小金沢ライブラリー

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ミステリ感想-『死体で遊ぶな大人たち』倉知淳

2024年10月07日 | ミステリ感想
~あらすじ~
キャンプ場に押し寄せたゾンビの群れ。逃げ込んだ宿泊場の密室でゾンビに殺されたメンバーが発見されるが、周囲にゾンビの姿はなく…本格・オブ・ザ・リビングデッド
重大事件のお悩み相談を受け付ける公的施設に訪れた3人の若者は、いずれもそっくりな事件に巻き込まれ自分が犯人かもしれないと悩んでおり…三人の戸惑う犯人候補者たち
40年前の心中事件を振り返るネット番組。女は男の死後に首を絞められたとしか思えない状況で…それを情死と呼ぶべきか
発見された男の死体には自分の腕がなく、代わりに女の腕が添えられていた…死体で遊ぶな大人たち


~感想~
霞流一か白井智之のような短編集のタイトルは4編目と同じだが、全編に共通したテーマでありいずれも死体をあれやこれやした事件・トリックが繰り広げられる。しょっちゅう死体を飛ばしたり爆発させたりする霞・白井ほど過激ではないが…いや…近いことはやっているな。
また近年の作者はシリーズ化しそうでほとんどしない連作短編集を多く書いているが、本作の探偵役はそれぞれ違う立場の人物を配してきたので、誰が探偵を務めるかという楽しみもある。

1編目「本格・オブ・ザ・リビングデッド」は冒頭でげんなり。作者のことだからネタでやっている側面もあるだろうが、いつまで「屍人荘の殺人」のゾンビ要素をネタバレ扱いしなければならないのか。タイトルにもろにゾンビが入っているし、ゾンビは前提であって作品の主要素ではない。ネタとはいえここでネタバレ扱いしたことによってさらに解禁が遠のいてしまった感もありほとほとうんざりである。
あ、トリックの方はなかなかふざけていて良かった。1編目にこれを置いたことで以降何をやっても許される空気を醸成するのにも一役買っている。

2編目「三人の戸惑う犯人候補者たち」はすわ麻耶雄嵩か!? シュレディンガー的な多重解決か!? と思わせるシチュエーションが面白い。
それを論理的に、かつ大胆に紐解いていくのだが、これをやるために公的なお悩み相談所という謎施設を配したのが強引すぎて笑ってしまう。

3編目「それを情死と呼ぶべきか」は内容はともかく近年の悪癖がぶり返され、解決編で誰も疑っていないような前提条件をくどくど検証してページを埋め尽くすのがなんともはや。鍵は掛かってたし複製できなかったでいいんだよもう休め倉知…。

4編目の表題作は一番そんなわけないトリックで正直引いてしまったが、解決後のもう一捻りで唸らされた。ぶっちゃけUの某作や近年でもAが近いことをやっているが、全く予想だにしなかったので驚いた。

近年は質がブレ幅大きい(と個人的に思う)作者だが、パズラー的なトリック重視にまとめたことで良い方に転がった、単純に楽しめる短編集である。


24.10.7
評価:★★★☆ 7
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ミステリ感想-『プロジェクト・インソムニア』結城真一郎

2024年09月29日 | ミステリ感想
~あらすじ~
人為的に明晰夢を起こし、数人でそれを共有するユメトピア。
現実ではナルコレプシーに悩まされる蝶野は被験者として夢の世界を満喫する。
しかし被験者の一人が犠牲となり、現実でも死体として発見された。
夢と現実はリンクしているのか?


