「夏」。
ヒナゲシは夏の手首にはまった腕時計。
この「はまった」は原語では何と書いてあるのだろうか。
ふつうは、手首に「はめた」かもしれない。ボタンをはめる、は、ボタンをとめる。ある決まった位置に「はめる」。その位置でなければならない。
真夏の強い光のなかで、すべてが「定位置」に存在する。
この強烈な感じが、他の行に登場する「吊るされている」「宙吊りにする」という不思議なことばをいっそう印象づける。「吊るされている」「宙吊りにする」をゆるぎないものにするためには、「はまった」の一言が絶対に必要なのだ。他動詞「はめる」ではなく、自動詞「はまる」が。「びったり、はまる」。
書かれていないが、「ぴったり」が、「吊るされている」「宙吊りにする」を「ぴったり」に変える。それでしかあり得ないものに変える。
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