閉塞した日本の政治であるが、その対極的にマスコミ受けする行動で大阪市長選で勝利した橋下徹である。彼が登場する絶好の基盤が今の日本にある。ほとんど意味もなく、急激な勢いで突っ込んでくるパフォーマンスが、庶民に受け入れられるのであろう。
この男は極右翼の人物である。それがために、直線的で攻め場所が一点的で効果十分なのである。
そのよい例が、知事時代に指摘した国営事業の負担である。誰もが疑問に思っていながら、国には逆らえないと黙していた負担内容をこの男は明らかにさせたのである。こうしたパフォーマンスは、さすがに見事である。
こうしたことに気を取られて、彼の本質的な思想はどんどん進められていくのである。この男は、核武装主義者であり、純粋の国粋主義者である。
君が代の中身を問うことなく、新生国家がナショナリズムを高揚させるために用いる方法を引き出した。国歌・国旗を教師に歌え・敬えというのである。
この男の狙いは、日教組の影響を抑えることである。思想調査を行ったのも、そうした勢力の締め出しを、憲法違反と認識しながらも、やったほうが勝ちという戦術で行ったのである。
新自由主義者とレッテルを張る人がいるが、彼にはそれほどの突き詰めた経済学理念があるとは思えない。この男の成果は、慣行的な仕事に堕していた公務員を、恫喝によって動かしているだけである。
当初は効果があるかもしれないが、職員に効率を求めることは、行政の手詰まりを導くことになる。給与の削減は質の低下を招くことになる。ボロが出る前に、知事から市長に転身したのは、保身的で賢明な方法であったと思われる。
国政進出への勢いに、既存政党がオロオロしている。維新の会の八策は、実現不可能なことが半分を占めている。参議院の廃止や首相公選や憲法改正である。
その維新の会であるが、大挙して府政や市政に議員を送り込んだために、質が悪い議員の不祥事が相次いでいる。
次回の国政選挙に、200~300名の擁立を準備しているようである。俄か仕立ての候補者が、時の勢いで当選しても、所詮は烏合の衆でしかない。何の成果も出せずに終わるであろう。
それより先に、候補者の半数も当選はしないであろう。大阪という限定された地域の勢いは、地方での国政選挙にまで及ぶとは思えない。
橋下のやり方は、小泉の手法に似てはいるが、下品さが際立っているが、お上品な細川護熙の「日本新党」にむしろ酷似する。
既成政党のふがいなさに乗じた、泡沫政党でしかない。