詩はどこにあるか(谷内修三の読書日記)

日々、読んだ本の感想。ときには映画の感想も。

高橋睦郎『深きより』(13)

2020-12-01 11:28:03 | 高橋睦郎『深きより』
高橋睦郎『深きより』(13)(思潮社、2020年10月31日発行)

 「十三 帰るべきところは」は「鴨長明」。

神の家の裔に生まれ 神に仕へるべく育てられ
父の死によつて突然 神の家から遠ざけられた
いつか神の前に帰ることのみが 望みだつた

 「神の家」と「帰る」。「家」に帰るのか、「神」に帰るのか。書き出しの三行だけではわからない。
 やっと「望み」が叶うかにみえたとき、再び、「望み」を断たれる。「帰る」という「動詞」が断たれた、と読んでおく。

その望みが全く断たれたときは すでに五十歳
わたくしは はじめて帰るべきところを知つた
方一丈 折り畳める仮屋をつくつて 四つ車に乗せ
都から大原へ さらに日野の外山へと移り棲んだ

 「帰る」は「移り棲む」と言い直される。「家に、棲む」のである。「仮屋」の「仮」が「神」になるかもしれない。「仮」は絶対ではない。「神」が絶対であるとするなら、「仮」は神ではないが、神ではないものを絶対とするからこそ、そこに「個人」の思想(肉体)が動く。だれのものでもない、一人の肉体だけが向き合う絶対が生まれる。
 この「絶対的、個人的思想」は、すべてを相対化する。

時代の車輪はとどろに響し 確実に動いてゐた
山中では 都に在るよりも明確にそれが聞こえた

 「都に在るよりも」が相対化の視点をあらわしている。
 しかし、私には、この「相対化」が必然の結果なのか、逆に「相対化」をよりどころとして「絶対的、個人的な思想」にたどりついたのか、よくわからない。
 「神の家」に帰ろうとしていた鴨長明が「仏」に向かうときの、「転向」の起点がわからない。

死後を思へば 西の空ひろびろと開けて明るい

わたくしはそれを聞き 念仏申して眠りに就いた

 途中にある「西の空」と、最終行の「念仏」が「帰る」と、どう結びついているのか、高橋の詩からは読み取ることができなかった。書き出しの「父の死」の「死」が突然「わたくし」を呼んだのか。









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高橋睦郎『深きより』(12)

2020-11-28 11:08:18 | 高橋睦郎『深きより』


高橋睦郎『深きより』(12)(思潮社、2020年10月31日発行)

 「十二 その女によつて」は「清少納言」。

輝かしい女があつた その女を中心に 後宮が
宮廷があつた 国家があつた 世界が存在した

 この二行を読んだとき、私は「その女」を清少納言だと思った。「主人公」を客観的に(散文的に)語っているのだと思った。ところが、読み進むと「その女」と「定子」であることがわかる。

わたくしはその女に仕へて その女の光儀を写し記す
その女によつて存在する世界を 記しとどめる

 そして、その二行を引き継いで書かれる次の一行が、この詩のポイントである。

その女の終焉は わたくしの末路は どうだつたか

 つかえる女(定子)が死んでしまったとき、それにつかえていた女(清少納言)はどうなるのか。
 定子を「詩(あるいは、ことば)」、清少納言を「高橋睦郎」と置き換えて読むと、高橋の書いていることがよくわかる。

その女に終はりなど 断じてあつてはならぬこと
だから その女の世界も 世界の端にあるわたくしも
永遠に現在形として 生きつづける といふこと

 よくわかるが、わかりすぎて「詩」から遠くなってはいまいか。ここに書かれているのは高橋の「夢」というより「理想」である。「理想」と「夢」は、どう違うか。「理想」は「論理」によって語ることができ、「論理」によって説得力を持つ。つまり、問いによって(わたくしの末路は どうだつたか)によって必然的に成立してしまう答えを獲得する。逆に言えば、問いを発したときから答えは存在し、その答えを乗り越えられないということ。
 「論理」とは、つまり「散文」でもある。そして、こういうときの「散文」は清少納言が書いた散文とは違う。
 高橋が書いているように、清少納言が書いたのは「散文」ではなく「散文詩」である。「散文詩」をつらぬくのは「論理」ではなく、なまなましい感覚。「論理」を拒絶して動く、ことばそのものの「肉体」である。詩の「答え」は「結論」にあるのではなく、ことばが動いていくときの「肉体性」、その場限りの躍動、欲望のあらわれ方、その暴力性にある。
 この作品では、あまりにも「論理」が前面に出ていて、欲望が欲望の暴力を失っている。








