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ミステリ感想-『地雷グリコ』青崎有吾

2024年08月24日 | ミステリ感想
~あらすじ~
地雷グリコ…じゃんけんの勝敗に応じて階段を上る。ただし地雷あり
坊主衰弱…神経衰弱の形式で行う坊主めくり。ただしイカサマあり
自由律ジャンケン…じゃんけん。ただしぼくのかんがえた新手あり
だるまさんがかぞえた…だるまさんがころんだ。ただし自己申告あり
フォールーム・ポーカー…ポーカー。ただしなんでもあり


~感想~
暴の無い「嘘喰い」だこれ!!
迫稔雄「嘘喰い」は誰でも知っているような単純なゲームに特殊ルールを加え、なおかつマンガでできる叙述トリックのほぼ全てをぶち込んだ恐るべきギャンブルマンガだが、そのミステリ小説版とでも呼ぶべきものだった。
まず非常にルールも戦術も罠もわかりやすいのが特色で、このあたり変に複雑にしすぎてわけがわからず、盛り上がってるのは作中人物だけな頭脳バトル物も多いが、そこは心配ご無用。
ただ1~2話目は作者が何をやりたいかが丸わかりで決着は完全に予想通りだった。それに2話目のイカサマがもういくらなんでもそれは相手が節穴すぎだろという力業で、期待値がここで下がった。
しかし3話目の「自由律ジャンケン」が最高で、マンガすぎる対戦相手に「嘘喰い」すぎる絶妙な罠が決まる。個人的にはベスト。
4話目からは河本ほむら「賭ケグルイ」すぎるそんなわけない対戦校が現れ、ここもルールだけ聞いたら「嘘喰い」のハンカチ落としすぎたが、それを逆手に取ってみせた。
ラスト5話目はルールが複雑かつ「嘘喰い」でも傑作と名高いポーカーを題材にした分どうしても引けは取ってしまったが、バーリトゥード(なんでもあり)すぎる決着は面白かった。エピローグも完全に「嘘喰い」だったな…。

総じて色々と「過ぎた」演出が賛否あるだろうが、年末ランキングを待たず早々に三冠達成(日本推理作家協会賞・本格ミステリ大賞・山本周五郎賞)しただけはある、とにかく楽しい一冊だった。
1位はどこも米澤穂信「冬季限定ボンボンショコラ事件」で今年は当確だと思っていたがこれでわからなくなった…。

全くの余談だが結構終盤まで、実は鉱田ちゃんが暴担当でどこかで無双乱舞を繰り広げ、そのためのダンス歴だと思っていたことを付記しておく。


24.8.24
評価:★★★★ 8
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