ロシアのジャーナリスト、アンナ・ポリとフスカヤが暗殺されて1年が経った。アンナは、一年前の昨日、自宅のエレーベータ前で暗殺された。翌日が、プーチン大統領の誕生日である。誕生を祝ってもらう為政者は、独裁者と古今東西相場は決まっている。今年8月に、アンナを殺害したグループが10人ほど逮捕されたが、裏付けが取れずに結局は全員が釈放され、捜査当局の担当者が解雇されてしまった。
彼女の暗殺の実態はいまだ解決されていない。その後に、ロンドンで同じようにプーチン政権を批判していた元連邦保安局職員リトビネンコが惨殺されたが、イギリスの犯人提供要請に対しロシアはこれを拒んでいる。
アンナは、チェチェンの弾圧に、現地に何度も取材を繰り返し、プーチン大統領の残虐な弾圧を訴 えていた。彼女の死後書簡を集めた、著書『ロシアン・ダイアリー―暗殺された女性記者の取材手帳』(NHK出版)は、チェチェンが単なる内紛やテロでないことを物語っている。
プーチンは、政権の末期にいるが、次期政権まで影響力を残していたいようである。メドベーチェフやイワノフを出し抜いて、無名のズブロフを首相に据え置いた。自らが、首相に収まるらしいとする報道もある。この国に、民主化は当分訪れそうにない。
ひたすらプーチンのカリスマ性が称えられ、彼の権限が増大し、周辺の批判勢力がことごとく潰されてゆく。モスクワの報道も、プーチンの動向の報道は個人崇拝に近い存在をうかがわせる。
ミャンマーでは9月27日に、デモを取材していた日本人ジャーナリストの長井健司さんが、治安部隊に至近距離から撃たれて殺害された。どうも狙い撃ちされたらしい。その時のビデオカメラは戻ってきていない。カメラを持った外国人が、軍事政府にとって目障りな存在である。権力は、不都合な真実を暴力的に隠ぺいする。
その効果は、絶大なものがある。プーチンにとって、武力弾圧、言論封鎖、テロ行為は止められない。