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高橋睦郎『深きより』(11)

2020-11-27 10:49:02 | 高橋睦郎『深きより』


高橋睦郎『深きより』(11)(思潮社、2020年10月31日発行)

 「十一 泉を怖れよ」は「和泉式部」。

まだ恋も知らぬわたくしを 歌が訪れたのは 闇の中
それとも 歌そのものが纏つた闇 だつたろうか
いいえ もともとわたくし自身が耐へがたい闇の渦巻で
その暗い渦の力が 抗ひがたく吸い寄せた歌 ではなかつたか

 この書き出しは「紫式部」について書いた「十 わたくしではない」に似ている。「わたくし」ではないものが「わたくし」のところへやってくる。紫式部はその結果「わたくしではない」ものになる。和泉式部は「わたくし」のまま、歌はやってきたのではなく呼び寄せたもの、というところが違うが。
 そして、この「わたくし」を和泉式部は「闇の渦巻」「黒い渦の力」と呼んでいる。この「闇」「渦」は、こう言い直される。

それならば わたくしの竟の居場所は ほかならぬ恋の闇
さう思ひ定めて 渦巻く 闇の底に 立て膝に座を決めた

 「闇の底」。「底」ということばが出てくる。「底」は、しかし、「行き止まり」ではない。「底を打つ」ということばがあるが、そういう「底」とはかなり違う。
 有名な歌の一部を引いて、高橋は、こう言い直す。

つぎつぎに わが身よりあくがれ出る 歌の蛍火
点滅する火虫を産みつづける 闇の泉こそが わたくし

 「底」から、何かが溢れ出る。噴出してくる。「泉」というのはたいてい「底」から水を噴き出している。「闇の泉」は水ではなく「あくがれ」を噴出する。それは蛍になってどこへともなく消えていく。
 この噴出(出る)を「出る」にまかせるのではなく、和泉式部は「産む」のである。

 この「産む」をキーワードとして読むならば、高橋は「詩を産む」。自分以外の誰かになることで、詩を産む。詩は生まれてくるものであるだけではなく、また、産むものなのである。
 冒頭の一行にもどって言えば、詩(歌)は訪れてくるのではない。「わたくし(和泉式部)」が産み出したものが呼び寄せるのだから、その訪れそのものも「産む」と言える。つまり、和泉式部を訪れることで、「産み直される」ものなのだ。
 詩はいつでも「産み直されるもの」と言い直せば、それはそのまま、この詩集の定義になるかもしれない。










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高橋睦郎『深きより』(10)

2020-11-26 14:06:22 | 高橋睦郎『深きより』


高橋睦郎『深きより』(10)(思潮社、2020年10月31日発行)

 「十 わたくしではない」は「紫式部」。

それはわたくしではない 世に名高い源氏の物語を産んだのは
思ふに 歌のたま 物語のものが わたくしの裡に入つたのだ
いつのこと? おそらくは未生の闇から光へ押し出されたとき
そのとき以来 わたくしは尋常のわたくしではなくなつた

 もし「源氏の物語」ということばがなかったら、ここに描かれている「作家」は誰のことを指すかわからない。それは逆に言えば「歌」を含む「物語」のすべての作者にあてはまる。二行目に「歌のたま」「物語のもの」と書いているが、「歌」だけ、あるいは「物語」だけに限定すれば、「作者」というのは「わたくしどはなくなつた」人のことだろう。
 実際、高橋の場合はどうなのか。
 この詩集を書いているとき、高橋は高橋であることをやめている。この作品では、高橋は紫式部という「わたくし」以外の人間になっている。
 だから、この書き出しの四行には、何かが書かれているようであって、何も書かれていない。高橋が書きたいのは「わたくしではない」ということではないのだ。
 紫式部の本名は何かと問うたあと、高橋は、こう書いている。

