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ミステリ感想-『でぃすぺる』今村昌弘

2023年11月26日 | ミステリ感想
~あらすじ~
小学六年生のユースケ、サツキ、ミナは掲示係になり壁新聞で町に伝わる七不思議を特集。
サツキの従姉のマリ姉は七不思議のメモを遺して殺されており、真相を探るためサツキは推理から、オカルト好きのユースケは怪異から事件を追い、ミナは中立の立場で裁定を下す


~感想~
自分が無類のオカルト好きで、男1人女2人の編成も「夕闇通り探検隊」を思い出させたこともありめっぽう面白かった。
作者はデビュー作の「屍人荘の殺人」から続くシリーズでも本格ミステリと怪異を融合させており、いわばお家芸のような設定で、安定感は抜群。
七不思議一つ一つが怪談として良く出来ており、しかも本格ミステリ的な仕掛けが施されている。
ユースケのオカルト目線とサツキの現実目線がせめぎ合い、真相がどちらに転ぶか最後まで迷わせようと試みるが、到底現実に落とし込めないような怪異が連発されるのが玉に瑕で、
このあたり作者がミステリ作家で読者もほとんどがミステリファンだろうから「どうせミステリ的解釈ができるんでしょ?」という思い込みに依存して、現実目線が常に劣勢を強いられているのは確か。
とはいえ最終的にオカルトと現実のどちらに落ち着くかはもちろん言わないが、個人的には本格ミステリと怪異の融合としてバランス良い、しかし大胆極まりない真相に非常に満足した。
好事家(笑)の間では中途半端とか失敗作とささやかれ、自分も重度のオカルト好きのためだいぶ採点が甘くなったとは自覚しているし、たぶん年間ランキングでもそう上位には行かないと思うが、事前の期待値は優に超えてくれた偏愛したくなる良作だった。


23.11.26
評価:★★★★ 8
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