心を奪われて、顧客との接点をなくしていたのに気付いて、サービス、アプリケーション、顧客ソリューションを重視するようにメンタルモデルに変革した。この取り組みが、新CEOのルイス・ガースナーの打ち出したグローバル・サービス・イニシァチブにぴったり合致して、サービス部門は、IBMで最も成長率が高い分野となった。
もう一つのIBMのメンタルモデルの大胆な改変による成功例は、ソフトウエア開発の考え方を全面的に転換して、アパッチを活用したオープン・ソース・コードで動く高度なソフトウエアとサービスを柱とするビジネスモデルを構築したことで、この場合には、知的財産権に関して懸念した弁護士団の強力な抵抗を受けたと言う。
いずれにしろ、トップ企業としてのIBMとしては、社運を賭けたメンタルモデルの変更による経営戦略の遂行であったはずだが、大きな車でも、生きるためには、大胆に動くのである。
私は、このブログで何度か触れたが、経営危機にあるソニーの経営に欠けているのは、ソニーのソニーたる所以であった破壊的イノベーションとは何かを真正面から直視したメンタルモデルのドラスティックな変革だと思っているのだが、旧態依然たる経営姿勢と経営戦略は一向に変わる気配がない。
日本政府もそうだし、日本企業も当然だが、世界の潮流が大きく変わってしまったのであるから、メンタルモデル、マインドセットを、大胆にアジャストしない限り、生きて行けなくなってしまった筈なのだが、それが出来ずに、どんどん、激烈なグローバル競争から後れを取っている。
著者は、シェイクスピアの「テンペスト」の中から、ミランダの言葉「ああ、何て素晴らしい新世界なの。こんな人がいるなんて。」と言う言葉を引用して書き始める「新しい見方を知る」と言う章で、このIBMのオープン・ソース経営の成果を論証しているのだが、そのすぐ後で、
キヤノンの御手洗冨士夫社長が、アメリカでの23年間の経験を踏まえた、一般的な日本人経営者と考え方が大きく違う、日本的な手法とアメリカ的な手法を融合したハイブリッド型のアプローチによって、経営に大胆な発想や手法が持ち込まれて成功している、と高く評価している。
その同じページで、チャールズ・ダーウィンに触れて、22歳の時に、軍艦ビーグル号に乗って世界一周の航海に出て、五年間の世界一周によって、疑問に思っていた天地創造説を推敲して、次第に進化論への確信を深めて行ったと書いている。
面白いのは、その後、ダーウィンは一度もイギリスを離れたことはないのだが、経験を受け入れたことで頭が柔軟になり、自分自身の考え方だけではなく、もっと大きな自然科学上の学説を変えることになったと言う指摘である。
尤も、一度もイギリスを離れたことのないシェイクスピアが、ギリシャやイタリアを筆頭に幾多の外国を舞台にした素晴らしい多くの戯曲を書いたことを考えてみれば、別に、経験しなくても、メンタルモデルの飛翔には障害はないのであろうが、まず、出来るだけ努力して、メンタルモデルの幅と深さを追及することが肝要だということであろうか。
紹介出来なかったが、この本には、メンタルモデルの様々な諸相については勿論、良く生きるためのメンタルモデルへのアプローチの仕方などについても言及していて非常に面白い。
これを指南するのが、この本だが、その前に、理解しなければならないのは、我々の思考や行動などあらゆる生活や生き様を律しているメンタルモデルとは何かを十分に理解することが大切で、この既存のメンタルモデルを変革しない限り不可能であると言うことで、まず、この本では最初に、最新の脳科学を駆使して、あらゆる側面から、メンタルモデル(言い換えれば、マインドセット、固定観念、思い込みに近い概念)について詳細に述べている。
現実の状況は何も変わっていないのに、自分の気付きによって世界が一変する様子を、最初は若い女性に見え、次には老婆に見える例の「ゲシュタルトの絵」を使って例証している。