~感想~
後に「#真相をお話しします」で年間ランキングを賑わせる作者のデビュー2作目。
夢の世界というなんでもありの舞台に、特殊設定ミステリとして必要な制約を上手く掛けつつ、本格ミステリとしてまとめ上げた快作で、まずユメトピアという設定が(名前はアレだけど)素晴らしい。
夢の世界と現実の姿は同じとは限らず、登場人物の多くには意外な正体があり、ゲーム「カリギュラ」を思い出させる。
夢での死と現実での死をリンクさせる方法自体は拍子抜けするほど単純ながら、それを実現させるため実に特殊設定ミステリらしいトリック・条件・伏線を用意しており、しかも伏線は序盤からあからさまにぬけぬけと、それも何度も記され、条件も単純明快にして納得の代物で素晴らしい。これまで書かれた夢を題材にしたミステリの中ではトップクラスの仕上がりではなかろうか。
作者がこの時点でもっと著名であれば「#真相をお話しします」よりひと足早くランキングを席巻したに違いない、隠れた良作ミステリである。


24.9.29
評価:★★★★☆ 9
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ミステリ感想-『法廷遊戯』五十嵐律人

2024年09月17日 | ミステリ感想
~あらすじ~
法科大学院で行われていた模擬裁判の無辜ゲーム。
久我清義は過去を暴かれ、復讐者の影がつきまとう。
卒業後、弁護士となった清義のもとに久々の開催が持ちかけられるが、模擬裁判場では旧友が殺されていた。
容疑者となったのもかつての無辜ゲームの関係者。清義はその弁護を引き受ける。

2020年メフィスト賞、このミス4位、文春4位、本ミス9位


~感想~
大学時代の逆転裁判的ゲームからシームレスに弁護士時代へ移行し、主要3キャラのうち1人が死亡し1人が容疑者、残る1人がその弁護士を務めるという激熱の展開が最高。
新人離れしたストーリーテリングで調査が進むごとに事態はどんどん悪化し、有罪・無罪どちらにしろ完全に詰みに追い込まれるのもお見事で、そこから逆転裁判的に決定的証拠で真相が明かされるが、それだけに留まらない結末を迎える。
正直収まるべきところに都合よく収まりすぎて、法廷での最終決戦前の盛り上がりは超えられなかったが、早々に実写映画化・マンガ化と他メディアに展開したのも納得の、デビュー作としては破格の非常によくできた良作である。


24.9.17
評価:★★★★ 8
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ミステリ感想-『楽園とは探偵の不在なり』斜線堂有紀

2024年09月13日 | ミステリ感想
~あらすじ~
ある日天使が降臨し世界は変わった。
顔のない不気味で無機質な天使が人類に与えたルールは一つだけ。2人以上殺した人間は天使によって地獄へ落とされる。
変わった世界で全てを失った探偵は、天使の集う楽園に招かれ、そしてありえないはずの連続殺人事件が起こる。

2020年このミス6位、文春3位、本ミス4位、本格ミステリ大賞候補


~感想~
「決して2人以上殺せない世界の連続殺人」というド真ん中の特殊設定ミステリで各種ランキングでも高評価を受けたが、本作と作者の本分はそこにはない。
天使の降臨によって変えられた世界と、失意の探偵の絶望と再生が主題であり、実のところミステリ要素は副次的な物に過ぎない。
そのため事件はすいすいと犯人の思惑通りに進み、重要な手掛かりはひょんなことからあっさり手に入り、大掛かりなトリックも解決前にほとんど明かされてしまい、本格ミステリとして読むとちょっと拍子抜けする。
だが失意の探偵をめぐるエピソードとその過去は実に読ませるもので、作者が一番描きたかったのもおそらくは事件解決後からエピローグに掛けてなのだろうと勝手に思う。ミステリとしては個人的に拍子抜けながら物語としてはここで一段も二段も上へと至り、探偵譚を締めくくってくれる。
ミステリ要素もある終末的探偵物語として心に残る一作だった。


24.9.13
評価:★★★ 6
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ミステリ感想-『全員犯人、だけど被害者、しかも探偵』下村敦史

2024年09月08日 | ミステリ感想
~あらすじ~
不祥事により糾弾される中、社長室で死体で発見された男。
山奥の地下室に集められた妻や社員や記者ら7人に何者かが告げる。
「48時間後、犯人以外を毒ガスで殺す」
かくして全員が犯人・被害者・探偵となるデスゲームが始まった。


