そりゃおかしいぜ第三章

北海道根室台地、乳牛の獣医師として、この国の食料の在り方、自然保護、日本の政治、世界政治を問う

メガファームもたないのは世界の常識、国連の家族型農業こそ

2022-07-01 | 環境保護と循環

上の記事は、今朝の北海道新聞朝刊社会面トップにものである。牛乳余りの作為的事実に覆われた、酪農業界の一端がウクライナ問題で浮上している。日本の公共事業や補助事業は、たいがいは誰か国会議員のお手柄が吹聴されるものである。
21世紀になり誰もが、資源に限界を感じ異状気象が常態の現在に、多くの人が少なからずの危機感を感じているものだろう。環境の変化を真っ先に受けるのが、農業であるが。世界の農業政策は、こうしたことお考慮して家族農業へと、有機農業へと大きくシフトしている。日本の農業の有機耕地面積は僅かに、0.2%に過ぎない。昨年突如として日本政府は、みどり農業戦略を打ち出した。非現実的であるとしか思えない。
しかし現場では大型化、多投資型農業への道を開こうとしている。スマート農業などは目先を変えるための新たな技術を、農業外から導入して、結局は大型農業への道を懸命に模索しているに過ぎない。
記事にある畜産クラスター事業はその典型である。大きくしなければ補助金を出さない。経営内容や適不適などはお構いなしである。例えば、トラクターを購入しようとしても、大きなものに変えるのでなければ、補助金が出ない。現状負債を抱えていようが、経営内容が芳しくなかろうが、大きくすることでしか対象にされない。農家は過分の負債を抱えることになる。
世界中で農業の大型化を国が積極推進しているのは日本だけである。日本は国連が10年間にわたってキャンペーンを進める、家族型農業にも乗っていない。日本のような国土が狭く雨量と日光量の豊富な国では、決められた農地を有効に使う最適条件なのである。
日本国内産の農産物は世界一安全と過信する消費者が多いのにも驚かされる。日本は世界で最も単位面積当たりの投与農薬が多い国である。
国がまるでほかに方法がないとばかり勧めた酪農の大型化であるが、大量の輸入穀物に大量の資金と資材を投入して作られたものである。水道料も電気料も格段に増えて、典型的な浪費型経営となる。水も土も大気も汚す。
政府が推進した資源消費型大型の酪農は、大量生産しなければ経営が成り立たない。酪農の薄利多売事業ともいえる。資源が枯渇したり高騰してくると成り立たない。
彼らに大量の牛乳を生産してもらい、政府の方針に間違いがなかったと思ってもらうために、余乳キャンペーンを始めた。昨年暮れから始まり、まんまと世間をだませたが、それとて一時的なことでしかない。
資源に配慮した家族型の酪農家は、肥料や穀物が高騰すると大変ではあるが、我慢すれば何とかなる。政府ご推奨の大型農家のように潰れることはない。
現実問題として、一億近く(ほとんどが税金で我々のお金である)投入された500頭搾乳の農家と、自己資金で40頭搾乳している農家と、手取り(可処分所得)はほぼ変わらない。表題の、メガファームは「もたない」のは当たり前、世界の常識である。
しかしそれでは、乳業会社も穀物販売業者も農協も金も入ってこないし、生産物の販売も減少してしまう。GDPも低いままである。
資源や環境を無視した経済発展はいずれ限界が来る。それは一次産業に優先的に起こる。私たちはそのシグナルを正確に見届けなければならない。

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