中野正剛とは大げさな、と言うかも知れない。しかし、喩えは大きなものがいい。そのほうが分かりやすい。それに本質的には同じ病根である。
中野正剛と言っても若い者は(90歳以下のものには)知らないかも知れない。国粋主義者というか、右翼の論客というか。昭和十七年正月に朝日新聞紙上に「戦時宰相論」を発表し、東条英機首相を激怒させた。当局に命じて彼を逮捕させたが、当時の検察は起訴する根拠がないとして東条の意志を忖度せずに(というよりかは東条のあからさまな指示に抵抗して)釈放された人物である。
当時は戦争中で今よりははるかに強権を持っていた首相に対しても検察は首相の圧力に対して拒否する正気を持っていた。いまの安倍首相の属僚に遥かに優る。
中野正剛は釈放後東条に抗議して自決している。翌年7月サイパン島が陥落すると東条英機の退陣を求める声が強まった。東条は総選挙にうってでて政権を維持しようとしたが、当時の閣僚の反対にあい解散出来ず、とうとう退陣した。これも前年の中野正剛の自決から流れがかわっていたからであろう。
ちなみにこの時に東条の衆議院解散に反対したのは今の安倍首相の外祖父にあたり、当時の確か軍需大臣だった岸信介である。孫とは大分器量が違った訳だ。
ひるがえって今の加計疑惑を見ると、保守の論客や保守マスコミでは安倍首相のご用聞きのような失笑ものの擁護記事を書いたり、意見を述べたりする者ばかりである。彼らを支持して信じて来たものとしては愕然とする思いである。
安倍首相に忠告するが、官邸、側近、閣僚は召使いではない。ただしく首相を補佐する幕僚である。8月に内閣改造で目先を変える計画だそうだが、新しい布陣に正しい人選が出来るかどうかが最後のチャンスと心得よ。もっとも安倍氏が召使いタイプばかりを重用するのは、大物、硬骨漢を使いこなす自信がないからであるとも言われている。