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ミステリ感想-『義経号、北溟を疾る』辻真先

2024年10月28日 | ミステリ感想
~あらすじ~
開拓から間もない北海道に鉄道が敷設され、明治天皇の行幸が決定。
だが北海道大開拓使・黒田清隆の失脚を狙う旧藩士の屯田兵たちは列車の妨害を図り、しかも黒田には殺人事件の嫌疑も掛けられていた。
列車の護衛と調査を命じられたかつての新選組一番隊隊長・藤田五郎こと斎藤一と、清水次郎長の子分の法印大五郎は北海道へと渡る。


~感想~
実在人物と実際にあった歴史的上の出来事を組み合わせ、チャンバラ活劇と殺人事件まで配したまるで山田風太郎のような一作。御大こんなのも書けるんだ。
冒頭、その行幸の記録を紹介し「特別な記録が残っていないところをみると運転は順調だったのだろう」と歴史としての結果を早々に明かしてしまうところが実に心憎い。
斎藤一は笑う時にもニヒルに口角を上げるだけのるろうに剣心的キャラ付けで、架空の人物かと思ったら全然実在してる法印大五郎もコメディリリーフを担いつつやる時はやる。
一方の敵方には少女剣豪と鉄鞭使いの義兄妹に加えこの時代では最新鋭のライフル使いを、味方にはアイヌの野性少女を配するケレン味も楽しく、あとがきで作者が「チャンバラを読むつもりでいたら、犯人捜しまでつきあわされたとボヤいたあなた、すみません」と言う通り殺人事件はガチのミステリで、伏線も動機もさりげなく伏されているのもお見事。
文庫書き下ろしかつ時代ミステリのため斯界の話題にはあまりならなかったが、時代ミステリも読めるなら手にとって見るのも悪くない娯楽小説である。


24.10.28
評価:★★★ 6
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