~感想~
良く出来ているし決してつまらなかったわけではないが、この設定とあらすじから期待する物とは全く別の何かが提供されてしまった。
作者の実力ならば期待する通りの物を出すことも余裕でできたはずだが、そこからだいぶ脱線した、しかも(個人的には)期待しない方向に逸れてしまったのが残念。
かなり前半から「そうだったらちょっと期待とは違うな」と不安にさせる要素を小出しにして行くので、早いうちに真相の一端にたどり着いてしまう読者もいるだろう。並外れた実力のある作者なので計算ずくだろうが、個人的にはそれは終盤まで隠しておいても良かったのではと思うが、まあ好みの問題である。
繰り返すが話自体は大変良く出来ているし、各人の主張する犯行や推理もそれぞれの立場に応じたもっともなもので、デスゲームを生き残るための戦術も楽しめる。
この設定に期待する要素には応えたうえで路線から逸脱するため、一定の満足は得られる。そこから先は個人の嗜好であり、この展開のほうが好きだとハマる読者も少なくないだろうが、でもこうした変化球ではなく真正面からのぶつかり合いが見たかったなあと思わずにはいられなかった。


24.9.8
評価:★★☆ 5
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ミステリ感想-『ぼくは化け物きみは怪物』白井智之

2024年09月05日 | ミステリ感想
~あらすじと感想~
「最初の事件」
小学校のあるクラスを狙った連続殺人事件と、独裁者の秘密兵器と、動物の脱走。そのクラスには名探偵がいて…

全く繋がりが無さそうに見える逸話から、三題噺のように組み立てられた異形のミステリ。
これで長編を書く作家もいるだろうが惜しげもなく短編で、荒削りに素材のまま出されてしまうのだからすごい。
しかしその贅沢さにケチを付けてしまうが、短すぎて物足りなく感じてしまったのも事実である。


「大きな手の悪魔」
高次元人は地球を16のエリアに分割し、そこから無作為に選んだ人物の知能を測定し、基準以下ならぱ皆殺しにすると宣告。人類を救うために送り込まれた人物とは?

本書で最もイカれた一編。エリア内の人間を皆殺しにする銃の悪魔のようなオーバーテクノロジーを持つ高次元人にぶつけるのがよりによって角田美代子ってどういうことだよww
銃の悪魔 VS 角田美代子というこの世で白井智之しかしない発想を前にさりげない伏線が相変わらず上手いなんて感想なぞもはや無意味である。


「奈々子の中で死んだ男」
罠に陥れられたヤクザは最後の思い出に遊郭へ行くが、銭が足りず死んだ女をあてがわれ…。

発想のイカれ具合こそ過去最高レベルだが(あくまで白井智之にしては)ミステリとしてやや物足りない2編の後にお出しされるのがこの年間ベスト級の短編だからすごい。
遊郭を舞台にいつにも増してイカれたキャラを配しながら、この舞台でしか成し得ないトリック・伏線・推理・動機その他諸々が敷き詰められ、しかも最後には…と文句の付けようがない大傑作。


「モーティリアンの手首」
一攫千金のため異星生物モーティリアンの化石を掘り起こした3人組。死体の左腕は切断されしかも不自然に離れた場所に埋まっていた

アレを題材にして何をどうしたらこういう物語を思いつけるのか。SF界隈でも話題を呼んでいるという作者のSF的手腕が存分に発揮され、しかもガチの推理が繰り広げられるミステリでもある。この結末は一読忘れようがない。本書のベストに挙げる向きもあるだろう。


「天使と怪物」
世界の真実を謳う見世物小屋で起きた殺人事件とその犯人は、天使の子が残した手紙によって予言されていた。

そして掉尾を飾るのは作者お得意の待ってましたのアレである。アレをこんな手法でやってのけるの!?
白井長編のあれやこれやを思い出さずにはいられない技巧のミックスで、予言の謎をこんなふうに解いて見せるのだから恐ろしい。

2編目で数十億人のスコアを叩き出す銃の悪魔がいなくても死者数こそ過去最多クラスだが、グロは作者にしては控えめで、逆にSF要素は多め。
白井智之の短編に期待する我々を今年も裏切らない、イカれた発想揃いの素晴らしい短編集だった。


24.9.5
評価:★★★★ 8
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ミステリ感想-『何かの家』静月遠火

