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ミステリ感想-『殺人鬼フジコの衝動』真梨幸子

2009年01月05日 | ミステリ感想
~あらすじ~
一家惨殺事件の生き残りとして、新たな人生を歩み始めた十歳の少女。
だが、彼女の人生はいつしか狂い始めた。人生は、薔薇色のお菓子のよう……。
またひとり、彼女は人を殺す。なにが少女を殺人鬼フジコにしてしまったのか?


~感想~
殺人鬼の生涯を描いた手記、という構成といえば昨年度の秀作、詠坂雄二の『遠海事件』をどうしても思い出すが、題材はかぶったものの作者らしさを存分に見せた意欲作に仕上がっている。
なんといっても描写力が高い。これまた昨年の話題作、湊かなえの『告白』にも劣らない、イヤさを最大限に引き出している。それも今作のイヤさは女の"イヤ"らしさ。女性読者からの共感(?)を招くほどの、強烈なイヤさが全編にわたってくり広げられる。作者はそんなイヤでイヤでたまらない物語を読ませる筆力を備えているので、最後まで引き込まれてしまう。
そしてなんといってもラスト、『遠海事件』とはまた違った切り口の仕掛けにうならせられる。あからさまな伏線や驚きには欠けるため、トリック小説と呼ぶのははばかられるが、イヤ系ストーリーに毒々しい華を添える仕掛けは必要にして十分。
「主婦系ホラー」と称されたデビュー作でメフィスト賞を獲った作者の、幅広い層にアピールできる作品である。


09.1.4
評価:★★★☆ 7
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