物語のなかの源氏の君とて 女君の誰彼とて 同じこと
そのつどの通り名はあつても 本当の名は隠されて
つひには肉身も雲隠れ 夜半の月ならぬわたくしもまた

 「本当(の名)」は「隠されて」いる。隠れているものこそ「本当」である。もし「本当」というものがあるとすれば。
 これは「あらわす」(たとえば、物語を、書き、あらわす)、あるいは「あらわれる」ものが「本当」ではないということだ。
 私たちが読まなければならないのは、そこに「隠されて」いるものがなにか、あるいは何が「隠れている」か。
 この詩にキーワードがあるとすれば「隠れる/隠す」である。
 この詩では、紫式部に「なって」書くという行為は「あらわされ/あらわれている」。その行為によって隠されているは「わたくしではなくなりたい」という欲望である。しかし、その欲望は「夜半の月」のように、どんなに雲隠れしようとも、存在が見えてしまうものである。
 虚構のことばを生きる高橋の絶望の絶対性が隠されている。







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高橋睦郎『深きより』(9)

2020-11-24 10:08:14 | 高橋睦郎『深きより』


高橋睦郎『深きより』(9)(思潮社、2020年10月31日発行)

 「九 物語が始まる」は「藤原道綱母」。

男が女を求めるのは 誰のためか

 という書き出しで始まる。ここでは肉の欲望は語られない。「意識」が語られる。「意識の欲望」は「目の欲望」でもある。詩の最後の方で、こう語られる。男は男にどう見られているかを意識して女を求めている、と。このとき目と意識は一体である。

そのじつ 意識してゐるのは男の目のみ

 そして、つづける。

苦しみの果て そのことに気づいた女がある

 ここから詩が急展開する。
 なぜ、女、藤原道綱母に、そう語らせなければならなかったのか。「気づいた男がある」と、高橋自身が語ってもいいではないか。男が、男のまま「意識してゐるのは男の目のみ」と主張して不都合があるわけではない。
 たぶん、「意識してゐるのは男の目のみ」は高橋自身の体験を含んでいる。だが高橋は体験をそのまま語るのではなく、「体験」を「意識」という抽象にして語りたいのだ。
 その「方法」を、高橋は「蜻蛉日記」に見つけたのだろう。高橋は、高橋自身を「物語」に閉じこめることで、「意識の記録=日記」を完結させる。
 女、藤原道綱母になった高橋は、こう語り直している。

それがわたくし 日記を借りて物語を始める
実の日記 物語はここに始まる 女たちよ

 「日記」は「事実」を書くものである。「物語」は「虚構」であり、「事実」ではない。しかし、虚構の「日記」こそは、真実を表現する方法である。「虚構」であると言い張って「真実」を書くとき、その「書く」という行為、意識の運動、ことばの運動こそが「事実=真実」になる。
 
 この詩のなかには、高橋が男のままでは書けなかった行がある。

そのじつ 意識してゐるのは男の目のみ

 これは高橋の自覚だが、女になって、女から告発するというかたちでしか書けない高橋の「苦しみの果て」の叫びなのだ。告白なのだ。







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高橋睦郎『深きより』(8)

2020-11-21 14:49:42 | 高橋睦郎『深きより』


高橋睦郎『深きより』(8)(思潮社、2020年10月31日発行)

 「八 わたくし・おほやけ」は「紀貫之」。

 紀貫之は土佐にいた五年間は歌をつくらなかった。土佐から都へ帰る船上で突然「歌ごころ」がもどった。墨をすり、紙をひろげ、筆をとると……。

筆さきからあふれ出たのは 歌ならず こちたき日記
それも男手のおほやけならず 女手のわたくしの日記
書くわたくしも おのずから男ならず 女になつてゐた

 「書く」という動詞がこの詩のというより、高橋の詩のキーワードになると思う。
 「書く」のは「手」で書くのである。「男手」とは「漢字」、「女手」とは「仮名(かな)」を指すが、この「手」は「書く」という動詞を「名詞化」したものと言える。紀貫之の時代は、漢字で書けば男、かなで書けば女という区別があった。この区別を逆手にとって、紀貫之はかなを書くことで「男手」を「女手」に変えた。「手」を変えることが、男から女に「なる」ことだった。
 この三行は、とても強烈だ。何度もくりかえして読んでしまう。

 このあと「女」は「わたくし」と言い直される。ここから、私は少しずつ違和感を覚える。

わたくしは女になることで 初めてわたくしを歌うた
それまでわたくしが歌うてきたのは わたくしならず
上つ方の屏風の絵につけた かりそめのおほやけ歌

 ここに書かれているのは「論理」の積み重ねによる、「論理の解体/論理の再構築/論理の逆転」である。
 だから、とてもうるさく感じられる。「手」と「書く」を通して「女」になったはずなのに、少しも「女の肉体」を感じさせない。「手」が消えてしまっている。「書く」が消えてしまっている。「ひらかな」が多用されているが、見かけのことに過ぎない。

