世界が電気自動車(EV)に大きく舵を切っている。その先鋭が中国である。2030年には燃料車を生産しなくなる。EVの価格のほぼ四割を電池価格が占めているが、リチウムやマンガン、ニッケル、コバルトなど希土類が必要になる。とりわけ日本の吉野彰のノーベル化学賞の対象になった、リチュウムイオン電池が今のところ主流である。
原子番号水素、ヘリュウムにつぐ3番のリチュウムの生産地域は限られている。チリにつぎオーストラリアにアルゼンチンとなっている。(上図)途上国が目立つが、チリは中国に46%、韓国に26%、日本が12%に輸出している。アルゼンチンは中国に45%、アメリカに26%、日本に13%輸出している。中国の本気度が見れる。世界最大のリチュウム埋蔵があるとされる、ウユニ塩原を抱えるボリビアは技術も資本も乏しく、中国と日本が虎視眈々と狙っている。
日本の自動車生産はトヨタが政治的に握っている。トヨタは燃料車にハイブリット者を主流にし、EV及び腰である。これまで築き上げてきた日本の自動車産業は、それぞれの拠点で城下町を作っている。子請け、孫請け、非孫請け・・と、いつでも切って捨てることが出来る、地域の零細企業を抱えている。
EVは電気製品と言って良い。洗濯機や掃除機と同じである。ミッションもラジエータもない。部品が3万とも4万ともいわれる燃料自動車に比べて、EVは数千でしかない。城下町を抱える日本の自動車産業は、お抱えの企業や地域の束縛から簡単に抜け出られない。
中国の持つ政治的独裁制は、国家的事業の転換には強い。リチュウムイオン電池で圧倒的に先行していた日本は、中国に追いつかれ追い越されてしまった。
日本の戦略の幅が狭い。チリのリチュウム産業はアメリカの企業が握っているが、2030年の国有化が決まっている。いずれ中国が抱き込むことのなるだろう。更に隣国のアフガニスタンのリチュウムも中国は狙っている。
アメリカが半導体などを巡って、中国を排斥しようと懸命に動いても、逆に追い込まれた中国は技術的なレベルを上げ、非アメリカの仲間を増やすばかりである。孤立するどころか、対立を経て逆の立場になるかもしれない。
EVの開発は日本が転換する良い指標になるが、どれほどこの国はその意識があるだろう。
次世代の全個体電池がどのような能力になっていくのか。しかし『いいもの長く』というかつての某メーカーのうたい文句ではないが、生産から使用し廃棄するまでを考えると、一番地球にやさしいのはエンジン車だと思うのは自分だけだろうか? まだまだ改良の余地もある。