中井久夫訳カヴァフィスを読む(180)(未刊・補遺05)2014年09月17日(水曜日)
「混乱」という作品は、私にはよくわからない。詩のためのメモのようにも思える。
三行目は「魂の生命は(肉体の)生命の外側で生きさせられる。」という意味だろうか。「魂の生命」と「肉体の生命」とが対比させられている。「生きさせられる」と書いているのはどうしてだろう。「肉体」は「魂」を拒んでいるのか。「魂」が「肉体」から離れて自由に生きようともがいていることを逆説的に書いているのだろうか。
「私の生命」と「私の(肉体の)生命」だろうか。「私」は「肉体」であり、「魂」は「私」ではないのかもしれない。いや、そんなことはない。一行目「わが魂」と書いている。「私」と「わ」という、ふたつの「主語」がこの詩では動いている。「魂の生命」と「魂ではないものの生命」が。
どう読み進めていけばいいだろうか。
二行目の「混乱し」「麻痺する」ということばを手がかりにすれば、「魂」ではない「生命」は混乱したり麻痺したりしないことになる。「魂」はまた、待つことが苦手であり、退屈すると死にそうになる。「魂」ではない「生命」は退屈したり、麻痺したりしないということか。
わかりにくい「二元論」である。
わかりにくいのは、もしかするとカヴァフィスが「二元論」を信じていないからかもしれない。
あるいは、この「魂」は「魂」ではないものを、「魂」があこがれているものの方へつれていきたいのかもしれない。けれど、「魂」ではないものの方が頑固で(?)粘り強く(?)、「魂」が屈するのを見届けている。
「魂」は、敗北しながら「魂」ではないもの(肉体)の内部を生きるしかなくなる。内部で生きることを拒まれ、外側で生きることを強制されていたのに、その外側で自由に生きるのではなく、外の「周辺」をうろうろしながら生きるように求められている--そういう「矛盾」したことが書かれているのかもしれない。
「リッツォス詩選集」(中井久夫との共著、作品社)が手に入りにくい方はご連絡下さい。
4400円(税抜き、郵送料無料)でお届けします。
メール(panchan@mars.dti.ne.jp)でお知らせ下さい。
ご希望があれば、扉に私の署名(○○さま、という宛て名も)をします。
代金は本が到着後、銀行振込(メールでお知らせします)でお願いします。
「混乱」という作品は、私にはよくわからない。詩のためのメモのようにも思える。
わが魂は真夜中になると
混乱し麻痺する。その上、
魂の生命は生命の外側で生きさせられる。
三行目は「魂の生命は(肉体の)生命の外側で生きさせられる。」という意味だろうか。「魂の生命」と「肉体の生命」とが対比させられている。「生きさせられる」と書いているのはどうしてだろう。「肉体」は「魂」を拒んでいるのか。「魂」が「肉体」から離れて自由に生きようともがいていることを逆説的に書いているのだろうか。
そしておそらく来ないだろう暁を待つ。
待ち、駄目になり、退屈の余り死にそうになって、ようやく
私の生命の中に取りこまれ、生命とともにあるようになる。
「私の生命」と「私の(肉体の)生命」だろうか。「私」は「肉体」であり、「魂」は「私」ではないのかもしれない。いや、そんなことはない。一行目「わが魂」と書いている。「私」と「わ」という、ふたつの「主語」がこの詩では動いている。「魂の生命」と「魂ではないものの生命」が。
どう読み進めていけばいいだろうか。
二行目の「混乱し」「麻痺する」ということばを手がかりにすれば、「魂」ではない「生命」は混乱したり麻痺したりしないことになる。「魂」はまた、待つことが苦手であり、退屈すると死にそうになる。「魂」ではない「生命」は退屈したり、麻痺したりしないということか。
わかりにくい「二元論」である。
わかりにくいのは、もしかするとカヴァフィスが「二元論」を信じていないからかもしれない。
あるいは、この「魂」は「魂」ではないものを、「魂」があこがれているものの方へつれていきたいのかもしれない。けれど、「魂」ではないものの方が頑固で(?)粘り強く(?)、「魂」が屈するのを見届けている。
「魂」は、敗北しながら「魂」ではないもの(肉体)の内部を生きるしかなくなる。内部で生きることを拒まれ、外側で生きることを強制されていたのに、その外側で自由に生きるのではなく、外の「周辺」をうろうろしながら生きるように求められている--そういう「矛盾」したことが書かれているのかもしれない。
リッツォス詩選集――附:谷内修三「中井久夫の訳詩を読む」 | |
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「リッツォス詩選集」(中井久夫との共著、作品社)が手に入りにくい方はご連絡下さい。
4400円(税抜き、郵送料無料)でお届けします。
メール(panchan@mars.dti.ne.jp)でお知らせ下さい。
ご希望があれば、扉に私の署名(○○さま、という宛て名も)をします。
代金は本が到着後、銀行振込(メールでお知らせします)でお願いします。