 ここから脱線して、私は、こんな「誤読」をする。
 「文字(表記)」の違いは「性」の違いである。しかし、紀貫之を離れて高橋の詩にもどってこの問題を考えると奇妙なものが見えてくる。
 高橋が紀貫之を取り上げたとき、「女になる」ということが「欲望/本能の理想」として書かれている。詩は女になって書くもの、女こそが詩人である、という本能的な認識が動いている。頭ではなく、肉体が動いている。その「肉体」が「手」というこことば、「書く」ということばを呼び寄せていた。
 しかし、せっかく女になるという欲望を実現したのに、高橋はその女を隠すようにして「文字」を書く。実際は漢字にこだわって書いている。さらに漢字へのこだわりを「旧かな」をつかうことで漢字の問題からべつなものにすりかえようとしている。(高橋は、別の主張を持っているだろうけれど。)このこだわりを目にすると、私には、高橋は高橋のなかに動いている女を隠すために「文字表記」にこだわって書いているとしか思えない。漢字(男手)にこだわることで、「手」から男になるという方法を生きているとしか、私には思えなくなる。
 紀貫之の「肉体の変化」に心底同意し、紀貫之の肉体の変化についていっているとは感じられない。「肉体」の問題を「わたくし/おおやけ」という「意識」のありようにすえかえ、「意識」を追認している。
 言い直せば、「女になる」ということを、現実として生きるのではなく、「虚構」として提出し、「虚構」のなかで「歌(文学)」を再構築し、それを紀貫之像として提出している。
 
 何か違うなあ。

 高橋の詩(書きことば)は、女であることを隠すために動いている。
 本質は女なのに、男になって書いている、という印象がする。男が書いている詩というものを書いてみる、という形で書かれているという感じがする。詩を書くことで、男になっている、男をアピールしているという印象、男根主義の匂いがする。
 この複雑なコンプレックスが、紀貫之に「女になつてゐた」と言わせた後、それを念押しするようにして、こんなふうに詩を締めくくる。

残る十とせ 頼まれの随 屏風歌をつくりつづけたが
誰が知らう それはすべて わたくし歌だつたと
翻つて かつてのおほふけ歌も わたくし歌に変はつたと

 こんな念押しは、男根主義者だけが見せる「未練」だろう。女にかわってしまった人間、つまり「女」が言うことではないだろう。他人(公)がどう見る化など関係ないとつっぱねるのが「わたくし」の決意というものだろう。
 でも、こういう未練が最後に出てくるから、高橋の詩だと言えるのだが。


                



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高橋睦郎『深きより』(6)

2020-11-19 17:13:01 | 高橋睦郎『深きより』





                



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高橋睦郎『深きより』(5)

2020-11-17 09:12:05 | 高橋睦郎『深きより』
高橋睦郎『深きより』(5)(思潮社、2020年10月31日発行)

 「五 待ちつづける」は「小野小町」。

たぶんそこで わたくしは日がな夜どほし 待ちつづけた
誰を? 顔のない者を いつそ訪れそのものを と言はうか
それゆゑ いつしか付いた仮の名が小町 小やかな待つ女

 「待つ」と「訪れる」が交錯する。「動詞」は向き合うものがあって、はじめて行為として成り立つということか。動詞が向き合うとき、その両端に、たとえば男と女が生まれる。
 これは、詩の終わりで、こんなふうに言い直される。

されかうべの二つの眼窩にたまる雨水 雨水にうつる青空
あるいはそれが 花の移ろひ 夢の名残り 歌といふもの?

