~あらすじ~
源助は十手を預かる身分ながら、巨体と頭脳と立場を活かして他人の弱味を見つけてはゆすり・たかりを働くため誰からも恐れられていた。
~感想~
作者は後に「伊藤博文邸の怪事件」から始まる月輪龍太郎シリーズで本格ミステリ界を沸かせるが、その4年前に文庫書き下ろしで刊行されていたのが本作。もともと日本ミステリー文学大賞で新人賞を射止めている作者だが、読んで驚くのがガチガチの本格ミステリで、しかも非常に粒揃いなこと。
源助はタイトル通りの悪漢(※「わる」と読む)ながら名探偵さながらの推理力と、名探偵ならではの強運の持ち主で、難事件をするすると解き明かしたり阻止しつつ、他人の弱味を見つけてはそれに付け込み私腹を肥やす。
冒頭の「山谷堀女殺し」が傑出しており、設定やキャラの説明に筆を費やしつつ語られる事件が恐ろしくよくできた本格ミステリで、年間ベスト級の代物。
続く「井筒屋呪いの画」と「猿屋町うっかり夫婦」がこの探偵ならではの決着で、ただのミステリではこうはならない一筋縄では行かない展開がこの後も待ち受ける。
「下谷町神隠し三人娘」がバカミス的トリックで、強烈な新キャラで牽引しつつ愉快な人間消失トリックを見せるのだが、読み返すとぬけぬけと真相そのものがずばり書かれているのが見事。
「元吉町の浮かび首」はパターンを破る語り口からとんでもないオチで締め、ラスト2編も本作ならではの物語を描きつつきっちりミステリとして仕上げられている。
作者がまだ無名で、書き下ろしの時代小説でなければもっと話題になっていたはずの「珠玉の」と冠して良い短編集であり、時代物が読めるミステリファンには騙されたと思って試して欲しい。
22.9.27
評価:★★★☆ 7
源助は十手を預かる身分ながら、巨体と頭脳と立場を活かして他人の弱味を見つけてはゆすり・たかりを働くため誰からも恐れられていた。
~感想~
作者は後に「伊藤博文邸の怪事件」から始まる月輪龍太郎シリーズで本格ミステリ界を沸かせるが、その4年前に文庫書き下ろしで刊行されていたのが本作。もともと日本ミステリー文学大賞で新人賞を射止めている作者だが、読んで驚くのがガチガチの本格ミステリで、しかも非常に粒揃いなこと。
源助はタイトル通りの悪漢(※「わる」と読む)ながら名探偵さながらの推理力と、名探偵ならではの強運の持ち主で、難事件をするすると解き明かしたり阻止しつつ、他人の弱味を見つけてはそれに付け込み私腹を肥やす。
冒頭の「山谷堀女殺し」が傑出しており、設定やキャラの説明に筆を費やしつつ語られる事件が恐ろしくよくできた本格ミステリで、年間ベスト級の代物。
続く「井筒屋呪いの画」と「猿屋町うっかり夫婦」がこの探偵ならではの決着で、ただのミステリではこうはならない一筋縄では行かない展開がこの後も待ち受ける。
「下谷町神隠し三人娘」がバカミス的トリックで、強烈な新キャラで牽引しつつ愉快な人間消失トリックを見せるのだが、読み返すとぬけぬけと真相そのものがずばり書かれているのが見事。
「元吉町の浮かび首」はパターンを破る語り口からとんでもないオチで締め、ラスト2編も本作ならではの物語を描きつつきっちりミステリとして仕上げられている。
作者がまだ無名で、書き下ろしの時代小説でなければもっと話題になっていたはずの「珠玉の」と冠して良い短編集であり、時代物が読めるミステリファンには騙されたと思って試して欲しい。
22.9.27
評価:★★★☆ 7