小金沢ライブラリー

ミステリ感想以外はサイトへ移行しました

ミステリ感想-『メルカトルと美袋のための殺人』麻耶雄嵩

2004年08月09日 | ミステリ感想
~収録作品~
遠くで瑠璃鳥の啼く声が聞こえる
化粧した男の冒険
小人閑居為不善
水難
ノスタルジア
彷徨える美袋
シベリア急行西へ

本ミス5位


~感想~
『遠くで瑠璃鳥の啼く声が聞こえる』
しょっぱなからこう来るか。

『化粧した男の冒険』
結末にあ然。

『小人閑居為不善』
平凡と言えば平凡だが。

『水難』
おい、幽霊がフツーに出てるぞ。

『ノスタルジア』
史上最高峰の屁理屈ミステリ。

『彷徨える美袋』
この短編集中に配されてこそ。

『シベリア急行西へ』
これは巧み。


~総括~
基本的には全編、論理につぐ論理で解かれるガッチガチのロジックミステリ……のはずだが、そこは麻耶雄嵩。普通のミステリは書かない。どれもこれも異例に異形の作品ぞろい。


評価:★★★★ 8
コメント

ミステリ感想-『あいにくの雨で』麻耶雄嵩

2004年08月09日 | ミステリ感想
~あらすじ~
かつて殺人があった廃墟の塔で再び殺人が起きる。
発見者は高校生の烏兎・獅子丸・祐今。
死体はその事件の犯人と目され、逃亡していた祐今の父親だった。
現場には、塔へと向かう雪上の足跡がひとつきり。そして三たび殺人は起こり……。


~感想~
前3作と比べれば、いかにもフツーのミステリ。
普通に展開して普通に解かれる、普通のミステリ。
それでもどこか普通ではない雰囲気が漂うのが、この作者のすごい所。


評価:★★★ 6
コメント

ミステリ感想-『痾』麻耶雄嵩

2004年08月09日 | ミステリ感想
~あらすじ~
部分的記憶喪失に陥った如月烏有は、寺院にくり返し放火して回復を図る。
だが焼け跡には必ず他殺死体が発見され、
「次は何処に火をつけるつもりかい?」との脅迫状が舞い込む。
烏有を翻弄するのは誰? そして烏有にからむ銘探偵メルカトル鮎の真意とは?


~感想~
恐るべきことに、あの「夏と冬の奏鳴曲」の続編。
そして今作でも、理解不能の展開が待ち受けております。
しかし前作とは異なり、メイントリックは普通に解決されるので、どうにか評価は可能。


評価:★★★ 6
コメント

ミステリ感想-『夏と冬の奏鳴曲』麻耶雄嵩

2004年08月09日 | ミステリ感想
~あらすじ~
首なし死体が発見されたのは、雪が降り積もった夏の朝!?
20年前に死んだはずの美少女、和音の影がすべてを支配する孤島、和音島。
なにからなにまで奇妙な孤島で起きた惨劇の真相とは?
メルカトル鮎の一言がすべてを崩壊させる。

本格ミステリ・ベスト100 13位、このミス17位


~感想~
破格のデビュー作につづく第2作ははたしてどんなものが出されるのか?
待ち望んだ誰もの期待を上回った、ミステリ史上屈指の問題作。
読了からはや7年、僕はいまだにこの作品を理解できません。
この異形の物語がいったいなにを現しているのか、正しく読みとった者は恐らく皆無。
作者自身さえ、理解しているのかどうか……。
“驚天動地”のトリック。不可解な、あまりに不可解な細工。
突拍子もない結末と、どこを切りとっても問題だらけの作品。
なお、タイトルは「夏と冬のソナタ」と読み、ミステリ界では昔から「冬ソナ」といえば本書のことを指します。(指しません)


評価:評価不能
コメント

ミステリ感想-『翼ある闇』麻耶雄嵩

2004年08月09日 | ミステリ感想
~あらすじ~
首なし死体、密室、蘇る死者、見立て殺人……。
京都近郊に建つ、中世の古城と見まがうばかりの館・蒼鴉城を「私」が訪れたとき、
惨劇はすでに始まっていた。2人の名探偵の火花散る対決の行方は。
そして迎える壮絶な崩壊と結末。

本格ミステリ・ベスト100 39位、このミス12位


~感想~
デビュー作にして、まるで集大成のように、本格ミステリの要素がこれでもかこれでもかとブチ込まれた、圧倒的な作品。かの『匣の中の失楽』のように「この作者、この一作で全精力出し切っちゃったんじゃあ?」とまで思わせる、絢爛豪華さ。
とにかく、すごい!


