シカゴ商品取引場のトウモロコシと大豆の価格が、高騰している。ブッシェル当たり、3ドル少々のトウモロコシ相場が、7ドルを超えている。
11日USDA(アメリカ農務省)が、6月半ばの猛暑と干ばつでトウモロコシ生産が、大きく減少すると発表した。また同時に、アメリカの穀物在庫が19.8%になり、在庫危険域に近づいたことも発表した。穀物価格には、生産量と在庫量が大きくかかわる。
左の表は、過去30年ほどの穀物在庫量の推移である。この10年ほど減少をたどっていることが判る。これに、世界最大生産地アメリカの干ばつである。
これは食糧危機が、始まったと言ってよい状況と言える。加えて、人口増加が止まらない。人口の増加は、途上国で顕著である。しかも増加している人口は都会である。食糧生産基地の農村の人口減少は、途上国も同じなのである。
左の表は、過去40年ほどの主要穀物の、価格推移である。最も激しく高騰しているのは、米である。(クリックすると大きくなります)
日本人は穀物価格の変化に無関心である。理由は二つある。もっとも高騰する、コメを自給しているからである。
もう一つの理由が、円高である。円が高くなり、穀物の輸入価格が上昇しないのである。
さらに消費者が気にかけない理由が、先進国に輸入されている穀物の多くは、家畜に与えているからである。
FAO(国連食糧機関)とOECD(経済協力機構)が今月、2021年までの食糧生産の見込みを発表した。アメリカ、ブラジルとEUがバイオエネルギーへと、穀物生産をシフトし、バイオ利用がほぼ倍増される。
穀物価格も10-30%上がると予測している。その一方で、生産量は1.7%ほどしか伸びないとみている。
こうしたことに無関心で、目先の取引価格だけで貿易をやろうとする、新自由経済主義者がいる。彼らの主張するのが、国家間の無関税システム=TPPである。
人は食べ物がなくては生きてゆけない。食糧は、今年のアメリカ中西部の干ばつのような、自然現象を受けるものである。
食糧危機に対して取れる政策はただ一つである。、食糧の自給である。食糧危機が始まった、今すぐに取り組まなければ、対応できるものではない。
TPP対応どころではない、食糧争奪の時代が目の前に迫っている。