 「うつる」という動詞は書かれていない「うつす」を含む。「うつす/うつる」。雨水は青空を「うつす」、青空は雨水に「うつる」。それは切り離すことができない。
 同じように「待つ」は「訪れる」を切り離すことができないし、「訪れる」は「待つ」を切り離すことができない。
 しかし、現実には、その切り離せないものが切り離されてしまうことがある。
 その果てしない隔たりを「夢」がつなぐ。その「夢」をことばにした「歌」がつなぐ。「歌」は存在してはならない「断絶/切断」に懸けられた橋である。
 「待つ」けれど「訪れる」ものがいない。そのとき、「夢」は「歌」という橋をわたってしまう。
 それは「禁じられた越境」である。だから、「死(されこうべ)」になってしまうのだ。「歌」の橋をわたってしまうと。「歌」を詠んだひとは死ななければならない。ことばを生きた人間は死ななければならない。詩が、ことばにいのちを吹き込むのだ。死んだときにだけ、「待つ」という動詞が、たったひとつの生き方としてありつづける。永遠になる。


                



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高橋睦郎『深きより』(4)

2020-11-15 18:56:46 | 高橋睦郎『深きより』


高橋睦郎『深きより』(4)(思潮社、2020年10月31日発行)

 「四 雪しく封印」は「大伴家持」。

言ふなかれ わたくしが二度死なしめられた とは

とはじまる。二度の死とは肉体の死(戦死)と反逆者として位や名前を奪われたことを指す。しかし、家持はそれを認めない。なぜか。

すでにわたくしは わたくし自身を葬つたのだ
新しき年の始の初春の今日降る雪のいや重け吉事
これが 私の自らを葬る弔ひの棺挽き歌
同時に この国の古歌そのものの挽歌でもある

 「歌」によって「わたくし自身を葬つた」というとき、私は「辞世の歌」を連想するが、高橋の引用している歌は辞世の歌なのか。それに、この歌は「挽歌」なのか。私は「降りつづく雪のようによいことが重なりますように」という祈りの歌、新年を祝う歌だと思っていたので、ここで、つまずいた。
 しかし、冒頭の「二度の死」を、ここでこんなふうに虚構によって「二重」にしていることの方に興味を持った。「わたくしを葬る」と「古歌を葬る」を重ねるとき、それは「古歌に通じるわたくしを葬る」ことになる。つまり、「新しい歌を生きる」ということになる。そして、この「新しい」を「新年」に重ね合わせれば、「死」こそが新しい命を生み出すということになる。
 屈折しているというか、論理的であるにしても、その論理が論理のための論理のように感じられる。これは冒頭の「二度の死」に対抗する家持の「戦い」であるとも言える。

この歌の天地を満たし 降りつづき降り重しく雪は
歌ふわたくしと歌ふ時代とを 共に送る純白の葬儀
その白の中に わたくしはしかと封印したのだ

 何を封印したのか、が問題かもしれない。「万葉集」最後の歌であることを考慮すれば、たしかにそれ以前の歌(同時代の歌を含む)を封印したということになるのかもしれないが、私はそれについては書くことを保留する。
 私が書きたいと思うのは「白」ということばについてである。「純白の葬儀」を「その白の中」と言い直すとき、高橋は、いったい何を見ているのだろうか。
 「白」とは何か。
 単なる「色」を超えた存在のように私には感じられる。
 「二度の死」「わたくし自身を葬る」という「二重性」。この「二重性」を私は「隠す」ということばでとらえ直したい。あるいは「否定」ということばでとらえ直したい。
 家持の戦死から、家持の名前と将軍としての地位を剥奪するとき、そこでは家持の存在が隠され、否定されている。歌を歌い、その歌の中で「わたくし自身を葬る」とは「わたくしの名前をみずから否定し、隠す」ということか。そのとき残るのは何か。「歌」である。署名のない歌、詠み人知らずの歌。ただ、ことばだけが残る。
 多くの歌には当然「署名」がある。しかし、署名を持たない歌もある。歌は署名がなくても生き残る。「万葉集」そのものも、編集者・家持の「名前」を無視して、あるいは超越して残る。
 もしかしたら「古歌を葬る」というとき、家持の考えていたのは(高橋の考えていたのは)、署名つきの歌のことかもしれない。そうしたものを否定し、署名なしで生き残る歌を目指す。いま(といっても、死んでからのことだが)、家持は「名前」を奪われた。「無名」になった。しかし、歌は残る。そこに「署名」を認めるか、認めないかは別問題として、歌は残る。                     
 そのときの「歌の肉体」のようなもの。署名されていない歌。あるいは「無名」の「無」が。それが「白」なのではないか。「白」は「無色」だ。その「無色」の無としての「白」。ただそこにあるだけの「肉体」の白い輝き。それこそが「歌」なのではないか、という思い……。