2024年08月29日 | ミステリ感想
~あらすじ~
「その家に一人で入りかくれんぼをしてはいけない」
ルールを破った者はその家から出られなくなり、それまで住んでいた人物と入れ替わる。
その家を管理する大学生兼農家の息子の岸谷冬馬は、民俗学を専攻する女子大生を案内し…。


~感想~
タイトルと設定こそホラーだが、作者がTwitterで参考文献に入れなかったことを後悔している作品が西澤保彦「人格転移の殺人」であることからもわかる通り、特殊設定ミステリの秀作であった。

「人格転移の殺人」は効果範囲内の人物の人格だけが入れ替わる仕掛けだったが、本作では人間ごと入れ替わり、しかも他者はそれを認識できない。むやみに話がややこしくなりかねないところ、本作は大胆にも「○○の家」と現在その家に閉じ込められているのが誰なのかはっきりと明示してしまう。
一章の「夏の自殺」が、設定を説明しつつもほのめかすだけである事実を強烈に匂わせ、そこだけで終わっても一編のホラーとして成立する秀逸さ。
初めて読む作者だがこの小説でしかできない盤外戦術のような技法が非常に上手く、筆力やストーリーテリングだけではない小説の上手さ・面白さを味わわせてくれる。
その後も章ごとに短編ミステリ・ホラーとしてきっちり成立する区切りを設け、終盤には意外な探偵役がとんでもないサプライズとともに降臨し、謎解きとどんでん返しをし続ける。
そして最後にはこれまでの物語とはまるで正反対のようなホラーの手法で幕を閉じるのも見事だった。

ミステリとして厳密に見ると説明・描写不足な点やアンフェアな面も多々あり、特に「入れ替わった人物の記憶がある程度受け継がれる」という重要な設定はもっと早く明確にしておくべきだったが、ホラーと特殊設定ミステリを融合させた、実に面白い作品であった。


24.8.29
評価:★★★★ 8
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ミステリ感想-『地雷グリコ』青崎有吾

2024年08月24日 | ミステリ感想
~あらすじ~
地雷グリコ…じゃんけんの勝敗に応じて階段を上る。ただし地雷あり
坊主衰弱…神経衰弱の形式で行う坊主めくり。ただしイカサマあり
自由律ジャンケン…じゃんけん。ただしぼくのかんがえた新手あり
だるまさんがかぞえた…だるまさんがころんだ。ただし自己申告あり
フォールーム・ポーカー…ポーカー。ただしなんでもあり


~感想~
暴の無い「嘘喰い」だこれ!!
迫稔雄「嘘喰い」は誰でも知っているような単純なゲームに特殊ルールを加え、なおかつマンガでできる叙述トリックのほぼ全てをぶち込んだ恐るべきギャンブルマンガだが、そのミステリ小説版とでも呼ぶべきものだった。
まず非常にルールも戦術も罠もわかりやすいのが特色で、このあたり変に複雑にしすぎてわけがわからず、盛り上がってるのは作中人物だけな頭脳バトル物も多いが、そこは心配ご無用。
ただ1~2話目は作者が何をやりたいかが丸わかりで決着は完全に予想通りだった。それに2話目のイカサマがもういくらなんでもそれは相手が節穴すぎだろという力業で、期待値がここで下がった。
しかし3話目の「自由律ジャンケン」が最高で、マンガすぎる対戦相手に「嘘喰い」すぎる絶妙な罠が決まる。個人的にはベスト。
4話目からは河本ほむら「賭ケグルイ」すぎるそんなわけない対戦校が現れ、ここもルールだけ聞いたら「嘘喰い」のハンカチ落としすぎたが、それを逆手に取ってみせた。
ラスト5話目はルールが複雑かつ「嘘喰い」でも傑作と名高いポーカーを題材にした分どうしても引けは取ってしまったが、バーリトゥード(なんでもあり)すぎる決着は面白かった。エピローグも完全に「嘘喰い」だったな…。

総じて色々と「過ぎた」演出が賛否あるだろうが、年末ランキングを待たず早々に三冠達成(日本推理作家協会賞・本格ミステリ大賞・山本周五郎賞)しただけはある、とにかく楽しい一冊だった。
1位はどこも米澤穂信「冬季限定ボンボンショコラ事件」で今年は当確だと思っていたがこれでわからなくなった…。