評価:★★★★ 8
コメント

ミステリ感想-『消える密室の殺人』柴田よしき

2004年08月09日 | ミステリ感想
~あらすじ~
またしても同居人の突発的な旅行につき合わされ上京したオレ。
オレを待っていたのは猫、猫、猫、そしてやはり死体。
しかも人間の死体とともに、友達になったばかりのデビッドも死体で発見される。
殺人? 自殺? そんなことには興味ないが、殺「猫」犯は見つけださなきゃならない。
しかし密室で誰が、どうやって人間と猫を殺せたのか。オレは他の猫たちと犯人を追い詰める。


~感想~
悪い意味でやりすぎ感満載の前作から一転し、猫が猫としての分をわきまえてくれた。
まったく個人的な意見だが、こういった動物探偵の場合は、いくら猫の頭脳が優れていたとしても、はたから――周りの人間から――見る分にはいたって普通の猫であり、たまたま事件の真相に直結する行動をしたように見える、そんなスタンスが正しいと思う。
その点、今作は合格。猫のホームズと人間のワトソンが、うまく役割分担している。
真相・トリックも意外性に富み、申し分ない。


評価:★★★ 6
コメント

ミステリ感想-『ゆきの山荘の惨劇』柴田よしき

2004年08月09日 | ミステリ感想
~あらすじ~
オレの同居人、作家の桜川ひとみは山奥の「柚木野山荘」で開かれる結婚式に招待された。
無理矢理連れてこられたオレを山荘で待っていたのは幼なじみのサスケと美猫トマシーナ。
新郎・白石へ脅迫状が舞い込み、土砂崩れで山荘は孤立、そしてとうとう最初の犠牲者が…。


~感想~

猫が暴れすぎ。
猫が猫のままで物語に介入するのなら、猫が本来持ちうる力だけで関わるのなら、文句はない。
しかしこの物語に現れる猫は、猫の範疇を余りにも逸脱しすぎている。
現実離れが度を過ぎてしまい、冷めてしまった。
いくらなんでもこんな猫はいない。


評価:★☆ 3
コメント

ミステリ感想-『琥珀の城の殺人』篠田真由美

2004年08月09日 | ミステリ感想
~あらすじ~
18世紀ヨーロッパ山中、雪に閉ざされた城館の密閉された書庫で当主の伯爵が死んでいた。
遺体は礼拝堂に安置されるが、一瞬にして消失する。
呪われた館に渦巻く近親憎悪が、次々と不可思議な惨劇を呼ぶ。

第2回鮎川哲也賞 候補


~感想~
中世を舞台に、いかにもな人物たちが、いかにもな城館で、いかにもな事件を起こすミステリ。
いかにもなトリックでいかにもな真相に収まり、おなかいっぱい。
想像を上回りも下回りもしない、いかにもな作品。


評価:★★★ 6
コメント

ミステリ感想-『螺旋館の殺人』折原一

2004年08月09日 | ミステリ感想
~あらすじ~
ミステリ界の大御所が、秩父の山荘で十年ぶりの新作執筆に取りかかる。
タイトルは『螺旋館の殺人』。ある日、作家志望の若い女性が自らの作品を手に訪ねて来る。
その後の原稿紛失、盗作疑惑……奇妙な事件の果てに待つものは。

※文春文庫版では「螺旋館の奇想」に改題


~感想~
綾辻行人に挑戦――したわけではあるまいが、折原流の見事な「館」もの。
「館」を題材に叙述トリックの二大巨頭が競演したと考えれば、見逃す手はない。
氏の作品としては敷居の低い、入門編にうってつけの一作。


評価:★★★☆ 7
コメント

ミステリ感想-『絵の中の殺人』奥田哲也

2004年08月09日 | ミステリ感想
~あらすじ~
現役を引退した元プロ野球選手の第二の人生は、美術学校の事務員。
その歓迎会の夜、上司がアトリエで殺された。一年前には理事長が殺されていた。
今回の被害者は、理事長の子飼いでその威光をかさに粛清を行っていた悪評の人物。
事件は苦い思いをした者たちの反撃なのか。それとも。


~感想~
メモを紛失し、内容は全く覚えていないのだが、とにかく「退屈」だった印象が強い。
そのうちに再読してみる予定はない。


評価:★★ 4
コメント