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ミステリ感想-『妄想女刑事』鳥飼否宇

2022年09月17日 | ミステリ感想
~あらすじ~
警視庁捜査一課の女刑事・宮藤希美には所構わず妄想に入り浸る奇癖があった。
その妄想は推理力にも発揮されるが当たり外れも大きく…。


~感想~
バカミスの伝道師らしいひねくれた連作短編集。
事件も「電車内で次々と見つかるバラバラ死体」や「ナース服姿で車に轢かれた観光客の男」といったひねくれたものも多いが、内容はもっとひねくれねじくれている。
宮藤希美の妄想をもとにした突飛な推理や、ちゃんとした描写は無いが最低限張られている伏線で成り立つ事件は実のところ存外まとも。
事件や推理外のある要素がものすごくひねくれており、作中で希美も自らメタ的に言及しだすようなバカミス的仕掛けで、読了後には誰かと語り合いたくなってしまう。しかも5話目でその趣向がやや崩れるのが意味不明で、きちんとしている方が綺麗に落ちるのに、なぜ崩してしまったのか? 作者のひねくれ具合を表しているのだろうか。
最後に明かされるある真相こそ見え見えながら、ただ創作のハードルを上げただけのような謎すぎる横溝正史の有名作品の要素縛りなどなど、考えついても誰も書かない、いやそもそも考えつかない突拍子もない変な作品だった。


22.9.17
評価:★★★ 6
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