2007年制作のイギリス、イタリア、ドイツ、スペインの合作。
以下、ネタバレあり。
観る予定のない人は ↓ どうぞ。
時代、場所は制作年当時のロンドン。
主人公アンジーは民間らしき人材派遣会社に雇われている30歳前半のシングルマザー。
イギリスに渡ってきて職探しをしている人たちが顧客。
英語もままならぬ人たちが、とりあえず収入が欲しいから、肉体労働でもなんでもOKと窓口に詰めかける。
彼らの雇用者側からの苦情の集まり場でもある。
派遣会社を突然解雇された主人公は、その経験を生かして自分で派遣会社を立ち上げる。
派遣先会社を探し、派遣人材を捌く仕事。
仕事を求めてくる人の中には、ビザのない不法移民もいる。不法移民への就労斡旋は違法というのは百も承知。でも、その業界では、不法移民のほうが、密告されたくないから雇い主の無理難題にも文句を言わない、という話も耳に入ってくる。
ある子連れの不法移民と知りあい、話を聞く。母国では出版会社を経営していたが、国の政策に逆らう内容の本を出版したことでお尋ね者になり、国を離れた、という。しかしイギリスでは難民認定を受けることができず、親子4人身を潜めて生活しているという。その隙間風吹き抜ける隠れ家では子供たち(当然学校にも行っていない)も悲惨と、住む場所の世話をしてやる。
毎朝、職を求めてくる人を求人会社に振り分けるのが日課。不法移民も毎度のことに求職にやってくる。最初は、断り続けるが、ついついおいしい話でもあるし、偽造パスポートをこしらえて、彼らへも職の斡旋をするようになる。雇用会社からの収入から一定割合が斡旋業者の実入りになるわけだけれど、不法移民の場合は、偽造パスポート作成代として、割り増し分が上乗せされるのです。簡単に言えば、ピンハネ率が高くなるのです。
求職者が後を絶たず、斡旋収入もつみあがった頃、事件が起きます。移民たちの何人かが、彼女の家に押し入り、子どもを誘拐したと告げ、家探ししてお金と金目のものを奪い去り、さらに3万ポンド(?)の支払い(ピンハネ分を返す?)をするよう約束させるのです。子どもの命には替えられないので、彼女はまたも、借金を背負うようになります。
地域の同業者から悪質な嫌がらせも受けるようになります。
次のシーン。彼女は空港にいます。
ウクライナへ行くためです。
ウクライナの45人の求職者をイギリスに送り込む窓口業者となっているのです。
パスポート(偽造)を手渡し、渡航目的を、若い人には「学生」、そうでない人には「観光」と言い含めます。勿論そのウクライナ人は英語が喋れるわけではないのです。
とにかく、イギリスに入国したい、その目的を達成するための窓口の仕事(当然違法)をウクライナ人通訳を通してチェックしている姿が映像でエンディングです。
チョイス。アンジーの場合は違法社会も生きていく手立てとして選択したという流れです。
ウクライナが話題に上っていますが、今だったら、当然シリア難民が大きく取り上げられるでしょうね。トルコから海を渡ってギリシャ領土にわたるために、闇業者の言い値のお金が流れています。ゴムボートが出る港では救命胴衣がバカ売れだとか。値段もうなぎ上りでしょう。なんという現実。
去年、4000キロもの道をドイツへ向かう人々の行列の映像を、エアコンの入った室内で見ました。5年間も爆撃が止まない街に展望が持てないから、というコメントが、劇場映画のセリフのようでさえありました。なんと、人間って至らないのだろう、と思うばかりです。知恵者も多々いるのも、この社会なのですから、良いほうに向かいことを期待するばかりです。
余談
思えば、この映画の立場っぽいことを経験したことがあります。
もう25年ほども前に、中国の学究の方を日本の大学院への留学の仲介をしました。
その少しあとで、自宅に面識もない人から電話がありました。
「日本に留学したい人がたくさんいるので、日本の語学学校を紹介してもらえないか」と。
勿論、断りました。どこからウチの電話番号を入手したのか不思議ではありました。
そう、そのころは、語学留学名目で日本に入国して、アルバイトをしまくって稼ぐ、学校通学は名目のみ、というケースが報じられていたので、その手のひとつだったのでしょう。
そういえば、殆ど名前の知られていない大学がその片棒を担いでいたこともありましたっけ?
