東電の福島原発事故を検証する、国会事故調査委員会(黒川清委員長)は、5日、最終報告書を衆参両議長に提出した。
東電や規制当局が、地震津波対策を先送りてきた。これまでに検証する機会や場面は数多くあったが、取り組んでこなかった。
と指摘し、この事故を「自然災害ではなく人災」であると断定した。首相など官邸の初動対応が、現場を混乱させたとも断じている。
さらに、東電の主張する想定外の津波による被害であるとする前に、地震そのもので破壊されていたのではないかとも指摘している。特に一号機は、配管が損傷を受けていたのではないかとも指摘している。
事実関係としては、かなり東電と官邸の暴走混乱と、これまでの原子力行政の怠慢の指摘はこれでよい。民間の検証報告よりも、原子力ムラへの切り込みが足らないが、国会がこれだけ指摘すればこれでいいのではないか。
しかし、国会の検証であるからこその問題が残る。即ち、今回の事故が人災とするならば、原子力発電所はしっかり作れば事故がなくなることを意味することになりはしないか。
それでは原発そのものの危険性や矛盾を、放置していることになる。原発は人間がいくら制御をしても必ず事故は起きる。
そしてその事故は、許容範囲のほとんど存在しない、不可逆性の問題として、人類に突きつけられる。
そして何よりも、放射性廃棄物の処理問題が未解決である。どの国もどのシステムもこれを解決していない。
福島原発事故が、人災であるとする側面だけを引き出したのでは、原発は何とかなる施設であるというメッセージになる。そうしたことも忘れないように報告書を読まねばならない。