 私は富山の生まれであり、富山で育った。家持が見たのと同じ雪ではないが、同じ地域に降る雪を見ている。雪は、すべてのものを隠してしまう。高校時代に、「雪は夏の汗を隠して大地に降り積もる」「雪は夏の汗の結晶、大地を隠して降る」というような詩を書いた記憶がある。私の家は農家であり、雪は田畑で働くことからの解放をも意味した。もちろん、雪の間は雪の間で、しなければならないことはあるのだが。
 雪の白は、それまでの全てを封印する。ここから新しい何かがはじまる。はじめるための封印としての白。
 この封印する「肉体としての白」を、私はたしかに知っている、と思う。
 私の「誤読」は、高橋の思いを外れているだろう。だから「誤読」というしかないのだが、私は「誤読」したことを書き残しておきたいのである。






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高橋睦郎『深きより』(3)

2020-11-13 10:16:47 | 高橋睦郎『深きより』


高橋睦郎『深きより』(3)(思潮社、2020年10月31日発行)

 「三 私がゐるのは」は「柿本人麻呂」。

歌と文字とは 私において つひに一つ
私は うたつた歌を 文字で書きしるした
あるいは 文字で書くことで 歌をうたつた

 この三行を書き写しながら、私は私の書いていることが「無効」であることを認識せざるを得ない。
 柿本人麻呂を「文字で書くことで 歌をうたつた」と定義するとき、高橋は「文字で書くことで 詩をうたつた(詠んだ/つくった)」詩人ということになる。ところが私はワープロの関係で、高橋の「書いた文字」をときどき別の文字に書き換えている。つまり、改変している。改竄している。
 高橋は正字、旧かなで詩を書いている。「文字」にこだわっている。私は、その高橋の「こだわり」を無視する形で詩を引用している。

 これに先立つ部分には、

私の終の臥床 奥津城どころを捜しあぐねる人よ
無駄なこと 私の記憶は それらの何処にもない
私の仕事は つまるところ 私の足跡を消すこと
うつめみの私を消すことこそが 歌を立たせること

 という行がある。「歌を立たせる」と、ここに「立つ」という動詞があり、それは「私が立つ」ということと重なる。「歌」といういわば形のないもの(ことば)を、「肉体」として「立たせる」として言い直すとき、そこに「抽象」を「具体」に変えていく何かがある。しかし、まだ、何かが曖昧だ。
 高橋は、これをさらに

私がゐるのはただ 私のうたつた 歌のその内
私の書きとめた文字の並びの その中に のみ

 と言い直すが、これではさらに「抽象」にもどってしまう感じがする。「文字」を「ことば」に変えれば、多くのひとが言いそうなことである。「歌」を「作品」と言い直せば、あらゆる芸術家が言うだろう。「私はただ私の作品のなかにだけいる」と。それでは、単なる「抽象」であり、「普遍」に過ぎない。
 これを高橋は「文字」ということばで「個」に変える。「普遍」(抽象)であることを拒否する。
 そして、最初に引用した三行の前に、こう書いている。(直前に引用した二行と、最初の三行を、次の行で結びつけている。)

私は稚く うたふことを覚え 書くことを習った

 ここには私をつまずかせるおそろしいことが書かれている。「覚える」と「習う」。この二つの動詞を私はどんなふうにつかってきたか。ほかのひとはどうつかっているか。
 私は「覚える」を「無意識に知る」という意味でつかう。そして、その「知る」に「肉体に覚え込ませる」と同じである。本能(欲望)にしたがって、他人の「肉体」を見ることで、それを自分の「肉体」にしみこませる。ほとんど無自覚に。
 「習う」は違う。それは意識的な行為である。「知らない」ことを「習う」。ただし習うことで吸収できるものは、たぶんすでに自分の「肉体」のなかに蓄積されている何かだと思う。「肉体」のなかに蓄積されたものがないと、いくら習っても、それは身につかない。「肉体」の奥にあるものが刺戟され、表に出てくる。そして形を成す。それが習うであり、身につくということだろう。
 「書くことを習う」を具体的に言い直すと、「文字」を見る。それが「文字」であるとわからないまま「肉体」のなかにたまりつづける。それを「文字」としてひっぱりだすことを書く。書くとは、書き方を習うこと、肉体のなかにある「文字」を出現させると。その出現のさせ方を「習う」。
 次に習ったことが(「肉体」の奥から出てきたものが)、「肉体」を整える。「肉体」が整えられて、ひとに見せられる「人間」になる。ここに「立つ」という動詞が隠れている。「人間として立つ」のだ。「歌を立たせる」は「人間として立つ」なのだ。
 ここには自己肯定と呼ぶしかない自己否定、つまり新たに出現してきた自己の肯定、本能を習ったもので整えるという力業がある。その戦い現場が「文字」なのだ。

