熟年の文化徒然雑記帳

徒然なるままに、クラシックや歌舞伎・文楽鑑賞、海外生活と旅、読書、生活随想、経済、経営、政治等々万の随想を書こうと思う。

アジア新興国を巻き込んだデファクト・スタンダード構築が日本の使命

2012年06月14日 | 政治・経済・社会
   薮中三十二立命大教授が、商事法務ほか主催の「アジア市場の形成に向けた日本の役割」と銘打ったシンポジウムで、「日本発ーアジアから世界へ ~新たなグローバル社会におけるルール作り~」と題して講演を行った。

   今や、グローバルな地殻変動によって、G7の時代は終焉して、新興国が台頭し、アジアが主戦場となり、新しい世界の模索が始まっている。
   これまでは、日欧米中心で世界秩序が構築され、EU中心の制度構築の時代であったが、新しい時代に突入し、アジアを中心とした新興国が世界の胎動を主導する時代になったのであるから、アジア・新興国家を舞台にして日本がリーダーとして新しい制度の構築を模索し、日本発ーアジア・オリジンのデファクト・スタンダード作りを目指して、再び、世界市場に躍り出るのが、日本の使命であると熱っぽく語った。
   残念ながら、坂村教授のトロンやハイビジョン方式のTVなどでは紆余曲折を余儀なくされているが、ブラジルを抱き込んで推進した地デジシステムは、今や、南アメリカを総なめにして、アフリカへの快進撃を始めており、日本が世界に冠たる技術大国としての絶大なる信頼を武器にして、グローバル経済の中心となったアジアの新興国家を巻き込んで、デファクト・スタンダードを打ち立てれば、再び、日本の檜舞台が実現できる筈だと言うのである。

   私は、以前に、プラハラードの最貧層BOP市場のネクスト・マーケットや、ゴビンダラジャンやGEのリバース・イノベーション論を展開しながら、新興国市場発のイノベーションが、新しい潮流としてグローバル市場で成功を収めたり、米国など先進国市場へ逆上陸して脚光を浴びつつあり、GEなど、イノベーションと新製品の開発拠点の中心をバンガロールに移していると言う現実などについて論じて来た。
   勿論、薮中教授の論旨は、これとは違うが、要するに、これまで、世界秩序のガバナンスから、グローバル・スタンダードの製品やサービスの構築など、文化文明、科学やテクノロジー等々、総てが、先進国発であった時代が、パラダイム・シフトして、その主導権が、新興国に移りつつあり、その主戦場がアジアになったと言う事実、そして、そのアジアから新しい時代を画するイノベーションが生まれつつあると言うことである。

   同じシンポジウムで、伊藤元重東大教授が、ヤン・ティンバーゲン教授のグラビティ理論(重力モデル)を引用して、国際経済学での貿易における地理的位置づけ、地域的な距離が、如何に重要かを説いていたが、日本は、今や、BRIC'sの内、中国、ロシアに隣接して、インドがアームス・レングスに位置し、インドネシアやヴェトナム、ミャンマー、タイと言ったアジアの台頭著しい新興国地域のど真ん中に位置するのであるから、正に、千載一遇のチャンスであり、その中でも、世界最高水準の産業と技術を誇り、地域での最高水準の自由市場経済と民主主義社会を誇っているのであるから、リーダーシップを発揮して、グローバル世界に打って出なければ、日本の存在意義がないと言うことであろう。

   分かっているけれど、目を転じて見れば、日本の政治の迷走は、目を覆いたくなるような惨状で、毎日、NHKは、国会討論を放映しているが、見るに堪えない。
   それは、それとして、アジアへの積極的進出が、日本の使命だと書いたが、この同じシンポジウムで、商工会議所の中村利雄専務が、海外に進出した中小企業の撤退率は、40%だと語っていた。
   大半、アジアへ進出した中小企業が、撤退せざるを得なかったのであろうが、これまで、私は、大企業でも、日本の海外進出に対する今のような戦略や経営方針で行く限りは、非常に難しいであろうと論じて来た。
   いくら、アジアへ、アジアへと唱えても、悲しいかな、グローバリゼーション音痴の日本企業にとっては、能力が伴わないのである
   ハーバードのタルン・カナ教授とクリシュナ・G・パレブ教授は、「制度のすきま」が、新興国での事業に失敗する要因で、その攻略こそが成功の秘密だと言っているのだが、今回は、薮中教授の提言だけを披露して、新興国市場へのアプローチ戦略については、稿を改めることとしたい。
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