最新の脳科学では、ビジネス上の動きにしろ、個人の決断にしろ、人間は大抵、自分の目で見たことや五感で感じたことを信じるが、実際には、外の世界から取り入れられる感覚的な情報は、殆ど活用されることなく捨てられてしまって、「見えているもの」と思っているものは、実際に目に見えているものではなく、頭の中にあるのだと言う。
脳は、「モデルをつくる装置」であり、人間は、世界について、「仮想現実のシュミレーション」を行い、それに基づいて行動しているのだと言うのである。
この本で、著者たちは、メンタルモデルの変革によって、企業が再生した例として、IBMの経営について語っている。
毎年赤字を計上していた時に、IBMの研究部門が、基礎研究や中間層の技術開発を最も重視しており、この部門を突き動かしていた技術万能と言うメンタルモデルが障害になって、製品だけに関心を奪われて、顧客との接点をなくしていたのに気付いて、サービス、アプリケーション、顧客ソリューションを重視するようにメンタルモデルに変革した。この取り組みが、新CEOのルイス・ガースナーの打ち出したグローバル・サービス・イニシァチブにぴったり合致して、サービス部門は、IBMで最も成長率が高い分野となった。
もう一つのIBMのメンタルモデルの大胆な改変による成功例は、ソフトウエア開発の考え方を全面的に転換して、アパッチを活用したオープン・ソース・コードで動く高度なソフトウエアとサービスを柱とするビジネスモデルを構築したことで、この場合には、知的財産権に関して懸念した弁護士団の強力な抵抗を受けたと言う。
いずれにしろ、トップ企業としてのIBMとしては、社運を賭けたメンタルモデルの変更による経営戦略の遂行であったはずだが、大きな車でも、生きるためには、大胆に動くのである。
私は、このブログで何度か触れたが、経営危機にあるソニーの経営に欠けているのは、ソニーのソニーたる所以であった破壊的イノベーションとは何かを真正面から直視したメンタルモデルのドラスティックな変革だと思っているのだが、旧態依然たる経営姿勢と経営戦略は一向に変わる気配がない。
日本政府もそうだし、日本企業も当然だが、世界の潮流が大きく変わってしまったのであるから、メンタルモデル、マインドセットを、大胆にアジャストしない限り、生きて行けなくなってしまった筈なのだが、それが出来ずに、どんどん、激烈なグローバル競争から後れを取っている。
著者は、シェイクスピアの「テンペスト」の中から、ミランダの言葉「ああ、何て素晴らしい新世界なの。こんな人がいるなんて。」と言う言葉を引用して書き始める「新しい見方を知る」と言う章で、このIBMのオープン・ソース経営の成果を論証しているのだが、そのすぐ後で、
キヤノンの御手洗冨士夫社長が、アメリカでの23年間の経験を踏まえた、一般的な日本人経営者と考え方が大きく違う、日本的な手法とアメリカ的な手法を融合したハイブリッド型のアプローチによって、経営に大胆な発想や手法が持ち込まれて成功している、と高く評価している。
その同じページで、チャールズ・ダーウィンに触れて、22歳の時に、軍艦ビーグル号に乗って世界一周の航海に出て、五年間の世界一周によって、疑問に思っていた天地創造説を推敲して、次第に進化論への確信を深めて行ったと書いている。
面白いのは、その後、ダーウィンは一度もイギリスを離れたことはないのだが、経験を受け入れたことで頭が柔軟になり、自分自身の考え方だけではなく、もっと大きな自然科学上の学説を変えることになったと言う指摘である。
尤も、一度もイギリスを離れたことのないシェイクスピアが、ギリシャやイタリアを筆頭に幾多の外国を舞台にした素晴らしい多くの戯曲を書いたことを考えてみれば、別に、経験しなくても、メンタルモデルの飛翔には障害はないのであろうが、まず、出来るだけ努力して、メンタルモデルの幅と深さを追及することが肝要だということであろうか。
紹介出来なかったが、この本には、メンタルモデルの様々な諸相については勿論、良く生きるためのメンタルモデルへのアプローチの仕方などについても言及していて非常に面白い。