 さらに私はこんなことも考える。
 「うたふことを覚え 書くことを習った」は「文字」の前に「うたう」という本能があった、それが動いた。それを「書く」(文字)が制御した。制御された「ことば」は制御された「肉体」でもある。この制御するという動詞のなかにある「葛藤」が、また「歌」でもある。

 こんな厳しいことばの世界を、私は読み続けられるだろうか。






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高橋睦郎『深きより』(2)

2020-11-12 10:10:07 | 高橋睦郎『深きより』


高橋睦郎『深きより』(2)(思潮社、2020年10月31日発行)

 「二 すなはち鏡」は「額田王」。

熾りに熾る火のうへ 青銅を蕩かし 煮たぎらせる
煮立つた金属を 鋳型に注ぎ 水を浴びせて 冷やし固める

動詞がはげしく動く。休むところがない。セックスでいうとエクスタシーへ向かって加速していく感じだ。特に「蕩かす」という動詞が魅力的だ。「溶かす/解かす」ではない。客観を超えている。「蕩ける」には外側から「とける」ではなく、内部から「とける」という感じがある。私の感じでは「蕩けさせる」だが、「蕩かす」にはなにか自発的なイメージがあり、いっそう不思議な気持ちになる。だから、それにつづく「煮たぎらせる」も単に「煮る」以上のことがらである。「内部」が「たぎる」のである。自発的、な感じがする。「蕩ける」はおだやかな印象があるが、「たぎる」は激しい。内部にあるものが、外に出ようとしている。エクスターを求めてあえいでいる。
 それをふたたび固形にもどすとき、それは単なる形ではないだろう。
 ものを「形」にするとき、それがたとえ金属であったも叩いてのばしたり削ったりという外からの力でおこなうものがある。しかし、鋳造は、そうではない。外から矯正するのではなく、内部を自由に解放したあとで、その内部そのものに形を与えるのだ。その過程が「蕩かす」「たぎる」ということばで強調されている。

それら 木と火と土と金と水と 宇宙五大の愛し児が
すなはち 鏡 すなはち あきらけしわたくしこの身

 鏡は「内部」から噴出してきた「わたし」、隠されていたものが、いまあらわになったのだ。そして、それは「宇宙」と交歓する。宇宙になるとさえ言える。
 「すなはち」は「即」である。それは切り離せない。「鏡」と「わたし」は客観的にみれば別個の存在だが、それは「ひとつ」。というより「すなはち」という「ことば」が「鏡」と「わたし」を「ひとつ」にする。外部即内部。内部即外部。「すなはち」によって新しい力が生まれる。





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高橋睦郎『深きより』

2020-11-11 09:53:07 | 高橋睦郎『深きより』


高橋睦郎『深きより』(思潮社、2020年10月31日発行)

 高橋睦郎『深きより』は「古典」と高橋の交流(セックス)がテーマ。「古典」がどんなふうに高橋の「肉体(思想/ことば)」になったか。ことばを交わらせることは、肉体を交わらせることである。苦痛が快楽になったり、快楽が苦痛になったりする。その「刺戟」のなかで肉体は肉体を超える。自分以外のものになる。この苦痛は私のものか、相手のものか、相手の快楽は相手のものか、私のものか。交わっていると、そういう「区別」は無意味になる。この詩集に割り込んで行く(ことばをさしはさむ)のは、セックスしている最中の高橋にすりよっていくことになるのか、あるいは高橋の相手を奪うことになるのか。割り込もうとしたけれど、どこにも入り込む余地はなく、そばで傍観しているだけに終わるのか。これは、まあ、私自身の「肉体」をためされることだな、と思う。私は「野次馬(デバ亀)にすぎないので、少しずつ「覗き見た」部分、覗き見して興奮した部分について書いていくことにする。(高橋は「正字体」の漢字をつかっているが、私のワープロは簡略した漢字しかもっていないので、表記は正確ではない。詩集で確認してください。ルビも省略した。)
 「深きより」は稗田阿礼。

