このシリーズのはじめで管理組合の実態に関する社会学的調査が無いことを嘆いた。管理組合というのは日本に残る劣悪な部分が象徴的に露出している好個の研究対象である。社会学的調査というのは、法制面の調査ではなく、管理組合を構成する人々の意識、行動様態の原始性を調べることである。管理組合の実態ほど地域差(民度といってもよい)を反映するものは無い。フィールド・スタディの求められるゆえんである。大学の社会学部の学生には最適の実習テーマである。
マンションに居住すると、総会の委任状攻勢になやまされる。それも総会は大切ですから是非出席しましょう、とまず慫慂されるなら、まだ分かる。大体出席しないことを前提にして委任状を出せと迫ってくる。それも白紙委任状を見ず知らずの人間(議長)に出せという。ふざけるなよ、ということ。頭を冷やして考え直すことだ。
選挙の例を考えるとわかる。選挙が近づくと地方自治体の広報カーやら選挙管理委員会の車が町を流して選挙に行きましょうと訴える。そこまでだ。選挙に出ないなら投票権を返せとか委任状を出せなどと狂ったようなことをいわない。
どこでも、総会への出席率は低い。だから活動家は死に物狂いになって手段を択ばないのだろう。どのマンションにも総会フェチというのがいる。管理組合の存続だけがいのちというわけだ。自己目的化している。幼稚園のホームルーム・コンプレックスを引き摺っているようなものだ。とにかく、出席を呼びかける工夫、努力が先だ。間違っても、白紙委任状をいきなり要求してはならない。問答無用でカネを出せと言う強盗とかわりがない。
ところでマンション法を読むと、総会の決議の方法は集会によるもののほか、書面によって採決を取ることが出来る。集会の決議は原則として多数決だが書面による場合は全員の同意が必要だ(マンション法第45条)。
先月末は株主総会の集中開催日だったが、最近では出席を促す通知とともに、各議題についてはがきで賛否を回答できるようにしているところが多い。聞くところによるとインターネットを通しても賛否を各議題ごとに回答できるようになっている会社もあるという。
書面による決定と言うのは、昔から広く行われている。全員が出席できない時にはよく取られている。閣議でも持ち回り閣議というのがある。議案を順繰りに各閣僚のところに回して署名をとる。会社の取締役会でも持ちまわり稟議というのがある。町会でも回覧板に順繰りにハンコを押していくとか似たようなのがあった。
ブロードバンドの普及した時代、新しいマンションには光ファイバーが最初から入っていることが多い。また、よほど辺鄙なところでない限り、ADSLは容易に導入できる時代だ。持ち回り決議の電子版を総会の活性化のために工夫したらよかろう。総会が大事なら、出席への労を惜しまぬ呼びかけ、インターネットなどの利用による活性化などに努力すべきだ。間違っても委任状、委任状と叫ぶべきではない。
各議題についてもよく整理して、賛否が表明出来るようにしておかなければならない。大体、文章の意味がとれない議題とか、満足な説明もない議題が多すぎる。賛成も反対もしようがない、チンケな議題が多すぎる。
それから議題に不適切なものもある。管理会社の会計報告など、管理組合総会の承認案件にすべきではない。会計士でもない普通の区分所有者、居住者が会計報告書の承認など出来るわけが無い。メクラ判を押すだけだが、それでその報告の正当性が確立されてしまう。おかしなことだ。
会計報告は必要だが、区分所有者は「読み捨て」にしておけばよい。何年かたって、篤志家で専門能力のある人が会計報告をチェックして誤りを発見したら追及すればよい。時効がくるまでには相当の年数の余裕があろう。