「この自由な世界」って、モラルのハードルは自在に上下しますので、そこのところが厄介でもあります。
以下、ネタバレあり。
観る予定のない人は ↓ どうぞ。
時代、場所は制作年当時のロンドン。
主人公アンジーは民間らしき人材派遣会社に雇われている30歳前半のシングルマザー。
イギリスに渡ってきて職探しをしている人たちが顧客。
英語もままならぬ人たちが、とりあえず収入が欲しいから、肉体労働でもなんでもOKと窓口に詰めかける。
彼らの雇用者側からの苦情の集まり場でもある。
派遣会社を突然解雇された主人公は、その経験を生かして自分で派遣会社を立ち上げる。
派遣先会社を探し、派遣人材を捌く仕事。
仕事を求めてくる人の中には、ビザのない不法移民もいる。不法移民への就労斡旋は違法というのは百も承知。でも、その業界では、不法移民のほうが、密告されたくないから雇い主の無理難題にも文句を言わない、という話も耳に入ってくる。
ある子連れの不法移民と知りあい、話を聞く。母国では出版会社を経営していたが、国の政策に逆らう内容の本を出版したことでお尋ね者になり、国を離れた、という。しかしイギリスでは難民認定を受けることができず、親子4人身を潜めて生活しているという。その隙間風吹き抜ける隠れ家では子供たち(当然学校にも行っていない)も悲惨と、住む場所の世話をしてやる。
毎朝、職を求めてくる人を求人会社に振り分けるのが日課。不法移民も毎度のことに求職にやってくる。最初は、断り続けるが、ついついおいしい話でもあるし、偽造パスポートをこしらえて、彼らへも職の斡旋をするようになる。雇用会社からの収入から一定割合が斡旋業者の実入りになるわけだけれど、不法移民の場合は、偽造パスポート作成代として、割り増し分が上乗せされるのです。簡単に言えば、ピンハネ率が高くなるのです。
求職者が後を絶たず、斡旋収入もつみあがった頃、事件が起きます。移民たちの何人かが、彼女の家に押し入り、子どもを誘拐したと告げ、家探ししてお金と金目のものを奪い去り、さらに3万ポンド(?)の支払い(ピンハネ分を返す?)をするよう約束させるのです。子どもの命には替えられないので、彼女はまたも、借金を背負うようになります。
地域の同業者から悪質な嫌がらせも受けるようになります。
次のシーン。彼女は空港にいます。
ウクライナへ行くためです。
ウクライナの45人の求職者をイギリスに送り込む窓口業者となっているのです。
パスポート(偽造)を手渡し、渡航目的を、若い人には「学生」、そうでない人には「観光」と言い含めます。勿論そのウクライナ人は英語が喋れるわけではないのです。
とにかく、イギリスに入国したい、その目的を達成するための窓口の仕事(当然違法)をウクライナ人通訳を通してチェックしている姿が映像でエンディングです。
チョイス。アンジーの場合は違法社会も生きていく手立てとして選択したという流れです。
ウクライナが話題に上っていますが、今だったら、当然シリア難民が大きく取り上げられるでしょうね。トルコから海を渡ってギリシャ領土にわたるために、闇業者の言い値のお金が流れています。ゴムボートが出る港では救命胴衣がバカ売れだとか。値段もうなぎ上りでしょう。なんという現実。
去年、4000キロもの道をドイツへ向かう人々の行列の映像を、エアコンの入った室内で見ました。5年間も爆撃が止まない街に展望が持てないから、というコメントが、劇場映画のセリフのようでさえありました。なんと、人間って至らないのだろう、と思うばかりです。知恵者も多々いるのも、この社会なのですから、良いほうに向かいことを期待するばかりです。
余談
思えば、この映画の立場っぽいことを経験したことがあります。
もう25年ほども前に、中国の学究の方を日本の大学院への留学の仲介をしました。
その少しあとで、自宅に面識もない人から電話がありました。
「日本に留学したい人がたくさんいるので、日本の語学学校を紹介してもらえないか」と。
勿論、断りました。どこからウチの電話番号を入手したのか不思議ではありました。
そう、そのころは、語学留学名目で日本に入国して、アルバイトをしまくって稼ぐ、学校通学は名目のみ、というケースが報じられていたので、その手のひとつだったのでしょう。
そういえば、殆ど名前の知られていない大学がその片棒を担いでいたこともありましたっけ?
「この自由な世界」って、モラルのハードルは自在に上下しますので、そこのところが厄介でもあります。