母が呼び 父が呼び 一族の誰彼がくりかへし呼んだ 私の名
呼んでは 耳から注ぎこみ 頭蓋に満たした言葉 ものの名

 「呼ぶ」が「耳から注ぎ込み」と言い直される。私は、この瞬間に奮える。私の知らなかった「セックス」がある。見落としていた「セックス」と言い換えることができる。
 「呼ぶ」とは「こっちへ来い」ということである。呼ばれたら、呼ばれた方へ行く。動くのは「私」である。
 ところが高橋はこれを逆にとらえる。「呼ぶ」とはだれかが私の方へやってくるだけではなく、私の肉体(耳)に入り込んでくる。
 俗な言い方をすると、女に呼ばれて女の方に近づいていったら、(女の肉体に侵入するつもりでいたら)、つかまえられて女が自分の肉体に侵入してきた。男でいたつもりが、突然、自分の肉体が女になった感じ。
 ペニスを挿入するつもりが、何かわけのわからないもの、知らないものが侵入してきて、私をいっぱいにする。侵入してきたものを感じるしかなくなる。犯されて、犯されながら犯すものが私自身になる。
 「言葉」という新しい肉体。「名前」という不思議な「肉体」。
 このとき高橋は「肉体」を「頭蓋」と言い直している。高橋は「セックス」を「頭蓋」でおこなうのだ。「言葉/名」が交わるのは「頭蓋という肉体」なのだ。

おどろおどろしい神神 嫉み深く血なまぐさい王たち 妃たち
聞きたくない 憶えたくない なのに押さへつけられ 強制され
そのうち それら 異形の影たちは 私の分けられない一部に
口をひらくと 漏れた咽喉の闇から 一回ごとに生れ 現れ

 「セックス」は、ときには本人の意思とは関係がない。「聞きたくない 憶えたくない」は「交わりたくない」の「ない」を含む。「なのに押さへつけられ 強制され」ることがある。強制されるのは苦痛である。しかし苦痛は快楽にもなる。肉体の反応は、ときに、意志とは関係なしに起きる。「私」を超越している。「私」を超越したものが、私の内部から生まれるのだ。それは「私の分けられない一部に」になっている。「私ではないものが、私になる」とき、その「私ではないもの」こそ、相手にとっての「私」、求めている「肉体」なのだ。
 「口をひらく」とき、「漏れた咽喉の闇から 一回ごとに生れ 現れ」るのは何か。「言葉」か。「耳から注ぎこ」まれた「名」か。その「名」が、もとの「名」のまま出てくることを相手は待っているのか。それとも違うことば(声)になってあらわれるのを期待しているか。それは、わからない。わかるのは、そういうことが「一回ごと」であるということだ。
 一期一会。
 「セックス」は何度くりかえしても、一期一会である。同じ肉体、同じ官能ではない。そのつど変わっていくものである。
 しかし。

人びとはくりかへし私に語らせ 聞いては頷き 手を拍つた
しかし それが文字に姿を変へられ 紙の上に記され終はると
私は用無し 忘却の葦舟に入れられ 流し 棄てられた

 高橋がここで書いているのは「古事記」完成後の稗田阿礼の運命だが、私はそれを「声」の運命と「誤読」する。
 「声」は「文字」として記されると捨てられてしまう。「声」のなかにあった「肉体」は捨てられ「意味」が残される。
 しかし、「セックス」はいつでも「声」である。「意味」にならない何か、「意味以前」である。私はそういう部分を探し、「誤読」を楽しむ。

 高橋のこの詩集の詩は「意味」が非常に強い。しかし、その「意味」になる過程で「肉体」がなまなましく動く瞬間がある。「意味」が「セックス」をし、「新しい意味(新しい解釈)」を誕生させるのだが、私はその「新しいなにか」よりも「新しくなれないなにか」の方に関心がある。
 どんなに「定義」を変えようが、「セックス」というのはようするに、私とあなたは違う存在であるとわかっていながら、どこかで一致するものがあるかもしれないと勘違いし、「意味」にならない「肉体」を交わらせることである。「意味」が生まれる前の苦痛と快楽に溺れることである。私自身がどうなってもかまわないと覚悟することである。
 私のことばがこれからどうかわるのか。見当がつかないが、結論を想定せずに、二十七篇の詩、対話と交わってみることにする。もちろん、こんな考えは、あした突然、「やめた」に変わるかもしれないが。





 




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