全くの余談だが結構終盤まで、実は鉱田ちゃんが暴担当でどこかで無双乱舞を繰り広げ、そのためのダンス歴だと思っていたことを付記しておく。


24.8.24
評価:★★★★ 8
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ミステリ感想-『バーニング・ダンサー』阿津川辰海

2024年08月21日 | ミステリ感想
~あらすじ~
ある時、世界に現れた100人のコトダマ遣い。100の言葉を媒介に様々な能力を使う彼らは、あるいは犯罪者となりあるいは刑事として能力を活かした。
日本に誕生したコトダマ犯罪調査課SWORDには7人のコトダマ遣いが所属し、コトダマを用いた犯罪の調査に当たる。


~感想~
帯には「最高峰の謎解き×警察ミステリ!!」と警察物を強調されているが、どう考えてもバリバリの特殊設定ミステリである。
100人のコトダマ遣いは死ぬと別の人間にランダムにコトダマが受け継がれるというだいぶ「ワンピース」の悪魔の実に近いもので、能力の設定もだいぶゆるく、なんでもありになってしまいぶっちゃけ面白くなるとは思えない。
そこを作品全てが本ミスランクインしている本格の鬼・阿津川辰海はいかにクリアしたかというと、帯にあるようにあくまでガチガチの警察ミステリとして描くことで打開を図った。
時にコトダマバトルが繰り広げられる以外はまるで普通の警察ミステリのように振る舞い、捜査が進むごとに丹念に事件の構図や得られた手掛かりを箇条書きで記し、地道に描いて行く。だがそれがお世辞にも成功しているとは言えず、どんなに伏線を細かく張って推理を紡いでみせてもぶっちゃけ「う~~んやっぱりコトダマが余計!」という結論に落ち着いてしまう。
作者が特殊設定ミステリをあまり描き慣れていないこともあり、やりたいことと隠したいことがコトダマ周りの設定でほぼほぼ丸見えで、同じく帯にある「怒涛のドンデン返し」もだいたいが予測できてしまった。
しかも物語の結末があからさまに続編を意識したもので、本作も面白くなかったわけでは無いが真価が発揮されるのは(出るならだが)シリーズ2作目の方。
ネタバレにならないと思う感想だと「2作目で阿津川版mediumみたいなのやろうとしてます?」と聞きたくなる。
シリーズ続編へ向けての助走・種まきとも取れるし、この一作で終わりでも全然おかしくない。でも2作目があるならそっちですごいことしてきそうなので、単品では決して高い評価はできない、そんななんとも感想に困る一冊だった。


24.8.21
評価:★★★ 6
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ミステリ感想-『法廷占拠 爆弾2』呉勝浩

2024年08月15日 | ミステリ感想
~あらすじ~
スズキタゴサクの5回目の公判の日、2人の男が法廷を占拠した。
彼らは警察との交渉を動画配信させつつ、死刑囚の即時の死刑執行を要求。さもなければ法廷を爆破すると脅す。


~感想~
綺麗に完結していた「爆弾」がシリーズ化。
作者はシンプルに小説が上手い。犯人グループは冒頭から正体を明かされるが、しかし到底本気とは思えない要求をし、その動機がいつまでも読めない。
交渉役には期待通りの人物が続投し、人質ながらこちらも期待通りに余計な口を挟むスズキタゴサクが絡み、いわば三つ巴戦に。前作からの続投となる人物にはそれぞれきちんと見せ場が作られ、先の読めないまま物語は進み、意外な決着を迎える。
正直なところ前作の出来には遠く及ばないし、今後のシリーズ化を見据えすぎてあざとい面もうかがえてしまうのだが、「爆弾」の続編に期待するものには十分に答えてくれたと言えるだろう。

それにしてもこのスズキタゴサクが「爆弾」まで何者でもない一般人かそれ以下だったとは絶対思えないので、いずれ学生時代からサイコパスだったスズキを描く外伝とか出ると思うのだがどうか。


24.8.15
評価:★★★☆ 7
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