日本のように、2,3次産業が発展して栄えた国の農業は、所得差が決定的に働き、政策的な支援がなければ農業の自立はあり得ない。あるいは、農業の本質からかけ離れた、工業的生産を大規模に行っている、特殊な農家ぐらいしか自立は困難である。
先頃の、参議院選挙で民主党が圧勝した背景に、かつての自民党の基盤であった農家から「個別所得補償制度」が支持されたことが背景にある。これまでは、農業予算の半額を上回る金額が「基盤整備」に使われていた。
基盤整備とは、農業をサイドから支えるためのインフラ整備のことである。道路を作ったり、大きな倉庫を作ったりと直接農家には関係ないことが、少なからずあった。ほとんど人のいない所に橋を作ったり道路を整備したりしたのである。
それらの一部は、確かに役に立ったものと思 われるものがあるが、多くのものは農業とは無関係のものであった。農業に対する支援など、先進国の農業予算を見てもわかるとおり極めて少ないものである。
農業を育成するための政策が極端の少なく、やっと出てきたと思ったら大きな農家しか支援しませんというものであった。自民党は、大きくすると競争力がつくものと思っているらしい。日本の農業が、どれほどお菊なってもアメリカやオーストラリアや南米に比肩できる規模になるものではない。所詮日本国内で大きいだけの話である。
日本の農業の特性を理解しない、大きいことはいいことだ政策は日本の農業をダメにする。事実、石油の高騰や輸入穀物の高騰で、最も打撃を受けているのが大型農業である。膨大な設備投資を回収できない、経済動向に左右される農業政策は、瀕死の日本農業を死に追いやることになる。
民主党の、個別所得補償制度は類似のものがヨーロッパで何度となく試行された。何度も失敗を繰り返しながら、基本的な農業所得の補償を農家に行う考え方は変わってはいない。
民主党案は、きっとどこかで失敗するものと思われるが、政争の道具にせずに真摯に食糧、農業、農家のために試行錯誤をして欲しいものである。金はどこから出すなど知うレベルで語られる問題ではない。
人件費に大きな格差がある、先進国の農業は政策的な支援がなければ存続できない。食料の自給率の向上は、細かいことを論ずるのではなく、巨視的な視点に立たなければ成し遂げられない。就農者の年齢構成からも、この国の農業は危機的状態になっている。