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ミステリ感想-『生霊の如き重るもの』三津田信三

2011年07月16日 | ミステリ感想
~収録作品~
死霊の如き歩くもの
天魔の如き跳ぶもの
屍蝋の如き滴るもの
生霊の如き重るもの
顔無の如き攫うもの


~感想~
学生時代の刀城言耶を描いた短編集。
まだ明確に探偵らしい活動をしていない時期だけに、まず言耶が事件に関わることになる前置きが長いのはしかたないとして、短編個々の出来はかなり上質。
最初の三編は驚いたことに三つとも「足跡トリック」ながら、それぞれ物理、論理、バカと様々なトリックで仕掛けられ、同じことを三回繰り返しているのに、不満も飽きも感じさせない。
白眉はタイトルにもなっている『生霊の如き重るもの』で、かの傑作長編『山魔の如き嗤うもの』をほうふつとさせる、推理の枠組みは維持したまま、真相だけが次々と変幻していく奇術のような解決編がすばらしい。
そして最後の『顔無の如き攫うもの』では豪快な、というか悪魔的な真相で締め、もちろん怪異でオチをつけてみせ、化物も人間も怖いという着地を決めた。
前回の短編集では「ひょっとして長編向きの作者なのかも」と感じたのは、全くの勘違いであったと、深くお詫び申し上げたい。


11.7.14
評価:★★★☆ 7
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