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ミステリ感想-『潮首岬に郭公の鳴く』平石貴樹

2024年11月14日 | ミステリ感想
~あらすじ~
函館の名士である岩倉松雄の孫で美人三姉妹とうたわれた三女が遺体で発見。
頭には鷹の置物で殴られた傷があり、かつて松雄へ贈られた松尾芭蕉の4首の俳句に見立てられていた。
警察は他の姉妹への犯行を警戒するが…。

2019年このミス10位、本ミス10位


~感想~
有栖川有栖が単行本の帯で指摘した通り横溝正史「獄門島」の本歌取りで、やはり三姉妹が狙われる見立て殺人で、しかも全く同じ句も一首使われている。
恥ずかしながら「獄門島」は未読ながら単体でも十分に楽しめる、はず。

やはり名探偵が謎を解くものの登場は遅く、終盤まで刑事の地道な捜査が続くがこれが地味に面白い。ベテランとやや若手の二人組が全ての可能性を潰していくかのようにトライアンドエラーで丹念に調べ尽くし、本丸の名探偵の発想と論理を補強してくれる。
一方でこれだけ優秀な警察が、被害者一家は協力的なのにろくに警備も付けないせいでいとも簡単に連続殺人を許しているのは謎だが、横溝リスペクトと捉えるべきだろう。それにしたって深夜に庭先で毎度毎度運動会さながらに色々やられているのは現実味がないが。監視カメラ一個置くだけでほぼ全ての事件を防げただろ…。

本作の評価を一気に高めたのが異様な動機で、論理的に紐解かれた事件の裏に潜む強烈な動機にはドン引きしてしまう。しかも終わってみれば真相は涼しい顔ではなから堂々と掲げられており、これには恐れ入った。
当然「獄門島」を読んでいればもっと面白いのだろうが、そうでなくても感心しきりの凝りに凝った労作である。


24.11.14
評価:★★★☆ 7
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